ヒーローズマキナ

鷹ピー

文字の大きさ
上 下
19 / 34
第1章

19話 スケルトンが あらわれた!

しおりを挟む
「2時の方向に2体います」

「よし。それ以外はいないな?」

「近くにはいません」
ドロネから出発した日の昼過ぎ、僕の魔力感知に反応があった。
この匂いから判断するとまたアンデット系の魔物だろう。


「よし。今回は連携の確認をするから全員で行くぞ」

「誰か馬車に残さなくて大丈夫ですか?」
いくら近くにいると言っても少し不用心な気がする。

「ああ、今回が特別と言うのもあるが、この匂いで嗅覚のある魔物は近付かないから大丈夫だ」
なるほど、そういえばララニアでゾンビを倒していた時も、周りにはゾンビ以外いなかったな。

「分かりました」

「よし。ダミアンさん達はここで待っていて下さい」

「はい、分かりました」

「私とエルムが前衛、タツヤが中衛、カヨが後衛だ。行くぞ」
反応があった場所にゆっくり近付くと匂いが強くなり、見慣れたゾンビともう1体、金属製の鎧を着たスケルトンがそこにいた。

スケルトンはその名の通り骨の魔物だ。
今回のは人骨の様で鎧の他に剣と盾を持っている事から、生前は兵士の様な戦う職業だったのだろう。


「スケルトンか、エルム頼めるか?」

「はい」
僕は右手にメイス、左手には金属製の盾を装備している。
そしてメイスは打撃武器なのでスケルトンとは相性が良いのだ。

「よし。ゾンビは私が抑えておくからその隙にタツヤが光魔法でゾンビを仕留めてくれ」

「おう、分かった!」
この間、ゾンビ達はさまよう訳でもなくただそこに立っているだけだった。
まるで何かを待つ様に。

「よし。カヨは後で周りを警戒しつつ、もし怪我をした時の為に回復の準備しておいてくれ」

「は、はい!」

「よし。行くぞ!」
そして僕とアナベルが飛び出し、戦闘が始まった。




「「強化」」
僕とアナベルの声が重なる。

僕は足と腕に強化を使って一気に間合いを詰める。
アナベルも一気に間合いを詰めたところを見ると同じく足に強化を使ったのは明らかだ。


そして僕はスケルトンの頭に向かってメイスを振り下ろす。

スケルトンは僕の攻撃に気が付き、横に避ける。


しかし完全に避ける事は出来ず、スケルトンは盾を持っていた左腕を失った。


スケルトンは骨を鳴らし、右腕に持った剣を僕に振り下ろす。

僕はそれを盾で弾き、メイスで腰の辺りを殴る。


すると鎧の劣化が酷かったのか鎧は砕け、それと一緒に中の骨も砕けてしまい上半身と下半身が離れてしまった。


それでもまだ上半身は動く様でどこかへ這って行こうとする。

どこへ行こうとしているのかは分からないけどやる事は1つ、僕はメイスで頭を叩き潰した。

そして中にあった赤黒い魔石を取り出すと、スケルトンは動かなくなった。


「ホーリーアロー!」
向こうも終わった様で、このパーティーの初戦闘は勝利に終わった。




装備を剥ぎ取った後、馬車に戻ろうとした時にカヨがスケルトンに祈りを上げようとしていた。

アナベルとタツヤはもう先に行ってしまった様なので、僕が残る事にした。
前世でも聖女が魔物を倒した後に同じ様な事をしていたのを思い出す。

「この魂に救いを与え給え」
カヨがそう唱えるとスケルトンの骨から光のモヤが現れ、空に昇って行った。


それを見ながら戦闘で昂った心を落ち着かせる。


前世の勇者パーティーメンバーの動きを真似てみたけど結構上手くいったな。

それに前世では後ろで見ている事しか出来なかった。
でもこの体なら戦える。

僕は静かに手を握りしめた。


「お、お待たせしました」
祈りが終わった様でカヨが駆け足で寄ってきた。

「それじゃあ行こうか」

「はい」


馬車へ戻り、少し休憩を取ってから出発した。



そして日が落ち始めた頃、小川を見つけたのでその近くで野営をする事になった。

「タツヤとエルム、これは見た事あるか?」
アナベルが皮袋の中に入った灰色のキメの粗い粉を見せてきた。

「ありません」
塩にしては粒が大きすぎる。

「俺も見た事ないな」

「これはビャクマの木を粉末にした物で、これから出る煙が魔物避けに使えるんだ」

「「へ~」」
そんな便利な物があったのか。

前世では夜襲にあって寝不足になるなんて事が当たり前だったけど、今世ではそれに悩まされる事はなくなりそうだな。


「私の店でも取り扱っていますから、もしお金に余裕があればお買い求めください」
流石はダミアンさん、いつでも宣伝は忘れない。

「因みにこれでいくらですか?」

「アナベルさんが持っている量ですと5000ギルはしますね」

「「高っ!」」
貴重な物なのか、効果があるからなのか分からないけどかなり高額だ。

「だが便利だぞ?私がこれまで使った限りだと1度も夜襲を受けてない。しかも1つまみで1晩もつ」

欲しい。
宣伝文句に乗せられてる感じがするけどすごく欲しい。


今日の晩御飯は干し肉と野草で作ったスープとパンだ。

スープはアナベルが作ってくれて、ダミアンさんから提供された胡椒が良いアクセントになっていて美味しかった。




夜は一応見張りを付ける事になりアナベルとタツヤが初めに見張りをして、その後に僕とカヨで見張る。


「ど、どうぞ」
目が醒める様にとカヨがお茶をいれてくれた。

「ありがとう」
僕は眠気という感覚はないので必要ないんだけど、断るのも悪いので頂く。

焚き火を眺めながらお茶を口に含むと苦味が広がる。
飲み込むと内臓がない分、体に染み渡る感じはないけど少しだけ魔力に変換されているのが分かる。


「カヨは今はソロで活動しているんだっけ」

「はい、前いたパーティーが解散してしまって」
ここら辺の話は自己紹介の所で聞いていた。

「でもヒーラーだったらどこかのパーティーから勧誘があるんじゃないの?」

「あるにはあるんですけど・・・皆さん厳しい人ばかりでその空気について行けなくて・・・」

「あー、冒険者はそういう性格の人多いよね」
まぁそういう性格じゃないと、冒険者を長く続けるのは大変かもね。

「はい・・・なのでパーティーに馴染めず、ソロで活動しています」
ヒーラーなら守ってもらえて需要度も高いから楽そうに思っていたけど、カヨも苦労している様だね。



この後も他愛もない話を続け、空が白み始めたのでカヨと一緒に朝食の準備をしているとアナベル、御者さん、ダミアンさん、タツヤの順番で起きてきた。

朝食は昨日と同じくパンとスープ。


食べ終わると身支度をして出発する。

今日の晩までにはテナス村に着かなくてはいけない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く

burazu
ファンタジー
冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。 最低限の身の守りの為に鍛えていた肉体が補助魔法によりとんでもなくなることを知ったニラダは剣、槍、弓を身につけ戦いの幅を広げる事を試みる。 更に攻撃魔法しか使えない天然魔法少女や、治癒魔法しか使えないヒーラー、更には対盗賊専門の盗賊と力を合わせてパーティーを組んでいき、前衛を一手に引き受ける。 「みんなは俺が守る、俺のこの力でこのパーティーを誰もが認める最強パーティーにしてみせる」 様々なクエストを乗り越え、彼らに待ち受けているものとは? ※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

レベルカンストとユニークスキルで異世界満喫致します

風白春音
ファンタジー
俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》は新卒で入社した会社がブラック過ぎてある日自宅で意識を失い倒れてしまう。誰も見舞いなど来てくれずそのまま孤独死という悲惨な死を遂げる。 そんな悲惨な死に方に女神は同情したのか、頼んでもいないのに俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》を勝手に転生させる。転生後の世界はレベルという概念がある世界だった。 しかし女神の手違いか俺のレベルはカンスト状態であった。さらに唯一無二のユニークスキル視認強奪《ストック》というチートスキルを持って転生する。 これはレベルの概念を超越しさらにはユニークスキルを持って転生した少年の物語である。 ※俺TUEEEEEEEE要素、ハーレム要素、チート要素、ロリ要素などテンプレ満載です。 ※小説家になろうでも投稿しています。

異世界で生き残る方法は?

ブラックベリィ
ファンタジー
第11回ファンタジー大賞が9月30日で終わりました。 投票してくれた方々、ありがとうございました。 200人乗りの飛行機で、俺達は異世界に突入してしまった。 ただし、直前にツアー客が団体様でキャンセルしたんで、乗客乗務員合わせて30名弱の終わらない異世界旅行の始まり………。 いや、これが永遠(天寿を全うするまで?)のサバイバルの始まり? ちょっと暑さにやられて、恋愛モノを書くだけの余裕がないので………でも、何か書きたい。 と、いうコトで、ご都合主義満載の無茶苦茶ファンタジーです。 ところどころ迷走すると思いますが、ご容赦下さい。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界のんびり冒険日記

リリィ903
ファンタジー
牧野伸晃(マキノ ノブアキ)は30歳童貞のサラリーマン。 精神を病んでしまい、会社を休職して病院に通いながら日々を過ごしていた。 とある晴れた日、気分転換にと外に出て自宅近くのコンビニに寄った帰りに雷に撃たれて… ================================ 初投稿です! 最近、異世界転生モノにはまってるので自分で書いてみようと思いました。 皆さん、どうか暖かく見守ってくださいm(._.)m 感想もお待ちしております!

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...