悪役令嬢の私が婚約破棄?いいでしょう。どうなるか見ていなさい!

有賀冬馬

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幼稚な嫌がらせ

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それから数日後、私が自室で寛いでいると、執事がドアをノックした。

「お嬢様。お嬢様宛に、お手紙が届いております」

「そう。持ってきてちょうだい」

執事が一通の封筒を渡してくる。

差出人は書いていないが、貴族が使う蝋封がしてあるので、この国の貴族からだとわかる。

受取り、封を開けて中の手紙を取り出そうと封筒に手を入れた瞬間、指に鋭い痛みが走った。

見ると、指先から刃物で切ったような傷ができてそこから血が滴っている。

封筒の中を慎重に覗き込むと、中にはカミソリの刃がいくつも入っていた。

「………」

こんな典型的な嫌がらせをされるなんて、ついぞ記憶にない出来事だ。

「お嬢様!」

私の指を見て、執事が驚きの声を上げる。

「慌てなくていいわ。そんなに深い傷じゃない。とりあえず何か指に巻くものを持ってきてちょうだい」

執事が包帯を取りに慌てて部屋から出て行く。

指を押さえながら私はもう一度封筒を改めた。

中にはカミソリ以外特に何も入ってはいない。

しかし、中を覗き込んだ時に、ふと気になることがあった。

封筒を鼻に近づけ、その匂いを嗅いでみる。

やはりだ。

私はため息をついた。

封筒からは、あまりにも濃い隠しきれない化粧の匂いがしていた。

「お嬢様、包帯を持って参りました」

執事が帰ってくる。

私は包帯を受け取り、代わりに封筒を執事へと渡した。

「後ほど、医師が参ります。しかし、お嬢様にこのようなことをするとは……。これは明らかにわが家に対する攻撃です。我らにお任せください。お館様に報告し、必ずや報いを受けさせましょうぞ」

怒りを露わにし、すごい剣幕でまくし立てる執事。

私は手を振った。

「いいわよ、いいわよ。大したことはなかったんだし。ただのちょっとした嫌がらせだわ。私も、あちこちで恨みを買っているみたいだから」

しかし本当に愚かなことをしたものだ。
馬鹿そうだとは思っていたが、ここまで本当に馬鹿だとは。
哀れすぎて、かばってあげたくなるくらいだった。

「しかし」

「そうね……。だったら、誰が送り付けてきたのか、その証拠だけつかんでおいてちょうだい。すぐに捕まえるよりも、弱みを握っておいた方が、何かと便利なこともあるでしょうから」

渋々といった様子で、執事は頷いた。

「まぁ……。だいたい、どこの誰がこんな馬鹿なことをしでかしたのか、予想はついているけれどもね」

この執事に言っておけば、証拠は必ずつかんでくるだろう。

思わぬ手札が転がり込んできたことに、私は内心ほくそ笑んだ。


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