捨てられた者同士、婚約するのはありですか?

あさじなぎ@小説&漫画配信

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11 図書館

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 時刻は午後の三時過ぎ。
 町には買い物と思われる人たちが多く歩いていて、商人たちの呼び込みの声が響いている。
 私がこの町に来たのは初めてだ。だから見るものすべてが珍しい。
 私が住む首都より北の山地にあるから、かなり涼しい。通りに植えられている樹木の葉が風に舞い通りを黄色や赤で埋め尽くしていく。
 空を見上げればどこかで焚き火をしているのか煙が上がっているのが見える。枯葉を燃やしているのかなぁ。
 誰ひとり知り合いのいない町、噂話は聞こえてこないし話しかけられることもない。
 なんて素敵なの? もっと早く旅に出ればよかったなぁ。ちょっと後悔。
 とりあえず今日は図書館で本をみて……そうだ、この街のことでも調べようかな。貴族の領地って言っていたし、誰の領地かって聞き取れなかったから。
 私は足取り軽く図書館を目指した。
 ホテルから歩いて十分くらいの場所にその図書館はあった。
 茶色の壁の三階建ての建物。大きな茶色の木の扉には妖精の姿が彫られている。
 ここの図書館の噂は私も知っているけど、美しい図書館ってどういう意味だろうか。
 私は木の扉を開き、中に入った。

「こんにちはー」

 中に入るとすぐカウンターがあって、そこにいる女性がにこやかにあいさつしてくる。
 私は彼女に会釈をして奥へと進んで行った。

「うわぁ……」
 
 円形の天井いっぱいに絵画が描かれていて、本棚の上に置かれている照明が優しく照らしている。
 白い柱にも妖精と思われる彫刻が施されていて、廊下には球体の造形物が置かれている。
 美しい図書館、と言われている意味がよくわかる。
 私が知る図書館はこんなふうに絵なんて描かれていないしもっとシンプルだ。
 この図書館の天井には妖精の他、天使の姿も描かれている。館内はとても静かで、椅子に腰かけて本を読むご婦人の、紙をめくる音がよく聞こえてくる。
 とりあえずこの町のことがわかるものないかな。
 そう思いながら館内を歩き、観光案内の本を手にして私は椅子に腰かけた。
 本を開き、そして私はそこに書かれている貴族の名前に心臓が止まるんじゃないかってくらい驚いた。
 ここ、ルミルア地方はフレイレ伯爵家の領地だそうだ。
 フレイレって……確かアルフォンソ様の名字、よね……?
 やだ、背中を変な汗が流れていく。
 だから旅に出るって話した日、なんだか笑顔だったの? もしかして追いかけてくるとかある……?
 いや、でもアルフォンソ様、今週で休みは終わり、みたいなことおっしゃっていたしな……だ、大丈夫よね?
 私、どこの宿に泊まるかなんて言っていないし。
 そう自分に言い聞かせて私は観光名所について調べていった。
 私は観光と休養に来たんだから。首都でのことなんてわすれるわすれる。
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