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2 誘い
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「ていうかさ、朱里」
「なんだよ」
昼飯を喰い終わり、お茶を飲んでいるとライは辺りを見回して声を潜めて言った。
「お前と夏目って、付き合ってんの?」
ド直球な問いかけに、思わず飲んでるお茶を吐き出しかける。
「な、な、な……」
俺は涙目になり、口元を押さえてライを見つめた。
冗談を言っている様子はない。ライの顔は至ってまじめだ。
「だってさあ、あいつ、俺がお前と話してると割って入ってくること多いし、あとあいつの取り巻きに聞かれたんだよ」
「な、何をだよ」
心臓が痛い。
そう思いながら、俺はお茶のペットボトルを握りしめてライに尋ねた。
「『最近夏目を誘っても冷たい。恋人ができたのか聞いても睨まれる』って。だから誰か特定の相手……番ができたんじゃねぇか、て噂があってさ、んで、お前が実はオメガ……」
「ンなわけあるかよ。俺が一週間学校休んだりとかねぇだろ」
オメガには三か月に一度、一週間ほど発情期がある。
その間はセックスしたくて仕方なくなるらしい。薬である程度抑制できるらしいけど、それでも二、三日は薬でも抑えられないと聞く。
でも俺はまとまった日数、学校を休んだことはない。
ライは笑って、
「だよなあ」
と言い、カフェオレを飲む。
「お前はオメガはねえだろうけど」
と、呟き、そしてライは真面目な顔になり声を潜めた。
「あいつ、お前に執着してるのは確かだよな。あいつ気が付いてんのか知らねえけど、俺とお前が話してると、睨んでくるし、あからさま割って入ってくんじゃん」
それにはいくつか心当たりがある。
たしか飛衣は、話しかけるな、とライに言ったこともあったように思う。
それでもライは俺から離れないし、普通に接してくれている。
「まあ、付き合ってようがなんだろうが別に俺が干渉することじゃねえけど。アルファと付き合って大丈夫なのかよ?」
「べ、別に俺は……」
思わず視線が泳いでしまう。
付き合ってない、とは言えない。
それを否定したら俺の今の状況を否定してしまうから。
それは、したくない。
じゃあ、なんだろう、俺と、あいつの関係は。
あいつが十八歳になったら……きっと終わるんだから。
それについて、あいつとちゃんと話したことはない。
なのにあいつは俺に愛していると繰り返す。
じゃあ俺はどうなんだ……?
そんな不安定な状況で、半年が過ぎた。
ずい、とライは俺に顔を近づけ、
「お前、無理すんなよ?」
と言い、離れて行く。
そして、教室の入り口をちら見して、ライは立ち上がる。
「じゃ、俺、席戻るわ」
と言い、手を振って去って行く。
「あ……」
ざわめく教室の、生徒たちの間を抜けて、ライは自分の席へと戻っていった。
そして、俺は、ライがなぜ自分の席に急いで戻っていったのかすぐに悟る。
飛衣が、クラスメイトと共に教室に入ってくる。
俺は思わず顔を伏せ、弁当箱を片付けた。
放課後。
俺はさっさと帰ろうとリュックを背負う。
今日は月曜日だ。
夏目に誘われることはないだろう。
そう思ったのに。
「朱里」
前の席の飛衣が、こちらを振り返る。
彼は微笑み、俺に手を差し出していった。
「このあと時間あるよね」
なんで断定して言うんだよ。
いや、特に予定もないし、家に帰るだけだけど?
「あ、あるけど……何だよ」
「デートしよう」
……なんだって?
俺は驚き、目を瞬かせて飛衣を見つめると、彼は微笑みこちらを見ていた。
ほ、本気かよ?
んなこと、初めて言われたぞ?
辺りには少ないとはいえまだ生徒の姿があるのに。
デートとか言うなよ……!
俺は辺りをきょろきょろ見回しながら、声を潜めて言った。
「な、何言ってんだよ、ここ、教室だぞ」
すると、飛衣は意に介さない様子で俺の手を掴み、
「ほら、時間がないから早く行こう」
と言い、俺の腕を掴んだ。
「なんだよ」
昼飯を喰い終わり、お茶を飲んでいるとライは辺りを見回して声を潜めて言った。
「お前と夏目って、付き合ってんの?」
ド直球な問いかけに、思わず飲んでるお茶を吐き出しかける。
「な、な、な……」
俺は涙目になり、口元を押さえてライを見つめた。
冗談を言っている様子はない。ライの顔は至ってまじめだ。
「だってさあ、あいつ、俺がお前と話してると割って入ってくること多いし、あとあいつの取り巻きに聞かれたんだよ」
「な、何をだよ」
心臓が痛い。
そう思いながら、俺はお茶のペットボトルを握りしめてライに尋ねた。
「『最近夏目を誘っても冷たい。恋人ができたのか聞いても睨まれる』って。だから誰か特定の相手……番ができたんじゃねぇか、て噂があってさ、んで、お前が実はオメガ……」
「ンなわけあるかよ。俺が一週間学校休んだりとかねぇだろ」
オメガには三か月に一度、一週間ほど発情期がある。
その間はセックスしたくて仕方なくなるらしい。薬である程度抑制できるらしいけど、それでも二、三日は薬でも抑えられないと聞く。
でも俺はまとまった日数、学校を休んだことはない。
ライは笑って、
「だよなあ」
と言い、カフェオレを飲む。
「お前はオメガはねえだろうけど」
と、呟き、そしてライは真面目な顔になり声を潜めた。
「あいつ、お前に執着してるのは確かだよな。あいつ気が付いてんのか知らねえけど、俺とお前が話してると、睨んでくるし、あからさま割って入ってくんじゃん」
それにはいくつか心当たりがある。
たしか飛衣は、話しかけるな、とライに言ったこともあったように思う。
それでもライは俺から離れないし、普通に接してくれている。
「まあ、付き合ってようがなんだろうが別に俺が干渉することじゃねえけど。アルファと付き合って大丈夫なのかよ?」
「べ、別に俺は……」
思わず視線が泳いでしまう。
付き合ってない、とは言えない。
それを否定したら俺の今の状況を否定してしまうから。
それは、したくない。
じゃあ、なんだろう、俺と、あいつの関係は。
あいつが十八歳になったら……きっと終わるんだから。
それについて、あいつとちゃんと話したことはない。
なのにあいつは俺に愛していると繰り返す。
じゃあ俺はどうなんだ……?
そんな不安定な状況で、半年が過ぎた。
ずい、とライは俺に顔を近づけ、
「お前、無理すんなよ?」
と言い、離れて行く。
そして、教室の入り口をちら見して、ライは立ち上がる。
「じゃ、俺、席戻るわ」
と言い、手を振って去って行く。
「あ……」
ざわめく教室の、生徒たちの間を抜けて、ライは自分の席へと戻っていった。
そして、俺は、ライがなぜ自分の席に急いで戻っていったのかすぐに悟る。
飛衣が、クラスメイトと共に教室に入ってくる。
俺は思わず顔を伏せ、弁当箱を片付けた。
放課後。
俺はさっさと帰ろうとリュックを背負う。
今日は月曜日だ。
夏目に誘われることはないだろう。
そう思ったのに。
「朱里」
前の席の飛衣が、こちらを振り返る。
彼は微笑み、俺に手を差し出していった。
「このあと時間あるよね」
なんで断定して言うんだよ。
いや、特に予定もないし、家に帰るだけだけど?
「あ、あるけど……何だよ」
「デートしよう」
……なんだって?
俺は驚き、目を瞬かせて飛衣を見つめると、彼は微笑みこちらを見ていた。
ほ、本気かよ?
んなこと、初めて言われたぞ?
辺りには少ないとはいえまだ生徒の姿があるのに。
デートとか言うなよ……!
俺は辺りをきょろきょろ見回しながら、声を潜めて言った。
「な、何言ってんだよ、ここ、教室だぞ」
すると、飛衣は意に介さない様子で俺の手を掴み、
「ほら、時間がないから早く行こう」
と言い、俺の腕を掴んだ。
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