4 / 14
お前を愛することは無い
続・初夜で宣言?(は、撤回できるか?)
しおりを挟む『何を期待しているかは知らんが、俺はお前を愛するつもりは毛頭ないッ!!』
そう。
俺は初夜で迂闊にもそう宣言してしまったんだよ。
そして、すぐ後ろに立っていた近衛騎士が止める間もなく必殺技を全て鳩尾に入れられた――今思い出しても口から内蔵が飛び出しそうなくらい悶絶して痛かったのを覚えている。
確か素手のグーパンだった筈なんだが・・・
彼女を止めようとした近衛2人は
『あんたら、夫婦の会話に口出しする気か? アアン?』
と。指を鳴らしながら、鬼気迫る様な凄い形相で睨まれたらしいのだが気を失っていてそれは見ていない。
そして2人共が飛び蹴りと大外刈を喰らい気絶した後で、後ろ手に指を縛られて廊下に転がされていた所を翌朝メイドが見つけて大騒ぎになったが、翌朝には既に調教済みになっていた俺が大臣達に土下座して事なきを得たのである・・・。
そう、調教済みだよ。
もう1回言うね、調教済み!
自慢じゃないが、俺は甘やかされた一人っ子の美少年王子だったからねぇ、そりゃあもう唯我独尊、天井知らず一直線でそのまま育っちまった訳だ。
で。態と人の嫌がるようなことをしては、周りの顔色を伺う様な嫌な奴になってたんだ。
婚約者だった隣国の王女はそりゃあもう天使か妖精かっていうくらいきれいな子だったけど俺の周りにいた顔色を伺う連中と大差無かった。
だから面白くなかった。
結婚したらコイツと一生顔を突き合わせて生きていくのかと思ったらウンザリだった。
翻って考えるとアリアは悪辣で虚栄心が強くて最悪だったが、自分に正直である意味一緒に居るのが愉しかった。
だからコイツが嫁のほうがいいのかもしれんなんて馬鹿な事を考えたわけだよ。
取り敢えず刺激的には生きていけそうな気がしたんだ。
でも違ってた――
鳩尾に5発ボディブローを喰らって目が覚めたんだ・・・――いや、コラッ! 変な性癖に目覚めたんじゃ無いからなッ! ソコ! 変な目で見るなよ!
人に顔色を伺われるのが嫌だったのは、俺の意見を前もって推察されたり、失敗しないように先回りされたりするのが嫌だったんだなって。
単に俺自身を認めて欲しくて子供みたいに駄々をこねてただけだったんだなって。
「なんでゴメンナサイって言わねーの? アアン? アンタの発言はどう考えても私に対して無礼過ぎでしょうがッ?!」
「お前だって俺を殴っただろうだろうがッ! 謝れよ」
「アンタが先に謝りなッ! 先に理不尽な言い掛かりをしてきたのはアンタだろうがッ! こちとら若い頃から命張って特攻隊長務めてきたんだよ。お坊ちゃんの我儘に頭なんか下げられるかッ! 舐めんじゃ無いよッ」
もう言ってることがサッパリ分からないけど、すごい迫力で妖精姫なんて言われる美貌が霞むくらいには口が悪い。
お見合いの時のあの気弱な性格は猫を被ってたのかよッ?!
しかも夫婦は対等な立場だって言い張って譲らないから、絶対に俺も謝らないって言ったら、
『しょーがないね言う事聞かないやんちゃ坊主は窓から逆さ吊りにしようかねぇ』
――おい待てッ! なんでシーツを裂いて俺の足首をくくるんだよッ! 何で俺の事をそのちっこい体で担ぐの? いやぁあああああッ!! 窓に行くなッ! ここ4階建てなんだぞッ!! うわああぁああああ・・・
×××
バルコニーで土下座をさせられ謝って許して貰うために今までの気持ちとか、やってしまった事を涙混じり(鼻水も混じってた気がする)説明したら。
『アホかアンタ。甘ったれんな。いい年こいてホンマに。コレがアタシの今生の旦那かぁ・・・やってらんねぇ。あ~モクが欲しいわぁ・・・』
って呆れられた・・・。
同情すらして貰えなかった。
『あんなぁ、世の中には食うに困ってる人とか、生まれてすぐ親に捨てられちまう赤ん坊とかごまんといるんやで? いいべべ着せてもろて、うまいもん食わせてもろて、勉強もさせてもろて、甘やかしてもろて、オマケに金持ちで女にモテてよりどりみどりの学生生活送らせてもろて何が不満やの? そんなんで文句言っとったらお天道さんに恥ずかしいわ。子供かアンタ』
なんか恥ずかしかった・・・
そしてどうやら惚れてしまったんだよ迂闊にもこの暴力女に・・・ソコッ! そんな白い目で見るなッ!
×××
この国も彼女の祖国も、3年で白い結婚が証明されると離婚が成立する。
それは王族でも残念なことに成立するんだよ。
なので今日も俺は彼女に大人の男だと認めて貰って閨を共にして貰おうと頑張ってるんだ。
今度の政策は絶対イケるって思って議会に提出したんだけど採算が合わな過ぎるって財務がいい顔をしなかった。
ウ~ンどの辺を削ったらいいのかが分からん・・・
悩みながら花束を抱えて王妃の部屋をノックする。
今日は失敗しないように侍従に言いつけて先触れはちゃんと送ったからな?
いきなり拳骨は飛んでこないはずだよな?
開いたドアの向こうに妖精か天使みたいに美しい王妃が見えた。
見慣れない金色の指輪をはめてる気がするけど、俺の瞳と同じ色の宝石が控えめに飾られてる!? ・・・ちょっと嬉しい。
胸の高鳴りを感じながら彼女の部屋に足を踏み入れて。
俺は後ろ手でドアを閉じた――
――――――――――了
多分メリケンサックが・・・(-_-;)
鶴亀鶴亀・・・
101
お気に入りに追加
152
あなたにおすすめの小説
【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く
とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。
まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。
しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。
なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう!
そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。
しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。
すると彼に
「こんな遺書じゃダメだね」
「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」
と思いっきりダメ出しをされてしまった。
それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。
「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」
これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。
そんなお話。
【完結】婚約者なんて眼中にありません
らんか
恋愛
あー、気が抜ける。
婚約者とのお茶会なのにときめかない……
私は若いお子様には興味ないんだってば。
やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?
大人の哀愁が滲み出ているわぁ。
それに強くて守ってもらえそう。
男はやっぱり包容力よね!
私も守ってもらいたいわぁ!
これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語……
短めのお話です。
サクッと、読み終えてしまえます。
一体だれが悪いのか?それはわたしと言いました
LIN
恋愛
ある日、国民を苦しめて来たという悪女が処刑された。身分を笠に着て、好き勝手にしてきた第一王子の婚約者だった。理不尽に虐げられることもなくなり、ようやく平和が戻ったのだと、人々は喜んだ。
その後、第一王子は自分を支えてくれる優しい聖女と呼ばれる女性と結ばれ、国王になった。二人の優秀な側近に支えられて、三人の子供達にも恵まれ、幸せしか無いはずだった。
しかし、息子である第一王子が嘗ての悪女のように不正に金を使って豪遊していると報告を受けた国王は、王族からの追放を決めた。命を取らない事が温情だった。
追放されて何もかもを失った元第一王子は、王都から離れた。そして、その時の出会いが、彼の人生を大きく変えていくことになる…
※いきなり処刑から始まりますのでご注意ください。
【完結】わたしの隣には最愛の人がいる ~公衆の面前での婚約破棄は茶番か悲劇ですよ~
岡崎 剛柔
恋愛
男爵令嬢であるマイア・シュミナールこと私は、招待された王家主催の晩餐会で何度目かの〝公衆の面前での婚約破棄〟を目撃してしまう。
公衆の面前での婚約破棄をしたのは、女好きと噂される伯爵家の長男であるリチャードさま。
一方、婚約を高らかに破棄されたのは子爵家の令嬢であるリリシアさんだった。
私は恥以外の何物でもない公衆の面前での婚約破棄を、私の隣にいた幼馴染であり恋人であったリヒトと一緒に傍観していた。
私とリヒトもすでに婚約を済ませている間柄なのだ。
そして私たちは、最初こそ2人で婚約破棄に対する様々な意見を言い合った。
婚約破棄は当人同士以上に家や教会が絡んでくるから、軽々しく口にするようなことではないなどと。
ましてや、公衆の面前で婚約を破棄する宣言をするなど茶番か悲劇だとも。
しかし、やがてリヒトの口からこんな言葉が紡がれた。
「なあ、マイア。ここで俺が君との婚約を破棄すると言ったらどうする?」
そんな彼に私が伝えた返事とは……。
頑張らない政略結婚
ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」
結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。
好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。
ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ!
五話完結、毎日更新
少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。
ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。
なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。
妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。
しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。
この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。
*小説家になろう様からの転載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる