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16 住む場所
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一日の講義を終え、俺はマナーモードにしていたスマホを、ショルダーバッグの中から取り出した。
ロックを解除すると、千早からメッセージが来ていた。
『裏門前で待ってる』
その文面を見ただけで、身体の奥底が熱くなっていく。
時刻は十六時四十分。
空は曇り空のままで、晴れる気配は全くなかったが、気温はかなり高い。
俺はスマホを握りしめて、裏門へと足早に向かった。
おしゃべりしながら学生たちが、表門へと向かって歩いて行く。
駅へ向かう学生たちは皆、表門から出て行く。
裏門に向かうのは車通学の学生だけなので、かなり人の数が少ない。
駐車場を横切り裏門に行くと、門の外であいつが待っていた。
ジーパンに紺色のTシャツを着た千早は、門の柱に背を預け立っている。
彼の姿を見ただけで、俺の心が跳ね上がる。
って、なんでだよ俺。
千早の姿なんて、高校のときは毎日のように見ていたって言うのに。
まるで俺、あいつに会うの、楽しみにしていたみたいじゃねえか。
俺は頭に浮かんだ思いを打ち消すように首を振り、小走りに千早の方へと向かった。
「千早」
名を呼ぶと、彼はこちらを振り返り、にこっと笑った。
「琳太郎」
その笑顔にまた、心臓が跳ね上がり顔が熱くなるのを感じる。
いいや、何考えてるんだ俺。
「ごめん、待った?」
動揺を押し隠しながら言うと、千早は首を横に振った。
「いいや、俺もさっき来たところだし」
「で、この後どうするんだ?」
俺が言うと、千早は俺に手を差出してくる。
「夕飯、食べに行くぞ」
俺はその差し出された手と、千早の顔を交互に見つめ、ぶるぶると首を横に振った。
「誰が掴むかよ!」
そう声を上げると、千早は手をおろし、いたずらっ子のように笑う。
「残念」
「何が残念だよ! さすがに恥ずかしいわ」
辺りはまだ明るい。
さすがに男子大学生が手を繋いで歩いたら、目立って仕方ないだろう。
千早は俺に近づいたかと思うと、腕を掴み、耳元に唇を近づけて囁く。
「早く行くぞ、琳」
驚きで俺は、思わずその場で固まった。
早めの夕食をとったあと、千早の住むマンションに連れて行かれた。
リビングにつくなり俺は、ソファーに腰かけて朝、コンビニでもらった無料の住宅情報誌をショルダーバッグから出して開いた。
貰ったものの、全然見る時間がなかった。
ワンルームでいいんだもんな。
家賃の他に、敷金とか礼金とかかかるのか。
初期費用、けっこう掛かるんだな……
それを思うと来年までひとり暮らしは無理な気がする。
初期費用、貯めないとだよなあ。
うーん、どうしよう。
「琳太郎」
尖った声が降ってきて、俺はビビりながら顔を上げた。
ソファーの横に立つ千早が、マグカップを持って、冷たい顔をして立っている。
「何を、見てるんだ?」
「え? あぁ、アパートを探そうと思って。朝、コンビニでもらったんだ」
「へえ」
何だろう。千早の声が滅茶苦茶冷たい。
彼はマグカップをテーブルに置き、俺の隣に腰かけた。
そして、俺の肩に左手を回すとそっと、俺の手から住宅情報誌を奪い去る。
「え?」
「琳太郎」
耳元で名前を呼ばれ、俺は顔が赤くなるのを感じる。
「言っただろう、琳。お前は、俺のものだ」
千早の声が、低く耳の中で響く。
「ちょ……別に俺は、お前から逃げようとしてるわけじゃ……」
千早の舌が俺の耳を舐め、耳たぶを食む。
そこからゾクゾクとした感覚が拡がり、俺は思わず口を押えた。
「ん……」
「何、声を押さえようとしてるんだ、琳太郎。ここには、俺しかいないぞ?」
「だって……千早……あ……」
舌は耳から首へと下りていき、ちゅう、と音を立てて吸い上げられてしまう。
そんなところに痕つけられたら丸見えじゃねえか。
「やめ……そこ、だめだって……」
「なんで」
「み、見られたら、恥ずかしい、だろ……あ……」
右手がTシャツを捲り上げ、胸を撫でる。
乳輪を指でなぞり、指先が乳首をぎゅっ、と抓った。
「ひっ……」
「だから、ここに住めばいい、と言っているだろ」
「で、でも俺は……」
「お前は、俺の番だ。どこにも行かせない」
「あっ……」
くにくにと乳首を弄られ、俺の身体の中心に熱がたまっていく。
「ち、はや……」
「ここにいろ、琳」
「ン……で、も……」
千早は乳首をひたすら弄り、首を、頬を舐めてくる。
まるで猫が子供の身体を舐めるかのように。
「ちょ、っと、千早」
名を呼ぶと、唇が重なり口の中に舌が割り込んできた。
もしかして、俺にひとり暮らしをさせたくないのか、こいつ?
でもここに住むのは絶対に身がもたねえし、俺としては嫌なんだけど。
乳首と口の中を蹂躙され、俺の身体はさらなる刺激を求め始める。
やべえ。
早く欲しい。これだけじゃあ、物足りねえよ。
「ちは……ン……」
口が離れたとき名前を呼ぼうとするが、すぐに口を塞がれてしまう。
これじゃあ、酸欠になってしまう。
やばい、くらくらしてきた。
「琳太郎、イイ顔だな」
長いキスの後、千早は俺の顔を見つめ、にやり、と笑った。
俺は荒く息を吐きながら、千早にしがみ付く。
「お前が住む場所は、ここだ、琳」
低い声で囁き、千早は俺の身体を抱きしめた。
毎日、こんなことされたら身がもたねえよ。
だから、ここに住むのは全力でお断りしたい。
「千早……俺は……」
なんとか顔を上げて、すぐに実家を出るつもりはないと言おうとするが、また口を塞がれてしまう。
こいつ、俺の話、聞く気がない?
もやる気持ちはすぐに快楽の中に沈み込み、気が付くと俺は、もっと欲しい、と千早にねだっていた。
ロックを解除すると、千早からメッセージが来ていた。
『裏門前で待ってる』
その文面を見ただけで、身体の奥底が熱くなっていく。
時刻は十六時四十分。
空は曇り空のままで、晴れる気配は全くなかったが、気温はかなり高い。
俺はスマホを握りしめて、裏門へと足早に向かった。
おしゃべりしながら学生たちが、表門へと向かって歩いて行く。
駅へ向かう学生たちは皆、表門から出て行く。
裏門に向かうのは車通学の学生だけなので、かなり人の数が少ない。
駐車場を横切り裏門に行くと、門の外であいつが待っていた。
ジーパンに紺色のTシャツを着た千早は、門の柱に背を預け立っている。
彼の姿を見ただけで、俺の心が跳ね上がる。
って、なんでだよ俺。
千早の姿なんて、高校のときは毎日のように見ていたって言うのに。
まるで俺、あいつに会うの、楽しみにしていたみたいじゃねえか。
俺は頭に浮かんだ思いを打ち消すように首を振り、小走りに千早の方へと向かった。
「千早」
名を呼ぶと、彼はこちらを振り返り、にこっと笑った。
「琳太郎」
その笑顔にまた、心臓が跳ね上がり顔が熱くなるのを感じる。
いいや、何考えてるんだ俺。
「ごめん、待った?」
動揺を押し隠しながら言うと、千早は首を横に振った。
「いいや、俺もさっき来たところだし」
「で、この後どうするんだ?」
俺が言うと、千早は俺に手を差出してくる。
「夕飯、食べに行くぞ」
俺はその差し出された手と、千早の顔を交互に見つめ、ぶるぶると首を横に振った。
「誰が掴むかよ!」
そう声を上げると、千早は手をおろし、いたずらっ子のように笑う。
「残念」
「何が残念だよ! さすがに恥ずかしいわ」
辺りはまだ明るい。
さすがに男子大学生が手を繋いで歩いたら、目立って仕方ないだろう。
千早は俺に近づいたかと思うと、腕を掴み、耳元に唇を近づけて囁く。
「早く行くぞ、琳」
驚きで俺は、思わずその場で固まった。
早めの夕食をとったあと、千早の住むマンションに連れて行かれた。
リビングにつくなり俺は、ソファーに腰かけて朝、コンビニでもらった無料の住宅情報誌をショルダーバッグから出して開いた。
貰ったものの、全然見る時間がなかった。
ワンルームでいいんだもんな。
家賃の他に、敷金とか礼金とかかかるのか。
初期費用、けっこう掛かるんだな……
それを思うと来年までひとり暮らしは無理な気がする。
初期費用、貯めないとだよなあ。
うーん、どうしよう。
「琳太郎」
尖った声が降ってきて、俺はビビりながら顔を上げた。
ソファーの横に立つ千早が、マグカップを持って、冷たい顔をして立っている。
「何を、見てるんだ?」
「え? あぁ、アパートを探そうと思って。朝、コンビニでもらったんだ」
「へえ」
何だろう。千早の声が滅茶苦茶冷たい。
彼はマグカップをテーブルに置き、俺の隣に腰かけた。
そして、俺の肩に左手を回すとそっと、俺の手から住宅情報誌を奪い去る。
「え?」
「琳太郎」
耳元で名前を呼ばれ、俺は顔が赤くなるのを感じる。
「言っただろう、琳。お前は、俺のものだ」
千早の声が、低く耳の中で響く。
「ちょ……別に俺は、お前から逃げようとしてるわけじゃ……」
千早の舌が俺の耳を舐め、耳たぶを食む。
そこからゾクゾクとした感覚が拡がり、俺は思わず口を押えた。
「ん……」
「何、声を押さえようとしてるんだ、琳太郎。ここには、俺しかいないぞ?」
「だって……千早……あ……」
舌は耳から首へと下りていき、ちゅう、と音を立てて吸い上げられてしまう。
そんなところに痕つけられたら丸見えじゃねえか。
「やめ……そこ、だめだって……」
「なんで」
「み、見られたら、恥ずかしい、だろ……あ……」
右手がTシャツを捲り上げ、胸を撫でる。
乳輪を指でなぞり、指先が乳首をぎゅっ、と抓った。
「ひっ……」
「だから、ここに住めばいい、と言っているだろ」
「で、でも俺は……」
「お前は、俺の番だ。どこにも行かせない」
「あっ……」
くにくにと乳首を弄られ、俺の身体の中心に熱がたまっていく。
「ち、はや……」
「ここにいろ、琳」
「ン……で、も……」
千早は乳首をひたすら弄り、首を、頬を舐めてくる。
まるで猫が子供の身体を舐めるかのように。
「ちょ、っと、千早」
名を呼ぶと、唇が重なり口の中に舌が割り込んできた。
もしかして、俺にひとり暮らしをさせたくないのか、こいつ?
でもここに住むのは絶対に身がもたねえし、俺としては嫌なんだけど。
乳首と口の中を蹂躙され、俺の身体はさらなる刺激を求め始める。
やべえ。
早く欲しい。これだけじゃあ、物足りねえよ。
「ちは……ン……」
口が離れたとき名前を呼ぼうとするが、すぐに口を塞がれてしまう。
これじゃあ、酸欠になってしまう。
やばい、くらくらしてきた。
「琳太郎、イイ顔だな」
長いキスの後、千早は俺の顔を見つめ、にやり、と笑った。
俺は荒く息を吐きながら、千早にしがみ付く。
「お前が住む場所は、ここだ、琳」
低い声で囁き、千早は俺の身体を抱きしめた。
毎日、こんなことされたら身がもたねえよ。
だから、ここに住むのは全力でお断りしたい。
「千早……俺は……」
なんとか顔を上げて、すぐに実家を出るつもりはないと言おうとするが、また口を塞がれてしまう。
こいつ、俺の話、聞く気がない?
もやる気持ちはすぐに快楽の中に沈み込み、気が付くと俺は、もっと欲しい、と千早にねだっていた。
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