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第1章
1話 起きたら目の前が真っ暗になってた
しおりを挟む光が届かない暗闇の中で僕は出口を探して彷徨っていた。
「・・・こっちもダメか」
目の前にある壁に手を触れながら溜息をつく。
ここに立ち止まっている意味も無いので来た道を引き返す。
僕の名前はアラン。魔王と呼ばれる人類の宿敵を倒す為、結成された勇者パーティーに小人族の代表として参加し、そこで罠を見つけたり解除したりするスカウトを担当していた。
でも僕の記憶が確かなら魔王のいる部屋の前で、落とし穴に落ちて死んだはず。
だけどこうして動いているって事はまだ生きているみたいだ。
「どうしたもんか」
暗闇の中、目が覚めた時にいた部屋に戻ってきた。
適当な所に座るとさっきから気になっていた事を考える。
「僕ってこんな声だったっけ・・・」
20年以上聞いてきた僕の声はこんなに高く無かった気がする。
もしかしたらこの体は僕の物では無いのかもしれない。
そんな突拍子も無い考えが頭を過った。
「・・・ソナー」
もしそうだとしても今、僕がやるべき事は出口を探す事だ。
頭を切り替えて探知系魔術のソナーを発動する。
ソナーとは術者から魔力の波動を飛ばし、それが物体に当たった時の感覚からそこの地形情報などを読み取り頭の中に表示する魔術で、使用する魔力量により探知範囲が変わる。
この魔術の悪い点は使った時の情報しか分からないので、動いている存在は追跡できないところだ。
ソナーを使った瞬間から頭の中に地形情報が広がって行き、全範囲の確認が完了した。
「うっ!」
さっきも使っていたけど、今は何が起きるか分からない状況だから使う魔力量を減らしていた。
今度は多めに魔力を使って全範囲を把握する事にした結果。
「・・・お腹が空いた?」
意味が分からない。
本当だったら魔力酔いと呼ばれる、残っている魔力の半分以上を一気に無くなった時に起きる特有の気持ち悪さが体を襲うと思っていたけど、何故か急な空腹感に襲われた。
これは本当に僕の体ではない気がする。
空腹感が残る体を強引に動かして部屋の奥へ進む。ソナーで見たところ行き止まりだけど、一様確認しに行った。
「はぁ、お手上げだな」
やはりと言うべきか出口は無かった。
罠とか仕掛け扉とかがあれば僕の加護「隠者の勘」で分かるんだけど、反応が無かったからその類いのものは無いはずだ。
加護とは人が産まれる時に、稀に持っている物で神の祝福だとか先祖返りだとか言われている。
加護には能動型と受動型の2種類あり、「隠者の勘」の場合は常に発動しているから受動型の加護だ。
「んっ!?」
急に地面が揺れ出した。
魔力が足りない僕には地面に伏せ、頭を抱えながら目を瞑る事しか出来なかった。
僕の背中に小さな硬いものがいくつも当たっている。
ドスンと背後から一際大きな音がして揺れが収まる。
「収まった」
目を恐る恐る開けると灰色の石が辺りに散らばっている。
体を起こしながら振り返ると天井の一部が抜け、そこから光が刺し込み部屋を照らしていた。
地面を見てみると大きなガラスの破片が落ちているのに気が付く。
そこには青色の髪の毛を肩に当たる位まで伸ばし、黄色の瞳をした15歳くらいの少女が写っていた。
静かに立ち上がり両腕を見た後目線を下げると、自分の体には長いスカートの黒いワンピースとその上に白いエプロンを着ていることがわかる。
所謂メイド服だ。
そして自分の体に触れる。
・・・無い。男にあるはずの物が無い。しかし、あそこに穴が空いていないから女でも無い。
胸は・・・少し膨らんでいるが、突起物は無い。
・・・一体僕はどうなってしまったのだろうか。
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