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第2話
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ゆっくりと意識が戻ってくる。
体が暖かい。
常に目眩と吐き気に襲われていたのが嘘のようにすっきりとした気分になっている。たっぷりと寝て起きた朝のような気分だった。
体のあちこちにある傷の痛みもやわらいでいる。
見ると、小さな傷には絆創膏で、大きな傷には包帯で手当がしてあった。
むろん、なくなった腕はそのままだが、傷口はガーゼと包帯で包まれ、適切な医療処置がされているようだった。
受けた毒も、解毒がされているようだった。
薬か、魔法かはわからないが、毒の塗られた刃でつけられた傷口の、疼くような痛みもなくなっている。
僕は、とても柔らかく、高級なベッドに寝かせられているようだ。
縛られているわけでもない。枕元には、僕の剣が置いてあった。
どうやら、倒れた所を追手に見つかって捕縛されたというわけではなさそうだ。
とりあえず、そばに人のいる気配はない。
ここはどこだ?
目を開けて辺りを見回す。
毒のせいで霞んでいた視界も、今ははっきりとしていた。
しかし僕の目に映るのは、非常に奇妙な部屋だった。
壁も床も、全体的に白く、清潔感がある。
この部屋の主は、異常なきれい好きに違いないと思われるような様子だった。
壁際にはキャビネットと冷蔵庫のようなものがあり、エアコンの送風口が壁に開いている。
ベッドのすぐそばにはモニターが据え付けられており、何かのグラフを映し出していた。
ベッドの横にはソファとテーブル、大きめのモニターがある。
テーブルには小さなリモコンが置いてあるだけだ。飾り気がなく、花やインテリアのたぐいが一切見当たらなかった。
そこまで観察して、僕は自分の異常に気付いた。
モニター?エアコン?リモコン?
なんだそれは?
それらはすべて、見たこともない奇妙な形状をしていた。
初めて見るものばかりだ。
しかし、僕にはこれらの名前がわかる。
それだけでなく、それがどんなものであるか、用途までなぜか頭に入っている。
そう、まるで誰かが僕の頭の中に知識を植え付けたかのように。
どういうことだ?
その時、落ち着いた女の声がして部屋のドアが開いた。
半身を起こし、枕元の剣を握る。
「目が覚めたようですね。おはようございます。ご気分はいかがですか」
入ってきたのは、メイドの格好をした女だった。
年の頃は二十代前半くらいだろう。黒髪で、濃い藍色の瞳をしている。
メイド姿の女は、僕がいるベッドのそばまで来て、ベッド横のモニターを見た。
そしてそこに映し出されているグラフを確認すると、画面に触れた。
画面が切り替わり数字の羅列が映し出される。
「バイタルは安定しているようですね。痛み等はありませんか」
「………」
おそらく、このメイドかその主人が僕を助けてくれたのだろう。
しかしつい、反射的に警戒してしまう。
なにせ先ほどまでの事情が事情だ。
信頼していた妻に手ひどく裏切られて、殺されかけたばかりなのだ。
良くない事だとはわかっているのだが、どうしても女性全般に対する不信感を拭い去ることができない。
女性を信用してしまうと、また騙されて罠に嵌められるのではないかという不安が湧き上がってきてしまう。
メイド姿の女はそんな僕の様子を見てどう思ったのか、無表情のまま話し始めた。
体が暖かい。
常に目眩と吐き気に襲われていたのが嘘のようにすっきりとした気分になっている。たっぷりと寝て起きた朝のような気分だった。
体のあちこちにある傷の痛みもやわらいでいる。
見ると、小さな傷には絆創膏で、大きな傷には包帯で手当がしてあった。
むろん、なくなった腕はそのままだが、傷口はガーゼと包帯で包まれ、適切な医療処置がされているようだった。
受けた毒も、解毒がされているようだった。
薬か、魔法かはわからないが、毒の塗られた刃でつけられた傷口の、疼くような痛みもなくなっている。
僕は、とても柔らかく、高級なベッドに寝かせられているようだ。
縛られているわけでもない。枕元には、僕の剣が置いてあった。
どうやら、倒れた所を追手に見つかって捕縛されたというわけではなさそうだ。
とりあえず、そばに人のいる気配はない。
ここはどこだ?
目を開けて辺りを見回す。
毒のせいで霞んでいた視界も、今ははっきりとしていた。
しかし僕の目に映るのは、非常に奇妙な部屋だった。
壁も床も、全体的に白く、清潔感がある。
この部屋の主は、異常なきれい好きに違いないと思われるような様子だった。
壁際にはキャビネットと冷蔵庫のようなものがあり、エアコンの送風口が壁に開いている。
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そこまで観察して、僕は自分の異常に気付いた。
モニター?エアコン?リモコン?
なんだそれは?
それらはすべて、見たこともない奇妙な形状をしていた。
初めて見るものばかりだ。
しかし、僕にはこれらの名前がわかる。
それだけでなく、それがどんなものであるか、用途までなぜか頭に入っている。
そう、まるで誰かが僕の頭の中に知識を植え付けたかのように。
どういうことだ?
その時、落ち着いた女の声がして部屋のドアが開いた。
半身を起こし、枕元の剣を握る。
「目が覚めたようですね。おはようございます。ご気分はいかがですか」
入ってきたのは、メイドの格好をした女だった。
年の頃は二十代前半くらいだろう。黒髪で、濃い藍色の瞳をしている。
メイド姿の女は、僕がいるベッドのそばまで来て、ベッド横のモニターを見た。
そしてそこに映し出されているグラフを確認すると、画面に触れた。
画面が切り替わり数字の羅列が映し出される。
「バイタルは安定しているようですね。痛み等はありませんか」
「………」
おそらく、このメイドかその主人が僕を助けてくれたのだろう。
しかしつい、反射的に警戒してしまう。
なにせ先ほどまでの事情が事情だ。
信頼していた妻に手ひどく裏切られて、殺されかけたばかりなのだ。
良くない事だとはわかっているのだが、どうしても女性全般に対する不信感を拭い去ることができない。
女性を信用してしまうと、また騙されて罠に嵌められるのではないかという不安が湧き上がってきてしまう。
メイド姿の女はそんな僕の様子を見てどう思ったのか、無表情のまま話し始めた。
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