ぼくに毛が生えた

理科準備室

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第10話 お昼休み

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 ぼくは5年2組の教材係だった。教材係は授業に使う教材を1階の国語教材室などの教材室から持ってきたり、使った教材を返す仕事をする係だった、ぼくはどの教材室にどういう教材があるのかおぼえるのが得意だったので、この仕事についてだけは、ぼくはO先生に重宝されていた。
 その日もぼくは5年2組と同じ3階の社会科教材室に5時間目の社会科の授業の教材を取りに行ってほしいと頼まれていた、昼休みの体育館での遊びを早く抜けて、その途中できのう使った教材を戻すために5年2組の教室に向かったけど、その途中で児童便所によった。昼休みのあいだならば、児童便所は誰もいなくて、ちん毛を見られる心配なくおしっこできるので、できるだけそういうときに行くようにしていた

 児童便所につくと、2つあるオンナベンジョのドアだけは一つしまっていた。
 1年生のときから、昼休みの間にその向こうでこっそりうんこしているようにドアが閉まっているのは何回か見たことはあるし、ぼく自身も、入学以来あのドアのすきまから誰かにのぞかれたるのがイヤで学校の児童便所でうんこできなかったけど、4年生のおなかをこわしたときは、どうしても家までガマンできなくなって、誰にも見つからないように昼休みの児童便所でうんこした。

 でも、ぼくはそういう子がドアの向こう側にいたら、昼休みであってもなくても入学以来こっそりのぞいていた。ぼくは学校でうんこをしなくても、もともと手が不自由でバイキンだったけど、ぼく以外の子がどんなふうにうんこをおしりから出して学校を汚すバイキンになるかすごく興味があった。自分以外の子がバイキンになるとことを見るのはきもちがよかった。ぼくは自分のおしりからどのようにしてうんこが出てくるかについても興味があったけど、家でするときにまたの間からのぞき込んでも見えなかった。でも、他の子ならそれが見えた。
 それに4年生の児童便所でうんこしたときも。ドアを閉めてからうんこが終わるまでずっと誰かにのぞかれたらどうしようとドキドキしていたけど、のぞいているその子もぼくと同じように心配をしながらうんこしているんだなと思うことは、ぼくをものすごくのぞきたくなるまでにコーフンさせた。 

 でも、O先生じゃなくても先生が昼休み児童便所でうんこしていることはたまにあった、そういうのはバレたらまずいし、大人がうんこしているところを見るのは汚くてイヤだったけど、学校指定の運動靴じゃなくておしりも大きいので、のぞけばすぐわかって逃げた。でも、いつものろうか側の方で、しかもうんこの臭いがしないので、のぞくまでもなく、O先生で間違いなさそうだった。
 ぼくだけでなくかなりの同じ学級の子がO先生のときドアの向こうからうんこの臭いがしないことを不思議に思っていた。当時の穴実小は和式の水洗便所だったけど、うんこしているときは必ずドアの外に臭いはただよってくるし、終わって水を流したときもにおいがしばらく残った、ぼくがうんこしたときも、ドアを開けたらこもった臭いがすごくてあわてて走って逃げた。
 だから、ぼくはその閉まっていたドアに関心を持たずにジャーっとおしっこしていた。

 するとろうかの方からダンシたちが大声で話しながら歩いてくるのが聞こえた。彼らは声からしてキヨシやテルヒロなどうちのクラスのおきゅう部の子たちらしかった。ぼやぼやしていたら、またちん毛見せろと言われそうなので、ぼくはおしっこが終わったちんちんを急いでしまった

「おい、あそこ閉まっているぜ!」
 彼らはぼくなんかより、ドアの閉まっているオンナベンジョの方に興味があるらしく、ぼくなんか目をくれずに、ドアの前に集まった。そして、そこで、穴実小の男子児童便所のオンナベンジョでうんこしていて誰かに見つかったときに決まって訪れるうんめいが始まった。
「おい開けろよ」
「おまえ、うんこもらしだろ、ああ恥ずかしい!」
「ケツがみえるぞ!」
 と、そのドアをノックしたり、下のすきまからのぞきこんだり、果てはドアをよじ登って上からのぞこうとしたり、といつものように大騒ぎになった。バカだな、あの中はO先生かもしれないのに、と思いつつ、自分も4年生の昼休みに児童便所でうんこしたあのときに誰かに見つかっていたらああなったとぞっとしながら手を洗い、外に出ようとした。 すると、ドアのむこうから
「何をしているんだ! 誰がやっているかわかっているんだぞ」
「また、おまえたちだな!」
 とO先生の怒鳴る声が聞こえた・・・やっぱり、ぼくは巻き添えをくらわないためにいそいで5年2組に向かった。でも、後ろからO先生から
「あれほど、他の子がうんこしているところをの絶対ぞいたりからかってはいけないと言っていただろう」
「おまえたち、教室にちょっと来い!」
という声は否応なく耳に入ってきた。

 そして、ぼくは彼らに先んじて、きのう使ったの教材を取りに5年2組に寄って、それから社会教材室に行き、再び5年2組の教室に戻った。入口から見るともうO先生とキヨシやテルヒロたちは教室に戻っていて、O先生は前に彼らを並べていた。先生は白い線が入った青いジャージ姿だった。ぼくは教室に入ってはいけないことに気づいて、外からそれを見ていた。

「人のうんこしているところをのぞいた、しかも2度目、のお前たちは、先生もちょうど出そうだから、約束通りあの罰を受けてもらうぞ、今日はキヨが代表だ。」
 その声はどこかふざけ半分だった。
「えっ、オレがあの罰を受けるんですか、許してください」
 キヨシの声もやはりふざけ半分だった。
「そうだ、男と男の約束だろう、そこにあお向けに寝ろ。他のものは逃げないように手足を押さえつけろ」
 キヨシはO先生が指でさした教室の床にしぶしぶ寝た。見ている子の中で「ごめんな、ヨシ」と言いながらヨシオとテルヒロがそれぞれ腕と足を押さえつけた、そしてO先生はヨシオのからだをまたぐと、顔のあたりにおしりが来るようにしゃがんだ。
「じゃあ行くぞ、ヨシ、お前たちもしっかり見てろ、今度こういうことをしたらこうなるんだから。」
「先生、お願いします」
 ぼくはその姿勢でどういう罰を受けるか想像もつかなかった。でも、おきゅう部では失敗してひっぱたかれるなど何か罰をうけるときは必ず「先生、お願いします」、それが終わったあとは「先生、ありがとうございました」ということになっているのは知っていた。

 するとO先生は一瞬顔を上にあげて目をつむったかと思うと、ブッという音が聞こえた。O先生のおならだった。
「先生、ありがとう・・・わっくせえくせえよ、ははは」
 手足を押さえつけられたままヨシオは身をよじりながら笑いころげていた。
「どうだ、臭いだろう、ははは」
 O先生もすごく楽しそうだった。手足を押さえつけていたヨシオとテルヒロを含むまわりの子たちも笑いころげていた。ぼくは見てはいけないものを見てしまったことに気づいて、教室に入らずに教材を手にその場を走り去った。

(続く)
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