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ばらされた悪事
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倒れたままのシレクサ子爵に、シルビアが駆け寄る。
「ちょっと!何やってるのよ、ほんとにもう!予定とまったく違うじゃない!せっかくあんたの計画に乗ってあげたのにさ!その剣で傷ひとつつければ終わりだってのに、それさえもできないなんて!」
シルビアがシレクサ子爵を口汚く罵る。
しかしその言葉の中に聞き捨てならない箇所があった。
その剣で、傷ひとつつければ、終わり?
私と同じことに気付いたのか、ヒロエ王子も顔を引き締めている。
「シルビア嬢。それはいったい、どういう意味かな」
王子がシルビアに問う。
しかしシルビアは取り乱しすぎてパニックになっているようで、王子の問いに答えようとしない。
シレクサ子爵を揺り動かすばかりだ。
シレクサ子爵は呻いているだけで、立ち上がろうとしない。
見ている皆の空気も、徐々に張り詰めたものに変わっていく。
「ふむ」
王子は少し考えて、再び壇上へ上がった。
そしてよく通る声で話し始めた。
「シレクサ子爵。君にはあまり良くない噂が絶えないようだ。何の落ち度もないメイドを折檻し、幾人も辞めさせているだとか。また、賄賂を受け取っているだとか」
シレクサ子爵は倒れたまま立ち上がろうとしない。
まるで現実から逃げているかのようだ。
「そしてシルビア嬢。君もまた、以前から良くない噂がある。普段の言動や態度もそうだが、気に入らない女性に封書でカミソリを送りつける悪癖があるとか」
そう。私の元へカミソリを送りつけてきたのは、シルビアだった。
手紙にまで化粧の匂いが染み付いていたので見当はついた。
ちょっと調べると、過去にも同じことを何度もしていたということが、証拠とともに判明したのだ。
「さらに、私はこの前、ある一つの噂を耳にした。その時はまさか君たちがそんな事をするはずがないと思って一笑に付したのだが」
ヒロエ王子が鋭い目で二人を睨みつける。
「曰く、シレクサ子爵とシルビア嬢が、王族の暗殺を企てている、という話だ。敵対関係にある隣国の者がシレクサ子爵に近づいているのが目撃されている。そのものは敵国のスパイで、大金を持ってシレクサ子爵に暗殺を依頼したのだとか。そしてシルビア嬢には血縁に医者がおり、そこから容易に毒を手に入れることができる。二人は共謀して、王族の毒殺を企んでいる、とね」
シレクサ子爵とシルビアの表情が変わっていく。
パニックになって騒いでいたのがピタリと静かになり、顔色が蒼白になって黙っている。
「さて、この噂が事実かどうか。その剣を調べてみれば分かることだ。もちろん何かの間違いであることを期待しているが、もし本当だった場合は……」
その時、倒れ込んでいたシレクサ子爵が急に立ち上がり、剣を拾って、ヒロエ王子に向かって突進した。
その、毒が塗ってあるだろう刃が光る。
騎士たちが止めようとするが、間に合わない。
シレクサ子爵は剣を腰溜めに構えて、刺すようにしてヒロエ王子に体当たりをした。
見ていたものの中から、甲高い悲鳴があがる。
「ぐ……うぅ」
倒れたのは、シレクサ子爵の方だった。
ヒロエ王子は半身になって刃をかわし、シレクサ子爵の首に肘を打ち下ろしたのだ。
先ほど、剣の柄で打ったのと同じ場所だった。
シレクサ子爵は今度こそ完全に気を失って、床に倒れ伏した。
「連れて行け」
ヒロエ王子が、騎士たちに命令する。
騎士たちが倒れた子爵を引き起こし、引きずって出ていく。
ヒロエ王子は目で合図をし、シルビアもまた連行するように指示した。
「いやっ!そんな、どうして……こんなはずじゃなかったのよ!助けて!」
シルビアは髪を振り乱して叫んだが、騎士たちは容赦なくその腕を掴み、連行していくのだった。
「ちょっと!何やってるのよ、ほんとにもう!予定とまったく違うじゃない!せっかくあんたの計画に乗ってあげたのにさ!その剣で傷ひとつつければ終わりだってのに、それさえもできないなんて!」
シルビアがシレクサ子爵を口汚く罵る。
しかしその言葉の中に聞き捨てならない箇所があった。
その剣で、傷ひとつつければ、終わり?
私と同じことに気付いたのか、ヒロエ王子も顔を引き締めている。
「シルビア嬢。それはいったい、どういう意味かな」
王子がシルビアに問う。
しかしシルビアは取り乱しすぎてパニックになっているようで、王子の問いに答えようとしない。
シレクサ子爵を揺り動かすばかりだ。
シレクサ子爵は呻いているだけで、立ち上がろうとしない。
見ている皆の空気も、徐々に張り詰めたものに変わっていく。
「ふむ」
王子は少し考えて、再び壇上へ上がった。
そしてよく通る声で話し始めた。
「シレクサ子爵。君にはあまり良くない噂が絶えないようだ。何の落ち度もないメイドを折檻し、幾人も辞めさせているだとか。また、賄賂を受け取っているだとか」
シレクサ子爵は倒れたまま立ち上がろうとしない。
まるで現実から逃げているかのようだ。
「そしてシルビア嬢。君もまた、以前から良くない噂がある。普段の言動や態度もそうだが、気に入らない女性に封書でカミソリを送りつける悪癖があるとか」
そう。私の元へカミソリを送りつけてきたのは、シルビアだった。
手紙にまで化粧の匂いが染み付いていたので見当はついた。
ちょっと調べると、過去にも同じことを何度もしていたということが、証拠とともに判明したのだ。
「さらに、私はこの前、ある一つの噂を耳にした。その時はまさか君たちがそんな事をするはずがないと思って一笑に付したのだが」
ヒロエ王子が鋭い目で二人を睨みつける。
「曰く、シレクサ子爵とシルビア嬢が、王族の暗殺を企てている、という話だ。敵対関係にある隣国の者がシレクサ子爵に近づいているのが目撃されている。そのものは敵国のスパイで、大金を持ってシレクサ子爵に暗殺を依頼したのだとか。そしてシルビア嬢には血縁に医者がおり、そこから容易に毒を手に入れることができる。二人は共謀して、王族の毒殺を企んでいる、とね」
シレクサ子爵とシルビアの表情が変わっていく。
パニックになって騒いでいたのがピタリと静かになり、顔色が蒼白になって黙っている。
「さて、この噂が事実かどうか。その剣を調べてみれば分かることだ。もちろん何かの間違いであることを期待しているが、もし本当だった場合は……」
その時、倒れ込んでいたシレクサ子爵が急に立ち上がり、剣を拾って、ヒロエ王子に向かって突進した。
その、毒が塗ってあるだろう刃が光る。
騎士たちが止めようとするが、間に合わない。
シレクサ子爵は剣を腰溜めに構えて、刺すようにしてヒロエ王子に体当たりをした。
見ていたものの中から、甲高い悲鳴があがる。
「ぐ……うぅ」
倒れたのは、シレクサ子爵の方だった。
ヒロエ王子は半身になって刃をかわし、シレクサ子爵の首に肘を打ち下ろしたのだ。
先ほど、剣の柄で打ったのと同じ場所だった。
シレクサ子爵は今度こそ完全に気を失って、床に倒れ伏した。
「連れて行け」
ヒロエ王子が、騎士たちに命令する。
騎士たちが倒れた子爵を引き起こし、引きずって出ていく。
ヒロエ王子は目で合図をし、シルビアもまた連行するように指示した。
「いやっ!そんな、どうして……こんなはずじゃなかったのよ!助けて!」
シルビアは髪を振り乱して叫んだが、騎士たちは容赦なくその腕を掴み、連行していくのだった。
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