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ニ章.転生聖女と転生聖王

大技はお任せあれ

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 ダンジョンの最奥にあるであろう卵の確認の為に、森を歩く王弟ミゲルと侯爵令嬢ミリアンヌ。


 神聖魔法の浄化で魔獣の卵を消滅させる事が出来るかもしれないと、将軍や団長達に提案し許可を得たのである。


「メルの時のように手の平を当てることは出来んぞ。なんせ数が多いって聞いてるからなあ」

「ウ~ン、そうですねえ一応お爺ちゃんに習った神聖魔法で『聖女のやし』っていうのがあるんですよ。それで対応できないかなとは思うんですよね」

「さっきの雄の個体にぶつけた攻撃魔法は何だ? 」

「あれは、ミリアンヌスペシャルです・・・つまり、前世のゲームエフェクトを元に再現したヤツです」


 所謂いわゆる厨二病的なヤツですね。


「ほう。そういやロッドに乗って空も飛んだな」

「アレは正しくは先に黒猫が乗ると完璧なやつですね」

「成程な。ヤマト便か」

「それです」


 足元の枯れ葉がサクサクと音をたて始める。

 ダンジョンの周辺が瘴気の影響で森の木々が枯れてしまっているのだ。


「瘴気で森がこんなになっちまうんだなぁ」

「ミゲル様でも知らないんですね」

「新しいダンジョンができたのは八十年ぶりだからな。資料には書いてあったが、目にしたのは初めてだよ」


 見上げると、森の木々は色を失い白く干からびたように見える。


「ナ●シカの世界ですねえ~ 」

「確かに虫もデカかったな・・・」


 アホな事を言いながらダンジョンの入り口にやっと到達した。

 ミゲルが入り口で膝を付くとふところから巻物を取り出して広げて置き、四隅に木の枝を杭のように差し込み地面に固定した。


「ソレ、何ですか?」

「スクロールだよ。ミリーは知らないかな」

 
 魔法が使えない庶民でも使える様に工夫された魔法陣の書かれた巻物である。但し一度使うとスクロール自体が消失するらしい。

 主に冒険者達が使用するのだが、かなり高額な上にギルドにしか置いてない為、上級冒険者クラスにならないと買うことはできないというシロモノである。


「初めて見ました」


 目を丸くして、じっとスクロールを見つめるミリア。


「これ、ひょっとして転移魔法陣ですか? 」

「当たり。奥で何かしら不味いことになったらココに出てこられるようにしとくんだよ。ダンジョンの攻略には欠かせないんだ」

「便利ですねえスクロール」

「メルのように自由に転移魔法を使えるようになりゃあ楽なんだがな。まだまだ練習中だ」

「お爺ちゃんは出来るんですよね確か・・・」

「アレはもう妖怪だな」

「メルちゃんも元魔王ですしね」

「まあ、修行次第だろうなあ」

「修行ウウッーアタマガア」

「棒読みはよせ」

「ハイ・・・行きましょうか」


××××××××××


 ダンジョンの中に入ると、ミゲルが光魔法を使って道を照らしてくれる。


「いつの間にソレ、習得したんですか」

「あ? 六歳の時だな」

「初めて洞窟で会った時に使ってましたっけ? 」

「あの時は、誰かが近づいて来たんで急いで消したんだよ。あと一緒に行動してた時はジジイが使ってたから使わなかった。ミリーは出来るんだろ? 」

「ハイ。一応気を使うから滅多に使いませんが」

「気を使う? 」

「見てみますか? 」


 そう言うとミリアの手から光がフワンと・・・フワンと・・・フワンと・・・


「おいおい、いくつ光を上げてんだよ一個でいいだろ」

「いやあ、一個のつもりでやってもこうなんですよね」


 天井近くまで上がった光は煌々とダンジョン内を照らしている。オマケにミリアの足元からも光が小川の様に流れ出て、まるで光の帯を敷き詰める様になり始めた。


「何か凄い魔力漏れらしくて、こういう繊細な? 光魔法を使うとド派手なディスコ会場みたいになるんですよねえ」


 ため息をつくミリア。


「成程。隠蔽いんぺい魔法に七年もかかるわけだなあ」

「元々が不器用なんですよねえこうなんつうか、百かゼロか、みたいな感じで・・・」


 うん。実にミリアンヌらしい。


「さあ、行こうか。これはこれでいいんじゃないか? 」

「良いのかなあー・・・ 」


 肩を叩かれて首を傾げるミリアンヌである。


-----------


大技のミリア・・・です


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