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おまけ小話

ハタチの誕生日4 最終話

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 俺が動くたびに、琳太郎は声を上げて身体を揺らす。

「あぁ……だめ、変になるからぁ!」

「変になれよ、琳太郎。俺の事だけ、考えていればいいんだよ」

「あぁ!」

 琳太郎の腰を掴み奥へと押し入ると、彼は背を反らし大きな口を開けて達する。
 もう、何回、琳太郎はイっただろうか。
 俺の腹も琳太郎の腹も精液でぐちゃぐちゃだ。
 一方で俺は、まだ一度しか出していない。
 抜かずにそのまま二回目に持ち込み今に至る。
 口の端から唾液を流しながら喘ぐ琳太郎の左手を手にし、その小指に口づける。
 そこにはめられているのは、俺が贈った指輪。
 琳太郎も俺も、それを外すことなくつけたままでいる。

「ち、はやぁ……」

 琳太郎が、うっとりとした目で俺を見つめる。
 運命の番に拒絶され、ならば俺自身で運命を掴みとろうと足掻いた結果掴んだ俺の大切な番。
 アルファである俺と、ベータである琳太郎。
 その関係はとても危うく、不確かだ。
 アルファとオメガであれば、運命と言う名の鎖で縛りつけることができるけれど琳太郎は違う。
 彼に運命の鎖など通じないし、意味をなさない。
 それでも……精神を病んだ俺を受け入れ突き放さなかった琳太郎を俺は選んだ。
 琳太郎は俺が選び、俺が掴んだ運命だ。
 絶対に離しなしないし、誰にも渡しはしない。
 だから……

「琳太郎」

「ん……あ……」

「今日からお前、しばらくここに住むんだ。それかが俺の望むプレゼントだ」

 言いながら俺は琳太郎の手を離し、ゆっくりと腰を押し進めた。奥は熱く、きゅうっと俺のペニスを締め付けてくる。

「え? あ、あ……」

 琳太郎の戸惑いの表情は快楽に変わり、すぐに喘ぎ声を漏らし始める。
 俺は腰を揺らしながら言葉を続けた。

「荷物なら心配しなくて大丈夫だよ。今日、お前の母親に頼んで家から持ってきたから」

「ふ、え? ……お、奥、だめぇ!」

「着替えも、教科書も全部、持って来たぜ?」

 今日、琳太郎がバイトに行った時間に合わせて俺は彼の母親に約束を取りつけていた。
 琳太郎の着替えと、教材の回収。
 琳太郎とは高校時代からの付き合いであるし、家の固定電話の番号を調べるのはたやすかった。
 母親に頼み家の中に入れてもらい、必要そうなものを全部回収してきた。
 だから……しばらく家に帰らなくても、琳太郎はここで暮らせる。

「ち、はや……う、あ……」

「一緒に暮らすのは無理でも、泊まるのなら問題ないよなあ、琳太郎?」

「うああ!」

 前立腺を重点的に責めると、琳太郎は唾液を流しながら喘ぎ、腰を揺らす。

「そこ……イィ、だめ、また、イっちゃう、からぁ!」

「ちゃんと勉強する時間はやるから、心配するなよ? 俺も課題があるし」

「う、あ……」

 俺の言葉を、琳太郎はどれほど聞いているだろうか?
 もしかしたらなにひとつ、耳に届いていないかもしれない。
 それでもかまわない。
 試験が終わるまでの二週間少々、俺は、琳太郎を家に帰すつもりなど、ひとかけらもないから。
 薄暗い室内で、琳太郎につけた紅いルビーのピアスが妖しく光る。
 琳太郎が身に着ける物を全て俺で染められたら……考えるだけで笑みがこぼれてしまう。
 指輪。ピアス。次は何だろうか。
 ここに住まわせる間、服も全部俺が用意しようと思っていた。
 けれどきっと、琳太郎はそれを受け入れはしないだろう。
 琳太郎にとって、与えられるのは当たり前じゃないから。
 俺としては、愛情だけではなく身に着ける物も全て与えたいのに。
 オメガであれば当たり前のように受け入れるであろうことを、琳太郎は受け入れない。
 俺は琳太郎の身体に覆いかぶさり、ぼんやりと俺を見つめる彼に口づけ目を合わせて言った。

「愛してる、琳太郎。ずっと、お前は俺の物だ」

「ち、は……や……」

 琳太郎は俺の名前を呼びながら首に腕を絡め、小さく呟く。

「愛してる、から……どっかいったら、やだぁ……」

 甘えるような声で言い、腕に力がこもる。
 俺が消えるなどあり得るだろうか? そんなのあるわけがない。
 俺は琳太郎の顔を両手で挟み、微笑みかける。

「俺がいなくなるわけないだろ?」

「ち、はや……」

 うっとりと俺の名前を呼ぶと、琳太郎は自分から顔を寄せて唇を重ねた。
 期間限定であるとはいえ、一緒に住めると思うと心が躍る。
 問題は、俺が琳太郎を抱くのを我慢できるかどうか、だろうか?
 物理的に離れていたら、抱くなどできないけれど今回は違う。
 二週間以上、俺は琳太郎と暮らす。
 きっと我慢なんてできないだろう。
 俺が単位を落とすなどあり得るわけがないが……琳太郎はどうだろうか。
 いや、俺の番である以上、単位を落とさせるわけにはいかない。
 これを機に、俺の家に住むよう誘導できたらいいけれど。

「ん……琳太郎、お前の家は、ここだ」

 そう呟き俺は、身体を重ねたまま腰を揺らし始めた。

「ひ、あ……あぁ……ここ、家……あぁ!」

 琳太郎は俺に腕だけではなく足まで絡め、しがみ付きうわ言のように繰り返す。

「好き……千早……ずっと、一緒……」

「あぁ。ずっと、お前は……俺の物だ」

「あぁ……」

 琳太郎は嬉しそうに吐息を漏らし、俺を見つめ返した。

「千早……あ……」

 何かを思い出したかのように琳太郎は目を見開くと、何かを探すかのように視線を巡らせた。

「今……時間……」

 掠れた声で呟き、琳太郎は首を動かす。
 俺は、ベッドボードの棚に置かれている時計に視線をやり、時刻を確認した。
 そのデジタル時計は、二十三時五十六分を示している。
 あと四分で、俺の誕生日が来るらしい。
 そう思うと妙な気分だった。
 二十歳になるのか。
 このまま琳太郎と繋がったまま誕生日を迎えられる。俺にとってそれは一番幸せなことで、一番のプレゼントだ。
 琳太郎は不満なんだろうけれど、俺が欲しいのは琳太郎と過ごす時間だから。
 今の時刻を伝えると、琳太郎は目を見開き戸惑いの表情を見せた。

「あ、もうすぐ時間……あン、千早、動かないでぇ!」

 俺はそんな琳太郎の願いを聞き入れる気などなく、腰を揺らし琳太郎の最奥を貫く。

「ひ、あぁ!」

 動くたびに俺が出した精液が隙間からあふれ出ていく。
 もう一度……中に出したら琳太郎は怒るだろうか?
 そんな思いがよぎるけれど、沸き上る快楽に逆らうことはできず、俺は短く声を上げ、琳太郎の奥に精液を放った。

「う、あ……」

 恍惚とした顔をして琳太郎は俺を見つめ、

「中、あついぃ……」

 と呻く。
 できればこのまま繋がっていたい。
 琳太郎の中は収縮し、俺のペニスを締め付けてくる。
 琳太郎はぎゅっと、腕に力を込めて俺の耳元で囁いた。

「千早……誕生日、おめでとう」

 言われて俺は時計を見上げた。
 時刻は零時。日付は二十三日になっている。
 二十歳になった。
 だからといって特別な意味なんて俺にはないけれど……何よりも琳太郎と共にいるのが一番意味があるだろう。
 琳太郎の誕生日は十二月だ。
 その日は何をしよう?
 せっかく二十歳になるのだから、ホテルでも取ろうか?
 今度、どうしたいか希望を聞かなければ。
 俺は、琳太郎の頭を抱きかかえ、

「一緒にいてくれてありがとう」

 と囁き、こめかみに口づけた。
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