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3 残念令嬢の隠れ家。

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 「大体、残念な御令嬢って言われてる私が傷つかない訳ないじゃない? ルパートが好きだからってそれを平気で言ってくるってどういう神経してるのかしら?」


 リリーはそう言いながら、はぁ、と溜息をつくと目の前のフルーツパフェに銀色の細いソーダスプーンを突っ込んだ。


 「第3王子殿下もホントに碌でもない渾名をリリーに付けちゃったわねえ~」


 リリーは、学生街と貴族街の境目にある隠れ家的なこの場所でいつものように管を巻く。

 カウンター席の向こう側で眉をへにゃっと下げる美女は、このカフェのオーナーでもあるアルフィー。

 アガスティヤ家と同じ派閥の伯爵家のなのだが、リリーの兄と同い年で、幼いころから家族ぐるみで交流がある彼女の幼馴染みの一人でもある。
 彼は昔から兄とも気が合い仲が良かった。
 そのためお転婆だったリリーの見張り役・・・ゲホゲホ・・・いや、公爵一家に信用されていてエスコート役を指名される事も多かったのだが、彼女の婚約とほぼ同時に長年の夢だったというカフェの経営者になるために社交界から遠ざかり経営を学んだ。

 彼自身は伯爵家の次男なので、家の後継ではないが父親から成人を機に子爵位を受け取ったが、領地が特にあるわけでもないため躊躇いなくそのままこのカフェのマスターとして働き出した・・・ のだが。


 「ねえ、所でアルはなんで今日もその恰好なの?」


 最初はギャルソンの様な姿で働いていたはずなのだが、いつの間にか女装が板につき最近ではマスターというよりママさんである。


 「え? 綺麗でしょ? 売上もコッチのほうが上がるし」


 何いってんだコイツ? 信じられんという顔をアルフィーにされたリリー。

 解せん。


 「まぁ確かに美人ではあるわ」

 「でしょう? 臨時アルバイトも美味しいし~」


 オホホホと言わんばかりにシナをつくり優雅に口元を隠すアルフィーは何処からどう見てもその辺の女性より完璧な美女である。

 元々顔の造作は良かった筈だが、ここまで変わると流石の幼馴染のリリーも最初は『どちら様?!』と固まった。

 最近では女避けのアルバイトで兄に夜会のパートーナーとして駆り出される事もあるらしい・・・ 


 「それよかオマエ、いいのか?」


 突然美女の高い声から一転、男性の声に戻るアルフィー。


 「えー・・・何がよ?」


 顰めっ面になるリリー。何を言われるのかは当然分かってはいるのだが。


 「オマエの婚約者の放蕩癖だよ。この界隈で知らねえ人間は居ないぞ?」


 若干呆れ顔になる幼馴染。


 「ウ~ン・・・ 分かってるんだけどさぁ」


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