三限目の国語

理科準備室

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学校で一番低い場所

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ぼくは体勢を変えて便器にしゃがむために便器をまたいで腰のベルトをゆるめたベルトをゆるめた。暗い個室の中は足元の方にある銀色の真鍮製のホルダーにトイレットペーパーだけが雪のように真っ白に見えた。
そして、ぼくはホックをはずしチャックを下してから、ズボンとパンツを下しながらゆっくりとしゃがんだ。しゃがむときに気になったのは脇のドアと蝶番の間のわずかな隙間とドアの下の方の大きな隙間から漏れてくる光だった。ここも下からのぞいたら確実におしりからうんちが出てくるのが丸見えだった。
 
 ぼくも実際に3年生のとき一人だけ先生じゃなくて同じ学年の子をのぞいたことがあって、そのときは本当に見えたんだ。
給食当番で体育館に遊びに行くのが遅れたぼくは「男子児童便所」におしっこするために入ったらドアが閉まっているので目に入ったので。
まず、うんち姿の全身が見えないかとこっそり蝶番の隙間からのぞいてみた。でも、その子が立っているらしくて黒いものが見えるけど、隙間も細くて中も薄暗くそれ以外は何も見えなかった。
本当は全身が見たかったけど仕方ないのでおしりだけでも見ようとぼくはしゃがんでベージュのドアの下の隙間がそっとのぞきこんだ。すると、かかとの部分に「3年1組■■■■」と書かれたよそのクラスの子の水色の運動靴とラインが入った白い靴下の足元は見えた。この中には先生じゃなくて同じ3年生の子が入っているんだと思うとそれだけで胸がドキドキした。
でも、その子はしゃがんでいないらしくうんちどころかおしりも見えなかった。今から考えるとその子はうんちする決意がつかなかったと思うけど「あれ、もう終わっておしりを拭いたりズボンを上げたりしているのかな」とぼくはがっかりした。やっぱり学校でうんちする子なんかいなかったんだ、とぼくはあきらめかけた。それにこのままドアが開くとキケンだった。それでも気になってぼくはその場を離れられなくてベージュのドアの下のぞき続けた。
でも、しばらくしてその子もようやく意を決したズボンを下したらしく、ズボンのすそが足元にかかるのが見えると、その子のしゃがむおしりがぼくの視界にあらわれた。まさか学校でぼくの目の前でおしり丸出しにする子なんかいないかと思っていた。
でも、その子のおしりは本当に薄暗い個室の中に灰色のタイルが敷き詰められた床に埋め込まれた白い便器に吸い込まれるようにぼくの目の前に降りてきた。ぼくの見ているところでおしりを出すなんでバカみたいだと思ったけど、薄暗い個室の中で冷たい光を放つ固い陶器の便器の上にやわらかいお尻がぽっかりと浮かんでいて、そのすぐ近くに今にも踏ん張ろうとしている青い運動靴が見える光景がはすごくエッチだった。ぼくはコーフンしながら次に起こることをじっと待っていた・・・。
 
完全にぼくが便器の上に腰を下ろすと、ひざまでズボンやパンツがかかっているのに、窓から吹き込んでくるらしい風がぼくのおしりをなぜた。今、この「男子児童便所」に誰かが入ってきて、あの下の隙間からのぞくと、間違いなくぼくのおしりもあのときの3年1組の子のように丸見えのはずだった。
いつもならば、他の子に見せたら絶対恥ずかしいおしりだけが丸出しになっている感覚は、ぼくを不安にさせて仕方がなかった。
でも、ぼくはうんちするまでもうここから出られそうもなかった。ぼくに今残されているウンコマン作戦は今うんちとおしっこ以外できるのは誰か来ないのを祈るのと、ウンコマンなったアトを便器に残さない努力だけだった。休み時間になるとこの東側の「男子児童便所」にやってくる三年生たちにほんの少しでもぼくのアトが残ってさらしものになるのはイヤだった。きっと彼らはそれを見てぼくのアトを残しているところを想像して楽しむだろうから。
ぼくはしゃがむと便器の後ろのふちにつかないようにできるだけ前に進んだ。気になって後ろを振り向くとぼくの真っ白いおしりはまるで何かの機械みたいにぴったりと白い便器の上にはまっていた。
前を向くとぼくの目の前はベージュ色の壁と真鍮のペーパーホルダと水を流す真鍮のコックだけになったペーパーホルダとコックにはよく見るとしゃがんでいる情けないぼくの姿がうつっていたので、目を背けて下の方を見ると灰色のタイルが敷き詰められた白い便器の金隠しの部分と下ろされたズボンとつま先に「4―2」と大きく書かれた青い運動靴の足元があった。これがこれからウンコマンになるぼくに見えるすべてだった。
でも、ぼくの耳には誰かが入って来るのが不安で、まるで「男子児童便所」全体がぼくの耳になってしまったかのように神経を集中させていた。すると、この壁やドアの向こうからたくさんの音が聞こえてきた。
外のグラウンドでリレーの練習をする声。
先生が授業中ひとり話す声。
第一音楽室でピアノに合わせて合唱する声
聞こえないけど、ぼくのクラスでも相変わらず議論は続いているだろう。
それらの声の元はその時立っていたり走っていたり机のいすに座っていたりして、便器にしゃがんでいるぼくの頭よりはるか高い場所から向かって降ってくる感じだった。その声の元の高い場所が本当に学校というところで、みんながそこでいて、走っていたり歌っていたり授業を受けている。ぼくもついさっきまではそこにいた。
でも、今のぼくはそこからいなくなっていた。ぼくのいるところは学校なのに学校でなかった。まず、みんながいない。そして、ベージュ色に塗られた壁とトイレットペーパーと水を流すコックしかそこにない。ぼく自身もおしりを出してしゃがんでいる。しかも、これからみんなの学校を汚すようなすごく汚くて臭いことをしようとしている
。ぼくはみんなからはもう見えないこの学校で一番低い場所(二階だけど)に自分一人だけ取り残されているような気がしてさみしかった。 

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