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進路希望の再提出

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あれから進路について考えた。保育士さんや幼稚園の先生などになる為に通う大学かあ……学科は?大学は?どこが良いのか今まで考えた事も無いものを考えて、勿論考えるだけでは何も出て来なくて。
自室の勉強机の上には未記入のままの進路希望の用紙。
「はぁ……」
暫くして、ベッドにごろんと横になる。スマホを手に取りネットであれこれを検索してみる事にした。
「福祉系の大学か……専門学校。それか、資格取得の試験かぁ……」
関連事項をスマホで色々と見て行く。なるほど、地域によって学校の数にバラつにがある。
「よし!」
ベッドから起き上がり、机の前に座る。まずは通える範囲内の大学、専門学校を別の紙にメモして行く。一通りメモをし終わった頃、少しだけ眠たくなってきた。
僕は白紙のままの進路希望用紙と、メモをした紙をクリアホルダーに入れ、学校用の鞄に入れた。
「後は先生に相談かな?出来れば早めに決めておきたいし」
季節は冬の終わり、もうすぐ3年生。受験シーズンの大変さはクラスの中や、今までの先輩達のピリピリした雰囲気から察してはいる。進学するとしたら早めに決めてしまいたい。
明日の準備を整えてから電気を消して布団に潜る。冷える冬場の暖かな布団の中は心地よく、すぐに睡魔がやってきた。

朝。起きる時間はまだ薄暗かったものの、カップスープとトースト程度の軽い朝食を食べ、あまり時間のかからない身支度をして家を出る頃には少しだけ明るくなっていた。凛とした冷たい空気の中、自転車を漕いで、学校に着く頃には眩しい朝の光が辺りを包んでいる。下駄箱で靴を履き替えて、すぐに職員室へ。
「先生、居ますかー?」
それだけ言って職員室内に入り、先生の姿を探す。周りの他の先生方はキョトンとした表情で僕を見ている。職員室だ、居るのはほぼ先生だものね。
「古谷、どうした?」
目当ての先生の声が後ろから聞こえ、肩をポンと叩かれる。
「昨日の進路希望ですね、候補はいくつか出してきたんです。ただ、そこから先がなかなか選べなくて……」
昨日書いたメモをクリアホルダーごと鞄から出す。
「希望としては、なるべく早く進路が決まる学校がいいんですが……どこかありますか?」
尋ねながら先生にクリアホルダーを手渡した。先生は少しだけ笑って
「了解。この中から指定校推薦がある学校や、早く決まる専門学校をチェックしておく。放課後また進路指導室へ来るように。その時に決めるか、もう一晩家で考えてくるかの話も聞こう」
「はい!」
返事と同時に予鈴が鳴る。僕は決して走らないようにしつつ、早歩きで教室に向かった。

放課後、進路指導室。
鍵は開いていた。ノックをしても返事が無かったので先に入って先生を待つ。ここに来るのは二度目だけれど、不思議と落ち着く。ソファの座り心地のせいだろうか?手に持っていた鞄とコートは座っている場所の隣に置いて。
ガラリ、と、ドアが開く。
「待たせたな……っと」
朝手渡したクリアホルダーと、何かの書類が入っているだろう厚手のバインダーを持って先生が室内に入ってきて、僕の向かい側に座った。
「まずこれ、目は通してみた。早めに進路が確定出来そうな学校には赤で、遅めでも指定校推薦が出来そうな学校には青でチェックを入れておいた」
差し出されたクリアホルダーの中からメモを出して確認する。半分と少しぐらいの学校名に何らかのチェック印が付けられていた。
「後は……」
先生は持っているバインダーを開き、中に入っていた紙を何枚か取り出し、僕に見せるようにローテーブルの上に置いていく。2つに分けられた紙の束。まず先生は右側の紙を指差した。
「学校に配られているものだけだが、大学や専門学校のチラシやパンフレット。右側が比較的進路決定の早い学校……主に専門学校。左側のものは指定校推薦で入れそうな大学のものだ」
ほぅ、と、一瞬吐息が溢れる。今の時点でこの中から、となると最初にメモしていた所からだいぶ絞られてきているなぁ、なんて思うと同時に先生って指けっこう細いなあ、と、関係無い事も少し考えていた。
まずは専門学校のチラシやパンフレットに目を通してみる。卒業まで短めなだけあって、カリキュラムがハードそうな印象。
次に大学のパンフレットを。こちらは必須科目はあれど割と自由に講義を選べる。
「うーん……カリキュラムを見る限り、大学がいいかな?指定校推薦で有利になりそうで、今から出来ることがあるのなら、それも知りたいです」
先生も少し考えるように首を捻り、暫く唸った後に口を開いた。
「福祉系なら、出来そうなボランティアでもやってみたらどうだ?」
「僕に出来る事……探してみます。進路希望の用紙は現段階での希望という事で……」
未記入のままだった進路希望の紙の、第一希望と第二希望には指定校推薦で行けそうな大学の名前を。第三希望には通いやすい立地の専門学校の名前を書いて先生に渡した。
テーブルの上に広げられたパンフレットや紙の類いは、もう少し色々考える為に貰って帰る事にした。オープンキャンパスにも行ってみた方が良さそうだし。
コートを羽織り、チラシやパンフレットで膨れたクリアホルダーを鞄に仕舞い、ソファから立ち上がる。
「先生、ありがとうございます。今度は何でも無い話も聴いて……その時はママって呼んで下さいね」
挨拶をして僕は進路相談室から出た。
宵闇に包まれた帰路。深く考えた事の無かった事を考えたり、先生と話したりは、素直に楽しい事だとふと思う。
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