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再会、そして
しおりを挟む涼やかなドアベルの音が鳴る。いらっしゃいませ、と店員が愛想良く微笑んだ。
メニューを選ぶ振りをしつつ、店内の様子を伺う。
昼には少し早いこの時間、人気はほとんど無い。人気は、だが。
窓から外を見つめていた少女が、しかしこちらに気づいたらしい。目が合った途端にみるみる顔を綻ばせ、子供のように手を振った。
曖昧に微笑みを返して、視線を逸らす。ふう、とため息が出たのは安堵からか諦めからか。おすすめと書かれたサンドイッチを頼み、彼女の待つ席へと向かった。
「おはよう!あれ、もうこんにちはかな?まあいいや、来てくれたんだね!いやぁ良かった、来てくれなかったらどうしようかと思ってたよー!」
「どうするつもりだったんすか」
「まあどうも出来ないけど。ここから私動けないし」
やや物騒な色を含んだ言葉につい身構えるも、あっけらかんとした答えに一瞬で気が抜ける。
聞けば、彼女にはいわゆる特殊能力なんてものは無いらしい。強いて言うなら、ふわふわと宙を浮き、半透明で人に見られないと言った程度。それ以外は普通の人間と変わらないらしい。つまり、杞憂だったという事だ。
やっぱり来るんじゃなかった。
断れば恐ろしい事になるかもなんて、考えすぎにも程がある。大体、見るからに無害な少女をそこまで怖がるなんて。サンドイッチを頬張りながら、昨日の自分に恨み言を吐く。
「ああ、でも。一つだけあるよ、能力」
彼女がふと呟いた。へえ、と一瞬身を乗り出したものの、忘れる程度なら大したものでは無いのかと思い直す。浮いた尻を戻して、オレンジジュースを啜る。
「君、好きな人居るでしょ」
噎せた。
勢いよく咳き込みながら、どうにか紙ナプキンで口を押さえる。鼻がツンとして涙が止まらない。うわあ、大丈夫?と焦る声が頭上から降ってきたが答えられもしない。
「や、ごめんそんなに驚くとは……」
「な、」
「な?」
「なんで、知って……」
絞り出すような声で、問う。涙で滲む視界の真ん中で、少女はぱちりと瞬きをして。
「言ったでしょ、能力があるって」
にやりと開いた口が、弧を描く。
「私には、恋が見えるんだ」
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