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2 夢
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お昼の後、宮田にわからないように俺は千早にメッセージを送った。
『千早、宮田と何話してたの?』
すぐ返事はないだろうとスマホをジーパンのポケットにしまおうとすると、ぶるぶると震え、メッセージの着信を告げる。
俺はすぐにロックを解除して、メッセージを確認した。
『朝話しただろ? 運命の番の話。いたんだよ、運命が』
どういう意味なのか考え、疑惑が確信に変わる。
『って、お前、もしかして、アルファだったの?!』
そうメッセージを送ると、驚いた顔をした猫のスタンプが返って来る。
『嘘、お前、知らなかったの?』
『知らねーよ。全然しらねーって』
『高校の同期、たぶんほとんど知ってたぞ? 別に俺、隠してなかったし』
なんですと?
一学年二百人以上いたはず。
その中で俺だけが知らなかったかもしれない……?
『まあいいや、お前夕方暇? バイトとかないなら会って話そう』
そして五時前に食堂で待ち合わせる約束をして、メッセージのやり取りは終わった。
午後の講義中、隣に座る宮田をちらり、と見る。
シャーペンくるくると回し、心ここにあらず、という感じだ。
千早がアルファで、宮田を運命の番だとか言いだす、ってことは……
宮田はオメガなのだろうか?
アルファもオメガも、見た目は普通だって話だしな。
ただ、オメガは数か月に一度発情期があり、一週間ヤりたくて仕方がなくなる、って聞くけれど。
宮田と出会ってまだ三週間しか経ってねえしな。
バース性はデリケートな話だから、年齢を聞く並に失礼なものなので聞けない。
宮田がオメガでも、俺にとっては大事な友達だから態度が変わるとかねえけど……でも、もし本当に千早の運命の番だとしたら。
でも、宮田は嬉しそうじゃねえしな。
なんて言うか、苦しそうだ。
そういうもんなのかな。
三限目が終わり、荷物をバッグにしまっているとき。
「ねえ、結城」
深刻そうな声で、宮田は話しかけてきた。
「え、何」
「結城は、運命って信じる?」
「……へ?」
その言葉に、思わず心臓が跳ね上がる。
ってことは、宮田も千早が運命の相手だと、感じているってことだろうか?
「運命って……いや、考えたことねーけど」
実際考えたことがなく、だから嘘をつくつもりもなく俺は素直に答える。
すると宮田は頷いて、哀しげな顔をして言った。
「そうだよね、考えたことないよね。僕も、そんなのいるわけがないって思ってたんだ。心が揺れ動かされるけどでも、僕はやりたいことがあるから、だから僕、アルファとは関わりたくないんだ」
アルファとは関わりたくない。
それってつまり、千早と関わりたくないってことだよな。
話しをしている間に講義室からは学生たちがいなくなり、いるのは俺たちだけとなる。
「やりたいことって何」
「大学で、青春楽しみたいんだ」
夢ってそんなこと?
もっと、どこで働きたいとか、何をしたいとかそう言う事かと思ったら。
そんなことなの?
夢と呼ぶにはささやかぎないだろうか?
「夢を叶えるまでは、受け入れたくないんだ。その為に僕は、両親の反対押し切って、大学に入ったから。まあ、時間稼ぎなんだけどね」
「時間稼ぎってどういう意味だよ?」
「あれ、知らない? オメガは、結婚年齢早いんだよ。まあ、そうだよね。発情期になるとその辺にいる人、構わず誘惑しちゃうから。相手が決まるとそう言う事なくなって、発情期をコントロールできるようになるから。だから周りも早く結婚させようとするんだ」
知らなかったそんなの。
っていうか、俺は今までアルファだとかオメガだとか考えたことなかった。
そもそも周りにいると思っていなかったし。
いや、割合から考えたら一人くらい出会っていてもおかしくないんだけれど。
バース性なんて今まで気にしたことなかったしな。
俺は何を言っていいかわからず、押し黙ってしまう。
「まあ知らないよね。僕もこんなだから何人か知ってるけど、身近にいるわけじゃないし。だから驚いたよ。しかも結城の友達だなんて」
「千早が、その……宮田の事運命の番だって言ってたけど……」
言いにくい、と思いながらも俺は千早から聞いたことを尋ねると、宮田は頷いて言った。
「そうだよ。だから食堂で口説かれたんだ」
あ、やっぱそうなんだ。
千早が口説くとかあるんだ……
「あれ、でもそれでお前、なんて言ったんだ?」
「え? 今はそういうつもりはないって。そうしたら驚いてたよ。あれでしょ、運命の番に断られるなんて思ってもみなかったんじゃないかな」
「……それって、拒めるもんなの?」
俺の問いに、宮田は首を傾げた。
「どうなんだろう? 逆らえないって言うけど、全力で拒否したよね」
スマホで調べたら、ドラマなんかだと逆らえないとか言うらしいけど。
実際はどうかなんて言う話は出てこなかったな。
まあ、ちゃんと調べれば研究資料とかに当たるかもしれないけれど。
「もしかしたら僕が特殊なのかもしれないけれどでも、アルファが本気になったらひとたまりもないかもしれないから、僕としては彼に近づきたくないかな」
と言って、宮田は苦笑した。
『千早、宮田と何話してたの?』
すぐ返事はないだろうとスマホをジーパンのポケットにしまおうとすると、ぶるぶると震え、メッセージの着信を告げる。
俺はすぐにロックを解除して、メッセージを確認した。
『朝話しただろ? 運命の番の話。いたんだよ、運命が』
どういう意味なのか考え、疑惑が確信に変わる。
『って、お前、もしかして、アルファだったの?!』
そうメッセージを送ると、驚いた顔をした猫のスタンプが返って来る。
『嘘、お前、知らなかったの?』
『知らねーよ。全然しらねーって』
『高校の同期、たぶんほとんど知ってたぞ? 別に俺、隠してなかったし』
なんですと?
一学年二百人以上いたはず。
その中で俺だけが知らなかったかもしれない……?
『まあいいや、お前夕方暇? バイトとかないなら会って話そう』
そして五時前に食堂で待ち合わせる約束をして、メッセージのやり取りは終わった。
午後の講義中、隣に座る宮田をちらり、と見る。
シャーペンくるくると回し、心ここにあらず、という感じだ。
千早がアルファで、宮田を運命の番だとか言いだす、ってことは……
宮田はオメガなのだろうか?
アルファもオメガも、見た目は普通だって話だしな。
ただ、オメガは数か月に一度発情期があり、一週間ヤりたくて仕方がなくなる、って聞くけれど。
宮田と出会ってまだ三週間しか経ってねえしな。
バース性はデリケートな話だから、年齢を聞く並に失礼なものなので聞けない。
宮田がオメガでも、俺にとっては大事な友達だから態度が変わるとかねえけど……でも、もし本当に千早の運命の番だとしたら。
でも、宮田は嬉しそうじゃねえしな。
なんて言うか、苦しそうだ。
そういうもんなのかな。
三限目が終わり、荷物をバッグにしまっているとき。
「ねえ、結城」
深刻そうな声で、宮田は話しかけてきた。
「え、何」
「結城は、運命って信じる?」
「……へ?」
その言葉に、思わず心臓が跳ね上がる。
ってことは、宮田も千早が運命の相手だと、感じているってことだろうか?
「運命って……いや、考えたことねーけど」
実際考えたことがなく、だから嘘をつくつもりもなく俺は素直に答える。
すると宮田は頷いて、哀しげな顔をして言った。
「そうだよね、考えたことないよね。僕も、そんなのいるわけがないって思ってたんだ。心が揺れ動かされるけどでも、僕はやりたいことがあるから、だから僕、アルファとは関わりたくないんだ」
アルファとは関わりたくない。
それってつまり、千早と関わりたくないってことだよな。
話しをしている間に講義室からは学生たちがいなくなり、いるのは俺たちだけとなる。
「やりたいことって何」
「大学で、青春楽しみたいんだ」
夢ってそんなこと?
もっと、どこで働きたいとか、何をしたいとかそう言う事かと思ったら。
そんなことなの?
夢と呼ぶにはささやかぎないだろうか?
「夢を叶えるまでは、受け入れたくないんだ。その為に僕は、両親の反対押し切って、大学に入ったから。まあ、時間稼ぎなんだけどね」
「時間稼ぎってどういう意味だよ?」
「あれ、知らない? オメガは、結婚年齢早いんだよ。まあ、そうだよね。発情期になるとその辺にいる人、構わず誘惑しちゃうから。相手が決まるとそう言う事なくなって、発情期をコントロールできるようになるから。だから周りも早く結婚させようとするんだ」
知らなかったそんなの。
っていうか、俺は今までアルファだとかオメガだとか考えたことなかった。
そもそも周りにいると思っていなかったし。
いや、割合から考えたら一人くらい出会っていてもおかしくないんだけれど。
バース性なんて今まで気にしたことなかったしな。
俺は何を言っていいかわからず、押し黙ってしまう。
「まあ知らないよね。僕もこんなだから何人か知ってるけど、身近にいるわけじゃないし。だから驚いたよ。しかも結城の友達だなんて」
「千早が、その……宮田の事運命の番だって言ってたけど……」
言いにくい、と思いながらも俺は千早から聞いたことを尋ねると、宮田は頷いて言った。
「そうだよ。だから食堂で口説かれたんだ」
あ、やっぱそうなんだ。
千早が口説くとかあるんだ……
「あれ、でもそれでお前、なんて言ったんだ?」
「え? 今はそういうつもりはないって。そうしたら驚いてたよ。あれでしょ、運命の番に断られるなんて思ってもみなかったんじゃないかな」
「……それって、拒めるもんなの?」
俺の問いに、宮田は首を傾げた。
「どうなんだろう? 逆らえないって言うけど、全力で拒否したよね」
スマホで調べたら、ドラマなんかだと逆らえないとか言うらしいけど。
実際はどうかなんて言う話は出てこなかったな。
まあ、ちゃんと調べれば研究資料とかに当たるかもしれないけれど。
「もしかしたら僕が特殊なのかもしれないけれどでも、アルファが本気になったらひとたまりもないかもしれないから、僕としては彼に近づきたくないかな」
と言って、宮田は苦笑した。
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