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9 残念令嬢初めての男装。

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 「凄いっ!! アルフィー天才なの?!」


 又もやアルフィーのカフェの2階にある自宅兼事務所で騒ぐ公爵令嬢リリー。

 白く光沢のあるドレスシャツに赤ワイン色のネクタイ。
 ゴブラン織りの華やかなベストは背中側が黒いサテンシルク仕立てで、トラウザーズはベストの一色を選びダークグレーを選んだ。
 靴は磨き込まれて顔が映りそうなくらいピカピカのウィングチップでベージュと濃いグレーのコンビ。

 どう見たって全て特注品だが、自分の姿のあまりの変わりように舞い上がったリリーは、全くもって気が付かない。


 「素敵! 自分に恋をしそうだわ・・・」


 ふざけた事を言っているリリーだが、大きな姿見の中に映るのは黒髪に濃い青い涼しげな目元の見たことも無いようないイケメン王子様だ。
 上気した頬がうっすらと桜色に染まり自分を見つめてくるのだが、リリーが自分を見ているだけである・・・


 「やー、これは化けたねえリリー? じゃなかったリアムだっけか?」


 又もや自前のメイク道具を片付けながら声を掛けるアルフィー。


 「うん。リアムよ。リリーじゃ女の子でしょ?」


 クルリと振り返り胸を張ると、腰に手を添えて兄が良くするポーズを取る。


 「アハハ、アレクシスにそっくりだね」


 散々屋敷で兄を追い回して、ほぼそっくりの立ち振舞が約一週間で出来るようになったリリーは早速アルフィーにチェックをしてもらうために意気揚々とカフェやって来たのだが、今日は定休日だった為そのまま男装することに。

 メイクをしてもらいながら、男性っぽく見えるにはどこを強調してどこを抜くのか、男っぽく見えるカラーやハイライト、シェードの入れ方など様々なテクニックをアルフィーにレクチャーされた。


 「基本は、女性のメイクと変わらないのね? ファンデーションも使うしアイシャドウもちゃんと入れるのね。色数が少ないのと眉間が狭いだけだわ。あ、鼻がもっと高く見えるようにシェードやハイライトを入れてる?」

 「ああ、ちょっとだけテクニックが変わるけど、本人の骨格を活かすから基本は一緒だね。それを無視したって違和感が出ちゃうから」

 「ふ~ん・・・ アルフィーは凄いわね。全部自分でできるんだもの」

 「すぐ覚えるよ。毎日やってれば慣れちゃうよ」


 そう云う彼はいつもの美女仕様である。


 「確かに毎日やってれば覚えるかも・・・」


 その姿を見て何故かモヤっと複雑な気分になった自分に、首を傾げるリリー。


 「じゃあ、リリー、今日は私とデートしましょうね」


 ニッコリと優雅に笑うアルフィーの言葉に思わず固まるリリーである。




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