2 / 103
2 夢
しおりを挟む
お昼の後、宮田にわからないように俺は千早にメッセージを送った。
『千早、宮田と何話してたの?』
すぐ返事はないだろうとスマホをジーパンのポケットにしまおうとすると、ぶるぶると震え、メッセージの着信を告げる。
俺はすぐにロックを解除して、メッセージを確認した。
『朝話しただろ? 運命の番の話。いたんだよ、運命が』
どういう意味なのか考え、疑惑が確信に変わる。
『って、お前、もしかして、アルファだったの?!』
そうメッセージを送ると、驚いた顔をした猫のスタンプが返って来る。
『嘘、お前、知らなかったの?』
『知らねーよ。全然しらねーって』
『高校の同期、たぶんほとんど知ってたぞ? 別に俺、隠してなかったし』
なんですと?
一学年二百人以上いたはず。
その中で俺だけが知らなかったかもしれない……?
『まあいいや、お前夕方暇? バイトとかないなら会って話そう』
そして五時前に食堂で待ち合わせる約束をして、メッセージのやり取りは終わった。
午後の講義中、隣に座る宮田をちらり、と見る。
シャーペンくるくると回し、心ここにあらず、という感じだ。
千早がアルファで、宮田を運命の番だとか言いだす、ってことは……
宮田はオメガなのだろうか?
アルファもオメガも、見た目は普通だって話だしな。
ただ、オメガは数か月に一度発情期があり、一週間ヤりたくて仕方がなくなる、って聞くけれど。
宮田と出会ってまだ三週間しか経ってねえしな。
バース性はデリケートな話だから、年齢を聞く並に失礼なものなので聞けない。
宮田がオメガでも、俺にとっては大事な友達だから態度が変わるとかねえけど……でも、もし本当に千早の運命の番だとしたら。
でも、宮田は嬉しそうじゃねえしな。
なんて言うか、苦しそうだ。
そういうもんなのかな。
三限目が終わり、荷物をバッグにしまっているとき。
「ねえ、結城」
深刻そうな声で、宮田は話しかけてきた。
「え、何」
「結城は、運命って信じる?」
「……へ?」
その言葉に、思わず心臓が跳ね上がる。
ってことは、宮田も千早が運命の相手だと、感じているってことだろうか?
「運命って……いや、考えたことねーけど」
実際考えたことがなく、だから嘘をつくつもりもなく俺は素直に答える。
すると宮田は頷いて、哀しげな顔をして言った。
「そうだよね、考えたことないよね。僕も、そんなのいるわけがないって思ってたんだ。心が揺れ動かされるけどでも、僕はやりたいことがあるから、だから僕、アルファとは関わりたくないんだ」
アルファとは関わりたくない。
それってつまり、千早と関わりたくないってことだよな。
話しをしている間に講義室からは学生たちがいなくなり、いるのは俺たちだけとなる。
「やりたいことって何」
「大学で、青春楽しみたいんだ」
夢ってそんなこと?
もっと、どこで働きたいとか、何をしたいとかそう言う事かと思ったら。
そんなことなの?
夢と呼ぶにはささやかぎないだろうか?
「夢を叶えるまでは、受け入れたくないんだ。その為に僕は、両親の反対押し切って、大学に入ったから。まあ、時間稼ぎなんだけどね」
「時間稼ぎってどういう意味だよ?」
「あれ、知らない? オメガは、結婚年齢早いんだよ。まあ、そうだよね。発情期になるとその辺にいる人、構わず誘惑しちゃうから。相手が決まるとそう言う事なくなって、発情期をコントロールできるようになるから。だから周りも早く結婚させようとするんだ」
知らなかったそんなの。
っていうか、俺は今までアルファだとかオメガだとか考えたことなかった。
そもそも周りにいると思っていなかったし。
いや、割合から考えたら一人くらい出会っていてもおかしくないんだけれど。
バース性なんて今まで気にしたことなかったしな。
俺は何を言っていいかわからず、押し黙ってしまう。
「まあ知らないよね。僕もこんなだから何人か知ってるけど、身近にいるわけじゃないし。だから驚いたよ。しかも結城の友達だなんて」
「千早が、その……宮田の事運命の番だって言ってたけど……」
言いにくい、と思いながらも俺は千早から聞いたことを尋ねると、宮田は頷いて言った。
「そうだよ。だから食堂で口説かれたんだ」
あ、やっぱそうなんだ。
千早が口説くとかあるんだ……
「あれ、でもそれでお前、なんて言ったんだ?」
「え? 今はそういうつもりはないって。そうしたら驚いてたよ。あれでしょ、運命の番に断られるなんて思ってもみなかったんじゃないかな」
「……それって、拒めるもんなの?」
俺の問いに、宮田は首を傾げた。
「どうなんだろう? 逆らえないって言うけど、全力で拒否したよね」
スマホで調べたら、ドラマなんかだと逆らえないとか言うらしいけど。
実際はどうかなんて言う話は出てこなかったな。
まあ、ちゃんと調べれば研究資料とかに当たるかもしれないけれど。
「もしかしたら僕が特殊なのかもしれないけれどでも、アルファが本気になったらひとたまりもないかもしれないから、僕としては彼に近づきたくないかな」
と言って、宮田は苦笑した。
『千早、宮田と何話してたの?』
すぐ返事はないだろうとスマホをジーパンのポケットにしまおうとすると、ぶるぶると震え、メッセージの着信を告げる。
俺はすぐにロックを解除して、メッセージを確認した。
『朝話しただろ? 運命の番の話。いたんだよ、運命が』
どういう意味なのか考え、疑惑が確信に変わる。
『って、お前、もしかして、アルファだったの?!』
そうメッセージを送ると、驚いた顔をした猫のスタンプが返って来る。
『嘘、お前、知らなかったの?』
『知らねーよ。全然しらねーって』
『高校の同期、たぶんほとんど知ってたぞ? 別に俺、隠してなかったし』
なんですと?
一学年二百人以上いたはず。
その中で俺だけが知らなかったかもしれない……?
『まあいいや、お前夕方暇? バイトとかないなら会って話そう』
そして五時前に食堂で待ち合わせる約束をして、メッセージのやり取りは終わった。
午後の講義中、隣に座る宮田をちらり、と見る。
シャーペンくるくると回し、心ここにあらず、という感じだ。
千早がアルファで、宮田を運命の番だとか言いだす、ってことは……
宮田はオメガなのだろうか?
アルファもオメガも、見た目は普通だって話だしな。
ただ、オメガは数か月に一度発情期があり、一週間ヤりたくて仕方がなくなる、って聞くけれど。
宮田と出会ってまだ三週間しか経ってねえしな。
バース性はデリケートな話だから、年齢を聞く並に失礼なものなので聞けない。
宮田がオメガでも、俺にとっては大事な友達だから態度が変わるとかねえけど……でも、もし本当に千早の運命の番だとしたら。
でも、宮田は嬉しそうじゃねえしな。
なんて言うか、苦しそうだ。
そういうもんなのかな。
三限目が終わり、荷物をバッグにしまっているとき。
「ねえ、結城」
深刻そうな声で、宮田は話しかけてきた。
「え、何」
「結城は、運命って信じる?」
「……へ?」
その言葉に、思わず心臓が跳ね上がる。
ってことは、宮田も千早が運命の相手だと、感じているってことだろうか?
「運命って……いや、考えたことねーけど」
実際考えたことがなく、だから嘘をつくつもりもなく俺は素直に答える。
すると宮田は頷いて、哀しげな顔をして言った。
「そうだよね、考えたことないよね。僕も、そんなのいるわけがないって思ってたんだ。心が揺れ動かされるけどでも、僕はやりたいことがあるから、だから僕、アルファとは関わりたくないんだ」
アルファとは関わりたくない。
それってつまり、千早と関わりたくないってことだよな。
話しをしている間に講義室からは学生たちがいなくなり、いるのは俺たちだけとなる。
「やりたいことって何」
「大学で、青春楽しみたいんだ」
夢ってそんなこと?
もっと、どこで働きたいとか、何をしたいとかそう言う事かと思ったら。
そんなことなの?
夢と呼ぶにはささやかぎないだろうか?
「夢を叶えるまでは、受け入れたくないんだ。その為に僕は、両親の反対押し切って、大学に入ったから。まあ、時間稼ぎなんだけどね」
「時間稼ぎってどういう意味だよ?」
「あれ、知らない? オメガは、結婚年齢早いんだよ。まあ、そうだよね。発情期になるとその辺にいる人、構わず誘惑しちゃうから。相手が決まるとそう言う事なくなって、発情期をコントロールできるようになるから。だから周りも早く結婚させようとするんだ」
知らなかったそんなの。
っていうか、俺は今までアルファだとかオメガだとか考えたことなかった。
そもそも周りにいると思っていなかったし。
いや、割合から考えたら一人くらい出会っていてもおかしくないんだけれど。
バース性なんて今まで気にしたことなかったしな。
俺は何を言っていいかわからず、押し黙ってしまう。
「まあ知らないよね。僕もこんなだから何人か知ってるけど、身近にいるわけじゃないし。だから驚いたよ。しかも結城の友達だなんて」
「千早が、その……宮田の事運命の番だって言ってたけど……」
言いにくい、と思いながらも俺は千早から聞いたことを尋ねると、宮田は頷いて言った。
「そうだよ。だから食堂で口説かれたんだ」
あ、やっぱそうなんだ。
千早が口説くとかあるんだ……
「あれ、でもそれでお前、なんて言ったんだ?」
「え? 今はそういうつもりはないって。そうしたら驚いてたよ。あれでしょ、運命の番に断られるなんて思ってもみなかったんじゃないかな」
「……それって、拒めるもんなの?」
俺の問いに、宮田は首を傾げた。
「どうなんだろう? 逆らえないって言うけど、全力で拒否したよね」
スマホで調べたら、ドラマなんかだと逆らえないとか言うらしいけど。
実際はどうかなんて言う話は出てこなかったな。
まあ、ちゃんと調べれば研究資料とかに当たるかもしれないけれど。
「もしかしたら僕が特殊なのかもしれないけれどでも、アルファが本気になったらひとたまりもないかもしれないから、僕としては彼に近づきたくないかな」
と言って、宮田は苦笑した。
2
お気に入りに追加
909
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
幼馴染は僕を選ばない。
佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。
僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。
僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。
好きだった。
好きだった。
好きだった。
離れることで断ち切った縁。
気付いた時に断ち切られていた縁。
辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。
溺愛アルファの完璧なる巣作り
夕凪
BL
【本編完結済】(番外編SSを追加中です)
ユリウスはその日、騎士団の任務のために赴いた異国の山中で、死にかけの子どもを拾った。
抱き上げて、すぐに気づいた。
これは僕のオメガだ、と。
ユリウスはその子どもを大事に大事に世話した。
やがてようやく死の淵から脱した子どもは、ユリウスの下で成長していくが、その子にはある特殊な事情があって……。
こんなに愛してるのにすれ違うことなんてある?というほどに溺愛するアルファと、愛されていることに気づかない薄幸オメガのお話。(になる予定)
※この作品は完全なるフィクションです。登場する人物名や国名、団体名、宗教等はすべて架空のものであり、実在のものと一切の関係はありません。
話の内容上、宗教的な描写も登場するかと思いますが、繰り返しますがフィクションです。特定の宗教に対して批判や肯定をしているわけではありません。
クラウス×エミールのスピンオフあります。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/504363362/542779091
頑張って番を見つけるから友達でいさせてね
貴志葵
BL
大学生の優斗は二十歳を迎えてもまだαでもβでもΩでもない「未分化」のままだった。
しかし、ある日突然Ωと診断されてしまう。
ショックを受けつつも、Ωが平穏な生活を送るにはαと番うのが良いという情報を頼りに、優斗は番を探すことにする。
──番、と聞いて真っ先に思い浮かんだのは親友でαの霧矢だが、彼はΩが苦手で、好みのタイプは美人な女性α。うん、俺と真逆のタイプですね。
合コンや街コンなど色々試してみるが、男のΩには悲しいくらいに需要が無かった。しかも、長い間未分化だった優斗はΩ特有の儚げな可憐さもない……。
Ωになってしまった優斗を何かと気にかけてくれる霧矢と今まで通り『普通の友達』で居る為にも「早くαを探さなきゃ」と優斗は焦っていた。
【塩対応だけど受にはお砂糖多めのイケメンα大学生×ロマンチストで純情なそこそこ顔のΩ大学生】
※攻は過去に複数の女性と関係を持っています
※受が攻以外の男性と軽い性的接触をするシーンがあります(本番無し・合意)
両片思いのI LOVE YOU
大波小波
BL
相沢 瑠衣(あいざわ るい)は、18歳のオメガ少年だ。
両親に家を追い出され、バイトを掛け持ちしながら毎日を何とか暮らしている。
そんなある日、大学生のアルファ青年・楠 寿士(くすのき ひさし)と出会う。
洋菓子店でミニスカサンタのコスプレで頑張っていた瑠衣から、売れ残りのクリスマスケーキを全部買ってくれた寿士。
お礼に彼のマンションまでケーキを運ぶ瑠衣だが、そのまま寿士と関係を持ってしまった。
富豪の御曹司である寿士は、一ヶ月100万円で愛人にならないか、と瑠衣に持ち掛ける。
少々性格に難ありの寿士なのだが、金銭に苦労している瑠衣は、ついつい応じてしまった……。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる