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ニ章.転生聖女と転生聖王

類は友を呼ぶモノである

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 「では、貴族院での会議は無しでそのまま神殿からの決定を通達する。予定としてはお前の誕生月が有力となるだろうが、内部通達はそれを待たずに前もって行う事とする」


 ため息を付きながら国王陛下が王弟ミゲルに向かい執務机の向こう側からそう言った。

 隣に立っている宰相、将軍、魔道士長も頷いている。


「まさかお前が『聖王』になるとはなあ」

「私も正直驚きました。兄上」


 兄弟二人して苦笑いをする。


「三年前の騒ぎの時に魔力検査もしておけば、これ程驚かなかったんですが・・・」


 宮廷魔道士長、シンフォニア伯爵が申し訳無さそうに頭を下げる。


「まあ、確かにあの騒ぎの後から異様に魔力が上がったのは間違いありませんな。それ以前は演習場を毎回壊すようなことはなかったですからな」


 エヴァンス将軍も眉尻を下げる。

 はあ、ともう一度ため息をつく陛下。


「前世とやらを思い出すということで魔力が増えるとは思わなかったよ」

「スミマセン」

「まあ、何だ。聖王になったからと言っても騎士団に所属は今まで同様だし、結婚がお前の意志が尊重される事と、臣下にならないってだけだから」

「そうですね。王弟殿下は直轄の領地を授かっていませんでしたので」


 モース宰相も相槌を打つ。


「お前宛に国内外から山のように姫君の釣書が届きつつあるが、まあソレは断りを入れるようにするしかあるまい」

「はい」

「まあ、あんなにミリアンヌ嬢と懇意にしてるから国内はそれ程じゃ無いから楽なもんだがな・・・」


 ちょっとミリアンヌの後ろの大天使のような姿の魔王、ウィリアムを思い浮かべてブルッとなっちゃう陛下。


「お前よくあんな魔王みたいな男とその娘と平気で付き合えるなあ~ 」


 その言葉にミゲル、いや宮田望美だった前世のゲーム会社の上司達や会社の方針をふと思い出す。公休も有給も返上で走り回り、終いには海外出張。帰ってきたら不祥事の後始末・・・

 それに比べればアークライド侯爵の自領での政策特に税金システムや医療の制度、領民に対する助成制度は素晴らしいものであったし、何よりその考え方自体が自領を豊かにする事に繋がっているのは周知の事実だ。

 政策を施行する為に自らが動き下準備を重ね、自領内の中位貴族や下位貴族、領主等と連携を取る姿は好感が持てる。

 他人任せで踏ん反り返っている貴族が当たり前のこの国でかなりな少数派である事は否めないが。

 クレーム処理と部下の指導。中間管理職としての責務といった社会的責任をこなしていたからこそ冷静な目で見ても彼は素晴らしい領主だろう。

 ミリアが可愛いだけの親バカっぷりも、ある意味一度女性として生を受け曾祖父、祖父、父、兄に囲まれ育ったためか頷けるものがある。


「いえ、アークライド侯爵閣下は尊敬に価する方だと自分は思っていますよ。彼の領地経営の手腕もそうですが、令嬢に対する愛情の深さも感服しております。自分ももし娘を授かったら彼の様になるんじゃないでしょうかね」


 顎に手を置き天井に目線を向けながらそう言うと


「お前、実はアイツと同類か・・・」


 国王陛下が三度目のため息を付きながら小さな声で呟いたが、ミゲルは肩を竦め


「多分? 」


 そう言って更に苦笑いをした。


「お前の言う通り、余りにも発表を急ぎすぎるとアークライド侯爵家とミリアンヌ嬢の名誉問題に関わるからな。慎重に時期は見計らうようにするしかあるまい。国外からの婚約の打診は正式にお前が『聖王』だと発表すれば直ぐに止まるんだがなあ~ 」


 はあ、と又々ため息をつく陛下。


「まだ、シンシアのしでかした事の決着も付いてないからな。あ~もう。ソレもウィリアムが城に来ない内に何とかせんとなあ~ 」


 顔色悪く、ブルッとする陛下。

 その場の全員が、さながら大天使の様な麗しい微笑みを浮かべながら強烈な威圧をかけてくるアークライド侯爵を頭に思い浮かべて


『ホントにな! 』


 と言いたいのをグッと我慢したのであった・・・




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根回しって大事って回ですハイ。


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