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51 あいつ嫌い
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シャワーを浴び、着替えのない俺は彼のジャージを借りる。
瀬名さんと俺では五センチくらい身長差があるため、ちょっとでかい。
リビングに戻ると、瀬名さんは本を読んでいた。
時刻は二十一時を過ぎたところだ。
いつも寝るのは日付をまたぐ頃だし、だいぶ時間がある。
そして全然眠くない。
普段、土曜日のこの時間はバイトが終わり、千早と会っている。
あいつのマンションに行けば身体を撫でられ、快楽に溺れるだから、こんなふうに何もない時間を過ごすのは久しぶりだ。
本を読んでるところに声を掛けるのもなと思い、迷っていると瀬名さんは顔を上げこちらを振り向いた。
「あぁ、ごめん。気付かなかったよ」
「す、すみません、ありがとうございます」
「ちょっと待ってて。飲み物用意するから」
瀬名さんは立ち上がり、キッチンへと消えていく。
その間、俺は壁一面の本棚の前に立った。
漫画もあるし、英語の本もある。
すげぇな、これ。
全部自分で買ったのか?
「実家にだいぶ置いてきちゃったんだよね。これでも」
「え、マジですか?」
「マジだよー」
そして瀬名さんは、俺に麦茶の入ったグラスを差し出してくる。
「あ、ありがとうございます」
礼を言い、俺はグラスを受け取りそれに口をつける。
「さすがに全部持ってこられなかったから。一部屋まるまる本棚で使ってたし。捨てられてはいないと思うけど、どうかなあ」
そして、瀬名さんは苦笑する。そんなに持ってるんだ、ちょっと羨ましい。
「まあ、親は僕にそこまで興味はないはずだから大丈夫だと思うけど」
「そ、そうなんですか」
コメントに困る話で、俺は顔をひきつらせてしまう。
姉たちはたまにしか帰ってこないから会ってねえけど、両親との仲は普通だ。
やたら外出が増えたことについて母親にはちょっと言われてけど、父親は、悪いことなんてしないだろうから、ある程度放っておけと言ってくれたし。
ただ、夕飯を食うのか食わないのかの連絡をしないと無茶苦茶怒られる。
もったいないと。
両親とそんなに冷え込むってどうなってるんだいったい。
「また、暗い顔してる」
言いながら、瀬名さんは俺の頬を指で掴み、引っ張ってくる。
すぐに指が離れたので、俺は左手で頬を撫でながら、
「だから何するんですか、もう」
と、抗議する。
「だって、暗い顔するから」
「だからって、引っ張らなくても……」
「暗い顔で顔の筋肉固まったら嫌じゃない?」
「そんなことあるわけないでしょ」
笑わせようとしてるのか、本気で言ってるのかわかんない。
そういえば、この人、笑ってること多いな。
だから余計に、何を考えてんのかわかんねぇけど。
「あると思うけどなあ。君は、暗い顔が多いじゃない? だからそれで筋肉が……」
「ないですから、冗談もほどほどにしてください」
やっぱりこの人と話していると調子が狂う。
俺ずっと、瀬名さんの手のひらの上で踊らされてるよなあ……
何考えてんだろうな。
宣戦布告とかさっき言ってたけどどういうことだ?
いまいち状況が把握できない。
「結城」
「あ、はい」
「僕もシャワー浴びてくるから、そこの本、読んでていいよ」
言いながら、瀬名さんは本棚を指差した。
その言葉に、俺のテンションが上がる。
リビングの壁一面に収納された本たち。
漫画もあるので時間はいくらでも潰せそうだ。
「じゃあ、ちょっとお借りします」
俺は麦茶の入ったグラスをテーブルに置いてから、足取り軽く本棚の前に立った。
ジャンル別に綺麗に並べられた本はみな、透明なカバーがかけられている。
結構几帳面なんだな。
俺は、漫画の中から面白そうな四コマ漫画を見繕い、三巻まで手に取りソファーに向かった。
部屋の中も、本以外はものが少ない印象だった。
テレビにブルーレイレコーダー以外、見えるところには置いていない。
全部しまってあるだけかもだけど。
俺はテーブルに漫画を置き、ソファーに腰掛けて漫画を開いた。
時おり声に出して笑い、ページをめくる。
四コマを選んだのは、笑いたかったからだ。
今、心が痛くなるような話は読みたくない。
一巻を読み終え、二巻を読み始めた頃、肩を叩かれて俺は驚きばっと振り返る。
そこにいたのは、白地に犬の絵が描かれたTシャツを着た瀬名さんだった。
彼はにこっと笑い、
「何度も声かけたんだけど、全然気が付かないから」
と言った。
え、嘘。
「す、すみません。わかんなかった……」
「あはは、別にいいよ。寝室、使っていいから、気になる本があれば持って行っていいよ。僕はここで寝るし」
「え、でも……」
さすがに家主をソファーで寝かせるのはどうかと思う。
戸惑っていると、彼は俺の顎に手を掛けて顔を近づけてくる。
「何、一緒に寝たいの?」
「そう言う意味じゃないです!」
寝たい、の意味に裏があるように思え、俺は真っ赤になって否定する。
俺が即否定したからか、すぐに瀬名さんは離れていき、
「それはそれでショックだなー」
などと言っている。
なんなんだ、この人本当に。
「あの、瀬名さん」
「何?」
「千早と、何話したんですか?」
すると、彼は顎に手を当てて、真面目な顔をし、しばらく考えた後、満面の笑顔で言った。
「僕、あいつ嫌い」
「……え?」
聞いたことと全然違う答え出てきたぞ。
嫌いって何?
「だから、僕は君を彼の所に行かせたくないんだよ」
「突拍子無さ過ぎて訳分かんねえし……」
思わずため口で言ってしまうほど、俺は困惑している。
好きとか嫌いとか、言えるほど接点ありましたっけ?
いや、ねえよな。
たぶん会ったのだって一回だけだろうし。
「だって、僕のこと調べられたの、あれ、けっこう不快だったんだよ。だから調べ返してあげたんだけど」
まあ、たしかに自分が調査されるのっていい気分はしねえだろうなあ。
それは理解できるけれども。
「嫌いって……ガキですか」
「人間だもの。好きとか嫌いとかあるよ。そういう感情って理屈じゃないからね」
あー、言いたいことはわかる。
理由はないけど嫌だとか、好きとか、なんか合わないとかあるしなあ。
たぶん、千早も瀬名さんの事、嫌いじゃねぇかなあ……
千早、大丈夫かな。
一度考えだすと、胸が痛くなってくる。
本当にこれでよかったんだろうか?
さっきは顔なんて合わせられないって思ったのに、今は顔を合わせないのが悪いことのように思えてくる。
「結城」
「え、あ、え?」
いつの間にか隣りに瀬名さんが座っていて、俺の顔を覗き込んでいる。
「心が弱っているときに、重要なことは決めない方がいいと思うよ」
「え……」
「あ、何で、って顔してる。君は色々と顔に出るからね。さっき漫画見て笑っていたじゃない。笑っている方が、ずっといいよ」
瀬名さんの目はなんでも見透かしている様で、取り繕おうとしても無駄だと言う気持ちになってしまう。
瀬名さんが言っていることは正しいと思う。
でも俺は迷う。
このままでいいのかなって。
何が正しくて何が間違いで。
俺はどうしたいのかって。
彼は俺から顔を離すと、大きな欠伸をしながら上に大きく腕を伸ばした。
「僕はちょっと酔っちゃったし、本読みながらまったりするよー。だから、好きな本、選んできなよ」
瀬名さんに促され、俺は漫画を十冊ほど選び、寝室へと持ち込んだ。
瀬名さんと俺では五センチくらい身長差があるため、ちょっとでかい。
リビングに戻ると、瀬名さんは本を読んでいた。
時刻は二十一時を過ぎたところだ。
いつも寝るのは日付をまたぐ頃だし、だいぶ時間がある。
そして全然眠くない。
普段、土曜日のこの時間はバイトが終わり、千早と会っている。
あいつのマンションに行けば身体を撫でられ、快楽に溺れるだから、こんなふうに何もない時間を過ごすのは久しぶりだ。
本を読んでるところに声を掛けるのもなと思い、迷っていると瀬名さんは顔を上げこちらを振り向いた。
「あぁ、ごめん。気付かなかったよ」
「す、すみません、ありがとうございます」
「ちょっと待ってて。飲み物用意するから」
瀬名さんは立ち上がり、キッチンへと消えていく。
その間、俺は壁一面の本棚の前に立った。
漫画もあるし、英語の本もある。
すげぇな、これ。
全部自分で買ったのか?
「実家にだいぶ置いてきちゃったんだよね。これでも」
「え、マジですか?」
「マジだよー」
そして瀬名さんは、俺に麦茶の入ったグラスを差し出してくる。
「あ、ありがとうございます」
礼を言い、俺はグラスを受け取りそれに口をつける。
「さすがに全部持ってこられなかったから。一部屋まるまる本棚で使ってたし。捨てられてはいないと思うけど、どうかなあ」
そして、瀬名さんは苦笑する。そんなに持ってるんだ、ちょっと羨ましい。
「まあ、親は僕にそこまで興味はないはずだから大丈夫だと思うけど」
「そ、そうなんですか」
コメントに困る話で、俺は顔をひきつらせてしまう。
姉たちはたまにしか帰ってこないから会ってねえけど、両親との仲は普通だ。
やたら外出が増えたことについて母親にはちょっと言われてけど、父親は、悪いことなんてしないだろうから、ある程度放っておけと言ってくれたし。
ただ、夕飯を食うのか食わないのかの連絡をしないと無茶苦茶怒られる。
もったいないと。
両親とそんなに冷え込むってどうなってるんだいったい。
「また、暗い顔してる」
言いながら、瀬名さんは俺の頬を指で掴み、引っ張ってくる。
すぐに指が離れたので、俺は左手で頬を撫でながら、
「だから何するんですか、もう」
と、抗議する。
「だって、暗い顔するから」
「だからって、引っ張らなくても……」
「暗い顔で顔の筋肉固まったら嫌じゃない?」
「そんなことあるわけないでしょ」
笑わせようとしてるのか、本気で言ってるのかわかんない。
そういえば、この人、笑ってること多いな。
だから余計に、何を考えてんのかわかんねぇけど。
「あると思うけどなあ。君は、暗い顔が多いじゃない? だからそれで筋肉が……」
「ないですから、冗談もほどほどにしてください」
やっぱりこの人と話していると調子が狂う。
俺ずっと、瀬名さんの手のひらの上で踊らされてるよなあ……
何考えてんだろうな。
宣戦布告とかさっき言ってたけどどういうことだ?
いまいち状況が把握できない。
「結城」
「あ、はい」
「僕もシャワー浴びてくるから、そこの本、読んでていいよ」
言いながら、瀬名さんは本棚を指差した。
その言葉に、俺のテンションが上がる。
リビングの壁一面に収納された本たち。
漫画もあるので時間はいくらでも潰せそうだ。
「じゃあ、ちょっとお借りします」
俺は麦茶の入ったグラスをテーブルに置いてから、足取り軽く本棚の前に立った。
ジャンル別に綺麗に並べられた本はみな、透明なカバーがかけられている。
結構几帳面なんだな。
俺は、漫画の中から面白そうな四コマ漫画を見繕い、三巻まで手に取りソファーに向かった。
部屋の中も、本以外はものが少ない印象だった。
テレビにブルーレイレコーダー以外、見えるところには置いていない。
全部しまってあるだけかもだけど。
俺はテーブルに漫画を置き、ソファーに腰掛けて漫画を開いた。
時おり声に出して笑い、ページをめくる。
四コマを選んだのは、笑いたかったからだ。
今、心が痛くなるような話は読みたくない。
一巻を読み終え、二巻を読み始めた頃、肩を叩かれて俺は驚きばっと振り返る。
そこにいたのは、白地に犬の絵が描かれたTシャツを着た瀬名さんだった。
彼はにこっと笑い、
「何度も声かけたんだけど、全然気が付かないから」
と言った。
え、嘘。
「す、すみません。わかんなかった……」
「あはは、別にいいよ。寝室、使っていいから、気になる本があれば持って行っていいよ。僕はここで寝るし」
「え、でも……」
さすがに家主をソファーで寝かせるのはどうかと思う。
戸惑っていると、彼は俺の顎に手を掛けて顔を近づけてくる。
「何、一緒に寝たいの?」
「そう言う意味じゃないです!」
寝たい、の意味に裏があるように思え、俺は真っ赤になって否定する。
俺が即否定したからか、すぐに瀬名さんは離れていき、
「それはそれでショックだなー」
などと言っている。
なんなんだ、この人本当に。
「あの、瀬名さん」
「何?」
「千早と、何話したんですか?」
すると、彼は顎に手を当てて、真面目な顔をし、しばらく考えた後、満面の笑顔で言った。
「僕、あいつ嫌い」
「……え?」
聞いたことと全然違う答え出てきたぞ。
嫌いって何?
「だから、僕は君を彼の所に行かせたくないんだよ」
「突拍子無さ過ぎて訳分かんねえし……」
思わずため口で言ってしまうほど、俺は困惑している。
好きとか嫌いとか、言えるほど接点ありましたっけ?
いや、ねえよな。
たぶん会ったのだって一回だけだろうし。
「だって、僕のこと調べられたの、あれ、けっこう不快だったんだよ。だから調べ返してあげたんだけど」
まあ、たしかに自分が調査されるのっていい気分はしねえだろうなあ。
それは理解できるけれども。
「嫌いって……ガキですか」
「人間だもの。好きとか嫌いとかあるよ。そういう感情って理屈じゃないからね」
あー、言いたいことはわかる。
理由はないけど嫌だとか、好きとか、なんか合わないとかあるしなあ。
たぶん、千早も瀬名さんの事、嫌いじゃねぇかなあ……
千早、大丈夫かな。
一度考えだすと、胸が痛くなってくる。
本当にこれでよかったんだろうか?
さっきは顔なんて合わせられないって思ったのに、今は顔を合わせないのが悪いことのように思えてくる。
「結城」
「え、あ、え?」
いつの間にか隣りに瀬名さんが座っていて、俺の顔を覗き込んでいる。
「心が弱っているときに、重要なことは決めない方がいいと思うよ」
「え……」
「あ、何で、って顔してる。君は色々と顔に出るからね。さっき漫画見て笑っていたじゃない。笑っている方が、ずっといいよ」
瀬名さんの目はなんでも見透かしている様で、取り繕おうとしても無駄だと言う気持ちになってしまう。
瀬名さんが言っていることは正しいと思う。
でも俺は迷う。
このままでいいのかなって。
何が正しくて何が間違いで。
俺はどうしたいのかって。
彼は俺から顔を離すと、大きな欠伸をしながら上に大きく腕を伸ばした。
「僕はちょっと酔っちゃったし、本読みながらまったりするよー。だから、好きな本、選んできなよ」
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