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第4話の2
しおりを挟む僕は切り替えるように首を振って、テラに言った。
「僕の方の事情はそんなところだ。次は君の番だ」
「かまいません。ですが、何を話したらよいか不明瞭ですので、質問をいただければありがたいと考えます」
「なるほど。わかった」
僕はまず、テラの素性について知りたいと思った。
「まずは君について聞きたい。君はその、アンドロイド……だったか。つまり人間ではなく、ミナトガワ・ミホという人物に作られた存在だという所まではさっき聞いた。では、ミナトガワ・ミホという人物が君を作り出した目的はなんだ?君の現在の目的は?」
「ミホ様がなぜ私を作り出したのかについては、私が知るところではありません。ミホ様はそのようなご自分の行動原理について私にお話してくださいませんでした。ですが、私を作り出した後で、ミホ様が私に与えられた命令は、ミホ様のメイドとして働くことです。具体的には、この拠点及びシステムの保守、ミホ様及びお客様のお世話、その他ミホ様が適宜下された命令に従うこと、です。私の現在の目的も同様です」
「ミナトガワ・ミホという人物は何者だ?」
「私が作られてから、ミホ様はこの拠点とそのごく近い範囲でしか生活しておりませんでした。ミホ様はこの拠点で何かを研究されていたようです。それより前のミホ様については、私はまだ作られていなかったので、直接知っているわけではありません。ですが様々な伝聞や本人の言を照らし合わせると、かつてミホ様は世界を旅して回り、様々な偉業と呼べる事を成し遂げられたそうです。ここに訪れるお客様はミホ様のことを賢者と呼んでいました。また、ミホ様が自分のことを異世界からの転生者という存在であると仰っていたのを聞いたことがあります」
聞いたことがある。
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年代が合わないが、本当に大賢者であればあるいは寿命を伸ばしたりできるのかも知れない。
「この施設……君は拠点と呼んでいたか。ここには何があり、どんなことができる?」
「この場所はミホ様が研究と生活のための拠点として作られました。ミホ様の研究とその成果のほぼすべてがここにあります。ですが、現在においては、利用できるのはその中のごく限られた部分のみです。これは、現在この拠点が冬眠モードに入っていることと、主として資源不足により冬眠モードの解除が不可能になっていることが原因です。具体的には、ミホ様のコールドスリープの維持、拠点の防衛機能、設備メンテナンス、その他最低限の機能が現在も利用可能です」
「僕を治療してくれたが、人間の治療は可能なのか?」
「失礼いたしました。非敵性認定された人間の治療や生活に係る事柄は、最低限の機能に含まれます」
毒が完全に抜けていたことや、切断された腕の処置からして、こんなに質の高い治療は王都でもなかなか受けられるものではないのだが……。
まだ他にも、「その他最低限の機能」の中には驚くべきものがありそうだ。
「どうして君は僕にここまでしてくれるんだい?ただ単に、迷い込んだ遭難者を救助したにしては、少々行き過ぎている気がしなくもないんだけど……」
「ミホ様は、この拠点のシステムに歓迎されるいくつかの資格を設定されました。一つはミホ様自身。もう一つはミホ様が個別に設定した個人。三つ目が、ミホ様の同じ転生者の身体的特徴を持つ個人です。失礼かとは思いましたが、遭難者として発見した時点で、ヘンリー様の遺伝情報をスキャンさせていただきました。ヘンリー様のDNAには、明らかにこの世界の人間のものとは異なる遺伝情報が含まれています」
「どういうことだ?僕は転生者などではないぞ?よくわからないが、遺伝というのはつまり血筋のようなものだろう?これでも貴族だ。僕の両親は出自がはっきりしているはずだが」
「おそらく、ご両親よりももっと前、少なくとも3代以上遡った昔に、転生者の血が混じったものと思われます。ただし、ミホ様には子供や両親等の血縁者がいませんので、他の転生者の血筋ということになります」
なるほど。
転生者というのがどのくらいの確率で存在しているのかわからないが、3代以上前となると、さすがにすべてを把握していないので否定しづらいところではある。
「そうだったのか……」
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