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★番外編01 運命の番 side 千早

運命の番10★

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 琳太郎が、俺の下で喘いでいる。
 泣きながら腰を振り、自分から快楽を貪ろうとしている。
 昨日二回抱いた後、玩具で拡張した為だいぶ中は緩くなっていた。
 けれどまだ、奥までは入らない。
 あとどれくらい時間必要だろう?
 家でもさせなければ。
 琳太郎が自分で玩具を出し入れして、拡張する姿を想像するだけで笑みが漏れてしまう。

「う、あぁ……」

 琳太郎は喘ぎ、涙を浮かべて俺を見ている。
 その涙は悲しみの為なのか、それとも痛みの為なんだろうか?
 ……悲しいわけ、ないよなあ、琳太郎。
 俺がぐい、と奥まで腰を埋めると嬉しそうに声を上げ腰を跳ねさせる。
 なのに琳太郎の涙は止まることはなく、泣き顔を見ていると俺の心に痛みを感じた。

「まだ、全部は無理か」

 言いながら俺は一度腰を引き、一気に奥までぐい、と押し込む。
 それでも琳太郎の後孔は、俺のペニスを全て飲み込めはしなかった。
 やはりベータなんだな、琳太郎は。
 オメガなら、とっくに全て受け入れているだろうに。
 ――琳太郎は、ベータだ。オメガのように、なりはしないのに。

「ひ、あ……」

 琳太郎が呻き、頬を染めて俺を見つめる。

「あぁ……気持ちいいな、お前の中。絡みついて離さない」

「う、あ、あ……」

「慣れればもっと、いい夢みられるぜ?」

 そう笑いかけ、俺は徐々に腰の動きを早めていった。
 琳太郎の涙はいつしかとまり、喘ぎ声を上げ続ける。
 自分から腰を揺らし、俺の名を呼ぶ姿は愛らしい。

「ち、はや……もう、だめぇ……」

「あぁ、イけよ。ちゃんと、俺の名前呼んで」

「ちはや……ちはや……ちは……あぁ!」

 言われた通り、琳太郎は俺の名前を繰り返し呼びながら、身体を痙攣させ勢いよく精液を放った。
 可愛い琳太郎。
 全部が中に入るようになるまでまだ時間がかかるだろう。
 オメガのように、琳太郎が俺を求めるようになるだろうか?
 ――そうなる日が楽しみだ。
 目の前にいるのはベータだと俺はちゃんと認識しているのに。
 なぜ俺は、琳太郎を番にしようと思ったんだ?
 自分の中で生まれる矛盾に胸の痛みを覚えるけれど、今はそれより、番を求める想いの方が強かった。
 俺の本能が、琳太郎を番だと決めたのだから。
 俺が欲しいのは、琳太郎だ。
 その琳太郎はぼんやりと空を見つめたまま動かない。
 少し無理をさせ過ぎただろうか。
 俺がイッたのは三回だが、琳太郎は何度も射精しているはずだ。
 それでもまだ、俺は満足できない。
 ぐったりとする琳太郎の身体を抱き起こし、俺はその耳の口を寄せて囁く。

「愛してやる、琳太郎」

「う……あ……」

 琳太郎は呻き、力なく手を伸ばす。
 俺はその手を掴みそして、俺の頬に寄せた。



 琳太郎を抱くたびに、心の中で罪悪感が生まれる。
 ベータ相手に、こんなこと許されるのかと理性が囁く。
 今さら、止められるわけないだろう?
 俺が、琳太郎を番だと決めたのだから。
 そして琳太郎は、それを受け入れているのだから。
 ――もしかしたら、琳太郎は本心では拒絶したいのかもしれない。
 最初の頃、琳太郎は目に涙を浮かべることが多かった。
 けれど今は、俺の部屋に入るだけでスイッチが入るようで、触れただけで反応し、すぐに俺を求め始める。
 可愛い琳太郎。
 俺だけを見て、俺だけの物でいればいいのに。
 別の男の匂いをさせるなど許せるだろうか?
 琳太郎はオメガじゃない。
 だからアルファの匂いがわからないのだろう。
 挑発されている。
 そう思うといら立ちを覚えた。
 なんでそんなことをしてくるやつがいるんだ?
 琳太郎は、ベータだ。
 オメガじゃない。
 なのになぜ、琳太郎に興味を持つアルファがいるのか、不思議でならなかった。
 しかも、琳太郎のうなじから匂いがするとか……
 耐え難い。
 そしてその意味に琳太郎が気が付いていないのも気に入らない。
 無防備すぎるだろう。
 警告すると、琳太郎は不満そうに、

「む、無防備とか、普通だろうが」

 相手が普通ならいいが、この匂いの主はアルファだ。
 アルファが琳太郎に興味を持つなんて意味が分からないが、警戒するにこしたことはないだろう。

「なんで俺なんだよ……」

 その呟きは、俺に対してなのか、そいつに対してなのか。
 それとも両方か。
 琳太郎は、時おり苦しげな顔を見せる。
 ふとした瞬間に、哀しげな顔をして俺を見ることがある。
 それに、本人は気が付いていないらしく、すぐに素の顔になり俺の名を呼ぶ。
 もしかしたら、琳太郎は少しずつ傷を負っているのかもしれない。
 それでも俺は、琳太郎との関係を変える気はなかった。
 琳太郎は俺が決めた俺の運命だ。
 誰にも邪魔はさせない。
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