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ハタチの誕生日―琳太郎

琥珀色の夢3―最終話

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 ソファー前のテーブルに並ぶのは、四つの味が楽しめるピザにポテトとナゲット、レタスとキャベツ、キュウリなどのサラダ。ローストビーフ。そして二つのグラス。
 琳太郎は、目の前に置かれた青い麻の葉模様のグラスを手に取ってそれをまじまじと見つめた。

「すげー綺麗なグラス。何これ?」

「切子」

「切子? 初めて聞いた」

「和ガラスの事らしい。模様が独特だろ?」

 正直俺も詳しいわけじゃない。
 デパートに行った時色が綺麗だったから、今日の為に買ってきた。
 琳太郎には青。俺には黒を。お互いのイメージに合う色の物を用意した。
 そして酒は琳太郎の希望でスパークリングの日本酒をテーブルに用意してある。
 ケーキも帰り掛けに取ってきたので冷蔵庫に入っているが、それまで食べられないかもしれない。
 琳太郎はグラスをテーブルに置くと、うきうき顔で酒瓶を手に取った。

「楽しみだなー、お酒飲むの。俺、まじで飲んだことないんだよな」

「へえ。俺は子供の頃親戚に騙されて日本酒飲まされたことあるな」

 すぐ吐き出したけれど、しばらく水を飲むのが怖かったような気がする。

「マジかよ。ひでえなそれ」

「親戚はうちの親にかなり怒られたらしいけど」

 あとは高校生の時に興味本位で飲んだことがあるくらいだろうか。
 飲むのはそれ以来だ。

「っていうか、お前の誕生日なんだから俺がつぐっての」

 言いながら俺は酒瓶を琳太郎から奪い取りふたを開ける。

「いやだって、楽しみ過ぎて」

 言いながら琳太郎はグラスを持つ。そこに俺は酒を注いだ。
 一気飲みすることはないと思うが、グラスの半分ほどでつぐのをやめる。そして俺のグラスにも同じ量を注ぎそして、瓶をテーブルに置きグラスを手に持った。
 
「琳太郎、誕生日おめでとう」

「ありがとう、千早」

 そして、グラスが軽くぶつかり音が響く。
 琳太郎はにこにこしながらグラスに口をつけ、それを一気に傾けた。
 まあアルコール度数は五パーセントとあったし大した量じゃないから大丈夫だろう。
 琳太郎はグラスを握りしめたまま、

「おいしー!」

 と言い、瓶に手を伸ばした。
 これは……ほどほどに止めないと危険かもしれない。
 悪酔いしなければいいけれど。そう思いつつ俺はグラスに口をつけひと口酒を流し込んだ。
 確かに甘いし飲みやすい。
 けれどそれだけだ。
 一方琳太郎は酒をグラスいっぱいにつぎ、それを一気に半分ほど飲んでしまう。
 
「なあ千早。他にも酒あるんだよな?」

「あぁ、でも出さねえぞ。急性アルコール中毒になっても困るし、二日酔いになっても困るから、週末まで我慢」

「えー! まじかよ」

 と言い、琳太郎はむくれてしまう。
 
「それよりほら、料理冷めるから食べよう。それでまだ飲めそうならもう一本なにか開ければいいだろ」

「やったー。何飲むか楽しみだなー」

 普段あまり聞くことのないテンション高めな声で言い、琳太郎はピザを手に取った。

                *

 結局、二本目に白ワインを開けた。
 先ほどの日本酒スパークリングは殆ど琳太郎が飲んだが、その表情に変化はない。
 テンションは高いけれど。

「あはは、千早、ちょっと顔紅い」

 言いながら琳太郎は俺に顔を近づけてくる。
 これは……酔ってるのだろうか。

「あぁ、確かに顔が熱いけど」

「え、まじで?」

 と言い、琳太郎は俺の頬を両手で挟みこむ。

「あーほんとだ。温かいな、千早」

 そして琳太郎はそのまま俺の首に腕を絡めてきた。
 ……酔ってるな、これは確実に。

「千早って温かい」

「お前酔ってるだろ」

「えー? どうなんだろ? 楽しい気持ちではあるけど、酔ってるかはよくわかんないなあ」

 と言いながら、腕に力を込めてくる。
 酔ってない、と否定されるかと思ったが、否定されなかった。
 と言う事は酔ってない? どっちともとれるなこれ。

「ほら琳太郎、まだ飲みたいんだろ?」

 言いながら俺はテーブルに視線を向ける。
 料理もまだ半分ほど残っているし、ワインも開けたばかりでだいぶ残っている。

「あ、そうか。っていうかお前が俺の為に用意してくれたお酒、美味しいから色々飲みたくなるんだよなー」

 琳太郎はそう告げると俺から離れ、グラスを手にして酒を流し込む。
 ワインはさっきの酒よりもアルコール度数が高い。
 なので俺は酒の味が強く感じそんなに量が飲めないと判断したが……琳太郎の飲むペースは早い。

「お前、もっとゆっくり飲めよ」

「わかってるけどさー。美味しくって飲みたくなるんだもん」

 そう笑顔で言われると、早く抱き倒したくなる。
 でもまだ早い。
 俺にとって辛い時間を過ごし、料理を食べつくし残っているのがワインだけになった頃。
 琳太郎は自分から俺に抱き着いて言った。

「ありがとー、千早。お酒っておいしいんだな」

「おいしいなら良かったよ」

 言いながら俺は琳太郎の背中に手を回す。さすがに俺はもう限界だ。
 
「満足したか、琳太郎」

「うん、けっこう満足。だからさ、千早」

 熱を帯びた目で俺を見つめ、琳太郎は言う。

「俺今、千早が欲しくてたまんないい」

 それを聞いた俺の中で、何かが弾ける音が聞こえた。

               *

 風呂場でも琳太郎はやたらと甘えてきたが、それはベッドの上でも変わらなかった。琳太郎は自分から俺に口づけ、口を開き俺の舌を受け入れる。

「ん……あ……千早、好き」

「あぁ、俺も好きだよ琳」

 そう答えて俺は琳太郎の身体を撫でまわして乳首を指先で弾く。するとすぐに甘い声を漏らして腰を擦り付けてくる。
 そのまま中に挿れたいし、中に出したい。だけど今日は月曜日だ。
 明日も大学なのでそれは週末まで我慢しなければ。

「千早、欲しいよ中」

 そんな切ない声で言われたら、せっかくの俺の我慢も水の泡だ。
 俺は愛撫もそこそこに琳太郎の足を抱え上げ、ローションを指に絡めて後孔に触れた。そこは物欲しそうにひくつき、俺の指を二本、一気に飲みこんでいく。

「あ……」

「指で馴らさなくてもすぐ入りそうだな」

「うん、だから……千早に中、挿れてほしいよぉ」

 酔ってるから? それとも別の理由なのか。その判別はつかないが自分から欲しがる琳太郎は貴重なのでこれはこれで可愛らしい。
 中のしこりを指先で叩くと琳太郎は腰を浮かせ、切ない声で啼く。

「あン……そこ叩かれたらイッちゃうからぁ……」

「我慢しろよ琳太郎。もしイッたらお仕置きな」

「あ……」

 お仕置きなんてでまかせだが、俺の指をきゅうきゅうと締め付けてくるのは期待しての事だろうか。
 そういう趣味はないが、ちょっとした拘束はありかも知れない。そう考えながら俺は指をゆっくりと引き抜き、硬く勃ちあがったペニスの先端を宛がい、一気に中へと入っていった。

「あぁ!」

 挿れただけで琳太郎の中は収縮し、彼は腰を浮かせる。
 俺はベッドに手をつき琳太郎の顔を見つめて言った。

「愛してるぜ、琳」

「う、あ……ち、はや……中、イイ……あぁ!」

 俺の動きに合わせて琳太郎が声を上げる。
 これはやばい。すぐに持っていかれる。けれど俺としては長く琳太郎を味わっていたいしそれに、こんな愛らしい姿をもっと見ていたい。

「ほら、まだイくなって言ってるだろ? まだ奥、突いてないぜ」

「だ、てぇ……気持ちいい、からぁ……」

 言いながら琳太郎は俺にむけて腕を伸ばしてくる。
 俺は動きを止めて琳太郎に顔を近づけると彼は俺の首に腕を絡めて言った。

「お前と繋がってるの、嬉しい、から……あ……」

 今日はやたらと甘いことを言ってくるのは酔ってるからなのか? それとも違う理由?
 俺は自分の顔が紅くなるのを感じながら、激しく腰を揺らした。

「う、あぁ! ち、はや、激しい……奥、当たって……」

「今日のお前が……可愛すぎるから」

「ん、なのいつもとかわんな……あぁ!」

 ビクビクと琳太郎は身体を震えさせ、激しく息を繰り返す。どうやら出さずにイッたらしいがそんなことを気に掛ける余裕、俺にはなかった。

「だめ、イッてる、イッてるからぁ……」

 鼻にかかる声で言い、俺の首に絡まる琳太郎の腕に力が入る。
 正直動きにくいが、しがみ付いてくる琳太郎の腕を振り払うのももったいなく思い俺はそのまま腰を動かし続けた。

「やば……またキてる、からぁ……」

「あぁ、俺も出る」

 短く告げて俺は琳太郎の中に迸りを放った。
 生で出すつもりなどなかったが耐えられなかったことに若干反省しつつ、俺はぼんやりとする琳太郎の顔を見つめた。

「大丈夫か、琳太郎」

「あ、うん」

「ごめん、中に出しちゃった」

 苦笑しつつ俺は琳太郎の頬を撫でる。
 すると琳太郎は恥ずかしげに目を反らし、

「だって風呂入るだろ。だから大丈夫……一回ならたぶん」

 と言った。

「でも明日大学あるし、体力もたないからこれ以上は無理」

 そう言いながらも琳太郎は俺から腕を離してはくれなかった。
 これはどうしようか。このままだと俺はもう一度したくなってしまう。

「琳太郎」

「何」

「風呂入ったらケーキ食べようか」

 そう俺が言うと、琳太郎は目を輝かせて頷いた。 
    
 
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