【本編完結】偽物の番

あさじなぎ@小説&漫画配信

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おまけ小話

拍手小話まとめ―千早side

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   拍手SS フェラ
 
 琳太郎が、ベッドに座る俺の股の間に顔を埋め、懸命にペニスを舐めている。
 時おり、扇情的な目をして俺の様子を伺うのは何とも艶めかしい。
 フェラなんてほとんどさせたことはないので、拙いがそれが余計、俺を煽り立てていく。

「琳……」

 吐息を漏らしながら俺は、琳太郎の頭を撫でる。
 先端から溢れ出ている先走りを吸い上げ、裏すじに舌を這わせる。
 やばい、このままだと琳太郎の口の中に出してしまう。
 そうしたい欲求と、中に挿れたい欲求とがぶつかり合う。
 飲んで? と言ったら琳太郎は飲むだろうか。
 それとも……
 琳太郎の顔が、精液まみれになるのを想像し、俺は更に自分を高めていく。
 ――それも、悪くない。
 俺は息を激しく繰り返しそして、

「もう、イく」

 と告げて、慌てて口を離そうとする琳太郎の頭を掴みそのまま口の中で達した。

「――――っ!」

 驚いたように目を見開き、琳太郎は俺の顔を見上げる。
 ごく……と、喉が動くのがわかったが、飲みきれなかったであろう精液が、口の端から漏れ出ていく。
 その様子を確認してから俺は、琳太郎の口からペニスを引き抜いた。

「……げほ……」

 琳太郎は苦しげな顔をして俺を見上げ、口から漏れた精液を手の甲で拭っている。

「お前、頭を押さえるなよ! 苦しかったじゃねぇか!」

 俺の足の間に座ったまま、琳太郎は抗議してくる。

「押さえなかったら吐き出してたろ? そしたら今ごろ顔中精液まみれになってたぞ」

 まあ、俺はそれでも構わないが、琳太郎は口を閉じ黙り込んでしまう。
 正直、琳太郎の顔にかけたい衝動はあるが……やるなら風呂場でだろう。

「顔にかけられたら汚れるじゃねぇか……」

 などと呟く琳太郎の顎を掴み、俺は顔を近づけて言った。

「でも、お前がほしいのは、中に、だろう? 俺はまだ、満足してない」

 すると琳太郎は目を潤ませそして、ごくり、と喉を鳴らした。


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 拍手SS 花火

 花火が夜空に花開く。

「うわあ、すげー」

 琳太郎は、ベランダから目を輝かせ花火を見上げた。
 ここは俺のマンション。
 夏祭りの夜には、花火大会が開かれる。
 そのため、早くバイトをあがった琳太郎は、十九時過ぎに俺の部屋に来た。

「初めて見るから超感動なんだけど」

 この町の花火大会は有名だが、人出も多くなる。
 電車は激混みするし、人混みが好きではないため俺も花火を見に来たことはなかった。
 部屋から見えるのでなかったら、見たいとも思わなかっただろう。
 ――琳太郎にせがまれたら悩むかもしれない。

「うわあ、連続であがってる、すげー」

 花火があがるたびに、すげーすげー、と繰り返して目を輝かせる。
 まるで、子供のように。

「最後のやつ、すっごいんだよな。楽しみだなー」

 ラストの花火はかなり派手で綺麗らしい。
 でもそれはあと一時間以上先だ。
 花火はハートや笑顔のマークなどのものへと変化していく。

「すげーあれ」

 俺からするの花火よりも琳太郎の反応のほうが面白い。

「琳太郎」

 俺は彼の腰に腕を回し、その身体を引き寄せる。

「なんだよ急に」

 普段ならもっと嫌そうにされるのに、琳太郎は花火から目を離さずにそれだけ言った。
 花火に負けるのは正直複雑な思いがする。
 俺は琳太郎のうなじに顔を寄せ、そこをペロリ、と舐めた。

「くすぐってえよ、もう」

 笑いながら言われるが、一切の抵抗をみせない。
 琳太郎の心は今、花火に囚われているらしい。

「何も立って見てることないだろう。イス、用意してあるんだし」

 ここのベランダは広いため、キャンプ用のイスを置くことができる。
 今日のために用意したのだが、琳太郎は座ろうとしなかった。

「んー、もうちょっとこうしてたい」

 と言い、腰に回した俺の手に自分の手を重ねる。

「これで暑くなければいいのになー」

 そう言いながら、琳太郎は俺の肩に頭を寄せる。
 そこでやっと、こうしてたい、の意味を理解する。
 ――だめだ、このままキスして押し倒したくなる。
 悶々としながら俺は、彼のうなじに口づけた。

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 拍手SS 免許

 免許を取りに行く。九月の始め、二週間かけて。
 という話を琳太郎から聞き、俺は眉をひそめた。

「二週間」

「そう、二週間」

 ソファーに並んで座り、笑顔で告げる琳太郎。
 その笑顔は正直愛らしいが、内容は全くかわいくない。
 俺は肘おきに肘をつき、頬杖ついてため息をつく。

「二週間……」

「そうだよ、二週間。そしたらさー、どっか行こうぜ」

 と言い、琳太郎はスマホで何か調べ始める。
 どうしようか。
 二週間会えない。
 そんなの心理的に耐えられるわけがない。
 ……琳太郎は大丈夫なのか?
 それはそれで複雑な思いがする。

「琳太郎」

「何?」

「じゃあ、そのあとの二週間、大学始まるまでうちに住め」

 そう提案すると、琳太郎は、ばっと顔を上げて俺の方を見て驚きの顔をする。

「何言ってんだよお前!」

「二週間会えない代わりに二週間毎日会いたいって言ってるんだけど?」

「え? あ……え?」

 戸惑いの声を上げた後、琳太郎は顔を紅くして目を泳がせる。

「え? でも二週間……住むってでも……」

「何を悩む必要があるんだよ? お前、家出るか悩んでただろ?」

「そうだけど、今すぐってつもりはないし。親は寂しそうだからなんか今出たら悪い気がするし」

 などと言いだす。
 琳太郎は俺と違い、親との仲は良好だ。
 話を聞いていると、むず痒くなってくる。
 まあ、それが普通なのだろうけれど。

「べつに二週間くらいいいだろう」

「いや、でも、二週間長くね?」

「そうだよ、長いんだよ。その間俺は我慢するんだが?」

 すると、琳太郎は、あっ、という顔をして顔を伏せる。

「二週間は長い……でもそうなると俺、一か月家を開けるって事? え?」

「別に、電車で行ける距離なんだから別にいいだろう」

 と言うと、琳太郎は顔を上げて、俺の方を見て、

「そっか」

 と呟く。そして、笑顔になり、

「なんかさー、ここに住んだら俺、一生外出してもらえねーんじゃねーかって思っちゃってさ」

 と言い、背もたれに身体を預ける。
 ――その発想はなかった。
 
「とりあえず親に言ってみる。あとさ、水族館! 九月の末ならよくない?」

 と言い、琳太郎はスマホに視線を落とし、検索し始めた。
 その様子を見つつ、俺はひとり、悶々としていた。
 家から出さず、琳太郎とふたりきり……
 いいやでも、琳太郎はオメガじゃない。そんなことしたら……
 でも、二週間会えないわけだし、俺が琳太郎を閉じ込めるのは悪いことなのか?

「行くなら泊まりで行くか? 平日ならまだ予約、間に合うんじゃないのか」

 妄想を打ち消そうと、俺はタブレットを手に取り、水族館の近くにあるホテルを調べ始めた。

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   拍手SSチョコレート

「チョコ買ってきた」

 と言い、琳太郎は俺の前に茶色い小さな袋をかざして見せてきた。
 それは、最近駅前のショッピングモールに入ったチョコレート専門店の袋だった。
 量り売りで、好きなチョコレートを選んで購入するスタイルらしい。
 俺は余り甘いものが好きなわけじゃないので行ったことはないが、琳太郎は甘いものが好きなので、以前から行きたいと言っていた。
 琳太郎はソファーに腰かけて、袋の中身を取り出している。
 チョコレートがあるなら俺はコーヒーにしよう。
 そう思い、俺は冷蔵庫からペットボトルのコーヒーを取り出した。

「琳太郎」

「何?」

「飲み物、お茶と、コーヒーとココアと、どれがいい?」

「じゃあココア!」

 案の定と言うか。甘いものに甘いものかと内心笑いながら、俺は琳太郎の為に用意してある純ココアの缶を用意する。
 小さな鍋で少量の牛乳でココアを練り、牛乳を足してといた後、氷をたくさんいれたグラスにそれを注ぎ、それを持ってソファーに向かった。

 琳太郎は、色とりどりの包みのチョコを並べてどれにしようかと悩んでいる。
 赤に、緑、焦げ茶色に青。
 いったいどれが何味なんだろうか。
 試しに茶色の包みのチョコレートを手に取ると、それには、カプチーノ、と書かれている。
 これならそんなに甘くないだろうか。
 赤い包みの物が多いので、きっとそれがスタンダードな味のものなのだろう。
 琳太郎は、赤い包みのチョコレートを手に取り、包みから出した。
 そこから出てきた丸いチョコレートを摘まむと、口の中に放り込んだ。

「ん~、超うまい」

 満足そうに言い、琳太郎は包みを四角に畳む。
 俺もチョコレートを包みからだし、それを口の中にいれた。
 噛むと、中からほろ苦いクリームが流れ出てくる。これなら俺でも食べられる。

「なあ、千早。ここの店、店舗行けばチョコレートドリンクとかあるから、今度行こうぜ」

 声を弾ませて琳太郎は言い、次のチョコレートを手に取る。
 緑色の包みから出てきたのは白いチョコレートで、琳太郎はそれを口の中に入れた。
 抹茶味、と書いてあるみたいだが、琳太郎、抹茶、大丈夫だっただろうか?
 様子を見ていると、口を押え、

「あま! にが!」

 などと言いだす。
 外側の白いチョコレートは甘いが、中のフィリングは苦い、と言う事だろう。
 琳太郎は苦いのが苦手なはずだ。
 コーヒーも砂糖とミルクを入れないと飲めないし、抹茶味のものを飲み食いしているのを見たことがない。
 琳太郎がココアのコップに手を伸ばそうとしているのを見て俺は、彼の肩に手を回してその身体を引き寄せた。

「へ?」

 間抜けな声をだし、琳太郎はきょとん、とした顔をして俺を向く。
 俺は彼の両頬を挟み、そのまま口づけ舌で唇を割った。
 すると俺の舌に、ホワイトチョコレートの甘みと抹茶の苦みが拡がっていく。
 琳太郎の口の中を舐め、そして口を離したあと、俺は苦笑して言った。

「確かに、甘くて苦いな」

 すると、琳太郎は顔を真っ赤にして俺の腕を掴んで顔を寄せた。

「お、お、お、お前、なにすんだよ!」

「何って、キス」

「何で!」

「どんな味なのか気になったから」

「だからってキスするか、普通」

「相手がお前だからな」

 と答え、俺はアイスコーヒーが入ったグラスに手を伸ばした。

「ていうか、口の中のチョコ舐めるか、普通……」

 などと文句を言いながら、琳太郎はグラスを手にしてココアを飲んだ。

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    拍手SS自慰
 
 学祭の準備で帰りが遅くなり家に帰ると、リビングに琳太郎の姿はなかった。

「琳太郎?」

 家で待っている。という連絡はあったのだが。
 いったいどこに行ったのか。
 ここにいないとしたら風呂から音はしなかったし、だとしたら寝室だろうか。
 時刻は二十時過ぎ。
 バッグを片付けた後寝室へと入ると、ベッドの上に寝転がる琳太郎の姿を見つけた。

「う、あ……」

 琳太郎は裸でうつ伏せになり、尻を高く上げて尻穴から玩具を出し入れしている。
 なんとも卑猥な光景だった。
 玩具が動くたび、ぬちゅぬちゅと水音が響き、琳太郎が喘ぐ。

「ち、はや……あぁ!」

 俺の姿を認識しても、琳太郎の手は止まらない。
 ペニスからはだらだらと先走り垂れ、下に敷かれたタオルを濡らしているようだ。

「帰り、待てなかったのか?」

 言いながら俺はベッドに近づき、琳太郎に刺さる玩具に触れる。

「だってぇ……我慢、できなくて」

 切ない声で言い、琳太郎は腰を揺らす。

「これでお前、満足できるのかよ?」

 言いながら俺は、その玩具をぎりぎりまで引き抜き、一気に奥まで差し込んだ。

「うあぁ!」

「先走り、すごいな。どんどん溢れてきてる。お前、こんな玩具じゃイけないだろ?」
 
「う、あ……あ……イ、イ、イきた、い……」

 喘ぎながら言い、琳太郎は切なげに俺を見る。
 俺としては、もう少し乱れさせたいけれど。
 俺は琳太郎から離れ、服を脱いでベッドに乗った。
 俺のペニスはすでに勃ちあがり、天を向いている。

「ほら、琳太郎、欲しいなら舐めろよ、これ」

 そう告げると、琳太郎は顔を上げ、迷うことなく俺のペニスを口に含んだ。
 拙く舌を絡め、首を動かしていく。
 琳太郎は俺の様子を窺うように上目づかいで俺を見て、舌先で鈴口を割り、音を立てて先走りを吸い上げた。
 気持ちよさに、俺は吐息を漏らす。
 このまま口の中に出したくなる衝動を押さえ、俺は自分からも腰を動かした。

「んン……」

 涙目になりながらも琳太郎は口を動かし、俺のペニスに唾液を絡めていく。
 顔にかけたら怒るだろうか。それとも、口の中に出すか。
 悩んでいると、琳太郎は俺のペニスから口を外し、うっとりとした顔をして俺を見上げた。

「もうむりぃ……中、せつねぇよお……」

 頬を上気させ、口の端から唾液を流しながら言われると、俺も我慢できなくなってくる。
 琳太郎は玩具を自分で引き抜くと、尻を掴み、自分から穴を拡げて見せて言った。

「お願い、だからあ」

 こんなことをされたらさすがにもう無理だ。
 たまらず俺は琳太郎の腰を掴むと、一気に腰を埋めた。

「――!」

 琳太郎は天井を仰ぎ、口をパクパクと動かして身体を震わせる。
 どうやら挿れただけでイッたらしい。
 中が収縮し、俺のペニスをきつく締め付けてくる。
 やばいな、これ。
 俺もすぐ持っていかれそうだ。

「まだ始まったばかりだろ? 琳太郎。そんなんじゃあ、もたねえぞ」

「だって、千早の気持ちいい、からぁ!」

 やばい、これは。
 今まで見たことのない姿と、聞いたことのない言葉に俺は煽られ、激しく腰を揺らした。
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