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社会科野ぐそ編
第十七話 えん足野ぐそ事けん
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丸男くんは、最初の給食後の学級うんこ事件の後も、何度も休み時間に児どう便じょで学級うんこしたことで、一年生では「うんちくん」として有名だったけど、全校に「うんちくん」として知られるようになったのは、同じ年の5月の春の遠そくで起きた「えん足野ぐそ事けん」だった。
春の遠足はクラスごとのバスに乗るから1年2組だったぼくは、丸男くんがのっているバスと別の後に続くバスにのっていたけど、山の中の左右とも林の道で丸男くんの乗っている前のバスがとつぜんハザードを出して路そく帯に入って止まったのはぼくもおぼえている。
実は、それが「えん足野ぐそ事件」の始まりだった。1年2組のぼくたちのバスも、かなり丸男くんが乗っていたバスとははなれていたけど路そく帯に入って止まった。でも、丸男くんのバスは前のカーブの向こうだから、のぐそっ子になるために林の中に入っていくところはぼくたちには見えなかった。
そんな山道でとつぜん止まったのでぼくのクラスのバスの車内は大さわぎになった。その時、丸男くんがズボンとパンツを下ろしてのぐそっ子になろうとしていることはぼくたちは知らなかった。 「先生が聞いてくるからバスから出ないで待ってろ」といって、担任の温知先生は前のバスに走って行った。
そのころはまだケータイがなかったので先生も他のバスに連らくをとるには直接行くしかなかった。しばらくして、温知先生はまた走ってもどってきた。でも「前のバスで具合の悪くなった子がいるから、ここでしばらく待ってあげよう」と言っただけだった。止まった本当の理由を温知先生は言わなかった。
ぼくたちが本当の理由、つまり丸男くんがのぐそっ子になったのを知ったのは、バスが目てき地の公えんに着いてからだった。目的地の公えんでぼくたちのクラスがバスを降りると先に丸男くんと同じクラスの子たちが降りていた。その中の、同じ登こう班の子が、ぼくの顔を見るとすぐにかけよってきた。
「お前のいとこの丸男は花積先生とケッコンするんだよな!エッチだよな!」と興ふん気味に話してきた。そのときのぼくの1年3組の担任の温知先生は男の先生だったけど、花積先生は丸男くんの女の先生だった。若くてスポーツも得意なので一年生だけでなく穴実っ子みんなに人気があった。
でも、なぜ花積先生が丸男くんとケッコンするのかぼくにはわからなかった。でも、その子はそんなぼくにお構いなしに「丸男のヤツ、さっきバスをとめて、うちの先生に連れられて、林の中で野ぐそして来たんだよ」とさらに興ふんぎみに話をつづけた。
ああ、前のバスがとまったとき丸男くんは野ぐそしていたのかと、ぼくは納得するとともにおどろいた。ぼくもおぼえていたけど、そこには便じょを借りられそうな建物は何もなかった。そんなところでうんこしたくなったらかべも戸もない林の中でおしり丸出しでのぐそっ子だった。
みんな家や学こうの便じょの中でさえおしり丸出しでうんこするのがはずかしくてこっそり行くのに、丸男くんはみんなの目の前でバスを止めて林に入っていき、外でおしりを出してうんこしたんだ、それも花積先生の目の前で。
目的地の公園では一年生のみんなの間ではともう遊ぶのも忘れて、丸男くんが遠そくのバスを停めてのぐそっ子になった話に夢中だった。当の丸男くんは、かわいそうにハエのようにしつこく付きまとわれて「どれくらい出た?」とか「くさかった?」と質問されていた。
そのとき3組の子たちから聞いた話によると。バスの中で丸男くんはとつぜん立ち上がったそうだ。丸男くんは何か思いつめたような、あおざめた顔をしていたので、車よいをしたのかとみんなその時思った。でも、そのすぐあとに「先生うんこ!」とさけんだ。 そのとき入学してからまだ一ケ月しかたっていなかったけど、丸男くんは最初の給食の日の昼休み以来、休み時間に児どう便じょで学級うんこして見つかったことは何回かあった。その少し前は授業中に立ち上がり「先生、うんこ!」といって学級うんこに行ったいう事けんまでおこした。
そんなことがあって 丸男くんの「うんちくん」ぶりはもう3組のみんながよく知っているところだった。でも、そこは児どう便じょが歩いてすぐの学こうの教室じゃなくて、家も何もない山道を走っているバスだったので、3組の子たちは丸男くんは面白いじょうだんを言った思って笑った。
でも、一番前の席の花積先生はすぐに本とうのことと気付いた。「静かに! 公えんまであともう少しよ、がまんできないの?」と聞いた。「もう、がまんできないです」と丸男くんは答えた。ぶるぶるふるえながら体をそらせおしりをかかえ始めたので本当にみんなの目にもぎりぎりそうなのがわかってしまった。
花積先生は「朝出るとき、家でうんちしてこなかったの?」と聞いた。丸男くんは「してきましたが、ごはん3ばいおかわりしたので、またしたくなりました」と答えた。本当にきん急事たいなのに、丸男くんのどこかのんびりした返事はバスに乗っていたみんなを笑わせた。
「このあたりお便じょないのよ、どうするの」と花積先生は困った顔をした。 「お前バケツにケツ出してクソしろよ!」一人の子が運てん席のわきにあるバケツをゆびさして笑った。まわりの子たちからは「バケツ、バケツ!」コールが上がった。
ぼくのところじゃないけど、その子たちと同じ幼ち園で、1組に「バケツ」と呼ばれている子がいた。バス遠足で丸男くんみたいになって、バケツの中にしたからそのあだ名になったらしかった。花積先生は「静かにしなさい、お友だちが大変なのよ!」とすぐに止めたけどバケツコールは続いた。
「丸男くん、仕方がないからお外でしない? 着がえのズボンやパンツも持ってきてないし。このままだとはずかしいことになるよ。」。バケツコールの子たちを、ふるえながら、ふし目に見ていた丸男くんはやっと決心したらしく口を開いた。
そして「うん、先生、バスを停めて。ぼく、そこでする」と言うと、丸男くんは左の林のなかを指さした。バケツコールは終わったけど車内じゅうから「おーっ」いう声が聞こえた。「丸男くんはえらいわ、きちんと判断できて。運転手さんあの左の小道あたりにバスを止めてください」と先生は言った。
「丸男、おまえのぐそするんだ、はずかしいな」とか「丸男、のぐそに行くんだったら、おれもつれてってくれよ」という声がバスのあちこちから上がった。すぐにバスは停まり、前のほうのドアが開いた。
さわぐ子たちをふりかえることなく、みんなと同じ青い体そう着に赤い運動ぼうしをかぶった丸男くんは一目さんに開いたドアに向かって、からだをそらし、おしりをかかえながら走って行った。でも、バスの降り口のまえにえんじに白い線が入った体そう着を着た花積先生が立ちふさがった。
「先生どいてよ、もれそうだから、はやくどいてよ!」と丸男くんはさけんだ。「丸男君がお外でするなら、先生もいっしょについていきます」と花積先生は言った。「先生だいじょうぶだよ、一人で行けるよ。お父さんとクルマで出かけたとき山の中でうんこしたことあるんだよ!」と丸男くんは言った。
「丸男すげーなー、さすがうんちくんだな。学級うんこだけじゃなくて野ぐそもしてるんだ」との声が聞こえた。「一人で行ってはいけません! 山道はきけんよ。もし足をすべらせて谷に落ちたらどうするの、おかしな人にエッチないたずらされるかもしれないし。先生がついていくわ。」
丸男くんは花積先生から目をそらしてじっと下の方を見ていた、先生はそんな丸男くんをじっと見つめて「だいじょうぶ。先生は学校のママだからはずかしくないよ。はやくあそこに行っておなかの中の物を出してこようね。」と言った。丸男くんは先生に顔を向けて何かあきらめたようにこくりとうなずいた。
先生はうしろの3組の子たちに言った。「静かにしなさい! これから先生は丸男くんと行ってきます。すぐもどるから、みんなバスから出ないで待っていてね」。先生と丸男くんはバスを降りてそばの細い山道に入って行った。3組の子たちは二人の背中をじっと見ていた。
でも、少し歩いただけで、青い体操着の方はえんじ服の方に何か言うとすぐ走ってもどってきた。えんじ色の方はそこに待っていた。そして丸男くんはバスの階段をかけ上がり自分の席に向かうと、大あわてで持ってきたリュックにしまってあったちり紙をつかみ、走って花積先生が待っている外へもどって行った。
3組の子たちは林の小道を歩いていく二人の背中をずっと目で追っていたけど、いつの間にかしげみにかくれて見えなくなった。それからしばらくして、二人はその小道をもどってきた。丸男くんは少しはずかしそうにうつむいていたけど、うんこが出たせいか、ほおに赤みがさしたもとの元気な顔にもどっていた。
もう、全部使い果たしたのか、その手にちり紙はもうなかった。バスの中に入って、丸男くんが自分の席にもどろうとしたとき、中の男子は席を立ちあがり囲んできた。「ねぇねぇ、丸男、外でクソしてどんな気持ちだった?こわくなかった?」。「どんな形のうんこが出た?固いの?やわらかいの?」などといっせいにいろいろな質問を浴びせてきた。「静かに! もうバスが出発するから、すぐに席にもどりなさい」と先生が言った。 「みんな席に着いた? 思い切ってみんなの前で今こまっていることを打ち明けることができた丸男くんはすばらしいと思います。」と先生は丸男くんをほめた。「みんなもお便じょのことに限らず何か困ったことがあったら先生にはずかしがらずにそうだんしてね」と先生は言った。
すると「学こうの登下校のとちゅうでうんちがガマンできなくなったときはどうするの」と一人の子が先生に聞いた。 「そうねえ、出るまえにおうちや学校のお便じょですませてくるのが本当よ。でも、外でおなかが痛くてがまんできないときは、だれにも見られない所でしちゃいなさい。もらすよりいいわ。」
と先生は答えた。そして「でも、そのあとすぐにおうちの人か先生にかならず言うのよ」と先生は付け加えて、その場はふつうの遠足にもどった。でも、丸男くんがのぐそっ子になったというニュースは1組のバスが目的地の公園にとうちゃくすると学年中にたちまち広まった。
帰りもバスは同じ道を通ったけど、そこを通ったとき、どのクラスのバスの中でも「うぁっ! 丸男がのぐそしたところだ」言う声がいっせいにあがった。そして次の次の日くらいは「えん足野ぐそ事件」という名で学級や学年をこえて穴実小じゅうに広まった。これで丸男くんは「こんだて表野ぐそ事けん」以来、穴実小に久しぶりに現れたのぐそっ子と認められ、穴実小ではだれも知らない子がいない本物の「うんちくん」になった。
(つづく)
春の遠足はクラスごとのバスに乗るから1年2組だったぼくは、丸男くんがのっているバスと別の後に続くバスにのっていたけど、山の中の左右とも林の道で丸男くんの乗っている前のバスがとつぜんハザードを出して路そく帯に入って止まったのはぼくもおぼえている。
実は、それが「えん足野ぐそ事件」の始まりだった。1年2組のぼくたちのバスも、かなり丸男くんが乗っていたバスとははなれていたけど路そく帯に入って止まった。でも、丸男くんのバスは前のカーブの向こうだから、のぐそっ子になるために林の中に入っていくところはぼくたちには見えなかった。
そんな山道でとつぜん止まったのでぼくのクラスのバスの車内は大さわぎになった。その時、丸男くんがズボンとパンツを下ろしてのぐそっ子になろうとしていることはぼくたちは知らなかった。 「先生が聞いてくるからバスから出ないで待ってろ」といって、担任の温知先生は前のバスに走って行った。
そのころはまだケータイがなかったので先生も他のバスに連らくをとるには直接行くしかなかった。しばらくして、温知先生はまた走ってもどってきた。でも「前のバスで具合の悪くなった子がいるから、ここでしばらく待ってあげよう」と言っただけだった。止まった本当の理由を温知先生は言わなかった。
ぼくたちが本当の理由、つまり丸男くんがのぐそっ子になったのを知ったのは、バスが目てき地の公えんに着いてからだった。目的地の公えんでぼくたちのクラスがバスを降りると先に丸男くんと同じクラスの子たちが降りていた。その中の、同じ登こう班の子が、ぼくの顔を見るとすぐにかけよってきた。
「お前のいとこの丸男は花積先生とケッコンするんだよな!エッチだよな!」と興ふん気味に話してきた。そのときのぼくの1年3組の担任の温知先生は男の先生だったけど、花積先生は丸男くんの女の先生だった。若くてスポーツも得意なので一年生だけでなく穴実っ子みんなに人気があった。
でも、なぜ花積先生が丸男くんとケッコンするのかぼくにはわからなかった。でも、その子はそんなぼくにお構いなしに「丸男のヤツ、さっきバスをとめて、うちの先生に連れられて、林の中で野ぐそして来たんだよ」とさらに興ふんぎみに話をつづけた。
ああ、前のバスがとまったとき丸男くんは野ぐそしていたのかと、ぼくは納得するとともにおどろいた。ぼくもおぼえていたけど、そこには便じょを借りられそうな建物は何もなかった。そんなところでうんこしたくなったらかべも戸もない林の中でおしり丸出しでのぐそっ子だった。
みんな家や学こうの便じょの中でさえおしり丸出しでうんこするのがはずかしくてこっそり行くのに、丸男くんはみんなの目の前でバスを止めて林に入っていき、外でおしりを出してうんこしたんだ、それも花積先生の目の前で。
目的地の公園では一年生のみんなの間ではともう遊ぶのも忘れて、丸男くんが遠そくのバスを停めてのぐそっ子になった話に夢中だった。当の丸男くんは、かわいそうにハエのようにしつこく付きまとわれて「どれくらい出た?」とか「くさかった?」と質問されていた。
そのとき3組の子たちから聞いた話によると。バスの中で丸男くんはとつぜん立ち上がったそうだ。丸男くんは何か思いつめたような、あおざめた顔をしていたので、車よいをしたのかとみんなその時思った。でも、そのすぐあとに「先生うんこ!」とさけんだ。 そのとき入学してからまだ一ケ月しかたっていなかったけど、丸男くんは最初の給食の日の昼休み以来、休み時間に児どう便じょで学級うんこして見つかったことは何回かあった。その少し前は授業中に立ち上がり「先生、うんこ!」といって学級うんこに行ったいう事けんまでおこした。
そんなことがあって 丸男くんの「うんちくん」ぶりはもう3組のみんながよく知っているところだった。でも、そこは児どう便じょが歩いてすぐの学こうの教室じゃなくて、家も何もない山道を走っているバスだったので、3組の子たちは丸男くんは面白いじょうだんを言った思って笑った。
でも、一番前の席の花積先生はすぐに本とうのことと気付いた。「静かに! 公えんまであともう少しよ、がまんできないの?」と聞いた。「もう、がまんできないです」と丸男くんは答えた。ぶるぶるふるえながら体をそらせおしりをかかえ始めたので本当にみんなの目にもぎりぎりそうなのがわかってしまった。
花積先生は「朝出るとき、家でうんちしてこなかったの?」と聞いた。丸男くんは「してきましたが、ごはん3ばいおかわりしたので、またしたくなりました」と答えた。本当にきん急事たいなのに、丸男くんのどこかのんびりした返事はバスに乗っていたみんなを笑わせた。
「このあたりお便じょないのよ、どうするの」と花積先生は困った顔をした。 「お前バケツにケツ出してクソしろよ!」一人の子が運てん席のわきにあるバケツをゆびさして笑った。まわりの子たちからは「バケツ、バケツ!」コールが上がった。
ぼくのところじゃないけど、その子たちと同じ幼ち園で、1組に「バケツ」と呼ばれている子がいた。バス遠足で丸男くんみたいになって、バケツの中にしたからそのあだ名になったらしかった。花積先生は「静かにしなさい、お友だちが大変なのよ!」とすぐに止めたけどバケツコールは続いた。
「丸男くん、仕方がないからお外でしない? 着がえのズボンやパンツも持ってきてないし。このままだとはずかしいことになるよ。」。バケツコールの子たちを、ふるえながら、ふし目に見ていた丸男くんはやっと決心したらしく口を開いた。
そして「うん、先生、バスを停めて。ぼく、そこでする」と言うと、丸男くんは左の林のなかを指さした。バケツコールは終わったけど車内じゅうから「おーっ」いう声が聞こえた。「丸男くんはえらいわ、きちんと判断できて。運転手さんあの左の小道あたりにバスを止めてください」と先生は言った。
「丸男、おまえのぐそするんだ、はずかしいな」とか「丸男、のぐそに行くんだったら、おれもつれてってくれよ」という声がバスのあちこちから上がった。すぐにバスは停まり、前のほうのドアが開いた。
さわぐ子たちをふりかえることなく、みんなと同じ青い体そう着に赤い運動ぼうしをかぶった丸男くんは一目さんに開いたドアに向かって、からだをそらし、おしりをかかえながら走って行った。でも、バスの降り口のまえにえんじに白い線が入った体そう着を着た花積先生が立ちふさがった。
「先生どいてよ、もれそうだから、はやくどいてよ!」と丸男くんはさけんだ。「丸男君がお外でするなら、先生もいっしょについていきます」と花積先生は言った。「先生だいじょうぶだよ、一人で行けるよ。お父さんとクルマで出かけたとき山の中でうんこしたことあるんだよ!」と丸男くんは言った。
「丸男すげーなー、さすがうんちくんだな。学級うんこだけじゃなくて野ぐそもしてるんだ」との声が聞こえた。「一人で行ってはいけません! 山道はきけんよ。もし足をすべらせて谷に落ちたらどうするの、おかしな人にエッチないたずらされるかもしれないし。先生がついていくわ。」
丸男くんは花積先生から目をそらしてじっと下の方を見ていた、先生はそんな丸男くんをじっと見つめて「だいじょうぶ。先生は学校のママだからはずかしくないよ。はやくあそこに行っておなかの中の物を出してこようね。」と言った。丸男くんは先生に顔を向けて何かあきらめたようにこくりとうなずいた。
先生はうしろの3組の子たちに言った。「静かにしなさい! これから先生は丸男くんと行ってきます。すぐもどるから、みんなバスから出ないで待っていてね」。先生と丸男くんはバスを降りてそばの細い山道に入って行った。3組の子たちは二人の背中をじっと見ていた。
でも、少し歩いただけで、青い体操着の方はえんじ服の方に何か言うとすぐ走ってもどってきた。えんじ色の方はそこに待っていた。そして丸男くんはバスの階段をかけ上がり自分の席に向かうと、大あわてで持ってきたリュックにしまってあったちり紙をつかみ、走って花積先生が待っている外へもどって行った。
3組の子たちは林の小道を歩いていく二人の背中をずっと目で追っていたけど、いつの間にかしげみにかくれて見えなくなった。それからしばらくして、二人はその小道をもどってきた。丸男くんは少しはずかしそうにうつむいていたけど、うんこが出たせいか、ほおに赤みがさしたもとの元気な顔にもどっていた。
もう、全部使い果たしたのか、その手にちり紙はもうなかった。バスの中に入って、丸男くんが自分の席にもどろうとしたとき、中の男子は席を立ちあがり囲んできた。「ねぇねぇ、丸男、外でクソしてどんな気持ちだった?こわくなかった?」。「どんな形のうんこが出た?固いの?やわらかいの?」などといっせいにいろいろな質問を浴びせてきた。「静かに! もうバスが出発するから、すぐに席にもどりなさい」と先生が言った。 「みんな席に着いた? 思い切ってみんなの前で今こまっていることを打ち明けることができた丸男くんはすばらしいと思います。」と先生は丸男くんをほめた。「みんなもお便じょのことに限らず何か困ったことがあったら先生にはずかしがらずにそうだんしてね」と先生は言った。
すると「学こうの登下校のとちゅうでうんちがガマンできなくなったときはどうするの」と一人の子が先生に聞いた。 「そうねえ、出るまえにおうちや学校のお便じょですませてくるのが本当よ。でも、外でおなかが痛くてがまんできないときは、だれにも見られない所でしちゃいなさい。もらすよりいいわ。」
と先生は答えた。そして「でも、そのあとすぐにおうちの人か先生にかならず言うのよ」と先生は付け加えて、その場はふつうの遠足にもどった。でも、丸男くんがのぐそっ子になったというニュースは1組のバスが目的地の公園にとうちゃくすると学年中にたちまち広まった。
帰りもバスは同じ道を通ったけど、そこを通ったとき、どのクラスのバスの中でも「うぁっ! 丸男がのぐそしたところだ」言う声がいっせいにあがった。そして次の次の日くらいは「えん足野ぐそ事件」という名で学級や学年をこえて穴実小じゅうに広まった。これで丸男くんは「こんだて表野ぐそ事けん」以来、穴実小に久しぶりに現れたのぐそっ子と認められ、穴実小ではだれも知らない子がいない本物の「うんちくん」になった。
(つづく)
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