【完結】転生した元社畜男子は聖女になって人生逃げ切る事を諦めません!

hazuki.mikado

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三章.転生聖女と春の庭

王都ギルド

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 王都ギルドのミゲルへの依頼はほんのこの前、生まれたばかりの例のダンジョンの調査報告書の提出だった。

 元々書類仕事等は得意な彼は難なくその仕事を予定外に早いスピードで終わらせてしまった・・・

 ミゲルを指名してきたのは既に彼がくだんの場所に関わり合いがあるという情報をギルド本部が持っているからである。

 一度行ったことのある場所ならチェックするのも早いというのがその理由でもあるのだろうが、八十年ぶりに出来た真新しいダンジョンへの立ち入りは現在王国騎士団により厳重に管理されており一般開放には時間がかかる事が予測されるが、元々王国側であるミゲルは情報の入手が簡単だ。

 王都ギルドとしてもできる限り正確な情報をいち早く入手出来るツテとしてミゲルを指名してきたのである。


「これでいいかギルドマスター」

「お、ミハイル。ご苦労さん」


 書類の厚い束を手渡すミゲル殿下と、それを受け取りニンマリ笑うのはギルドマスターだ。

 ギルドに偽名は登録出来ない為ミゲル・ハイドランジアで登録しているが、王弟という身分が邪魔をすることもあり得るため『ミハイル』という活動名をもっぱら使っているので、ギルドマスターも彼のことは『ミハイル』と呼ぶ。


「一日で終わっちまったな」

「書類仕事は得意なんだよ。ま、ダンジョンの発生から時間が経ってるから下見はしてきたが、そう変わったこともなかったしな。ちっこい魔獣がもう住み着いてたのには驚いたがな」

「先住のヌシは何だったんだよ」


 書類をパラパラめくりながら確認をするギルドマスターの名前はダン。


「カマキリだよ。五メートル以上あったはずだ」


 肩を竦めるミゲルを書類から顔を上げて顔をしかめる中年オヤジ。


「げ。とんでもねえのが住み着いたもんだな。騎士団もよくまあ無事だったなあ」

「ラッキーだったんだよ。たまたま将軍が討伐隊に付いて来てたんだ。本人は普通の間引きのつもりで遠足気分だったらしいんだが、久々の大物が現れたんで張り切って突っ込んで行ったんだよ」

「・・・あの人らしいなあ~ 」


 呆れ顔のギルド長。


「あと、隠し玉がいたんだよ」

「例の『光の柱』と『金色の雪』か? 」


 それには答えずニンマリ笑うミゲルだった。


××××××××××


「オッケーだ。流石は国政に携わってきてるだけの事はあるなぁ、普通の冒険者じゃこうはいかん」


 報告書をポンポン叩きながらご機嫌のダン。


「後は国が、ダンジョンをさっさと開放してくれりゃ万事オッケーだな・・・て、どうしたんだよ変な顔してるぞ」


 仕事が早く終わって嬉しくない顔をされるのはあまり経験がない。


「あ~、予定外の早さで終わっちまったからさ・・・」


 ハの字に眉を動かすイケメン。


「もっと時間が掛かったほうが良かったのか? 」


 キョトンとするダン。


「実は、帝国のがコッチに来てるんだよ。出来れば王都の外にいたいくらいだ」


 渋顔のまま答えるミゲル。


「ああ、あの例のアレか」

「アレだ」

「婚約の申し入れは断ったんだろう? 」


 机に頬杖をつくダン。


「正式に断りは入れてあるんだが、前回の訪問の時の様に俺の寝所ベッドに勝手に入られて、たら敵わん」


 あの時はアレが押しかけてきたとセバスが慌てて連絡して来て、離宮に帰らず騎士団の宿舎に泊めてもらった。

 翌朝そのまま朝稽古してたら俺の寝所にアレが忍び込んでいたという報告がセバスから来て気分が悪くなった。


「・・・一応聞いていいか? 」


 真剣な顔のギルマス。


「何をだ? 」

「それ、本物の皇女か? 」

「本物だから困るんだよ」

「大変だな王族も」

「違うぞ。王族だからこそ大変なんだよ。何かあったら外交問題どころの騒ぎじゃねえ。下手にこの国に居座られる事になったら国がすさむ」

「・・・まあ、色々と有名人だからな」


 ギルドは世界中に支部がある。

 各国で何かしら問題が起こると民間ではあるが国際機関ともいえるギルドはいち早く情報を入手出来る仕組みになっている。

 そんなギルドでも当然ロザリア皇女のミゲルに対する奔放な振る舞いは結構有名らしく・・・


「・・・大変だな、色男も」

「まあ、あと一日の我慢だけどな」


 肩を竦めるミゲルを、思い切り憐れみの目で見るギルドマスター。


「何なら、もう一件仕事していくか? 国境近くに遠征するクエストだが。ちょっとばかし面倒でな、何人か必要になって追加募集してるんだ」

「へえ。今から参加できるのか? 」


「ああ。合同になるがお前なら大丈夫だろう。カウンターで受付してる」


 ダンが、ギルドマスター専用の紹介用紙にペンを走らせる。


「下にコレ持ってけ」


 ミゲルは無言でそれを受け取った。



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まあ、イヤっすよね~

お読み頂きありがとうございます!
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