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4 アルフォンソ様
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アルフォンソ様がなんで私の所に来るのよ。あーもうどうしよう。私、何にも思い出せていないのに……とりあえず様子をうかがうか……
一階にある応接室の扉の前に立ち、私は意を決して扉を叩いて中に入る。
するとそこには、黒のズボンに黒の半そで、それに深緑色のジレを着たアルフォンソ様がソファーに腰かけてお茶を飲んでいた。
彼は顔を上げ、私をみてニコっと笑う。
「お待たせいたしました、アルフォンソ様」
軽く頭を下げて、私はソファーの前に立つ。
「いいえ、突然訪問したのはこちらですから」
と言い、彼はお茶の入ったカップを置いた。
そこに侍女が私のお茶とお菓子を持って来てくれた。
お菓子はクッキーとチョコレートだ。甘い匂いが漂う。
湯気を上げるティーカップを手にして、私はアルフォンソ様におそるおそる言った。
「き、昨日はお世話になりました」
正直覚えていないけれど、たぶん何かしらの世話になった可能性を否定できないから頭を下げて見る。
すると彼は微笑んで首を横に振る。
「こちらこそありがとうございました。おかげでふっきれましたし」
私何かしたかな……なんか色々言ったような記憶はあるけど……
「す、すみません、私、昨日の事を余り覚えていなくて……」
「そうなんですか?」
驚いた顔になるアルフォンソ様。
「あぁ、だから目が覚めたら……」
なんて呟くものだから、私は顔が熱くなるのを感じた。
「す、すみません、だからあの……昨日のことは忘れてください。私は何にも思い出せないし……それに初めて会った相手と……」
そして私は気持ちを落ち着かせようとお茶を飲む。
その時空気がピン、と張りつめたような気がした。
え、何? アルフォンソ様の方を見ると、とてもまじめな顔でこちらを見つめている。
何これ怖いんだけど……え? 私、まずいこと言った? どうしようこれ……でも何にも覚えていないし……
彼はずい、と身体を乗り出して私に顔を近づけてくる。
「貴方は、俺があのようなことをして何の責任も負わないような相手だと思ってらっしゃるんですか?」
そ、そうじゃない。そうじゃないけどでも、覚えていないのが申し訳ないしでも……
「そ、そういうわけではないのですが……え、あの、私本当に何も覚えていなくて……だからあの……まさか本当に……?」
アルフォンソ様の言った、あのようなことってつまりその……そういうことよね? やだ、私、初めてなのに何にも覚えてないとか最低じゃないの。
あーもうどうしよう……
頭の中でぐるぐると考えるけれど何にも出てこない。
あー……私のバカ。嘘でしょ、だって、初対面の相手と寝るなんて最低でしょ?
「パトリシア嬢」
低く響く声で名前を呼ばれ、身体がビクン、となる。
アルフォンソ様はとても優しい、怖くなるほど優しい微笑を浮かべて言った。
「貴方も俺も、今婚約者はいませんでしょう?」
「え、あ、は、はい。確かにそうですけど……」
「ならば俺と貴方の間に何があっても問題はないでしょう?」
そ、それもそうですけど。怖い、なんだかアルフォンソ様の目に闇を感じるんですけど……?
心の中で怯えていると彼は言葉を続けた。
「俺、今週の頭から二週間の休みをいただいているんです。騎士団にも噂は広まっていて、気を使った騎士団長の命令で。貴方も時間、たくさんありますよね?」
「は、はい……」
「じゃあ俺と付き合ってください」
つ、付き合うってどういう意味?
訳が分からないけれど、アルフォンソ様の圧に負けた私は頷くしかできなかった。
一階にある応接室の扉の前に立ち、私は意を決して扉を叩いて中に入る。
するとそこには、黒のズボンに黒の半そで、それに深緑色のジレを着たアルフォンソ様がソファーに腰かけてお茶を飲んでいた。
彼は顔を上げ、私をみてニコっと笑う。
「お待たせいたしました、アルフォンソ様」
軽く頭を下げて、私はソファーの前に立つ。
「いいえ、突然訪問したのはこちらですから」
と言い、彼はお茶の入ったカップを置いた。
そこに侍女が私のお茶とお菓子を持って来てくれた。
お菓子はクッキーとチョコレートだ。甘い匂いが漂う。
湯気を上げるティーカップを手にして、私はアルフォンソ様におそるおそる言った。
「き、昨日はお世話になりました」
正直覚えていないけれど、たぶん何かしらの世話になった可能性を否定できないから頭を下げて見る。
すると彼は微笑んで首を横に振る。
「こちらこそありがとうございました。おかげでふっきれましたし」
私何かしたかな……なんか色々言ったような記憶はあるけど……
「す、すみません、私、昨日の事を余り覚えていなくて……」
「そうなんですか?」
驚いた顔になるアルフォンソ様。
「あぁ、だから目が覚めたら……」
なんて呟くものだから、私は顔が熱くなるのを感じた。
「す、すみません、だからあの……昨日のことは忘れてください。私は何にも思い出せないし……それに初めて会った相手と……」
そして私は気持ちを落ち着かせようとお茶を飲む。
その時空気がピン、と張りつめたような気がした。
え、何? アルフォンソ様の方を見ると、とてもまじめな顔でこちらを見つめている。
何これ怖いんだけど……え? 私、まずいこと言った? どうしようこれ……でも何にも覚えていないし……
彼はずい、と身体を乗り出して私に顔を近づけてくる。
「貴方は、俺があのようなことをして何の責任も負わないような相手だと思ってらっしゃるんですか?」
そ、そうじゃない。そうじゃないけどでも、覚えていないのが申し訳ないしでも……
「そ、そういうわけではないのですが……え、あの、私本当に何も覚えていなくて……だからあの……まさか本当に……?」
アルフォンソ様の言った、あのようなことってつまりその……そういうことよね? やだ、私、初めてなのに何にも覚えてないとか最低じゃないの。
あーもうどうしよう……
頭の中でぐるぐると考えるけれど何にも出てこない。
あー……私のバカ。嘘でしょ、だって、初対面の相手と寝るなんて最低でしょ?
「パトリシア嬢」
低く響く声で名前を呼ばれ、身体がビクン、となる。
アルフォンソ様はとても優しい、怖くなるほど優しい微笑を浮かべて言った。
「貴方も俺も、今婚約者はいませんでしょう?」
「え、あ、は、はい。確かにそうですけど……」
「ならば俺と貴方の間に何があっても問題はないでしょう?」
そ、それもそうですけど。怖い、なんだかアルフォンソ様の目に闇を感じるんですけど……?
心の中で怯えていると彼は言葉を続けた。
「俺、今週の頭から二週間の休みをいただいているんです。騎士団にも噂は広まっていて、気を使った騎士団長の命令で。貴方も時間、たくさんありますよね?」
「は、はい……」
「じゃあ俺と付き合ってください」
つ、付き合うってどういう意味?
訳が分からないけれど、アルフォンソ様の圧に負けた私は頷くしかできなかった。
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