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22 残念令嬢の女装?
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「どうしたのリリー?」
そう言って振り返り、彼女の艶やかな姿を見て驚くアルフィー。
ここ最近は専属侍女達もノリノリで男装を手伝ってくれる為、そのまま出歩くのも平気になってしまい公爵家から直接男装のまま毎回やって来ていた事も増えたので彼が驚くのも無理はないかもしれないな、とリリーは苦笑した。
×××
今日のリリーは濃い深緑のベルベット素材で仕立てたダイヤモンド・ネックのワンピースを品よく着こなした、如何にも高位貴族らしい若い女性の姿である。
黒い艷やかな髪は片方だけに寄せて緩く編み込み、全体に白い小花とパールピンを散らして可憐に仕上げてある。
いつもの眉山と眉頭にポイントを置いたシャープなメイクとは違い、優しげなカーブをアイブロウで描いた女性らしい眉。
それに合わせるアイシャドウは一見地味に思えるテラコッタ系とオレンジ系の組み合わせだが、アクセントに少しだけドレスと同じグリーンのラメを目尻に入れた。
口紅は女性らしいピーチオレンジ系のものをベースに選び輪郭をぷっくりさせるように濃い朱色でグラデーションにしてグロスを乗せる。
元々母のような華やかさはないと自分では思っていたリリーだったが、色のチョイスを変え丁寧に筆を使って仕上げただけでグッと知的で上品、そして凛とした美しい淑女に仕上がったのを驚いたのは本人だけではなくいつも手伝ってくれている侍女達もだった。
若い女性はピンク色という、この国にありがちな固定概念をアルフィーは崩せと彼女に教えたが、リリーは良い生徒だったと言えるだろう。
――公爵家の馬車から降りてアルフィーの店へと入る迄のほんの数分の間に見惚れる男性の通行人が何人もいたのは余談である。
「綺麗だリリー。本当に上手に自分の美しさを引き出せるようになったんだね」
感心して、目を細め頷くアルフィーはいつもの女装ではなく白いシャツに黒いベストを着たギャルソン姿だ。腰には白い布で出来た長いエプロンを着けている。
「あれ、アルフィーは今日は女装じゃないんだ?」
「昨日、帰り際に不動産屋に行くって言ったろ? 女装だと舐められる危険があるからね」
なるほど、と納得するリリーだったが
「困ったわ。私がこの格好で男性姿のアルフィーと出歩いたら変に噂されちゃうわ・・・」
婚約者持ちの自分の立場が何とも恨めしいと心の底から舌打ちしたくなったリリーである。
×××
「ごめんね、私が今日に限って女性の格好なんかしちゃったから」
公爵家の馬車に乗り、アルフィーの指定した不動産屋へと移動する二人。
「やー、大丈夫でしょ。アガスティヤ家の紋章入り馬車で乗り付けて護衛迄ついてるんだから、あっちだって怖くて舐めたマネはできないだろうからね」
リリーの向かい側の席に座るネイビーブルーのAラインのワンピースを着たアルフィーが、ケラケラと笑う。
結局異性と出掛けるのは外聞が宜しくないと、アルフィーが女装したのだ。
元々中性的な顔立ちをした彼はあっという間に淑女に化けた。
鏡の前で髪型をハーフアップにして高速でメイクを施し、ワンピースに着替えた後は首に宝石の付いたチョーカーを着けた。
仕上げに香水を少しだけ手首につける。
それを全て側で見ていたリリーはアルフィーのメイク技術の高さに正直舌を巻いた。
そしてもう一つ、先程からリリーは気になっている事がある。
昨日女装していた姿の時は、リリーとあまり変わらないくらいの身長だったアルフィーが、今日は握り拳一個分くらい目線が高いのだ。
「ねえ、気になってるんだけど、今日はいつもより背が高く見えるのは気のせいかしら?」
「ん? ああ。昨日はちゃんとベッドで寝たからだろ」
「??」
首を傾げるリリーに眉を下げて苦笑いをするアルフィー。
「女装するって決めた日の前日は椅子に座ったまま寝てるんだよ」
「え?」
そう言って振り返り、彼女の艶やかな姿を見て驚くアルフィー。
ここ最近は専属侍女達もノリノリで男装を手伝ってくれる為、そのまま出歩くのも平気になってしまい公爵家から直接男装のまま毎回やって来ていた事も増えたので彼が驚くのも無理はないかもしれないな、とリリーは苦笑した。
×××
今日のリリーは濃い深緑のベルベット素材で仕立てたダイヤモンド・ネックのワンピースを品よく着こなした、如何にも高位貴族らしい若い女性の姿である。
黒い艷やかな髪は片方だけに寄せて緩く編み込み、全体に白い小花とパールピンを散らして可憐に仕上げてある。
いつもの眉山と眉頭にポイントを置いたシャープなメイクとは違い、優しげなカーブをアイブロウで描いた女性らしい眉。
それに合わせるアイシャドウは一見地味に思えるテラコッタ系とオレンジ系の組み合わせだが、アクセントに少しだけドレスと同じグリーンのラメを目尻に入れた。
口紅は女性らしいピーチオレンジ系のものをベースに選び輪郭をぷっくりさせるように濃い朱色でグラデーションにしてグロスを乗せる。
元々母のような華やかさはないと自分では思っていたリリーだったが、色のチョイスを変え丁寧に筆を使って仕上げただけでグッと知的で上品、そして凛とした美しい淑女に仕上がったのを驚いたのは本人だけではなくいつも手伝ってくれている侍女達もだった。
若い女性はピンク色という、この国にありがちな固定概念をアルフィーは崩せと彼女に教えたが、リリーは良い生徒だったと言えるだろう。
――公爵家の馬車から降りてアルフィーの店へと入る迄のほんの数分の間に見惚れる男性の通行人が何人もいたのは余談である。
「綺麗だリリー。本当に上手に自分の美しさを引き出せるようになったんだね」
感心して、目を細め頷くアルフィーはいつもの女装ではなく白いシャツに黒いベストを着たギャルソン姿だ。腰には白い布で出来た長いエプロンを着けている。
「あれ、アルフィーは今日は女装じゃないんだ?」
「昨日、帰り際に不動産屋に行くって言ったろ? 女装だと舐められる危険があるからね」
なるほど、と納得するリリーだったが
「困ったわ。私がこの格好で男性姿のアルフィーと出歩いたら変に噂されちゃうわ・・・」
婚約者持ちの自分の立場が何とも恨めしいと心の底から舌打ちしたくなったリリーである。
×××
「ごめんね、私が今日に限って女性の格好なんかしちゃったから」
公爵家の馬車に乗り、アルフィーの指定した不動産屋へと移動する二人。
「やー、大丈夫でしょ。アガスティヤ家の紋章入り馬車で乗り付けて護衛迄ついてるんだから、あっちだって怖くて舐めたマネはできないだろうからね」
リリーの向かい側の席に座るネイビーブルーのAラインのワンピースを着たアルフィーが、ケラケラと笑う。
結局異性と出掛けるのは外聞が宜しくないと、アルフィーが女装したのだ。
元々中性的な顔立ちをした彼はあっという間に淑女に化けた。
鏡の前で髪型をハーフアップにして高速でメイクを施し、ワンピースに着替えた後は首に宝石の付いたチョーカーを着けた。
仕上げに香水を少しだけ手首につける。
それを全て側で見ていたリリーはアルフィーのメイク技術の高さに正直舌を巻いた。
そしてもう一つ、先程からリリーは気になっている事がある。
昨日女装していた姿の時は、リリーとあまり変わらないくらいの身長だったアルフィーが、今日は握り拳一個分くらい目線が高いのだ。
「ねえ、気になってるんだけど、今日はいつもより背が高く見えるのは気のせいかしら?」
「ん? ああ。昨日はちゃんとベッドで寝たからだろ」
「??」
首を傾げるリリーに眉を下げて苦笑いをするアルフィー。
「女装するって決めた日の前日は椅子に座ったまま寝てるんだよ」
「え?」
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