上 下
66 / 115
〈Another Story〉story of duke and wife

6 クラッシャー

しおりを挟む
 奇っ怪な叫び声? と共に侍女と見られるお仕着せを着た女性と共に現れたのは、ピンク掛かったダークブロンドをツインテールにしてクルクルとソフトクリームのように縦ロールに巻いた、ピーチピンクのプリンセスドレスを着た女性。

 隣国の末王女、フロイライン嬢である。

 大きな二重はタレ目気味で睫毛がクルンとカールしている為更に大きく見える。瞳はアクアマリンの様に薄いブルーをしていてキラキラして見え、オフィーリアに完敗はしない程度にはまあまあそこそこの美少女ではある――が。如何せん服装の趣味が乙女チック過ぎるため頭が弱そう・・・ ゲフンゲフン、子供っぽく見えるのが玉にキズである・・・タブン。

 今日もイメージカラー? のピーチピンクのドレスにぎょっとする・・・ ゴホン、個性的な七色のパッションカラーのネックレスを付け、指には有閑マダムもおったまげるような大きさの宝石がついたファッションリングを装着している。
 勿論おしゃれの基本なのでネックレスとお揃いの七色である・・・


 誰がコーディネートしたのか怖いもの見たさ、いやいや、聞きたさがムクムクと頭の片隅に芽生えるが、それを極力無視するオフィーリアとアンドリュー王子の二人。

 すこーしだけ離れた所に控えている王宮侍女や警備の近衛騎士も一瞬だけ目が泳いだので、多分気にはなっているのだろう。

 その後真面目くさった顔に戻った護衛達が闖入者である七色が散りばめられたピーチピンクの塊と、中庭でデート中の婚約者達との間にズイッと入ってきた。


 「恐れ入ります王女殿下。この本宮の中庭は王妃様の許可のない方の入場は制限されております」


 職務に忠実な騎士は眉根を寄せるのをぐっと堪えて笑顔で対応した模様である。


 「あらぁ、ワタクシ知らなかったのですわぁ~ ごめんなさぁいませぇ」


 妙にシナを作り二の腕で胸の膨らみを強調して目をパチパチさせているのを見て若干ドン引きになりそうな近衛に同情する二人。


 彼女を追いかけて早足でやって来たであろう隣国の侍女が頭をペコペコと下げている辺り、多分王女の自分勝手な暴走なのだろう。

 アンドリューとオフィーリアは思わず溜息を付いた。


 「王女殿下、この中庭はこの国の王妃の許可が無ければ何人たりとも入ってはいけない場所です。お引き取りを」


 アンドリュー王子がそう説明すると、


 「知らなかったのですぅ」


 と大きな目にウルウルと涙をためて両手を胸の前で組み合わせる。


 「離宮にお連れしろ」


 バラ園の入口付近に現れた侍従にそう指示するとくるりと背を向けてガラス張りの温室に向けてオフィーリアをエスコートする為に左肘を差し出すアンドリュー王子とソレに従うように右手を載せてほほえみを返すオフィーリア。


 「せっかくの薔薇が枯れてしまいそうだよ」


 思わず呟いた彼の言葉にオフィーリアは笑うのを堪えるのに苦労した。


 後ろで王女が何かを喚いていたような気がするが、世の恋人同士に特許付きスルー機能が付いているのは世界共通なので彼らにはその声は聞こえなかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】金で買ったお飾りの妻 〜名前はツヴァイ 自称詐欺師〜

hazuki.mikado
恋愛
彼女の名前はマリア。 実の父と継母に邪険にされ、売られるように年上の公爵家の当主に嫁ぐことになった伯爵家の嫡女だ。 婿養子だった父親が後妻の連れ子に伯爵家を継がせるために考え出したのが、格上の公爵家に嫡女であるマリアを嫁がせ追い出す事だったのだが・・・ 完結後、マリア視点のお話しを10話アップします(_ _)8/21 12時完結予定

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

【完結】旦那は私を愛しているらしいですが、使用人として雇った幼馴染を優先するのは何故ですか?

よどら文鳥
恋愛
「住込で使用人を雇いたいのだが」 旦那の言葉は私のことを思いやっての言葉だと思った。 家事も好きでやってきたことで使用人はいらないと思っていたのだが、受け入れることにした。 「ところで誰を雇いましょうか? 私の実家の使用人を抜粋しますか?」 「いや、実はもう決まっている」 すでに私に相談する前からこの話は決まっていたのだ。 旦那の幼馴染を使用人として雇うことになってしまった。 しかも、旦那の気遣いかと思ったのに、報酬の支払いは全て私。 さらに使用人は家事など全くできないので一から丁寧に教えなければならない。 とんでもない幼馴染が家に住込で働くことになってしまい私のストレスと身体はピンチを迎えていた。 たまらず私は実家に逃げることになったのだが、この行動が私の人生を大きく変えていくのだった。

【完結】美しい人。

❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」 「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」 「ねえ、返事は。」 「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」 彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。

【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く

とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。 まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。 しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。 なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう! そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。 しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。 すると彼に 「こんな遺書じゃダメだね」 「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」 と思いっきりダメ出しをされてしまった。 それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。 「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」 これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。 そんなお話。

【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語

ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ…… リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。 ⭐︎2023.4.24完結⭐︎ ※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。  →2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)

大嫌いな令嬢

緑谷めい
恋愛
 ボージェ侯爵家令嬢アンヌはアシャール侯爵家令嬢オレリアが大嫌いである。ほとんど「憎んでいる」と言っていい程に。  同家格の侯爵家に、たまたま同じ年、同じ性別で産まれたアンヌとオレリア。アンヌには5歳年上の兄がいてオレリアには1つ下の弟がいる、という点は少し違うが、ともに実家を継ぐ男兄弟がいて、自らは将来他家に嫁ぐ立場である、という事は同じだ。その為、幼い頃から何かにつけて、二人の令嬢は周囲から比較をされ続けて来た。  アンヌはうんざりしていた。  アンヌは可愛らしい容姿している。だが、オレリアは幼い頃から「可愛い」では表現しきれぬ、特別な美しさに恵まれた令嬢だった。そして、成長するにつれ、ますますその美貌に磨きがかかっている。  そんな二人は今年13歳になり、ともに王立貴族学園に入学した。

処理中です...