ヒーローズマキナ

鷹ピー

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第1章

20話 テナス村と保存食

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3日目は3回魔物と遭遇したがどれもアンデット系の魔物だったので難なく勝利を収めた。
そして手に入れた装備は纏めてダミアンさんが買い取ってくれた。


「ここまでアンデットが多いのは初めてだ。もしかするとこの近くに沼があって、そこからララニアの方へアンデット達が移動しているのかも知れないな」


3度目の戦闘の後、アナベルがそんなことを言っていた。

そして日が沈む頃、テナス村に着いた。




テナス村は人口100人にも満たない村で主な産業は農業なので、周りには土が剥き出しの畑や緑の葉で覆われた畑などが広がっている。

一言でいえば「のどか」だ。


「テナス村にようこそ」と書かれた看板が付いている簡素な門を潜り、薄暗い道をしばらく進むと複数の建物が集まっている場所があり、そこにこの村唯一の宿があった。

勿論ここの宿もダミアンさんが予約済で宿泊代もダミアンさん持ちだ。



「よし。皆お疲れ様。出発は明後日の朝だからゆっくり休んでくれ」
宿の前でアナベルが一言いうと宿に入って行こうとする。


「アナベル!明日じゃダメなのか?」
それをタツヤが止めた。
きっと少しでも早くバルベルに着きたいのだろう。

「ああダメだ。テナス村から次のサルワン村まで2回野営をするからここで疲労を取っておきたい」

「・・・そうか。分かった」
タツヤは「理解はしたけど納得はしていない」と言いたそうな表情をしていた。


ここの食堂では大盛りの料理は出てこなかったけど、素材の味を生かした料理でどれも美味しかった。

そのお陰か食べ終わった後のタツヤは少し明るくなった気がする。




次の日は休みという事なので、減ってしまった携帯食料を買うついでに村を見て回る事にした。
元々タツヤがお金の管理をしていたが、ララニアを出る時にタツヤからお願いされて今は僕がお金を管理している。


朝食を食べて宿を出ようとした時、タツヤがまだ使う機会に見舞われていない直剣で素振りをしているのが見えたので、声をかける事にした。



「タツヤおはよう」

「おう、エルムか。おはよう」
僕が話しかけると素振りをやめてこちらを向いた。

「落ち着かない?」

「あー、まぁそうだな」
僕がそう問いかけるとタツヤはバツが悪そうに頭を掻いた。

前もこういう事があったので、タツヤは悩んでいる事があると素振りをする習慣がある様だ。


「まぁ程々にね」

「おう」
タツヤなら強く言わなくても分かっていると思うから、これ以上言うのはやめておこう。


「それで今から買い物に行ってくるけど何か欲しい物とかある?」

「そうだなぁ、うまそうな果物があったら買ってきてくれ」

「分かった」
そして今度こそ村の市場に向かった。




市場と言っても出店が4つ出ている小さい規模のもので、しかもその内1つはダミアンさんの出店だった。


「おはようございます。ダミアンさんは仕事熱心ですね」

「ああ、エルムさんおはようございます。何事も泥臭くやるのが私のモットーですから」
ダミアンさんの出店は干し肉から道具まで色々置いてあった。
勿論僕達から買い取った装備も売られている。


「そういえば今回はなんでバルベルへ行くんですか?」

「簡単に言えば市場調査です。足を運んでみて初めて分かる事もありますからね」

「なるほど」
もし僕がダミアンさんの立場だったら誰か従業員に頼んでやって貰うけど、そうしない理由がダミアンさんにはあるんだろうね。


「もし宜しければ何か買われますか?商店で買うより割高になってしまいますけど」

「えーと、他の出店を見てからにします」

「分かりました」
そう言って笑顔で送り出してくれた。



他の出店を覗くと、瓶の中に入った液体に野菜や木の実を漬けた保存食や、ダミアンさんの店で売られているクッキーとはまた違った色合いの物も売られていた。

店員に頼むと試食させてくれたので両方食べてみると、
どちらも魔力に変換される魔力量が、いつも食べている携帯食料よりも多い感じがした。


瓶の方はピクルスという食べ物で、味が濃くお酒と一緒に食べたら美味しいと思う。

クッキーはは野菜を使っているのか薄い緑色で苦味があるけど食べれなくは無い。


聞いてみるとどちらもこの村で出来た採りたての野菜を使っているらしい。

良いものを見つけたと思い、どちらも購入した。




この後は宿に戻って装備の手入れをしたり、ベットに横になったりして過ごした。

動くと魔力を使ってしまうからね。


夕食を食べている時のタツヤは、いつも通りの感じだったのでもう大丈夫だろう。
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