ぼくに毛が生えた

理科準備室

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第19話 卒業

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つとくんのうんこしてるところをのぞいてからも、ぼくは同じように教材係のしごとで国語教材室に行く途中、授業中の1階西の男子児童便所に立ち寄ることで何回かそこのオンナベンジョでうんこしている子をのぞくことができた。
 ほとんどは入っているところをドアの下のすきまからのぞいたけど、中にはあの子みたいにドア全開でうんこしている子も二人くらいいた。
 それは授業中に先生に頼まれて教材室に行くぼくと、同じく授業中に教室を抜け出してこっそりうんこしに来る1年生との誰にも知られてはいけない楽しい秘密の遊びだった。
 その子たちが学校のオンナベンジョで気持ちよくうんこしていることがバレたら穴実小ではうんこもらしのバイキンは確実だった。
 それ以上に、ぼくが教材を取りに行っている途中に1年生の子がうんこしているところをのぞいているのがバレたら、お父さんの買ってきた週刊誌に挿絵入りでのっていた会社の女子寮の便所の便槽に侵入しておねえさんたちのおしっこやうんこをしているのぞいていたチカンみたいに警察に逮捕されるかもしれなかった。
 それでも、ぼくはやめることができなかった。それどころかだんだんその子たちをのぞくことだけでは物足りないようになっていった。

 ただのぞくだけでも、目に見えたことでその子たちの心の中を想像するだけで胸がドキドキしてちんぽがかたくなるほどコーフンした。
 でも、それは目で見えるだけで肌での感じはなかった。学校でおしりを出す時の恥ずかしさやうんこがおしりの穴を通っていくときのきもちよさ、そして出してしまった自分のうんこのにおいといったものを本当にその子たちのように肌で感じることはできなかった。

 本当なら、ぼくもあの子たちと同じ1年生のころ、学校でうんこしていれば、そういったものを本当に肌で感じることができてきもちよかったかもしれない。それだけでなく、いきむときに、つとくんのような天使みたいなきれいな声が出ていただろう。

 しかし、ぼくが1年生のころは。手が不自由なので誰よりも自分がバイキンになることがこわくて、学校でうんこしたくなったらいつも家までガマンしていた。学校でうんこをガマンするのは苦しかったけど、家の便所で思い切りうんこするときはいつも、学校の便所でうんこするバイキンな子に勝った気がして、それで満足していた。

 本当にドキドキするほど気持ちがいいのは、バイキンになっても学校でうんこする方だと1年生を見てぼくはやっと気づいた。
 そんなことでバイキンになるのは学校で最低になることだけど、あの子たちと肌で感じることで同じになるので、家までガマンすることにはないドキドキ感があった。しかし、本当に同じになるにはもうぼくのちんぽには毛が生えていたし、何よりも声が変わっていたので、あの子たちのようにもうぼくはきれいでなかった。

 それにぼくには時間がもうなかった。気づいた時は6年生の3月で、今月末にはこの小学校を卒業しなければならなかった。周りにちんぽに毛がはえたような運動部の丸刈りしかいない真っ暗な中学校の世界がぼくを待っていた。そこは合唱部や、つとくんのような授業中に1階西の男子児童便所でうんこしていた1年生たちはいない世界だった。それまでに学校でうんこしておかなければ、という気持ちがぼくの心の中に芽生えてきた。
 でも、学校でうんこしたくなることは思ったより簡単じゃなかった。ぼくの場合、家で夕飯を食べるとその後、どうしてもおなかが痛くなって家でうんこしてしまうはめになって、学校にいるときにうんこしたくなることはなかった。

(続く)
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