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9 ルミルア地方
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王都の北部、汽車で三時間ほどかかる場所に温泉地で有名なルミルア地方がある。
どこかの貴族の領地らしいけれど私は詳しく知らない。
山地にあるから夏場には避暑地として利用する人が多いし、湯治場としても利用されているから長期滞在向けの宿もある。
私は汽車を下り目の前に広がる山を見つめる。
九月ということもあり、山の木々は色を変えオレンジや赤に染まっている。
予定より少し早いけれど私はこの山で一カ月の休養をとろうと宿を押さえた。
荷物のトランクを引きずり駅を出ると、迎えの馬車が来ていた。
なぜわかったかと言うと、私の名前が書かれた紙をかざしていたからだ。
「歓迎! チュルカ様!」
なんて書いてある。ちょっと恥ずかしい。
声をかけると、御者のおじいさんはにこにことして言った。
「おお! お待ちしておりました、チュルカ様。本日、御者を務めさせていただきますフランコ=エルミと申します。よろしくお願いいたします」
と言い、頭を下げた。
「パトリシア=チュルカです。よろしくお願いいたします」
私も慌てて頭を下げる。
フランコさんは私の持つ荷物に視線を向けて言った。
「重かったでしょう。荷物、積みますよ」
そして私の方に手を差し出してきた。
「あぁ、お願いいたします」
フランコさんに私は大きなトランクを預ける。するとフランコさんは馬車の客車のドアを開けて荷物をよっこらしょ、と積み込む。そして振り返るとにこにこと笑い、私に手を差し出した。
「ではお嬢様、参りますのでお手をどうぞ」
「ありがとうございます」
私は礼を言い、彼の手に私の手を添えた。
二頭立ての馬車は、ゆっくりと通りをゆく。
駅の前には私と同じような旅行者らしき人たちの姿があった。着いたもの、帰るもの。この町はたくさんの人を受け入れてたくさんの人を見送ってきているんだろうな。
だから私みたいな若い女性がひとりで訪れたとしても悪目立ちはしないだろう。
場所によっては女のひとり旅って警戒されるっていうからな……
自殺とか駆け落ちとかあるらしいし……
そんな考えが頭をよぎり、私は首を横に振ってその考えを打ち消そうとする。
私はそういう町のあれこれから逃げてきたのよ。
せっかくもらった慰謝料を使って、私はここで温泉入って本読んで過ごすんだからね。
どこかの貴族の領地らしいけれど私は詳しく知らない。
山地にあるから夏場には避暑地として利用する人が多いし、湯治場としても利用されているから長期滞在向けの宿もある。
私は汽車を下り目の前に広がる山を見つめる。
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予定より少し早いけれど私はこの山で一カ月の休養をとろうと宿を押さえた。
荷物のトランクを引きずり駅を出ると、迎えの馬車が来ていた。
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「重かったでしょう。荷物、積みますよ」
そして私の方に手を差し出してきた。
「あぁ、お願いいたします」
フランコさんに私は大きなトランクを預ける。するとフランコさんは馬車の客車のドアを開けて荷物をよっこらしょ、と積み込む。そして振り返るとにこにこと笑い、私に手を差し出した。
「ではお嬢様、参りますのでお手をどうぞ」
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私は礼を言い、彼の手に私の手を添えた。
二頭立ての馬車は、ゆっくりと通りをゆく。
駅の前には私と同じような旅行者らしき人たちの姿があった。着いたもの、帰るもの。この町はたくさんの人を受け入れてたくさんの人を見送ってきているんだろうな。
だから私みたいな若い女性がひとりで訪れたとしても悪目立ちはしないだろう。
場所によっては女のひとり旅って警戒されるっていうからな……
自殺とか駆け落ちとかあるらしいし……
そんな考えが頭をよぎり、私は首を横に振ってその考えを打ち消そうとする。
私はそういう町のあれこれから逃げてきたのよ。
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