婚約破棄されて追放されたけど、守護竜に愛されてます 〜ドラゴンの花嫁〜

有賀冬馬

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逆鱗1

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火矢が、再び射掛けられる。

ココが完全にドラゴンの姿に戻り、その体で私をかばう。
ドラゴンの肉体には、火矢など刺さらない。

しかし、次々に射られる火矢は、洞窟の周辺に刺さり、辺りにその火を燃え移らせた。

下草や木々が燃え、その火がさらに広がっていく。

真っ黒い煙が辺りに充満する。

「マイアーレ、僕の背中に!」

ココが身を低くして、私に乗るように促す。

私がココの背中に乗ると、ココは翼を羽ばたかせて飛び上がった。

「これは……」

上空から見るとよくわかる。

やはり、盗賊や野盗のたぐいや、山狩りなどではない。正規の軍隊だ。
それも、すごい数と装備だ。
本気で、この山に伝説のドラゴンがいるとわかったうえで、戦いに来ているのだ。

「貴様らは何者だ!ここが我の巣と知っての行為か!」

ココが大音声で叫ぶ。

その声は上空から山全体にまで響き渡っただろう。

しかし、軍隊は動じることはなかった。
もともと、ドラゴンが出てくる事がわかっていて、敵対するつもりなのだ。

「撃て!」

馬に乗った指揮官らしき男が叫ぶ。

号令とともに、ココに向かって矢が射られる。
さらに、洞窟の周辺にも、追加で火矢が発射される。

「我はこのような仕打ちを受ける覚えはない!それでも我に戦いを仕掛けるというのならば、容赦はせぬぞ!」

「うるさい!メルダ様とフォルター様のご命令だ。大人しく狩られろ!」

メルダとフォルター王子の命令!?

まさか、逆恨みして、私達を殺してしまおうとしたのだろうか?

まったく理解できない行為だが、それだけにあり得る。
以前から、あの二人は全く私には理解できない短絡的な行動をすることがあった。

はからずもココの逆鱗に触れて逃げ帰った二人が、復讐を企てても不思議ではない。

ココはふん、と鼻息を吐いた。

「よかろう。ならば思い知るがいい」

そして空中で身体をくねらせ、戦闘態勢を取る。

「おっと、そうはいかんぞ。これを見ろ!」

指揮官らしき男が叫ぶ。

そしてその前に引きずられてきたのは、見覚えのある人間だった。

麓の村に住む人の良いおじいさんで、ココの神殿へよく来ていた。
古くなった神殿の掃除などをよくしてくれていた。
ココへの尊敬の念の厚い、信心深い人物だ。

おじいさんは手を縛られ、殴られた跡があった。

指揮官は弱ったおじいさんの首に剣の刃を突きつける。

「こいつの命が惜しければ、抵抗せんことだな。おっと、こいつだけじゃないぞ。神殿には、麓の村人を全員集めて拘束してある。私が命令すれば、すぐに神殿に火をかけることができるんだぞ」

指揮官は勝ち誇った顔で言った。

私は慌てて空の上から神殿の方を見た。

いつもの静かな雰囲気とは違い、大勢の人の気配と不穏な雰囲気が溢れている。
まだ火はつけられていないようだが、軍隊に囲まれているのが見て取れた。

「なんてことを……」

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