捨てられた者同士、婚約するのはありですか?

あさじなぎ@小説&漫画配信

文字の大きさ
上 下
6 / 28

6 どうしよう

しおりを挟む
「アルフォンソは、この辺りでは珍しい見た目をしていますでしょう? ご家族が全員金髪なのに、彼だけが黒髪で褐色の肌で。昔からいろんな人にいろんなことを言われたみたいなの。不倫で生まれたとか、拾われた子だとか」

 人々は無責任な噂を口にしてそれを広めていく。
 それが娯楽の一部だし仕方ない面があるのはわかる。私だって色んな噂を耳にしたし、聞いた話を誰かに喋っていたもの。
 私、もうそんな噂流すのやめよう。そしてしばらくパーティーには行かないで旅に出ようそうしよう。
 暇だと色んなこと考えてしまうから、お仕事探そうかな……
 最近は女性の社会進出が進んでいて、働く女性は増えている。
 公共施設は特に多いし、結婚や出産を機に辞める人も多いから、定期的に募集、出るのよねぇ。
 まず温泉地で一ヶ月休むとして。
 その手配もしなくちゃな……

「ほんと、どうしようもない噂を流す人、多いわね」

 呆れつつ言うと、クリスティは苦笑する。

「そうねぇ。昨日のパーティーも、貴方やアルフォンソのことを話す方が多かったみたいだし。私も興味津々、といった様子の人たちに聞かれたわ。何があったのか詳しく聞いてないかって」

 あー、そうなるのね。
 人の不幸は楽しいものね。

「確かに、私も色々と声を掛けられたわ。『大変でしたわね』なんて、心にないことをたくさん言われたもの」

 そう私が言うと、クリスティは頷く。

「そうねぇ。仕方ない面があることはわかっているんだけど、私が何も話さないと察するやいなや、話しかけにこなくなったのよ。わかりやすいわね」

 クリスティはさりげなく毒を吐く。そういうところ、好きなのよね。
 そもそもクリスティにも私は詳しい話をしていないし、彼女も聞いてこない。
 さすがに結婚式に呼ぶ話をしていたから報告しないわけにはいかないし、それ以上に怒りを爆発させたくて、婚約破棄された話はしたけど。
 まさかダニエルの結婚相手がクリスティの従兄の婚約者だったなんて……世間は狭いわね。

「私、しばらく温泉地でゆっくりして、仕事でも探すわ。パーティーにでても奇異の目で見られて居心地よくないし」

「それもいいわね。どうせ次の犠牲者が現れて、貴方達の話はすぐ風化するわよ」

「犠牲者って」

 私が苦笑して言うと、クリスティはにこにこ笑って言った。

「だってそうじゃないの。日々どこかで誰かが不幸になって、その話が一気に広まって、そこに新しい犠牲者が現れてどんどん新しい噂が生まれていくんだもの」

 それは確かにそうね。そしてその犠牲者を皆常に探し求めている。
 そう思うとほんと嫌になってくる。

「そうね。だから私、しばらく王都を離れて大人しくするわね」

「ゆっくりしてきて、パティ。不幸なことがあれば必ず幸せなことが起こるから」

 そしてクリスティは手を組んで祈って見せた。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

愛人をつくればと夫に言われたので。

まめまめ
恋愛
 "氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。  初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。  仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。  傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。 「君も愛人をつくればいい。」  …ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!  あなたのことなんてちっとも愛しておりません!  横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。 ※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)

夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。 ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。  って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!  せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。  新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。  なんだかお兄様の様子がおかしい……? ※小説になろうさまでも掲載しています ※以前連載していたやつの長編版です

人生の全てを捨てた王太子妃

八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。 傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。 だけど本当は・・・ 受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。 ※※※幸せな話とは言い難いです※※※ タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。 ※本編六話+番外編六話の全十二話。 ※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜

梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーロットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。 そんなシャーロットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。 実はシャーロットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーロットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーロットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。 悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。 しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーロットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーロットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーロットは図々しく居座る計画を立てる。 そんなある日、シャーロットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。

処理中です...