10 / 115
10 残念令嬢男装でデートする。
しおりを挟む
「で、デッデッデートォ?!」
「そうよ、何叫んでるのリアム」
「だ、だって婚約者が・・・」
アルフィーの言葉で、まるでブリキ人形の様な動きになるリリーに呆れるような眼差しを送るアルフィー。
「バカねえ、今はリアムなんだから婚約者はいないでしょう?」
「あ。そうか」
違う自分になる為に男装したんだったわ、と急に冷静になるリリー。
――公爵令嬢リリーじゃなくて、唯のリアムなんだから婚約者もいないんだっけ・・・?! いいの?
なんだか少しだけ腑に落ちない気もするが、ここにいるのはリリーとは別人なんだよね、と自分に言い聞かす。
「うん、分かったよ。行こう、ってどこ行くの?」
「うーん、そうだねえ、ケーキ屋巡りとかどう? 視察も兼ねてるんだけどね」
何と! 目をキラキラさせて両手を合わせたリリーである。
「ぜひ行きましょう!!」
アルフィーはそれを見て優しく微笑んだ。
×××
日差しは柔らかく、もうすぐ春がやってくる事を知らせるように公園にはアーモンドの花が咲いている。
風に乗ってその白い小さな花弁が歩いている自分達の目の前の石畳に時折ヒラリヒラリと落ちてくる。
リリーがアルフィーをエスコートするというおかしな状況だが、男女が入れ替わっているのに誰も全く気が付かないのに不思議な気持ちになるリリー。
寧ろ行き交う人々の視線が時折こちらを向くと、微笑ましそうに見られていることに気が付くと自然に頬が緩む気がする。
そして偶に男性に睨まれ、女性は笑顔を見せてくる・・・??
「フィリア?」
ん? とアルフィーが此方を向いた。――フィリアというのはアルフィーの女装時の仮の名前だ。
二人の身長はほぼ同じだが、アルフィーが踵のない靴を履き、踵の高い靴をリリーが履いているためアルフィーに若干見上げられる形になる。
「偶にさ、男性に睨まれて女性に微笑まれる。なんでだろ?」
「それはリアムが女性にモテてるんだよ。で、男性にはやっかまれてる」
「へ?」
「こんな美女を連れてるんだから仕方ないだろ? 俺はさっきから女に睨まれてヤローにデレデレされてる」
小声ではあったがウンザリした口調で答える彼がおかしくて、プッと笑いが漏れてしまったリリーである。
「思ってた程はあんまり注目されないね」
「だろ? 実はさ、普段もそうなんだよ」
「え?」
「意外に人って自分を気にしてないって言ったろ? いつもは『公爵令嬢リリー』って役者だから周りが気になって仕方ないだけなんだよ」
「そうなのかなあ・・・」
首を傾げながら歩くリリー。
「あ、あそこだ。あの店ケーキが美味いんだよ。コーヒーはウチが上だけど」
「すっごい自信だね」
「当たり前ですワ~」
笑いながら、可愛い木枠の硝子戸をリリーが開けてアルフィーをエスコートする。
「上出来」
「ふふん」
笑い合いながら、窓際にある丸いテーブル席に二人で座った。
「そうよ、何叫んでるのリアム」
「だ、だって婚約者が・・・」
アルフィーの言葉で、まるでブリキ人形の様な動きになるリリーに呆れるような眼差しを送るアルフィー。
「バカねえ、今はリアムなんだから婚約者はいないでしょう?」
「あ。そうか」
違う自分になる為に男装したんだったわ、と急に冷静になるリリー。
――公爵令嬢リリーじゃなくて、唯のリアムなんだから婚約者もいないんだっけ・・・?! いいの?
なんだか少しだけ腑に落ちない気もするが、ここにいるのはリリーとは別人なんだよね、と自分に言い聞かす。
「うん、分かったよ。行こう、ってどこ行くの?」
「うーん、そうだねえ、ケーキ屋巡りとかどう? 視察も兼ねてるんだけどね」
何と! 目をキラキラさせて両手を合わせたリリーである。
「ぜひ行きましょう!!」
アルフィーはそれを見て優しく微笑んだ。
×××
日差しは柔らかく、もうすぐ春がやってくる事を知らせるように公園にはアーモンドの花が咲いている。
風に乗ってその白い小さな花弁が歩いている自分達の目の前の石畳に時折ヒラリヒラリと落ちてくる。
リリーがアルフィーをエスコートするというおかしな状況だが、男女が入れ替わっているのに誰も全く気が付かないのに不思議な気持ちになるリリー。
寧ろ行き交う人々の視線が時折こちらを向くと、微笑ましそうに見られていることに気が付くと自然に頬が緩む気がする。
そして偶に男性に睨まれ、女性は笑顔を見せてくる・・・??
「フィリア?」
ん? とアルフィーが此方を向いた。――フィリアというのはアルフィーの女装時の仮の名前だ。
二人の身長はほぼ同じだが、アルフィーが踵のない靴を履き、踵の高い靴をリリーが履いているためアルフィーに若干見上げられる形になる。
「偶にさ、男性に睨まれて女性に微笑まれる。なんでだろ?」
「それはリアムが女性にモテてるんだよ。で、男性にはやっかまれてる」
「へ?」
「こんな美女を連れてるんだから仕方ないだろ? 俺はさっきから女に睨まれてヤローにデレデレされてる」
小声ではあったがウンザリした口調で答える彼がおかしくて、プッと笑いが漏れてしまったリリーである。
「思ってた程はあんまり注目されないね」
「だろ? 実はさ、普段もそうなんだよ」
「え?」
「意外に人って自分を気にしてないって言ったろ? いつもは『公爵令嬢リリー』って役者だから周りが気になって仕方ないだけなんだよ」
「そうなのかなあ・・・」
首を傾げながら歩くリリー。
「あ、あそこだ。あの店ケーキが美味いんだよ。コーヒーはウチが上だけど」
「すっごい自信だね」
「当たり前ですワ~」
笑いながら、可愛い木枠の硝子戸をリリーが開けてアルフィーをエスコートする。
「上出来」
「ふふん」
笑い合いながら、窓際にある丸いテーブル席に二人で座った。
12
お気に入りに追加
2,971
あなたにおすすめの小説
【完結】金で買ったお飾りの妻 〜名前はツヴァイ 自称詐欺師〜
hazuki.mikado
恋愛
彼女の名前はマリア。
実の父と継母に邪険にされ、売られるように年上の公爵家の当主に嫁ぐことになった伯爵家の嫡女だ。
婿養子だった父親が後妻の連れ子に伯爵家を継がせるために考え出したのが、格上の公爵家に嫡女であるマリアを嫁がせ追い出す事だったのだが・・・
完結後、マリア視点のお話しを10話アップします(_ _)8/21 12時完結予定
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
【完結】旦那は私を愛しているらしいですが、使用人として雇った幼馴染を優先するのは何故ですか?
よどら文鳥
恋愛
「住込で使用人を雇いたいのだが」
旦那の言葉は私のことを思いやっての言葉だと思った。
家事も好きでやってきたことで使用人はいらないと思っていたのだが、受け入れることにした。
「ところで誰を雇いましょうか? 私の実家の使用人を抜粋しますか?」
「いや、実はもう決まっている」
すでに私に相談する前からこの話は決まっていたのだ。
旦那の幼馴染を使用人として雇うことになってしまった。
しかも、旦那の気遣いかと思ったのに、報酬の支払いは全て私。
さらに使用人は家事など全くできないので一から丁寧に教えなければならない。
とんでもない幼馴染が家に住込で働くことになってしまい私のストレスと身体はピンチを迎えていた。
たまらず私は実家に逃げることになったのだが、この行動が私の人生を大きく変えていくのだった。
【完結】美しい人。
❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」
「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」
「ねえ、返事は。」
「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」
彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。
【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く
とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。
まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。
しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。
なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう!
そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。
しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。
すると彼に
「こんな遺書じゃダメだね」
「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」
と思いっきりダメ出しをされてしまった。
それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。
「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」
これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。
そんなお話。
【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語
ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ……
リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。
⭐︎2023.4.24完結⭐︎
※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。
→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる