ぼくに毛が生えた

理科準備室

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第20話 最後の給食

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それから、ぼくが学校でうんこしたくなったのは、ちょうど3学期で給食があり午後の6限目まで授業のある最後の金曜日だった。その日で3学期の給食もおわり、日曜日を挟んで卒業式までの残りの日は午前中の4限で終わることになっていた。
 実は合唱部の練習もその日が最後だった。おきゅう部や水泳部は外で練習できないのと6年生の引退を控えてもう活動を止めていたけど、合唱部だけは卒業式と、5年生と4年生が4月の「1年生を迎える会」で発表するため卒業式の直前まで練習をしていた。

 その日の前の二日間、ぼくはいつもの夕食後のうんこが出なかった。
 といっても、最初の出なかった一日目は、もともと5年生になるまで三日に一度ぐらいしかうんこしなかったので、夕食後にうんこがしたくならなくてもさほど気にしないでお風呂に入ってテレビを見て寝るという一日の終わりを普通に繰り返した。
 二日目もテレビを見ながら、いかにもうんこの間を通り抜けてきた感じの臭いおならを数発したけど、出そうな感じはしなかった。このまま、学校でうんこがしないまま小学校を卒業するんじゃないかと少し残念だと思いながら、その日もお風呂に入って寝た。

 その日は集団登校の時からちょっとおなかが重苦しい気がした。でも、それがおしりに来たのは。4限目の授業中だった。しかも、かなり大きいのが、いきなり、おしりののどの奥から口いっぱいに広がり、くちびる一つ隔てて座っている椅子のすぐ近くまで来た。
 いつもだったら、おしりにそんな感じがしたら家までガマンできなかったらどうしようとただ不安になるだけど、その日のぼくははずかしいけど何か心の底がうれしい、ヘンな気分になっていた。
 もし、ぼくが穴実小で6限目まで授業がある最後のその日にうんこが出そうにならないと、もう二度と学校でうんこしているところが見たあの1年生たちと同じになることはもう不可能だった、
 でも、今、やっとぼくは間に合った。その子たちも1階西の男子児童便所に行く前はぼくと同じように、おしりののどの奥から込み上げてくるうんこを感じながら授業を聞いていたはずだった。
 もしかしたら、今、ぼくが見ていない1年生の子も同じことを感じながら授業を聞いている最中かもしれない。
 ぼくはその子たちと同じような感じをしながら同じ穴実小で授業を聞いていると思うと、それだけで胸がドキドキしていた。その子たちみたいで学校でうんこしてみたくなった。
 でも、それで「先生、便所に行きたい」と席を立つのは、ぼくやはり赤ちゃんにみたいイヤだった。行くにしても、本当にもれる寸前までガマンして行かないと六年生じゃなかった。
それにガマンすればするほど、うんこがいっぱいたまって出てきそうで楽しみだった。せっかくの小学生最後のうんこだからいっぱい出したかった。
 ぼくはおしりの穴の口をしめて、おなかの奥に飲み込むと、その感じは頭まで来るようでちんぽがかたくなった。そして同時にうんこの感じはおさまった。まだ、しばらくはガマンできそうだった。
 そして4限が終わって給食の時間が来た。それはぼくたち6年生にとって最後の小学校の給食であり、しかも、そのときぼくは1年生の給食を配る当番、しかもつとくんのクラス1年3組の担当だった。1年3組にいくと、ぼくたち6年生は「6年生のお兄さんお姉さん1年間おいしい給食を配ってもらってありがとうございました、中学校に行ってもがんばってください」という元気いっぱいのつとくんの感謝のあいさつを受けた。
 ぼくはつとくんの方を向いてそのあいさつを浮かべながら、ぼく自身がうんこしたくなっていることもあって、どうしても、あの時のぞいたうんこしているときの姿を思い出さずにはいられなかった。あれ以来、つとくんはうんこしているところをぼくにのぞかれたことなんか、全然気づいていないように毎朝集団登校の時に元気に笑顔であいさつしてくれる。できれば、また見たくてしかたないけど、今日も元気におはようと言ってきたから、つとくんは朝に家でうんこしてきたようだった。

 あのときはつとくんが学校でおしりからうんこがぶらさがっている光景を見せてくれたけど、今度はぼくがそうなる番だった。

 1年3組の子たちに給食を配ったあとぼくが教室に戻ると1年生の教室に行った子の分の給食ももう配り終わられていて「いただきます」の合掌で小学校最後の給食をみんな食べ始めた。ぼくは出口が詰まっているので、食べる方はあまり入りそうもなかったけど、むりやりパンを牛乳で流し込んだ。パンと牛乳をいっしょに飲み込むたびに、入ってきた分だけパンのかたさと牛乳のつめたさが胃を刺激して、おしりの口からうんこを座っているイスの上に押し出そうとした。
 そのとき、ぼくは1年生の頃見た、給食でパンを食べている最中に食べながらうんこをもらしてしまった子のことを思い出した。その子もうんこをガマンしていたけど、飲み込んだパンに押し出されて突然おしりのくちびるが開いてしまい、その場でしてしまったようだった。
 その子はイスに座ったまま泣き出したけど、教室中うんこのにおいが広がって給食どころじゃない大さわぎになった、そしてそれに気づいた先生が後始末するためにその子を教室から連れ出したあと、クラスの多くの男子が、もらしたとき座っていたイスにおしりの口の当たるあたりをわざと嗅いで「くっせー」と叫び、その後「おえっ」と吐くまねをする遊びに夢中になった。もちろんその子はずっとうんこもらしのバイキンとしてからかわれていた。
 ぼくも、彼らにならってやってみたくなってイスのにおいを嗅いで、ちょっと吐きそうになりながらも「くっせー」と叫んだし、しばらくはその子をバイキン呼ばわりしてしばらく近づかなかった。今度はぼくがその子みたいになる感じがイスに当たっているおしりのくちびるにして、恥ずかしかった。そういえば、つとくんもトイレットペーパーで拭かないでそのままオンナベンジョを出てしまったから、その後の座ったイスも直後に嗅げば、もらした子ほどじゃないけど臭かったはずだった。

 でも、パンを飲み込んだ分だけあとで出すうんこがおなかの中にたまっていくと出るとおもうと何だかうれしいような気分もしたので、ぼくはぐっとうんこをおしりのどの奥にのみこんだ。

 給食が終わって昼休みになると、ぼくは一人こっそりと1階西の男子児童便所に行った。

 ぼくは、確かにうんこはしたかったけど、まだガマンできそうだったから行ってもする気にはなかった。ただ、したくなってから、つとくんやドア全開のあの子がしていた、あの二つあるオンナベンジョうちの廊下から見て奥の方が気になって、何度も目の前にちらついて仕方がなかったので、行きたくなっただけだった。それに、ぼくがうんこしたくなっているから、もしかするとまた1年生の誰かも同じようにそうなって、うんこしているところをまたのぞけるかもしれなかった。

 でも、行く途中、ぼくの頭の片隅では、もしかするとぼく自身がそこでうんこするかもしれないとという予感がわいてきた。特に1年生の誰もうんこしていなかったら、のぞけなった代わりにぼくがうんこするかもしれなかった。1年生がうんこしているところをのぞければ問題なく一番気持ちがいいけど、ぼくがうんこするのも、おしりを出すのとか臭いとかいろいろ恥ずかしいことがある一方で、それはそれで気持ちいいことは確かだった。

 そして、ぼくは1階西の男子児童便所に着いた。二つのオンナベンジョが空きっぱなしになって誰もいないどころか、小の方にも誰もいなくて。教室やグラウンドで遊ぶ声だけが聞こえていた。ぼくは奥の方のオンナベンジョの灰色のタイルに埋め込まれた足もとにある真っ白い便器を眺めた。そのしゃがむとおしりの口の真下になるあたりにドア全開してたあの子やつとくんや今おなかの中にあるぼくのうんこ横たわる光景を思い浮かべた。うんこの汚さとは対極の便器の真っ白さがものすごくまぶしくて引き寄せられるようで、ズボンやパンツも下ろさず口からうんこできたらぼくは確実にそのまましていた。
 まわりにぼくは本当以外誰もいなかった。このまま中に入ってカギをかけてぼくもうんこしよう、そうすれば早くきもちよくなってラクになれる、そう思って入ってドアを閉めようとしたとき、やはり、このままうんこして、それを1年生にのぞかれたらどうしようと不安になった。徳にせっかく自分がのぞいたつとくんにのぞかれるのはすごくイヤだった。しかも、ここは1年生の教室はすぐ近くだったからそれはありそうなことだった。
 ぼくは今日が最後になる放課後の合唱部の練習が終わるまでガマンすることにした。今部活動しているのは合唱団だけなので、それが終わった後は学校には誰もいなくなる、そうすれば誰にものぞかれる心配なくうんこができるはずだった。そのときはあの子たちとおなじようにここでしよう。そう決心しておしっこだけして教室に戻った。

(続く)
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