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〈Another Story〉story of duke and wife

35 幼き狂詩曲2

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 彼のそして彼女の後ろ側に、ピンク色の薔薇の花が咲き誇り花弁は舞い散り、白い羽根の生えた幼子の姿をした天使達が高らかにラッパを吹き鳴らす。

 大きな翡翠色の目が更に大きく見開かれ、涼し気で切れ長な濃い青色の瞳は目の前の少女に釘付けになる。

 時間は止まり、周りの音は全てかき消され世界は白く塗りつぶされて行く。
 薔薇の花弁が舞い、ふわりと広がる毎に二人だけの世界が何処までも広がって行くのだ。


 「手を」


 そう言いながらアンドリューが背を屈め手袋に覆われた手を差し出し、それに応じるようにオフィーリアが己の指をそっと載せた。

 互いに見つめ合いながら、その瞳の奥の感情を確かめ合うように二人の距離が近付く・・・


 「アンドリュー王子様・・・」

 「オフィーリア嬢・・・」

 「ついてきてくれますか?」

 「ええ、勿論ですわ」


 周りにいる大人達は、一体何が起こったのかが分からず戸惑っているが、小さな淑女達は小さな声で『きゃあ~♡』『まるで物語のようですわぁ♡』と騒いでいる。

 凛々しい少年王子と美しい公爵令嬢が互いを見つめ合いながら、頬を染めゆるりと口角を上げ瞳を潤ませるその姿はさながら名のある画家が描いた一幅の価値ある絵や、心を何処までも震わすお伽噺の美しい挿し絵のようで、思わず皆が溜息を『ほぅ~』と零すことを止められない・・・







 「では、このまま二人で共に参りましょうか」

 「ええ、勿論ですわ」


 ――え? 一体どこへ? 


 戸惑う周りを他所にスッと立ち上がる二人はしっかりと見つめ合ったままである・・・


 『きゃああぁ~~♡』










 次の瞬間、二人はガッチリと硬い握手を交わし口を同時に開く。


 「「得物は?」」













 


 「「「「「「は?」」」」」」


 全員がその台詞に首を傾げる。











 「私は剣で」


 得意気に王子が答えると


 「では、ワタクシもそれで」


 と、頷く天使もかくやの美しい小さな淑女が答える。


 「得意のもので良いよ?」


 柔らかく微笑むアンドリューに


 「何でも得意なのです。一番はロング・ウィップですので」


 恥じらいながら答えるオフィーリア。


 「じゃあ、私はデスサイズを使うか?」


 首を傾げる王子に向かい


 「いいえ、同じもので」


 と、微笑むオフィーリア。


 「じゃあ、お互いにサーベルとかはいかがかしら?」

 「ああ、そうしよう」


 二人は頷いた。














 「「こらぁああああああっ!今日は茶会だぁああああ!!!」」


 国王陛下とアガスティヤ公爵閣下が同時に叫んだ。










 その後慌てた侍従が闘技場の鍵を厳重に閉める為に走っていったらしい・・・・
 
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