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第8話
しおりを挟むそれからしばらく後。
僕は気絶したボスをしばり上げ、他の者たちにはとどめを刺して回った。
「う、うぅ……」
「気がついたか」
ボスが目を覚ます。
痛みに顔を歪めている。
自分が拘束されていることに気がつくと、さらに顔を歪めた。
「ちくしょう……。なんだってんだ……」
床につばを吐き、僕を睨みつける。
「その左手はいったい何なんだよ。あり得ねえだろ。クソが……」
「質問するのはこちらだ。場合によってはお前と手を組んでもいいと思っている」
こいつを生かしたのは、尋問して情報を得るためだ。
ボスの表情が変わった。
どうしたら生き残れるのか、必死で考えているのだろう。
「死にたくなければ、本当の事を喋るんだ。これからいくつか質問するが、ある程度は裏を取ってある。嘘をついていると感じたらすぐに殺す」
ボスは黙って頷いた。
もちろん、裏など取っていない。
嘘をつかせないためのハッタリである。
「お前たちの仲間は全部で何人だ?」
「何人……ってもな。つるんでる奴らなら、20人くらいだが……。一緒にお前を狙ってる奴らって意味なら、……15人だな」
それは朗報だった。
雪山で倒れる前も含めて、これまで倒した数とほぼ一致する。
これで、とりあえずはこいつらの一味から狙われることはなくなったわけだ。
「どうやって僕を追跡した?居場所がわかったのはなぜだ?」
「知らねえよ……。本当だ。依頼主の覆面野郎が来て、お前の居場所を教えてくれたんだ。お前が移動する度にな。魔術師みてえな服だったぜ。変な魔法でもかけられてんじゃねえのか?」
なるほどな。
心当たりはある。
とすると、僕にかけられている呪いが解けない限り、宰相達に居場所が筒抜けということか。
「次の質問だ。お前達の他に、僕を狙っている奴らを知っているか?」
「ああ。覆面野郎は俺ら以外にも、あちこちで声をかけてたみたいだったぜ。そうでなくても、街中に手配書が回ってるんだ。依頼なんかなくたってお前を狙う奴はいるだろうよ。それに……」
「それに?」
「あの覆面野郎の感じからして、あんまり俺らには期待してなかったみたいだな。本命の刺客は他にいるみてえなことを言ってたからな」
「そうか」
ある意味、こいつらが失敗するのは折り込み済みということか。
そうであれば、こいつらを壊滅させたところで、それで追手が止むということはないだろう。
より強い追手が差し向けられるだけだ。
「だ、だからよ……。俺らも、あの覆面野郎にはトサカにきてんのよ。あのお高くとまった野郎に一泡吹かせるなら、協力するぜ?仲間は多い方がいいだろ?」
ボスはそう言って協力を持ちかけてきた。
しかし、すでに仲間を失ったボスと組むことにメリットはあまりない。
なにより、僕は最初からこいつを生かすつもりはなかった。
貴族時代に知ったことだが、こいつらは殺人や人身売買、麻薬の取引にまで手を染めているのだ。
「だから、な?早くこの縄を解いて……」
僕は無言で剣を振り下ろした。
ボスの首が床に転がる。
頭を失ったボスの体が血で染まっていく。
僕はため息をついた。
あてが外れた。
こいつらをやっつけても、宰相達が諦めることはない。
まだ僕は追われる身のままのようだ。
その時、義手を通してテラから通信が入った。
「失礼します。話は聞いておりました。そこで一つお伝えしたいことがあります」
「なんだ?」
「この拠点を潰したことで、もし短期間でも平穏な期間が得られるのであれば、その間に呪いの研究をしてそれを解呪することができるかと思います。そうすれば、人目につかない場所で隠れて暮らすことはさほど難しくないかと。実際、ミホ様は指名手配はされていませんでしたが、そのように隠者として暮らしておられました」
なるほど。
確かにテラの技術力をもってすれば、人一人が暮らす痕跡を隠すことなど簡単だろう。
「ありがとう。だが、それはしたくない。気持ちだけ受け取っておくよ」
「いえ、お気遣いありがとうございます」
「呪いを解くことができたとしても、追われる身であることに変わりはない。やはり僕は、コソコソと怯えながら生きるのはごめんなんだ」
「それでは、どうされるおつもりですか?」
「力をつける。大臣より、宰相より、王よりもだ。手出しができないとはっきりわかるくらいの力をつければ、もう狙ってはこないだろう」
「力……ですか?」
「ああ。戦闘力はもちろん、技術力、組織力、防衛力、全てだ。もちろんその過程で呪いは解く。誰にも干渉されずに、独立してやっていけるだけの力だ。協力してもらえるかい?」
「いいでしょう。協力いたします」
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