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第二章:うらーか男子のアシスタント
⑥
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『アラミタマのクロアさん』の、配信も、後日編集して有料配信する動画の撮影も終え、日付けも変わって少し経った頃。
白亜の機嫌はすこぶる良かった。心なしか、肌の艶も良く見えるのは、和也が後片付けをしている間に風呂に入らせたから、だけでは無い気がする。
そんな白亜の様子を見て、和也は何故だか少しイライラしていた。
「アシスタントっつってたのによー、結局は変態の白亜さんの世話して、片付けまでするって聞いてねーっての!」
「言ってはいなかったからな。ほれ」
軽い足取りで近づいてきた白亜は、オレの頬にピトンと、冷たい何かを当ててきた。
「冷てえっ!何だよ!?」
「飲まんのか?和也が昨日忘れていったものを冷やしてやっていたんだが」
「……あ」
そう言えば昨日、荷物を届けに来る前に、コンビニでビール買ったんだった。忘れてた。冷えたビールの缶を白亜から無言で受け取って、プシュリと音を立てて開ける。グビグビグビっと半分ほどを一気に飲む。
「飲まなきゃやってらんねーよ!チクショウ!」
「何をだ?」
「色々だ、いろいろ!」
ぱりぽり、ぱりぽりぱりぽり。
小気味良い音がする。と、思ったら、昨日ビールと一緒に買ったスナック菓子を、白亜が食べていた。
「色々とは、大変だな……まあ、まともに働け」
憐れむような口調が、白亜に対する苛立ちを増長させた。更に合間に白亜が食べているスナック菓子の、ぱりぽりという咀嚼音も苛立ちの原因の一つだろう。呑気な咀嚼音のせい、そういう事にしておきたい。
「まともに働いて、どーにかなる場所があんなら!苦労なんてしねーよ!」
「そうやってすぐに怒鳴り散らす……やみくもに怒鳴り散らして威嚇して、何でも他人のせいにしているうちは、何事も良い方向へは導けぬ」
「だああああぁっ!あー言えばこー言……ぅ?」
口許に、何かが触れた。白亜の指で摘まれた、程よい塩気のスナック菓子だ。
ぱりぽりと、和也は菓子を口に含んで咀嚼した。
「少し落ち着け、和也。我は今、機嫌が良いからの……一つ教えてやろう。和也自身の心の有り様さえ変わっていけば、我の本来の力で導く事が出来るだろう」
「は?イラつく原因の一つは白亜さんだっつーの!」
「菓子の事か?ほれ、返してやろう」
白亜は食べかけのスナック菓子の袋をオレに抱えさせた。意味違ぇよ。菓子は食うけど。
「菓子じゃねーよ、変態野朗!」
「そういう風に、覚醒させたのは和也であろう」
サラッと言われた。事実なら、かなり重たい。和也の中にズキリと冷たい何かが突き刺さった。棘を流し込むように、ビールを煽る。
「責任を取れ、等と脅しはしない」
フッと小さく笑う白亜は、繋いだ手を離してしまった瞬間に、もう二度と手元には戻らない、空高く消えていく風船みたいにフワフワしていた。そもそも、掴む事すら出来ない存在にも見えてくる。
「逆にそれが脅しになってるっつーの!」
「ふむ。我にそのようなつもりは無い。鬼ではなく神である。カップ麺ぐらいは作ってやろう、今夜はもう遅い。食ったら帰って寝るがよい」
脈絡が無い。というか、まだまだ白亜については分からない事だらけだと実感した。和也は残りのビールを飲み干して、缶を空にした。
白亜と連絡先を交換し、カップ麺を食べてから、和也は自分の部屋に帰ってきた。
ぼふん、と、ベッドに沈み込む。今日はそのまま眠ってしまおうと目を閉じる。
「心の有り様さえ変わっていけば、我の本来の力で導く事が出来るだろう」
不意に白亜の言葉を思い出す。ああ、そうだった。白亜は道祖神というカミサマを名乗っていたんだったな。知らんけど。そのうちあの白い羽根みてぇな耳んトコ引っ張ってやろう。
巡らせた思考は、やがて心地よい眠りの中へ落ちていった。
アパートの更新、または退去まであと十六日。
白亜の機嫌はすこぶる良かった。心なしか、肌の艶も良く見えるのは、和也が後片付けをしている間に風呂に入らせたから、だけでは無い気がする。
そんな白亜の様子を見て、和也は何故だか少しイライラしていた。
「アシスタントっつってたのによー、結局は変態の白亜さんの世話して、片付けまでするって聞いてねーっての!」
「言ってはいなかったからな。ほれ」
軽い足取りで近づいてきた白亜は、オレの頬にピトンと、冷たい何かを当ててきた。
「冷てえっ!何だよ!?」
「飲まんのか?和也が昨日忘れていったものを冷やしてやっていたんだが」
「……あ」
そう言えば昨日、荷物を届けに来る前に、コンビニでビール買ったんだった。忘れてた。冷えたビールの缶を白亜から無言で受け取って、プシュリと音を立てて開ける。グビグビグビっと半分ほどを一気に飲む。
「飲まなきゃやってらんねーよ!チクショウ!」
「何をだ?」
「色々だ、いろいろ!」
ぱりぽり、ぱりぽりぱりぽり。
小気味良い音がする。と、思ったら、昨日ビールと一緒に買ったスナック菓子を、白亜が食べていた。
「色々とは、大変だな……まあ、まともに働け」
憐れむような口調が、白亜に対する苛立ちを増長させた。更に合間に白亜が食べているスナック菓子の、ぱりぽりという咀嚼音も苛立ちの原因の一つだろう。呑気な咀嚼音のせい、そういう事にしておきたい。
「まともに働いて、どーにかなる場所があんなら!苦労なんてしねーよ!」
「そうやってすぐに怒鳴り散らす……やみくもに怒鳴り散らして威嚇して、何でも他人のせいにしているうちは、何事も良い方向へは導けぬ」
「だああああぁっ!あー言えばこー言……ぅ?」
口許に、何かが触れた。白亜の指で摘まれた、程よい塩気のスナック菓子だ。
ぱりぽりと、和也は菓子を口に含んで咀嚼した。
「少し落ち着け、和也。我は今、機嫌が良いからの……一つ教えてやろう。和也自身の心の有り様さえ変わっていけば、我の本来の力で導く事が出来るだろう」
「は?イラつく原因の一つは白亜さんだっつーの!」
「菓子の事か?ほれ、返してやろう」
白亜は食べかけのスナック菓子の袋をオレに抱えさせた。意味違ぇよ。菓子は食うけど。
「菓子じゃねーよ、変態野朗!」
「そういう風に、覚醒させたのは和也であろう」
サラッと言われた。事実なら、かなり重たい。和也の中にズキリと冷たい何かが突き刺さった。棘を流し込むように、ビールを煽る。
「責任を取れ、等と脅しはしない」
フッと小さく笑う白亜は、繋いだ手を離してしまった瞬間に、もう二度と手元には戻らない、空高く消えていく風船みたいにフワフワしていた。そもそも、掴む事すら出来ない存在にも見えてくる。
「逆にそれが脅しになってるっつーの!」
「ふむ。我にそのようなつもりは無い。鬼ではなく神である。カップ麺ぐらいは作ってやろう、今夜はもう遅い。食ったら帰って寝るがよい」
脈絡が無い。というか、まだまだ白亜については分からない事だらけだと実感した。和也は残りのビールを飲み干して、缶を空にした。
白亜と連絡先を交換し、カップ麺を食べてから、和也は自分の部屋に帰ってきた。
ぼふん、と、ベッドに沈み込む。今日はそのまま眠ってしまおうと目を閉じる。
「心の有り様さえ変わっていけば、我の本来の力で導く事が出来るだろう」
不意に白亜の言葉を思い出す。ああ、そうだった。白亜は道祖神というカミサマを名乗っていたんだったな。知らんけど。そのうちあの白い羽根みてぇな耳んトコ引っ張ってやろう。
巡らせた思考は、やがて心地よい眠りの中へ落ちていった。
アパートの更新、または退去まであと十六日。
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