71 / 189
ニ章.転生聖女と転生聖王
腹に思うても・・・
しおりを挟むクスクス笑うマーロウを見て、何か空恐ろしさを感じて背筋に冷や汗が流れるクロード。
「まあ、平和が一番だと思うならやめといたほうがいいよ。僕は、あの子に借りが出来たから何かあったらあの子の味方をすると思うけどね」
「それは・・・」
「王宮でさあ今回の王女の事以外にも気分の悪いことは多々あったさ。この顔のせいでね。だからそんな奴らは消えちゃって欲しいって僕は思ってるよ。でも高慢ちきな高位貴族の中でも珍しく純粋無垢な、あの子が王子の婚約者になったばかりに非難されたり辛い目に合わされたりさあ、そんな目に会うのは僕は嫌だな。かわいそうじゃないか」
一瞬。
冷たく凍てつく様なブルーグレイの瞳が、まるで飛びかかる隙を探す飢えた狼の様に見えて思わずぶるりと震える自分の腕を掌でギュッと押さえたクロードであった。
××××××××××
ブルーグレイの緩い捲毛を靡かせながら教室へと優雅に去っていく魔道士の後ろ姿を見送りながら、彼の胸中を思い今後の事を考えるクロード。
彼としては、先程のマーロウの会話の内容から感じ取った王宮内の腐敗や不正、そして性的な虐待等、色々な問題を解決する必要性を感じた。
だとしてもそれは今の国王陛下や父である宰相の仕事であって自分は彼らに進言する以外、手立てが無い。勿論この事は持ち帰り父に早急に相談しなければいけない案件だと理解しているし、それを実行するつもりでもある。
ただ、今はアレク王子の婚約者を早めに決定する事が最優先事項だ、と頭の中で自分に言い聞かせると踵を返して生徒会室へと戻る。
国を背負う第一王子が手には決して入らないご令嬢に執着し過ぎると、そこに隙が出来て他国から揚げ足を取られかねない。
それだけではなく婚期を逃す高位の貴族が増え、アレクの治世の時は何とかなったとしても、その次の世代は国が傾きかねない。先に事を考えると頭が痛くなる・・・
クロードとしては自分の主人はアレクシス第一王子であって、その婚約者が誰であろうと関係なく決まれば従うだけである。
幼馴染として考えればアレクが初めて恋をした女性と結ばれるのは喜ばしくもあるのだろうが、ミリアンヌがアレクの婚約者、ひいては王子妃になるというのはあまり現実的ではないように思える。
なので今回巻き込まれたとはいえ、ミリアンヌ侯爵令嬢に何らかの形で接触したであろうマーロウの意見を聞いてみたかったのだ。
蓋を開けたらそれ以上にとんでもないモノが飛び出して来た感はあるが・・・
条件的にもそうだが、王族、ましてや次期王太子が周りの賛同が得られない婚約を結ぶのは、結果としては幸せにはなれないだろう。
マーロウは、アレクシスの治世で彼を支える次の王宮魔道士長になる。
これはほぼ決定事項だ。
その重要な立場の人物が反対している女性と王子の婚姻は国を背負う立場の者としてアレクは諦めざるを得ないだろう。
どちらかというと先刻のアレはアレクシスの方が釣り合わないと反対されてるんだろうな、と頭を振るクロード。
国を背負うのだ。どんな些細な事であったとしても未来に影を落とすような事体は避けたい。
学園在学中、せめて卒業迄に現時点での婚約者候補の中から何としてでも伴侶を決めてもらわねば。
いざとなれば同盟国から姫君を引っ張って来てでも決めてもらう。
どんなにアレク本人が望もうが騒ごうがミリアンヌ嬢だけはあり得ない。
「あの、脳天気を何とかしなくては・・・」
アレクの、アークライド侯爵令嬢を思い出しては呆けている顔を思い出し、固く決心する次期宰相候補であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
腹に思うても、口にはださぬこと。
突飛な考えは実行にうすさむこと。
ウィリアム・シェイクスピア~ハムレットより
12
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる