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一章.聖女と出会いと王宮と
不可抗力?
しおりを挟む休憩室の外に出ると、王宮の廊下だった。
濃いロイヤルブルーの絨毯がその証拠である。
歩く侍従の後ろを何食わぬ顔でついていくミリアンヌ。
勿論姿は消したままである。
「え、伯爵だけ? 」
「はい。他にはどなたもいらっしゃる様子はありませんでした」
「どういう事だ? 」
「わかりません」
『この人たちは何か知ってるっぽいな~ 』
赤い髪の毛に鳶色の瞳に既視感を覚える背の高い少年が少し離れたところに立っていて、先程の侍従と話をし始めた。
緑色のシンプルな騎士服は、王宮騎士見習いの制服だ。
「一体どういうことだ? 確かにここに運び込まれたと思ったんだが、見失ったのかなあ? 」
すぐ横で人の話を聞くとよく分かるな~ と感心するミリア。
『見失った、という事は誰かを追いかけてたって事ですよね・・・ 』
赤毛の少年が頭をぼりぼり掻きながら
「部屋を間違えたんならまだ探さないと。やべえクロードとアレクに、どつかれるなこりゃあ」
『んん?アレクって第一王子ですよね』
「マーロウをとっ捕まえて聞いたほうが早いかな? 」
困り顔で腕を組む赤毛の少年。
『・・・マーロウってどっかで? うーん』
侍従がそのまま、待ての姿勢で立つ横で、仁王立ちで腕を組んだまま考えるミリアンヌ。
遠くから、金色の房のついた白い騎士服と腰までの長さのマントを着た近衛騎士達を宰相が引き連れて、足早にこっちに向かってくるのが見えた。
「どうだ、ハリー。アークライド侯爵家のご令嬢は見つかったのか? 」
宰相が少年に問いかけると少年が首を横に振った。
『あら、私、行方不明者扱いですかね? 』
ちょっとわかんないけど不味いかも?
「この部屋に気を失った様子で連れて来られたはずなんです。侍従に確認して貰ったら、ゼノア・ティーダー伯爵が不調で休んでいるだけで、ミリアンヌ嬢はいなかったらしいんですよ」
「間違いないのか? 」
「ええ。侍従の格好をしたマーロウのやつが一人だけで出てきましたから・・・ 」
『ウ~ン、この人たちは味方ですかねえ』
ミリアの後方から更に人の気配が。振り返るとミゲルの黒髪と父の金髪が見えた。
「宰相殿、ミリアの消息は? 」
父、顔色悪し。半泣きである。
ミゲルを見ると三白眼になっている・・・
「ミリー何処だ。出てこい! 」
「・・・・」
侯爵がびっくりした顔で、隣りに立つミゲルを見ている。
「ご心配をおかけしたようで申し訳ありません。どなたが味方かわからなかった故」
ミゲルに向けて美しいカーテシーを披露するミリアンヌの姿がキラキラ煌めく光と共に突然現れた。
同時にその場にいたミゲルを除く全員が驚きのあまり口に手を当てたまま押し黙る・・・
ミゲルはホッと安心した顔になりミリアンヌの肩を抱き寄せてギュッと抱き締めた後で、何故か笑顔でその頭に空手チョップをお見舞いした。
「いった! 何するんですかミゲル様」
「ミリー、皆を心配させすぎだぞ」
「・・・だって、意識がなかったんですもの不可抗力ですよ~ 」
ミゲルの腕の中で頭を抑えながら膨れっ面で見上げるミリアンヌは、必殺斜め四十五度。
それを目にした全員が鼻を抑えて天を仰いだのも不可抗力である・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
パパさん以外耐性無し・・・合掌。
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