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〈Another Story〉story of duke and wife
31 辺境伯領へ
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「だっからさー、何で騎馬兵置いてっちゃうのよリア? エヴァンスが可哀想じゃんよ」
「チンタラ走ってたら間に合わないからよッ。イーサンは付いてこれてるじゃん」
美しい栗毛の馬に乗った二人連れが街道を駆け抜けていく。
「騎馬兵置いてきぼりの女なんて、見たことねーよ」
「ここにいるわよッ! 文句ある?」
「ありましぇーん」
横並びに前を向いたまま駿馬を駆りながら怒鳴り合うのは、アバルティーダ王国の最凶女公爵オフィーリア・アガスティヤとアストリア帝国の爆弾魔皇太子ヒューイである。
ハトコ同士、髪色が違うだけで他はそっくり ――但しオフィーリアの方は胸部が発達しているが―― の二人は国は普段違えども会えば双子の兄妹の様に仲が良い。
だが今はお互い時間が惜しいためか、馬上で怒鳴り合いながら辺境伯領へと物凄い勢いで進んで行く真っ最中だ――
出発した時はアガスティヤの騎馬隊を一緒に連れていた筈なのだが装備の重さの違いで軽装のオフィーリアとヒューイが突出してしまい、そのまま最速で駆け抜ける事にしたのだ。
「今日中にアッチに付けば、例の将軍とほぼ同時位には着く筈よ」
「其れまでアンディがもってくれりゃいいけどな」
二人が慌てているのは辺境伯からの応援要請の伝令を王都へと続く街道で見つけたからである。
オフィーリアとヒューイが身に着けた軍服はアガスティヤ公爵家の私兵団の物で、国の攻守を守る同じ立場の辺境伯領の者達にはお馴染みのものだ。
まさかアガスティヤ公爵家の当主本人だとは思っていなかったようだが、オフィーリアの軍服の襟に付いていた当主の証である小さなブローチを見て、辺境伯側が先に気が付き、彼らに直接声を掛けてきたのである。
×××
辺境伯の知らせでは、当初の予測以上にボーフォート将軍側と行動を共にする一般兵の数が多かったらしい。
王族付きの近衛と一部の上級士官達、そしてその直属の武官達以外の兵が、根城になっているという廃教会に武装して続々と集って来ているという。
その事に気付かず、既に国境に向けて出発したらしいアンドリュー王子が率いている―個小隊が約50人。
相手は下手をすると万単位だ。どう考えても多勢に無勢すぎる。
「ボーフォートは我が国と戦争をするつもりなのかしら?」
「うーん、兵の数が確かに多すぎるから有り得るかもしれないけどさ、武装の程度にもよるでしょ? 上級士官達と直属の武官達が国王の元に残ってるって事は烏合の衆の可能性もある」
「よくわかんないまま集まっちゃった的な?」
「うん。さっきの伝令の内容だと指令の要である武官が少なすぎるでしょう? よく分かんないまま将軍に付いてきちゃった的な?」
「・・・ まさかねえ」
「戦争したいわけじゃないと思いたいから言ってるわけじゃないよ? 一般兵は命令されたら動かなきゃいけないでしょ? 疑問を抱くより行動で示せ、だもん。問題は誰がその指示したのかだよな」
「真相を知りたいわねえ」
オフィーリアは馬上で溜息をついた。
「チンタラ走ってたら間に合わないからよッ。イーサンは付いてこれてるじゃん」
美しい栗毛の馬に乗った二人連れが街道を駆け抜けていく。
「騎馬兵置いてきぼりの女なんて、見たことねーよ」
「ここにいるわよッ! 文句ある?」
「ありましぇーん」
横並びに前を向いたまま駿馬を駆りながら怒鳴り合うのは、アバルティーダ王国の最凶女公爵オフィーリア・アガスティヤとアストリア帝国の爆弾魔皇太子ヒューイである。
ハトコ同士、髪色が違うだけで他はそっくり ――但しオフィーリアの方は胸部が発達しているが―― の二人は国は普段違えども会えば双子の兄妹の様に仲が良い。
だが今はお互い時間が惜しいためか、馬上で怒鳴り合いながら辺境伯領へと物凄い勢いで進んで行く真っ最中だ――
出発した時はアガスティヤの騎馬隊を一緒に連れていた筈なのだが装備の重さの違いで軽装のオフィーリアとヒューイが突出してしまい、そのまま最速で駆け抜ける事にしたのだ。
「今日中にアッチに付けば、例の将軍とほぼ同時位には着く筈よ」
「其れまでアンディがもってくれりゃいいけどな」
二人が慌てているのは辺境伯からの応援要請の伝令を王都へと続く街道で見つけたからである。
オフィーリアとヒューイが身に着けた軍服はアガスティヤ公爵家の私兵団の物で、国の攻守を守る同じ立場の辺境伯領の者達にはお馴染みのものだ。
まさかアガスティヤ公爵家の当主本人だとは思っていなかったようだが、オフィーリアの軍服の襟に付いていた当主の証である小さなブローチを見て、辺境伯側が先に気が付き、彼らに直接声を掛けてきたのである。
×××
辺境伯の知らせでは、当初の予測以上にボーフォート将軍側と行動を共にする一般兵の数が多かったらしい。
王族付きの近衛と一部の上級士官達、そしてその直属の武官達以外の兵が、根城になっているという廃教会に武装して続々と集って来ているという。
その事に気付かず、既に国境に向けて出発したらしいアンドリュー王子が率いている―個小隊が約50人。
相手は下手をすると万単位だ。どう考えても多勢に無勢すぎる。
「ボーフォートは我が国と戦争をするつもりなのかしら?」
「うーん、兵の数が確かに多すぎるから有り得るかもしれないけどさ、武装の程度にもよるでしょ? 上級士官達と直属の武官達が国王の元に残ってるって事は烏合の衆の可能性もある」
「よくわかんないまま集まっちゃった的な?」
「うん。さっきの伝令の内容だと指令の要である武官が少なすぎるでしょう? よく分かんないまま将軍に付いてきちゃった的な?」
「・・・ まさかねえ」
「戦争したいわけじゃないと思いたいから言ってるわけじゃないよ? 一般兵は命令されたら動かなきゃいけないでしょ? 疑問を抱くより行動で示せ、だもん。問題は誰がその指示したのかだよな」
「真相を知りたいわねえ」
オフィーリアは馬上で溜息をついた。
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