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〈Another Story〉story of duke and wife

10 城下町

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 本日のオフィーリアは馬車に乗ってお出掛けである。

 リボンを首元で括るタイプの青いボンネットのつばは控えめに白く繊細なレースで装飾されていて、顔の周りをぐるりと取り囲み影を作るようになっていて、覗き込まなければ顔が見えないように工夫のされた所謂ロリータっぽいモノで、ボンネットの後ろからは腰まである長さの金髪が自然に下ろされている。
 白いフリルの付いた襟に帽子とおそろいの生地で仕立てたワンピースはミモレ丈のエックスラインで、動くとまるで朝顔のように広がるサーキュラースカートに仕上げてあって歩く度にフワリと揺れる。
 履いている薄茶の編み上げブーツは歩くことを想定している事がよく分かる装いだ。

 隣に座るのは婚約者である第2王子アンドリュー。
 彼の衣装はちょっと良いところの商家の息子といったところだろうか。細いブルーのストライプの入った白いリネンシャツに茶色のトラウザーズと同色のジレ。手入れの行き届いた焦げ茶の編み上げブーツはやはり歩くことを想定している。

 そしてもう一人、隣国の王女フロイライン。
 こちらはなんといつものピーチピンクのドレスではなく、白い上質なサテン生地が肩口からフンワリと上るよう仕立てた、ビショップスリーブのボウタイブラウスでツインテールと相まって黙っていれば美少女の彼女をお人形のように見せている。
 シルクで仕立てたワインレッドのミモレ丈のペプラムスカートと組み合わせていて非常に上品な出で立ちだ。

 『ピーチピンク以外の色も着るんだ』と感心した後で『いつもその格好なら良いのに・・・』と残念に思ったのはその場の全員の総意であろう。


 但し足元にはブルーグレイのハイヒール・・・


 絶対に歩く気は無さそうだな、とオフィーリアとアンドリューは同時に苦笑いをした。

 残る一人は、黒いお仕着せを着た真面目そうなフロイラインの侍女である。



×××



 隣国との違いを実際に見てみたいので、城下町の視察をしたいという申し入れをしてきたのは王女である。

 彼女は両国の親睦を深めるという外交目的で訪れているため、政治的な交渉の場にいる必要は無い。

 その間にアンドリューとのお町デートを画策したのだろうが残念ながら婚約者同士でもない未婚の男女の二人きりの外出は認められない。

 彼女としては、連れは少しばかり融通の効く自身の侍女だけでよかったのかも知れないが、王太子の要請でオフィーリアも同行する事となった。

 フロイラインは始終不満そうな顔だったがアンドリューは婚約者と一緒なのでご機嫌で、馬車の座席に座っていても手は勿論オフィーリアと恋人繋ぎである。

 そしてオフィーリアはというとアンドリューとのデートは嬉しいものの、仕上げ途中で止まってしまった朝イチの書類が気がかりで―勿論顔には出さないが―胃の中がモヤモヤ気味だった。



×××



 貴族街と呼ばれる高級店が立ち並ぶ通りの馬車溜まりで降りる4人。

 フットマンが御者台から飛び降り馬車のドア前にステップを置きノック後にドアを開ける。
 先ずは彼の手を借りて侍女が降りると次に王女が降りる為に顔を出す。
 すると、めっちゃイケメンの近衛騎士が安全に降りる為にと手を差し出すのが目に飛び込んできた。

 因みに彼はアガスティヤの派閥の侯爵家出身の近衛騎士なので容姿は他国の王族並みである。


 「アラ、素敵な騎士様ね♡」


 金髪碧眼の容姿端麗な騎士服姿の青年を目に入れた途端、一瞬で後続のアンドリューを忘れてさっさと降りるフロイライン王女。

 続けてアンドリュー王子がヒョイと一人で降りて、オフィーリアに手を差し伸べそのままエスコートする。

 其れを振り返って目の当たりまのあたりにし、『しまった!』と後悔した王女だったが時すでに遅しである。

 そのまま視察は恙無く始まったのであった。









 見事にイケメンエサに喰い付いてしまったフロイラインである・・・

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