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38愛して愛されて★

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 風呂場に響く水音はシャワーの音ではなく、俺の中を奏さんのペニスが抜き差しされる音だ。

「ひ、あ……あぁ……」

 湯船のへりに手をつく俺の中を、後ろから奏さんが貫く。
 奏さんが動くたびに俺は声を上げ、前立腺を突かれて甘い声を漏らした。
 玄関で優しくできない、と言われたように奏さんは生で俺を貫き、すでに一度達している。けれど中には出さず俺の尻に精液をかけて、そのまま二回目に突入していた。

「背中までかかっちゃった」

 笑いながら言い、奏さんは俺の腰を掴み激しく動く。
 
「奏、さん……中、いぃ……あぁ!」

「ねえ緋彩、ここにいるなら服とか必要なもの買いに行こうか。緋彩用のタオルや食器も買わないとね」

「うあぁ! 奥……奥……」

 奥をこじ開けられる感覚に俺の視界が歪み、自然と腰が揺れる。
 気持ちいい。このまま俺、奏さんと繋がっていたい。

「奏、さん……俺、一緒にいて……あぅ……!」

「緋彩は僕とずっと一緒にいるんだよ。だって君は僕の大切な番だから」

「あ……」

 繋がったまま奏さんは俺の背中に覆いかぶさりそして、俺のうなじをぺろぺろと舐めた。
 そこを舐められるとじん、と甘い痺れが生まれ息が漏れてしまう。

「噛んで……奏さん、そこ、噛んでほしいよぉ……」

 俺が願うと奏さんはうなじにがぶり、と噛み付いた。

「あぅ……」

 痛い、だけど嬉しい。俺はオメガになれないけれど、それでも俺は奏さんに愛されて、愛してもいいんだ。
 奏さんは首から口を離すと耳元で囁くように言った。

「今、すごく中を締め付けてきた。そんなに気持ちいい?」

 普段よりも低く響く声に俺は思わず声を漏らす。
 その声やばい。

「奏さん、声……」

「何、声でも感じてるの? イヤらしいね緋彩は」

「だって……声違う、からあ……!」

「緋彩が愛おしすぎるから。愛してるよ、緋彩」

 そして奏さんは身体を起こすとぎりぎりまでペニスを引き抜き、一気に置くまで貫いた。
 その衝撃で俺は背を反らしびくびくと膝を震えさせる。
 出でないのにイっちゃった……
 今日のセックスはいつもより激しくて、気持ち良すぎる。

「中、すごいうねって絡みついてくる。もしかして緋彩、出さずにイったの?」

 その問いかけに俺は小さく頷いた。

「だって……気持ち良すぎるから……」

「緋彩が気持ちよく感じるなら僕はとても嬉しいよ。ねえ緋彩、ずっと僕の腕の中にいて?」

「い、いま動いたらだめぇ……」

 そのまま奏さんは二度俺の背中に精液をかけ、風呂を出たあともソファーで抱き合いキスを繰り返した。



 五月九日月曜日。
 ジーパンに半袖のTシャツ、それに紺色のパーカーを着て俺は奏さんの車に乗り大学へと向かう。
 今日着ているTシャツとパーカーは昨日奏さんが俺のために選んだものだ。
 他にも服や食器など、生活に必要なものを購入した。
 奏さんと俺では講義の時間が合わなかったりするが、行きも帰りも奏さんが送っていくと言って聞かなかった。

「緋彩をひとりにしたくないもの。それにまだ不安でしょ? 弟君のこと」

 それは確かにそうだった。
 たぶん蒼也は大丈夫だろうけれど……でも、俺の中の不安は消えてはいない。
 すぐには消えないだろう。
 長年の恐怖はそう簡単になくなりはしない。
 俺は手袋のない手を見つめる。
 今日は初めて、手袋なしで大学に行く。
 大丈夫。
 俺は力をコントロールできるんだから。

 大学に着き、奏さんと分かれて講義室に行く。中央の隅に腰掛けていると、背中を叩かれた。

「おはよ! 羽入」

「え、あ……おはよう、水瀬」

 彼はにこにこ笑い、俺の隣に腰掛けた。

「あれ? お前手袋するのやめたの」

 言いながら彼はテーブルの上に置かれた俺の手を見つめる。

「あ……うん」

 手袋のことに触れられる覚悟はしていたけれど、それでもドキドキしながら俺は水瀬の次の言葉を待った。

「へぇ。お前の手、綺麗だな」
 
 奏さんと同じことを言われるとは思わなかった。
 そう面と向かって言われると恥ずかしく、俺は思わず俯く。

「べ、べつに綺麗なんかじゃないし」

「そう? なんかモデルの手みたいだと思うけど」

「え、あ……ありがとう」

 なんて言っていいのかまでシミュレーションしてなかったため、小さな声で礼を言うのが精一杯だった。

「ところでさ、来月なんだけど美術館行かね?」

 話題が転換し、内心ホッとして俺は顔を上げた。

「今度は何」

 この間水瀬や他の学生と一緒にアート展に行った。正直緊張したが、皆芸術学部の生徒だし作品について語りあったりして楽しかった。
 その時また機会があったら何か見に行こう、ていう話になった。

「映画ポスターとか広告ポスター集めた展示会」

「行く」

 アート展に行き色んな作品に触れることはどの講義の先生にも推奨されている。
 でもたぶん、俺はひとりだったら行けなかったかもしれない。
 そもそも外に出るのも苦手だったから。

「じぁまた予定合わせようぜ」

 と言い、水瀬はバッグから講義に使うものを取り出した。
 
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