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メルダ襲来2
しおりを挟むまず私は別に巫女ではないし、仮にそうだったところで、そんなに多くのことができるわけではない。
ただ単に、 ここまでココに拾われて、なんとなく暮らしているだけである。
ただ、そこのところを説明したところで、わかってもらえるかどうかは怪しい。
おそらく彼女は、私がドラゴンに連れ去られたことを聞き、その後にこの田舎の村で、 ドラゴンと共に神殿に現れ、村人たちに色々なお願いをしたりするのを耳にしたのだろう。
そして、おとぎ話だと思われていた守護竜が存在すると知り、私がその巫女に選ばれたと勘違いしたのだ。
「さあ、お願いです、守護竜様。 私をあなたの巫女にしてくださいませ」
正直なところ、もし本当に守護竜の巫女などという存在があるのならば、私よりもメルダの方がよほどふさわしいと思う。
だからもし私が守護竜の巫女であれば、メルダと共にココにお願いして、巫女の役割を交代してもらうこともやぶさかではない。
だが残念ながら私は巫女ではないし、巫女という役割もおそらく存在しない。
私が困り果てていると、ココが言った。
村人たちに話をするときのような、よそ行きの低い声だ。
「王女の妹よ。守護竜の巫女という存在がどのようなものかはわからぬが、私がそなたをパートナーに選ぶことはない」
あまりにもはっきりと拒絶されて、メルダは言葉に詰まった。
「な、なぜ…」
かろうじて絞り出した疑問に、ココが容赦なく答える。
「そなたの中ではどうか知らぬが、ここにいるマイアの方が、私には好ましく感じるからだ」
「そ、そんな……!守護竜さま!守護竜さまは騙されております!どのように言い寄られたのか知りませぬが、そんな女……!お姉様なんて、暗いだけで、着飾ることも、大した会話のやりとりもできない醜女ではありませんか。私のほうが見目も良いし、殿方を楽しませる会話もできます!女として、これ以上のことがありましょうか!」
「もういい」
ココの声がもっと低くなった。
「それ以上マイアーレ殿を侮辱するならば、いかに妹といえども許さぬぞ」
私の聞いたことがない、怒りの声色だった。
メルダはその声の恐ろしさに気圧され、後退った。
「し、しかし……」
「去れ!」
ココが一喝した。
その瞬間、ココの体からオーラのようなものが放たれた。
それはまるで衝撃波のように、怒りの波動となって人々を威圧した。
「ひいっ!」
「うわああっ……」
お付きの騎士もメイドも、恐れをなして一斉に逃げ出した。
メルダは尻もちをついた。
そして這うようにして部下たちの後を追いすがり、神殿を出ていった。
神殿には、私とココだけが残された。
「……ふぅ」
ココが、やれやれ、というようにため息をついた。
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