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学級うんこ編

第九話 運子おばさん

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 ぼくのうんこ姿を運子さだこおばさんに見られたのはぼくが幼ち園を卒園して、小がっ校への入がくを待つ春休みの日の昼下がりのことだった。お父さんとお母さんは仕事で、ぼくは一人で家の居間にいた。図しょ館で借りた「人体のひみつ図かん」を読みながら、テレビの時代げきの再放送を見ていた。
 そのときおなかが急に痛くなり、ふだんは夜しか出ないうんこがしたくなった。ぼくはいつものようにうんこにじゃまなズボンとパンツを居間にぬいでうちの一番おくにある便じょに走った。そのとちゅうの台所でおばあちゃんがつけものを付けているだけで、他に家の中にはだれもいなかった。
 そんなほとんどだれもいない家の中でも、まどのから春の日ざしが差しこむ中で下はちんちんとおしり丸出しのうんこ姿で便じょにいくのは、だれか見られているみたいで何だかはずかしかった。便じょに着くとぼくは古い木の戸をあけて、白い和式の便きをまたいだ。
 そして戸をしめて便きをまたいでしゃがむと、いつものことだけど目の前には一面の古い木の板に半分破れた黄色いセロファンにくるまれた消しゅうざいのボールがきついにおいをさせながらぶらさがっていった。見上げると明かりとりのすりガラスから日の光が差しこんでいた。
 その穴のぼくのおしりの穴のちょうど下にはおとうさんやおかあさんやおばあちゃんやぼくのうんこやしっこや使ったちり紙が便きのふちの近くまで盛り上がっていて、イヤなにおいがのぼってきていた。その穴を見るたびに、5さいのとき、長く入院していたおじいちゃんが亡くなった日のことを思い出した。
 おそうしきの後、焼かれたおじいちゃんの骨がお墓の穴の中にはいっていくのを何も言えないままじっと見ていた5さいのぼくに、いっしょにそれを見ていた小通次おつじおじさんは「おとうさんもおかあさんもおばあちゃんもきみも、いつかは、この、おじいちゃんと同じところに行くんだよ」と言った。
 ぼくのおしりロケット発しゃ寸ぜんのうんこも、もうすぐおしりの穴を通って、お墓の穴に入って行ったおじいさんの骨みたいに、みんなと同じところに行くことになっていた。おなかの中でいっしょに動いていたものが、あのきたなくてくさいところに行くと思うと、ぼくは少し死ぬようなイヤな気がした。夏になるとそこにまるで田んぼ道で死んでいる食用ガエルみたいにうじがわいた。でも、家以外ではうんこできないぼくはそこにするしかなかった。ぼくはうんといきんで、おしりロケットをはっしゃした。
 すぐにズボズボブスッという大きな音ともにおしりの穴が破れつしておしりロケットが飛び出した。
 おならまじりやわらかい感じのうんこがおしりの穴をぬけて、ボトボトと音を立てて便きの穴に落ちていった。それはおとうさんやおかあさんやおばあちゃんのうんこやしっこがたまっているみんなのところにぼくのうんこが行った音だった。うんこに続いて、しっこもちんちんの先から出た。
 みんなのうんこやしっこがたまった便きの穴はのぞくときもち悪くてイヤだけど、そこにぼくがおしりの穴をひらいてうんこするのはいつも気持ちよかった。そのときもぼくの口からは「あん」というエッチな声が思わずもれた。おなかの中もすっきりして、さっき感じていた痛みもほとんどなくなった。
 どんなのが出たのか気になって、ぼくはまたとちんちんの間から便きの穴の中をのぞいた。今、出たてぼくのうんこが、おしりの真下にこんもりと盛り上がっているのが見えた。そこにはおしりの穴の感じどおりにくずれた黄色のやわらかいうんこが出たてのきついにおいをさせていた。
 そのとき便きの穴はふちまでいっぱいで、しかも昼間だったので、ぼくは、ぼくのうんこが久しぶりにはっきり見えた。においもほかのだれにもかがれたくないけど、じぶんのだから何かいいにおいだった。そうして自分のうんこをながめていたら、残りがしたくなってきて、ぼくはうーんといきすぐにおしりの穴からブスブスという音とともに残りのやわらかいうんこがふんしゅつした。
 でも、そのときおばあちゃんのいる台所の方から「きたよ」とという声が聞こえた。それは工場が休みなのでうちに遊びに来た運子おばさんの声だった。ぼくはしまったとおもった。
 便じょからズボンとパンツをぬいだ居間にもどるには運子おばさんがいる台所をとおっていかなければならなかった。このままだと出てからズボンとパンツをぬいできた居間に行く間に下はちんちんとおしり丸出しのうんこ姿で運子おばさんに「こんにちは」しそうだった。
 でも、ぼくが便じょに入っているあいだ、運子おばさんが帰るのはきせきのようなことだとぼくは知っていた。遊びにくると、いつも台所でおばあちゃんと長い長いおしゃべりを始めた。内容は決まって近所の人のうわさ話で、どの家が親せきでだれが最近亡くなったいう内容だった。
 しかも、その人の話はこの間聞いた、どころか、さっき聞いたばかりというのが何回もくりかえされることのはよくあった。そんな話を聞きながら、ぼくは運子おばさんが帰るのを待つしかなかった。うんこはおばさんが来たときは出たけど、その後はどんなにいきんでも出なかった。
 ぷすっという音のおならかちんちんの先からおしっこのしずくか出なかった。しかなく、下の便きの穴を何度もちらちらとのぞいたり、おしりのかゆい所をぼりぼりかいたりして時間をつぶした。ぼくの出したばかりのうんこを見るのは出たときのおしりの穴の気持ちいい感じがよみがえってくるようでおもしろかった。
 でも、その便きの穴からたちのぼってくる、そのにおいはやはりきつくて、着ている上の方の服に染み付きそうでだんだん気になってきた。目の前にぶらさがる消しゅうざいのにおいもきつくてイヤだった。足もしびれてきた。それでも、二人のおしゃべりは盛り上がる一方だった。
 ぼくはすぐにも出たかった。そんな中で、これだけおしゃべりに夢中だったら、運子おばさんはぼくを気にしないんじゃないかという考えが頭の中にうかんだ。ぼくは便じょをでることにした。
 いつものように便きのわきに束でおいてある黒ちり紙を一枚、きたないおしりの谷間のうんこの出てきた穴におしつけてぬぐった。ちり紙を見ると、やわらかいうんこがべっとりと付いていた。そのとき運子おばさんは「今週もまだ出てないのよ」といつもの便ぴの話を始めた。
 運子おばさんはあの丸男まるお」くんと反対に便ぴ気味で、一週間出ないでクスリをのむことがあるのを、おばあちゃんによくぐちっていた。ぼくはおしりをぬぐってちり紙にべっとりとついたぼく自身のうんこを見ながら、なぜこんなにきたなくてはずかしいことなのにクスリをのんでするのか不思議に思った。
 それでも、ぼくはパンツをはいたときによごないように、何もつかなくなるまで、何回も黒ちり紙でそのうんこの出てきた穴をふいては便きに落とした。それににうもれてだんだん出したばかりのぼくのうんこは見えなくなっていった。
 ふいた黒ちり紙に何もつかなくなったのをかくにんすると、ぼくは立ち上がり、思い切って便じょの戸を開けた。このまま居間に行ってそこにズボンとパンツをはけば、おしゃべりに夢中な運子おばさんにぼくのうんこ姿を見つからずに済みそうだった。
 でも、何気なくおしりをふいた指のにおいをかぐと、少しうんこくさかった。ふいたときにやわらかいうんこが黒ちり紙をしみたらしかった。ぼくは、居間に行く前にと中の台所の水道でどうしてもうんこくさい手を洗わなければならなかった。
 便じょと台所の間にはふろ場があった。ぼくはその間をさっき見ていたテレビの時代げきに出てきた、おほりからお城にしん入するにん者のように、かべ伝いにこっそりと横に歩いていけば、運子おばさんにも見つからないかもしれないような気がした。
 ぼくは、便じょからふろ場の戸を、そしてその先の台所へ、おしりはさっきうんこをした時の丸出しのままだけど、にん者になったつもりでそっとしのび足でかべ沿いに横歩きした。名付けて「にん法うんこ姿かくれの術」だった。でも、ぼくのにん法はすぐに失ぱいに終わってしまった。
台所で手をあらおうと水道のじゃぐちに手をのばしたときに、ぼくは二人に見つかってしまった。おばあちゃんに「運子おばさんがきているからあいさつしなさい!」といわれて、ぼくはその場にこおりついたように立ち止まってしまった。そして、しかたなく笑顔を作って、おしり丸出しのままうしろをふりかえった。
 「こんにちは」と言おうとする前に運子おばさんはそんなぼくのうんこ姿を「かっこいい! ちんちんがかわいい!」と指さしてさんざん冷やかした。とてもはずかしかった。それ以来、家でも、昼間にうんこしたくなったら、運子おばさんが来るかもしれないから、夜までがまんするようになった。
 そのときは、本当に運子おばさん一人だけだったけど、旅かんの広間でのすき焼きパーティで周りには他のおじさんやおばさんやいとこもいる前で、パンツもズボンもぬいでうんこ姿になるなんて、どれだけ冷やかされるかと思うとてもできなかった。
 ましてや学校でうんこ姿になるなんて、その場で冷やかされるだけですみそうもなかった。のぞかれたりからかわれたり、それだけでなくぼくが幼ち園でやったみたいに、便じょで全ぬぎして入った子のパンツやズボンをかくすいたずらをされるキケンもあっ
 でも、丸男くんみたいに半下ろしでできる自身もなく、どちらでするかきまらないまま、ぼくはおしりロケットにつき動かされるまま、秘みつの児どう便じょに向かって昼休みの体いく館と校舎を結ぶわたりろうかを小走りに走っていた。

(つづく)
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