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うんこ探偵
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穴実第二小にはどのクラスの男子にも「うんこ探偵」と呼ばれている特にエッチな男子のグループがいて(千枝子ちゃんのクラスの「うんこ探偵」のリーダーはけんいち君でした)休み時間になると決まって学校のお便所でうんこをする男子がいないか目を光らせていました。
かつてはちり紙を先生にもらいに行く子が「うんこ探偵」のターゲットになっていましたが、衛生検査の結果、クラスの男子の大半がちり紙を持ってくるようになった今でも、「うんこ探偵」の子たちはあきらめません。
彼らはクラスの一人ひとりの行動を観察していて、おなかを痛そうに抱えている子とか、遊びに行かずに机に座っておとなしくしている子とか、あるいはおならをよくしている子とか、要するにもうすぐ「学校うんこ」する疑いがある子を彼らは目ざとく見つけます。そんな子が席を立って教室を出ると、「うんこ探偵」の男子たちはこっそり後を付けます。そしてお便所に行き大便所に入るところを確認したら、その中のリーダーに当たる連絡役の一人の子が他の子を監視のためにお便所に残して大急ぎで教室に戻り、クラスの男子に向けてアナウンサーの口調を真似ながら「ピンポンパポーン! 臨時ニュースです! 臨時ニュースです! ○○がオンナベンジョに入りました! これから学校うんこの模様です!」と興奮気味にうれしそうな口調でこれからその子がうんこすることを報告するです。
この「うんこ探偵」の「ピンポンパポーン!」は進級して今の学期に入った後に限っても千枝子ちゃんは何度か耳にしていますが、千枝子ちゃんをはじめとする女子が「学校でうんちするだけでなんで大騒ぎするの」とこの報告が来ると決まってに無視しますが、男子たちは違います。そのたびに「○○がうんこしているそうだよ、見に行こうぜ!」「行こう!」とぞろぞろとお便所へ向かっていくのです。
しばらくすると、そのうんこしていた本人の後を「うんこ探偵」がぞろぞろお便所に行った男子たちがついて教室に戻ってきます。そのときの本人の顔は恥ずかしそうに顔を赤らめながら照れ隠しに笑っているのか、うつむいているかほとんど泣きそうになっているのかのどちらかでした。その子がお便所でどういう目にあったのか女子は普通わかりません。ひどい目にあっていることは間違いないなさそうですが、その子は自分の口から決して話しませんでした。先生にも言わないのです。
でも、千枝子ちゃんは偶然それを知る機会がありました。
それは先週のある日の昼休みのことでした。千枝子ちゃんは急にお腹が痛くなってうんちがしたくなってお便所に行きました。穴実第二小のお便所の床は廊下より低くなっていてコンクリートが打ちっぱなしになっていました。使う時は入口にある木のすのこの上でズックを脱いで備え付けのサンダルに履き替えることになっていましたが、女子の方は脱いだズックはありませんでした。
「よかった、お昼休みだから、だれもお便所に入ってないみたい」
千枝子ちゃんは、うんちしたくなった時は必ず使う薄暗いお便所の一番奥の個室まで行くと、そこに入って戸を閉めました。大便所は床より一段高くなっていましたが、やはりコンクリートが打ちっぱなしになって、和式の便器が埋め込まれていて。足を置く位置と「ここに足をおきましょう」の文字が白いペンキで書かれていました。千枝子ちゃんは便器をまたいでそこに足を置くと、つい足元にある穴をのぞきこんでしまいました。薄暗いお便所のもっと暗い穴の底にはみんながしたうんちやおしっこや落としたちり紙がたまっているのがぼんやり見え、そこからいつもの臭いのする風が吹き上げてきました。そして目を上げるとコンクリートの灰色の打ちっぱなしの壁にボールみたいなレモン色の消臭剤が網ぶくろにはいってぶら下がってキツイ香りを放っていました、それらは千枝子ちゃんも毎日目にしていたり嗅いでいたりする風景ですが、毎日接していてもイヤなものはイヤでした。
でも、いくらイヤでも仕方ないので、千枝子ちゃんはスカートを上げてパンツを下げるとしゃがんで、まずシャーと音を立てながらその暗い穴の底に向けておしっこをしました。千枝子ちゃんはおしっこをしながらポケットに手を入れてちり紙をもってきたか確認しました。
「おなか痛い、でもよかった、間に合って。ちり紙は確かに持ってきたし・・・」
そして、次はうんちです。千枝子ちゃんがうーんといきんでおしりの穴を開こうとしたそのとき、男子便所からドアを激しく叩く音がしました。男子便所と女子便所は木の壁一つ隔てただけのなので向こうの物音をはとてもよく聞こえます。千枝子ちゃんはびっくりしてあわてておしりの穴をしめました。
「開けろよ、よしお、そこでウンコしているのはわかっているんだからな」
「学校のオンナベンジョでうんこするよしおのエッチ!」
けんいち君の声でした。
「やだよ!けんいち君」
よしお君はかっこよくて勉強もできておとなしい、クラスの中でも女子の中でも人気のある子で、千枝子ちゃんもちょっと好きでした。
よしお君はその後も必死に叫んだのですが、さらに強くけんいち君はドンドンドンと激しくノックしました。その音は薄暗いお便所全体に響き、男子便所なのにまるで隣の大便所で叩かれているかのように聞こえてきました。お腹の痛みもそのノックの音に合わせるかのようにだんだん強くなり、うんちもだんだんおしりの穴に迫ってきていました。
でも、それが男子便所からのものと分かっていても、千枝子ちゃんは怖くてうんちできませんでした。今うんちしたら、音が男子便所まで聞こえて、「うんこ探偵」をはじめクラスの男子たちがやってくるかもしれません。そういう不安が現実はありえないことだと頭でわかっていても千枝子ちゃんはどうしてもそれを抑えられなかったのです。
「おなか痛い、苦しい、うんちしたい、早く行ってよ・・・」
千枝子ちゃんはは心の中で何度もそうつぶやきました。
「開けてくれないの? よし、こっちから開けてやるぞ!」
けんいち君はそう言うと、ドアを押したり引いたりしているらしい音が聞こえ始めました。古い木造建築の校舎の古いお便所なのでその程度でもあくことがあるらしいです。
「開けないでよ、けんいち君!」
よしお君はまた必死に叫びましたが、そんなのお構いなしにドアを引いたり開けたりする音が女子便所まで聞こえてきました。
「うあ!戸が開いたぞ、よしおのケツが見えるぞ」
どうやら戸が開いたようです。同時にその姿に大笑いしている周りの男子たちの声が聞こえました。
「見ないでよ、お願いだから見ないでよ・・・大きいのが出るから」
「クラスに行ってみんな呼んで来いよ、そんなもの持っているな、えいっ!」
「ああっ、ちり紙持って行かないでよ、ちり紙返してよ!」
よしお君はけんいち君に持っていたちり紙を取り上げられたようです。千枝子ちゃんもお腹が痛くて仕方がありませんでした、でも今うんこを出したら音が男子便所に聞こえて自分もターゲットになりそうなので必死に我慢していました。
「ほらほら、ベンジョ紙、便器の底に捨ててしまうぞ、返してほしければ、俺たちの見てる前でウンコしろ」
「ぼくのちり紙、返してよ!返してよ!」
よしお君はちり紙を取り戻そうとしているのか必死に叫んでいました。
「ははは、ウンコ! ウンコ! 早く出てこい、よしおのウンコ!」
他の男子たちもウンココールを始めました。
「ちり紙返してよ・・・お願いだから返してよ、あっ、もうがまんできない、うう・・」
「こいつ、とうとうウンコもらしたぜ」
「おっ出てきたぞ、本当に学校でウンコしている、よしおエッチだな」
「すげー太いな、きたねー、くせー、ははは」
背後に他の男子たちの「あははは」というイヤな笑い声も聞こえてきました。
「えっ!やだ、よしお君、みんなの目の前でうんちしているの」
思わず、千枝子ちゃんも、あのよしお君がしゃがんでおしり丸出しでうんちしている姿を想像していました。自分もそれに近い姿なので、ものすごく恥ずかしかったですが、なぜかちょっとドキドキしました。
でも、枝子ちゃんもうんちのガマンが限界に来ていました。
「私も出そう・・・。」
しかたなく、千枝子ちゃんはおしりの穴をひらき、ぽとっ、ううんっ、ぽとっと少しずつ少しずつ音がしないように息を殺しながら出していきました。
「そんなに見ないでよ! お願いだから!」
聞こえてくるよしお君の声はほとんど泣き声でした。その声を聴いていると、自分も男子たちの前でうんちしているみたいで千枝子ちゃんはしゃがんでいるひざの上に顔を伏せてしまいました。
「お願い早く終わって、私のうんち・・・」
でも少しずつ出しているせいか、うんちも終わらず、お腹の痛いのも収まらなかったったのです。
「ウンコ終わったな、ベンジョ紙渡すからこれで拭け・・・まだウンコ、ケツに付いているよ。」
「うん・・・」
うんちが終わったあとのよしお君の返事は、さっきのちり紙を取り戻そうとしているときとは反対にまるで何もかもあきらめたように小声で悲しそうでした。それに対してけんいち君もまるで幼稚園の弟にうんちさせたかのように接していました。
「よし、ふき終わったら上げるんだ、ほら、パンツとズボン、ベルトをしめて・・・」
「うん・・・」
そして、よしお君とけんいち君をはじめとするクラスの男子たちはお便所を去っていきました。
男子たちがいなくなると、緊張が解けたのかほっとした千枝子ちゃんのおしりの穴にそれまでたまっていたうんちが一気におしりの穴に押し寄せてきました。千枝子ちゃんも誰もいなくなったことを幸いに派手な音がするのをかまわずにうん!と思いっきりいきんでおしりの穴を開きました。ぶぶっとおならのものすごく派手な音がしましたがすっきりして、お腹の痛いのも収まりました。でも、なんか自分がものすごく恥ずかしい目にあわされたようなイヤな気分が残りました。千枝子ちゃんはおしりを持ってきたちり紙でふいて、便器の穴に落すと、スカートとパンツを元に戻して教室に戻りました
でも、千枝子ちゃんが教室に戻ると、「うんこ探偵」のグループをはじめ、クラスの男子たちが、椅子に座ったよしお君を取り囲んでいました。かわいそうなよしお君は泣きそうな顔で下を向いていました。このクラスの男子の学校のお便所でうんちした子に対する仕打ちはお便所だけで終わらず、教室に着くとその子にはいつもの「学校うんこインタビュータイム」が待っているのです。
「学校うんこインタービュータイム」はお便所にはいっしょに行かなかった子も含むクラスの男子一同に囲まれて「大きいのいっぱい出た?」とか「ケツ、ちゃんと拭いた?」と「いつからウンコしたくなった」と「学校でウンコするの恥ずかしくなかった?」とか、うんちしたときの様子を遠慮なく根掘り葉掘りしつこく聞かれるもので、それは次の授業の開始チャイムまで続くのが恒例でした。そのとき質問のために手を上げる子を指名する進行役を務めるのもたいていけんいち君をはじめとする「うんこ探偵」の子たちでした。
そういう男子たちの遠慮のない質問に対して、泣きながら一言も答えられない子もいました。よしお君の場合もそうで、結局その場で泣き出してしまい一言も答えられなかったのですが。そういう子に対しては男子たちは「お前汚いな、学校ウンコしたんだろう!」というヤジが飛びました。
でも、その一方で、最初は恥ずかしそうにぼそっと答えていても、だんだん調子に乗ってきて「ぶりぶりぶりっ!とすごい音がしていっぱいウンコが出たよ。いくら拭いても拭いてもウンコがもうべっとりとついてきて、うちから持ってきたベンジョ紙が足らなくなって・・・」と聞くだけで、その日の給食がカレーシチューだったら絶対食べられなくなりそうなくらいうんちの一部始終を嬉しそうに興奮気味に詳しく説明してくれる子もよくいたのです。そんな汚い話を聞かされる女子の不愉快な顔をよそに、男子たちは大盛り上りの爆笑大会でした。
千枝子ちゃんは最初は泣き出す方の子がかわいそうだなと思っていましたが、最近はあまり同情しなくなりました。そういう泣いていた子ほど、例のピンポンパポーンが聞こえると真っ先にお便所に走ったり、インタビュータイムで熱心に質問することがわかってきたからです。
よしお君もその後あった他の子の「学校うんこインタビュータイム」で「ねえねえ、どれくらいの大きさだった? 色はどんなの?」と他の子に増して熱心にインタビューしたので千枝子ちゃんはゲンメツしました。
千枝子ちゃんはそんな自分たちのクラスの友だちのうんちで盛り上がる男子の気持ちが理解できませんでした。
友だちの中には学校で絶対うんちしないという子もいましたが、千枝子ちゃんはなるべく登校前に家でうんちしてくるなど学校でしないように努力しているものの、おなかが弱くてよく壊すので、どうしてもしたくなったら学校ですることにしていました。
それに、うんちは食べ物を消化したかすで、おなかの中にためておくと体に良くないからです。
といっても、千枝子ちゃんもやはり学校うんこは恥ずかしかったので、お便所に誰もいないときを狙って一番入口から遠い個室に入るとか、誰かが入っていたら一つ間を開けてするとかいうようなバレない努力はしていました。
逆に見るからにおなかの痛そうな子が先に入ってきても最低一つ間を開けて入り、おしっこしている時に前の方に入った子がうんちを始めたら音はできるだけ聞かないようようにして早く出るようにしました。
千枝子ちゃんは自分がうんちしていることも知られたくありませんでしたし、ほかの子がうんちしていることも知りたくありませんでした。だからほかの子のうんちに興味津々の男子が理解できなかったのです。
そんな細心の注意を払っても、かなり臭いうんちをして出たあと、ドアの外にクラスの友だちが待っていたことはありました。
でも、そんなときでも動揺しないで「ゴメン、臭いかも」と一言いえば「いいよ、いいよ」と許してくれました。男子のようにうんちをして個室を出てきたからといってからかわれるはありませんでした。
こういうときお腹の弱い千枝子ちゃんは本当に女の子に生まれてきてよかったなと思いました。
ただ、恥ずかしさのあまり顔を伏せて無言で走って逃げるようなことをしたら「何なのよあの子、かわいい顔してうんち臭いのよ!」とカゲクチを叩かれることがあるのが女の子の怖いところですが。
だから、千枝子ちゃんはこの衛生検査の朝に学校のお便所でうんちしてきたのが男子にバレるのだけはまずい、ひょっとしたら女の子なのにインタビュータイムなの・・・と思ったのですが、さっきからけんいち君は「ゴリウンコ! ゴリウンコ!」と一人興奮気味に叫んでいるだけで「うんこ探偵」をはじめとする男子たちはそれ以上聞いてくることはありません。よかった、と千枝子ちゃんは思いました、現実には女子便所で個室が閉まっているからといっていくらエッチな「うんこ探偵」もチェックなどするはずがないのですから。
「こらっ、やめなさい!」
教務室から佐藤先生がもどってきました。佐藤先生はけんいち君の机を見ると
「けんいち君、またちり紙持ってこなかったの!
連絡帳にもあれほどちり紙を持ってくるように書いたのに?
持って来ないと困るのは、あなた自身よ!学校でうんちしたくなったらちり紙がないと困るでしょ!
ちり紙がないからといって、ハンカチや靴下で拭いて、そのまま便槽に捨てる子がいると汲み取り業者さんが困っていたわよ。」
そういう先生の注意に対して、けんいち君はボソッとつぶやきました。
「学校のオンナベンジョでなんか、オレ、クソしない」
「けんいち君、うんちなんか誰でもするものに決まっているでしょう! しばらく廊下に立って反省しなさい!」
結局、けんいち君はしばらく廊下に立つことになりました。
かつてはちり紙を先生にもらいに行く子が「うんこ探偵」のターゲットになっていましたが、衛生検査の結果、クラスの男子の大半がちり紙を持ってくるようになった今でも、「うんこ探偵」の子たちはあきらめません。
彼らはクラスの一人ひとりの行動を観察していて、おなかを痛そうに抱えている子とか、遊びに行かずに机に座っておとなしくしている子とか、あるいはおならをよくしている子とか、要するにもうすぐ「学校うんこ」する疑いがある子を彼らは目ざとく見つけます。そんな子が席を立って教室を出ると、「うんこ探偵」の男子たちはこっそり後を付けます。そしてお便所に行き大便所に入るところを確認したら、その中のリーダーに当たる連絡役の一人の子が他の子を監視のためにお便所に残して大急ぎで教室に戻り、クラスの男子に向けてアナウンサーの口調を真似ながら「ピンポンパポーン! 臨時ニュースです! 臨時ニュースです! ○○がオンナベンジョに入りました! これから学校うんこの模様です!」と興奮気味にうれしそうな口調でこれからその子がうんこすることを報告するです。
この「うんこ探偵」の「ピンポンパポーン!」は進級して今の学期に入った後に限っても千枝子ちゃんは何度か耳にしていますが、千枝子ちゃんをはじめとする女子が「学校でうんちするだけでなんで大騒ぎするの」とこの報告が来ると決まってに無視しますが、男子たちは違います。そのたびに「○○がうんこしているそうだよ、見に行こうぜ!」「行こう!」とぞろぞろとお便所へ向かっていくのです。
しばらくすると、そのうんこしていた本人の後を「うんこ探偵」がぞろぞろお便所に行った男子たちがついて教室に戻ってきます。そのときの本人の顔は恥ずかしそうに顔を赤らめながら照れ隠しに笑っているのか、うつむいているかほとんど泣きそうになっているのかのどちらかでした。その子がお便所でどういう目にあったのか女子は普通わかりません。ひどい目にあっていることは間違いないなさそうですが、その子は自分の口から決して話しませんでした。先生にも言わないのです。
でも、千枝子ちゃんは偶然それを知る機会がありました。
それは先週のある日の昼休みのことでした。千枝子ちゃんは急にお腹が痛くなってうんちがしたくなってお便所に行きました。穴実第二小のお便所の床は廊下より低くなっていてコンクリートが打ちっぱなしになっていました。使う時は入口にある木のすのこの上でズックを脱いで備え付けのサンダルに履き替えることになっていましたが、女子の方は脱いだズックはありませんでした。
「よかった、お昼休みだから、だれもお便所に入ってないみたい」
千枝子ちゃんは、うんちしたくなった時は必ず使う薄暗いお便所の一番奥の個室まで行くと、そこに入って戸を閉めました。大便所は床より一段高くなっていましたが、やはりコンクリートが打ちっぱなしになって、和式の便器が埋め込まれていて。足を置く位置と「ここに足をおきましょう」の文字が白いペンキで書かれていました。千枝子ちゃんは便器をまたいでそこに足を置くと、つい足元にある穴をのぞきこんでしまいました。薄暗いお便所のもっと暗い穴の底にはみんながしたうんちやおしっこや落としたちり紙がたまっているのがぼんやり見え、そこからいつもの臭いのする風が吹き上げてきました。そして目を上げるとコンクリートの灰色の打ちっぱなしの壁にボールみたいなレモン色の消臭剤が網ぶくろにはいってぶら下がってキツイ香りを放っていました、それらは千枝子ちゃんも毎日目にしていたり嗅いでいたりする風景ですが、毎日接していてもイヤなものはイヤでした。
でも、いくらイヤでも仕方ないので、千枝子ちゃんはスカートを上げてパンツを下げるとしゃがんで、まずシャーと音を立てながらその暗い穴の底に向けておしっこをしました。千枝子ちゃんはおしっこをしながらポケットに手を入れてちり紙をもってきたか確認しました。
「おなか痛い、でもよかった、間に合って。ちり紙は確かに持ってきたし・・・」
そして、次はうんちです。千枝子ちゃんがうーんといきんでおしりの穴を開こうとしたそのとき、男子便所からドアを激しく叩く音がしました。男子便所と女子便所は木の壁一つ隔てただけのなので向こうの物音をはとてもよく聞こえます。千枝子ちゃんはびっくりしてあわてておしりの穴をしめました。
「開けろよ、よしお、そこでウンコしているのはわかっているんだからな」
「学校のオンナベンジョでうんこするよしおのエッチ!」
けんいち君の声でした。
「やだよ!けんいち君」
よしお君はかっこよくて勉強もできておとなしい、クラスの中でも女子の中でも人気のある子で、千枝子ちゃんもちょっと好きでした。
よしお君はその後も必死に叫んだのですが、さらに強くけんいち君はドンドンドンと激しくノックしました。その音は薄暗いお便所全体に響き、男子便所なのにまるで隣の大便所で叩かれているかのように聞こえてきました。お腹の痛みもそのノックの音に合わせるかのようにだんだん強くなり、うんちもだんだんおしりの穴に迫ってきていました。
でも、それが男子便所からのものと分かっていても、千枝子ちゃんは怖くてうんちできませんでした。今うんちしたら、音が男子便所まで聞こえて、「うんこ探偵」をはじめクラスの男子たちがやってくるかもしれません。そういう不安が現実はありえないことだと頭でわかっていても千枝子ちゃんはどうしてもそれを抑えられなかったのです。
「おなか痛い、苦しい、うんちしたい、早く行ってよ・・・」
千枝子ちゃんはは心の中で何度もそうつぶやきました。
「開けてくれないの? よし、こっちから開けてやるぞ!」
けんいち君はそう言うと、ドアを押したり引いたりしているらしい音が聞こえ始めました。古い木造建築の校舎の古いお便所なのでその程度でもあくことがあるらしいです。
「開けないでよ、けんいち君!」
よしお君はまた必死に叫びましたが、そんなのお構いなしにドアを引いたり開けたりする音が女子便所まで聞こえてきました。
「うあ!戸が開いたぞ、よしおのケツが見えるぞ」
どうやら戸が開いたようです。同時にその姿に大笑いしている周りの男子たちの声が聞こえました。
「見ないでよ、お願いだから見ないでよ・・・大きいのが出るから」
「クラスに行ってみんな呼んで来いよ、そんなもの持っているな、えいっ!」
「ああっ、ちり紙持って行かないでよ、ちり紙返してよ!」
よしお君はけんいち君に持っていたちり紙を取り上げられたようです。千枝子ちゃんもお腹が痛くて仕方がありませんでした、でも今うんこを出したら音が男子便所に聞こえて自分もターゲットになりそうなので必死に我慢していました。
「ほらほら、ベンジョ紙、便器の底に捨ててしまうぞ、返してほしければ、俺たちの見てる前でウンコしろ」
「ぼくのちり紙、返してよ!返してよ!」
よしお君はちり紙を取り戻そうとしているのか必死に叫んでいました。
「ははは、ウンコ! ウンコ! 早く出てこい、よしおのウンコ!」
他の男子たちもウンココールを始めました。
「ちり紙返してよ・・・お願いだから返してよ、あっ、もうがまんできない、うう・・」
「こいつ、とうとうウンコもらしたぜ」
「おっ出てきたぞ、本当に学校でウンコしている、よしおエッチだな」
「すげー太いな、きたねー、くせー、ははは」
背後に他の男子たちの「あははは」というイヤな笑い声も聞こえてきました。
「えっ!やだ、よしお君、みんなの目の前でうんちしているの」
思わず、千枝子ちゃんも、あのよしお君がしゃがんでおしり丸出しでうんちしている姿を想像していました。自分もそれに近い姿なので、ものすごく恥ずかしかったですが、なぜかちょっとドキドキしました。
でも、枝子ちゃんもうんちのガマンが限界に来ていました。
「私も出そう・・・。」
しかたなく、千枝子ちゃんはおしりの穴をひらき、ぽとっ、ううんっ、ぽとっと少しずつ少しずつ音がしないように息を殺しながら出していきました。
「そんなに見ないでよ! お願いだから!」
聞こえてくるよしお君の声はほとんど泣き声でした。その声を聴いていると、自分も男子たちの前でうんちしているみたいで千枝子ちゃんはしゃがんでいるひざの上に顔を伏せてしまいました。
「お願い早く終わって、私のうんち・・・」
でも少しずつ出しているせいか、うんちも終わらず、お腹の痛いのも収まらなかったったのです。
「ウンコ終わったな、ベンジョ紙渡すからこれで拭け・・・まだウンコ、ケツに付いているよ。」
「うん・・・」
うんちが終わったあとのよしお君の返事は、さっきのちり紙を取り戻そうとしているときとは反対にまるで何もかもあきらめたように小声で悲しそうでした。それに対してけんいち君もまるで幼稚園の弟にうんちさせたかのように接していました。
「よし、ふき終わったら上げるんだ、ほら、パンツとズボン、ベルトをしめて・・・」
「うん・・・」
そして、よしお君とけんいち君をはじめとするクラスの男子たちはお便所を去っていきました。
男子たちがいなくなると、緊張が解けたのかほっとした千枝子ちゃんのおしりの穴にそれまでたまっていたうんちが一気におしりの穴に押し寄せてきました。千枝子ちゃんも誰もいなくなったことを幸いに派手な音がするのをかまわずにうん!と思いっきりいきんでおしりの穴を開きました。ぶぶっとおならのものすごく派手な音がしましたがすっきりして、お腹の痛いのも収まりました。でも、なんか自分がものすごく恥ずかしい目にあわされたようなイヤな気分が残りました。千枝子ちゃんはおしりを持ってきたちり紙でふいて、便器の穴に落すと、スカートとパンツを元に戻して教室に戻りました
でも、千枝子ちゃんが教室に戻ると、「うんこ探偵」のグループをはじめ、クラスの男子たちが、椅子に座ったよしお君を取り囲んでいました。かわいそうなよしお君は泣きそうな顔で下を向いていました。このクラスの男子の学校のお便所でうんちした子に対する仕打ちはお便所だけで終わらず、教室に着くとその子にはいつもの「学校うんこインタビュータイム」が待っているのです。
「学校うんこインタービュータイム」はお便所にはいっしょに行かなかった子も含むクラスの男子一同に囲まれて「大きいのいっぱい出た?」とか「ケツ、ちゃんと拭いた?」と「いつからウンコしたくなった」と「学校でウンコするの恥ずかしくなかった?」とか、うんちしたときの様子を遠慮なく根掘り葉掘りしつこく聞かれるもので、それは次の授業の開始チャイムまで続くのが恒例でした。そのとき質問のために手を上げる子を指名する進行役を務めるのもたいていけんいち君をはじめとする「うんこ探偵」の子たちでした。
そういう男子たちの遠慮のない質問に対して、泣きながら一言も答えられない子もいました。よしお君の場合もそうで、結局その場で泣き出してしまい一言も答えられなかったのですが。そういう子に対しては男子たちは「お前汚いな、学校ウンコしたんだろう!」というヤジが飛びました。
でも、その一方で、最初は恥ずかしそうにぼそっと答えていても、だんだん調子に乗ってきて「ぶりぶりぶりっ!とすごい音がしていっぱいウンコが出たよ。いくら拭いても拭いてもウンコがもうべっとりとついてきて、うちから持ってきたベンジョ紙が足らなくなって・・・」と聞くだけで、その日の給食がカレーシチューだったら絶対食べられなくなりそうなくらいうんちの一部始終を嬉しそうに興奮気味に詳しく説明してくれる子もよくいたのです。そんな汚い話を聞かされる女子の不愉快な顔をよそに、男子たちは大盛り上りの爆笑大会でした。
千枝子ちゃんは最初は泣き出す方の子がかわいそうだなと思っていましたが、最近はあまり同情しなくなりました。そういう泣いていた子ほど、例のピンポンパポーンが聞こえると真っ先にお便所に走ったり、インタビュータイムで熱心に質問することがわかってきたからです。
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それに、うんちは食べ物を消化したかすで、おなかの中にためておくと体に良くないからです。
といっても、千枝子ちゃんもやはり学校うんこは恥ずかしかったので、お便所に誰もいないときを狙って一番入口から遠い個室に入るとか、誰かが入っていたら一つ間を開けてするとかいうようなバレない努力はしていました。
逆に見るからにおなかの痛そうな子が先に入ってきても最低一つ間を開けて入り、おしっこしている時に前の方に入った子がうんちを始めたら音はできるだけ聞かないようようにして早く出るようにしました。
千枝子ちゃんは自分がうんちしていることも知られたくありませんでしたし、ほかの子がうんちしていることも知りたくありませんでした。だからほかの子のうんちに興味津々の男子が理解できなかったのです。
そんな細心の注意を払っても、かなり臭いうんちをして出たあと、ドアの外にクラスの友だちが待っていたことはありました。
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こういうときお腹の弱い千枝子ちゃんは本当に女の子に生まれてきてよかったなと思いました。
ただ、恥ずかしさのあまり顔を伏せて無言で走って逃げるようなことをしたら「何なのよあの子、かわいい顔してうんち臭いのよ!」とカゲクチを叩かれることがあるのが女の子の怖いところですが。
だから、千枝子ちゃんはこの衛生検査の朝に学校のお便所でうんちしてきたのが男子にバレるのだけはまずい、ひょっとしたら女の子なのにインタビュータイムなの・・・と思ったのですが、さっきからけんいち君は「ゴリウンコ! ゴリウンコ!」と一人興奮気味に叫んでいるだけで「うんこ探偵」をはじめとする男子たちはそれ以上聞いてくることはありません。よかった、と千枝子ちゃんは思いました、現実には女子便所で個室が閉まっているからといっていくらエッチな「うんこ探偵」もチェックなどするはずがないのですから。
「こらっ、やめなさい!」
教務室から佐藤先生がもどってきました。佐藤先生はけんいち君の机を見ると
「けんいち君、またちり紙持ってこなかったの!
連絡帳にもあれほどちり紙を持ってくるように書いたのに?
持って来ないと困るのは、あなた自身よ!学校でうんちしたくなったらちり紙がないと困るでしょ!
ちり紙がないからといって、ハンカチや靴下で拭いて、そのまま便槽に捨てる子がいると汲み取り業者さんが困っていたわよ。」
そういう先生の注意に対して、けんいち君はボソッとつぶやきました。
「学校のオンナベンジョでなんか、オレ、クソしない」
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