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《第1章 理想の世界に囚われた《逃亡者》達》
第25話《早く出発したいのですが、かまってちゃんの襲撃にあいますた。》
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俺は王都の大通りをケルコラムの背に乗り駆け抜ける。
防衛戦が終了してからまだ1,2時間程度しか経過していないからか王都の住人達は騎士団本部周辺に集まり、大通りには修復作業に当たっている人ばかりで疎らなのでケルコラムは最高速度を維持して駆け抜けている。
ケルコラムの平均速度は約時速70km
しかし俺のケルコラムはそれを大きく上回る時速76km
前にケルコラムの大会に出場した時は随分稼がして貰いました……
まだ騎士団に所属していた時期だから賞金の7割近く騎士団に持っていかれたがな、
ケチんぼリスタめ……
────それはまあいい、こっちは時速70以上で走っているのにも関わらず……
はあ……まったく。
思わす溜め息が出た。
後ろを振り返り遠くの方で屋根から屋根へと飛び移りこっちの追跡を試みる存在を視認する。
徒歩で追って来るかね普通、距離を離す所か徐々に縮まって来ているような気がするんだが?
気のせいじゃないよな?
「ケルコラム、もっと早く走れな──って痛いっ!やめろって!?」
言い終わる前にしっぽで叩かれる、
どうやら無理そうだ、これは腹決めて遊ぶしかないですかね?
そして気がつけば戦場跡、レオニスの攻撃でまだ冷えきっていないのかぼろぼろと溶け続けている王都の正門を抜け《コスタル平原》へとエリア移動する。
「ここでストッぷ───っておい!」
またもや言い終わる前にケルコラムは急停止し俺は空中に放り出されたが……が何とか着地する。
乱暴にも程があるぞ。
首と腕を回し準備を整える。あの感じならいったい何処まで着いてこられるかわかったもんじゃない、こちとら急ぎだ、速攻で終わらせる。
外壁上から黒い粒のような物がこちらに飛ぶ、
隠密部隊所属のはずなのに隠密もク〇もないずいぶんなご登場だが、そんなものは彼女には必要ない。
太陽と重なった瞬間、追跡者懐から鋭い爪が鈍く光ったのを確認する。
強化済み武器か厄介だな……
「あるじぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」
上空から聞こえる追跡者の声、普段ならじゃれ合いの合図だが……
「────たああああああぁぁぁああ」
掛け声と共に頭上から鉤爪での一撃が迫り来る。
前、青龍騎士団に所属していた時の俺ならば、重い一撃受けるのを恐れ攻撃を受けないように範囲外へ逃げただろう。
ユオの癖を使うスキルの種類と初速と範囲を知っているからこそ、範囲ギリギリ当たる直前に避け硬直の隙を見逃さずカウンターを決めていただろう。
あの頃とはスキルはともかく装備と戦い方は丸々変化している、それを理解していないはずはないと思いたいが……ユオだから状況を理解しているかは怪しい。
動かず動じず冷静に刀に手を添え構える俺を見てなのかフード下から一瞬伺えたユオの瞳は変化し戸惑い見せた。
その隙を俺は見逃さない、鉤爪が俺に当たる瞬間──
「《隼》」
《刀》の武器スキル、抜刀のカテゴリに入る《隼》は素早く武器を抜刀し相手を斬りつける、出が早いだけの単純なスキルだが、 俺が装備している《刀》は《破壊力》を強化しており相手の鎧や武器に対してダメージボーナスが乗る。そして呪いで上昇したSTRも合わせた一撃はユオの鉤爪の刃を簡単にへし折った。
信じられないものを見たような顔をしながら鉤爪を手放し重力に従い俺に向かって落ちてくるユオの首元に、腰から抜いた即効性のある麻痺毒がセットされた短剣を首に押し当てる。
「ふへぇ」
身体が動かないユオは何とも表現しがたい声を出しながら、重力に身を任せ俺の胸へと飛び込んできた。
相変わらず状態異常攻撃には弱いらしい。
「あるじぃぃぃい、あるじぃぃぃいいいいい」
子供のように泣き叫ぶユオの頭を撫でる。
「ずっと、ずっと会いたかったよおぉぉ」
連絡を取り合わなくなってからこっちで数ヶ月か数年か、
俺の記憶にあるユオからは少し背は成長している気がするが、あの時から殆ど変わっていないユオが泣いていた。
「ごめんな」
今日は謝ることが多い気がする。
「なんでユオにあいにきてくれなかったの?」
「……色々あったんだ色々とな……」
「あるじユオにウソついた、すぐって言ったのにすぐに会いに来てくれなかった」
「想定以上に時間がかかったのは謝る、本当ごめんな、この埋め合わせは後で必ずする」
「うめあわせ?」
「ユオに嘘をついてしまった代わりに、ユオのお願いをなんでも聞いてあげるって事だ」
「なんでも?」
「ああ、何かあるか?」
ユオは正面を向き俺の胸板に顔を埋める、
何やらモゾモゾと動いている気がしないでもないが、フードによって表情が伺えないので何を考えているのかは伺えない。
え?どうしよう勢いで言っちゃったがもし「あるじぃ、ユオにころさせて?」とか可愛い顔で恐ろしい事を言われたらどうする?
何よりも戦いが好きな《戦闘狂》のユオだぞ?無邪気な顔して口にも出したくない事を平然とやる、思い出したらしばらく飯食べれないほどの残虐性な行為をするをユオだぞ?
何要求されるか分かったもんじゃない。
これほどまで何も考えないで発言した口を焼き切りたくなった事は無いが、
まあもし要求されたら待ってもらおう、そうしよう……
誰が唐変木じゃい!!……ってまたか、また頭の中のリスタかっ!?
無言でユオの言葉を待つが胸板に埋めていた顔を上げ俺と視線を合わせた後、
「えへへ、いろいろあってきまらない~」
と無邪気に笑う。
「ならゆっくり考えろ、俺は何時でも待ってるからな」
首の皮が一枚つながった感覚を感じ汗が流れる。
「うん、あるじぃ♪」
わしゃわしゃと頭を撫でる……が次の瞬間俺はユオのほっぺを掴みむにゅむにゅと揉む。
「はるじぃっ!ひゃめて……」
「やめない、別件としてお仕置するに決まってんだろ」
ほっぺたを引っ張る。
「いひゃい」
やわらけぇ……いつまでも触ってていたい……
──じゃなくてっ!
「騎士団本部から王都内で襲わなかったのは良いとしよう、
任務以外で周囲に被害が出る場所で戦闘を起こさない。
まあこれは約束守っていたから偉いぞ、それは褒める。
だがな……」
むにゅむにゅむにゅむにゅ
「敵対している勢力ならともかく味方の任務中に邪魔するなって何度も言ったよな?前に約束して「わかった」って言っていたよな?それを破ったからおしおきだっ」
「ふぁるじごめんにゃひゃい」
何言ってるか分からないけどまあなんか謝ってるし可愛いから許す。
素直に謝れるなら俺はきちんと許す。
認めない奴、謝れない奴よりよっぽど良い子だ。
……まあ謝った所で改善できなかったら意味ないが。
ユオのほっぺたの感触を充分楽しんだので解放する。
「あるじひどい!ユオがなにもできないのわかってていじめてるっ!ほっぺたのびちゃう!!」
「ユオが悪いんだぞ?」
「ううっ……ごめんなさい」
今にも泣き出しそうなユオの頭を撫でる、そろそろ麻痺毒の効果も消える頃だ。
対応を後回しにしているせいか心が痛むが、今ユオ構ってあげられる時間は無い。
俺もそろそろ出発しないといけないわけで……
「景虎いるか?」
ユオと一緒に行動しているはずの人物の名を呼ぶ。
「はい、リク殿」
背筋が凍るような感覚と共に声が背後から聞こえる。
いつの間にか背後を取られていた、
警戒していなかった訳では無い、索敵を疎かにしていた訳でもない。
《防衛戦》に備えて装備を長期戦に適応した物に変えたために《看破》のスキルレベルが下がっている……が、
そこに存在する限りはっきりとは分からなくとも違和感として感じるはず、しかしそれすらも無かった。
相当《隠密》スキルのレベルが高いのだろう。
……当然か、俺が執行部隊を抜けてから、
俺が担当していたの任務は景虎に回ったはずだ。
ユオは脳筋っ子だからね、戦闘以外ダメな子だから仕方ないね。
大して俺は制限のおかげで装備を一新するために素材集めに奮闘していた、
いちいち《隠密》スキルを発動して敵を倒すなんて事めんどくさいったらありゃしない、確かに《隠密》スキルを発動し死角から攻撃すればクリティカルボーナスは高まり瞬間火力はあるが、対複数の相手とそもそも《隠密》が効かないボス相手には時間とスキルの無駄だ。
正面突破した方が効率が良い、必然的に《隠密》スキルのレベルは上がりにくくなった。
「……久しぶりだな」
表情に出ないように気を付けながら言葉を絞り出す。
「ええ全く、本当に久しぶりです」
今景虎に俺殺害の依頼なんか入っていたら、気が付かない間にこっちの人生エンドしてるな……
「ユオの教育係なんだからしっかりしろよ?」
「私の教育方針はのびのびですから」
「それじゃあユオの為にならないだろ?」
「もちろん叱る時はしっかりと叱るのでご安心を」
今の会話に微かな違和感を覚える、
景虎との会話っていつもこんな感じだったっけ?
しかし違和感の正体に気付けぬ内に隅へと追いやられ霧散する。
久しぶりに見た景虎は最後に会った時のエセ忍者とは違い、
雰囲気や口調は通常用に変わっていた……まあ相変わらずの謎の仮面さえ無ければ、だが。
《変装》スキルを使用する上で対象に限りなく近づかなければ行かないため口調や仕草すら変幻自在に操るのが景虎だ。
俺にはできない部類の技術なので憧れてしまうが同時に心配でもある、
本当の自分を見失ってしまうのではないかと。
「ユオの事頼んだ」
「はい、もちろんです」
次の行動に移るためそう告げるがユオは一向に離れようとしない。
「なあ……ユオ」
胸に顔を埋めるユオを引き剥がし片膝を着いて視線高さを合わせる。
「大丈夫だ、また会える。
次は何時になるか保証は出来ないが、こんな状況になっちまったんだ、プレイヤー同士の結束は……まあ以前よりは高まるか?
少なくとも今回よりか直ぐに会えるはずさ」
「でもあるじ、まえうそついた」
「それを言われちゃあ困るが、すぐ会えるさ。
俺の感がそう言ってる、俺の感はよく当たるからな……だからさ」
優しくユオの頭を撫でる。
「もう一度俺を信じてくれ」
するとユオの小さな手が俺の手を掴んだ。
「うん、ユオ、あるじのことしんじる、だからユオがんばる。だからあるじもはやくまたあいにきてっ?」
「ああ、わかった。いい子だ」
目俺の腕をつかみもっと撫でてほしいかのように俺の手を動かすので、撫でてやると目を細め嬉しそうに撫でられる。
さてと。
「影虎、お前もな。俺が黒猫の宴を抜けて迷惑をかけているとは思うが。感謝しながら応援しているよ」
「本当に迷惑をかけすぎです。でも既にリクさんが戻ってきても仕事が無いくらいしっかりやっていますよ。私もユオも」
「それは頼もしいな……」
こいつらも日々成長している、俺だけが立ち止まっている訳には行かないんだがな……
そんな事を思いながら周囲を見渡すがケルコラムが居ない。
おい、アイツどこに行った?
さらに注意深く周辺を索敵するが引っかかる事は無かった。
「なあ景虎」
「どうしました?」
「俺の、ケルコラム、どこ行った?」
俺の言葉を聞いて景虎は表情こそ見えないが仮面の裏で笑った気がした。
笑えるならまだ大丈夫か。
「ケルコラムならユオと遊んでいる間に向こうの方へ駆けて行きましたよ?」
指さす方を見ると地平線の向こうで土煙が発生していた。
「───」
あらららららららら……
「……追った方が良いのでは?」
「ああ、そうだなっ!」
こんちくしょう!
「2人ともまたなっ!」
そう告げ全力で走り出す。
アイツ、人を置いて行くとかどれだけ自由なんだよ……
────弓兵が去った後、景虎は地面に突き刺さった鉤爪の残骸を拾う。
「ユオ、リクさんと久しぶりに戦い何を感じましたか?」
「あるじ、まえとぜんぜんちがう、こうげきこわがってなかった、つよくなってた」
ユオは外套に付いた砂埃を払いながら答える。
「強くですか……」
自分の感じた印象と異なり、少し落胆する。
同じ部隊で同じ背中を追っていましたが、もともと違う人間です。思考回路が似る何て事は無いですよね。
───そもそも、物事の判断基準が強いか弱いか、おもしろいかおもしろくないかのユオに尋ねても仕方ないことですか……
「……ルース団長の見立て通り、リクさんが変化したのは確定ですね、
高耐久力でさらに重さを強化している《深鉄爪》をスキルの一撃で破壊した事からステータス面でしょうか?
元々《装備破壊》はリクさんの十八番ですが……それが何にしろ────」
景虎は仮面の下で不敵に笑みを浮かべる。
「まだ"牙"は折れてはいないようですね、あの頃には程遠いですが……」
「とら、わるいかお、してる」
「おっと、これはこれは簡単に見破られるとは私もまだまだですね」
「朽ちた英雄の牙が再び煌めくのをこの目で見る事は叶うのだろうか?」
景虎の仮面に隠された瞳が光る、燃えるような赤い瞳の中には一人の英雄の背中だけが映っていた。
防衛戦が終了してからまだ1,2時間程度しか経過していないからか王都の住人達は騎士団本部周辺に集まり、大通りには修復作業に当たっている人ばかりで疎らなのでケルコラムは最高速度を維持して駆け抜けている。
ケルコラムの平均速度は約時速70km
しかし俺のケルコラムはそれを大きく上回る時速76km
前にケルコラムの大会に出場した時は随分稼がして貰いました……
まだ騎士団に所属していた時期だから賞金の7割近く騎士団に持っていかれたがな、
ケチんぼリスタめ……
────それはまあいい、こっちは時速70以上で走っているのにも関わらず……
はあ……まったく。
思わす溜め息が出た。
後ろを振り返り遠くの方で屋根から屋根へと飛び移りこっちの追跡を試みる存在を視認する。
徒歩で追って来るかね普通、距離を離す所か徐々に縮まって来ているような気がするんだが?
気のせいじゃないよな?
「ケルコラム、もっと早く走れな──って痛いっ!やめろって!?」
言い終わる前にしっぽで叩かれる、
どうやら無理そうだ、これは腹決めて遊ぶしかないですかね?
そして気がつけば戦場跡、レオニスの攻撃でまだ冷えきっていないのかぼろぼろと溶け続けている王都の正門を抜け《コスタル平原》へとエリア移動する。
「ここでストッぷ───っておい!」
またもや言い終わる前にケルコラムは急停止し俺は空中に放り出されたが……が何とか着地する。
乱暴にも程があるぞ。
首と腕を回し準備を整える。あの感じならいったい何処まで着いてこられるかわかったもんじゃない、こちとら急ぎだ、速攻で終わらせる。
外壁上から黒い粒のような物がこちらに飛ぶ、
隠密部隊所属のはずなのに隠密もク〇もないずいぶんなご登場だが、そんなものは彼女には必要ない。
太陽と重なった瞬間、追跡者懐から鋭い爪が鈍く光ったのを確認する。
強化済み武器か厄介だな……
「あるじぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」
上空から聞こえる追跡者の声、普段ならじゃれ合いの合図だが……
「────たああああああぁぁぁああ」
掛け声と共に頭上から鉤爪での一撃が迫り来る。
前、青龍騎士団に所属していた時の俺ならば、重い一撃受けるのを恐れ攻撃を受けないように範囲外へ逃げただろう。
ユオの癖を使うスキルの種類と初速と範囲を知っているからこそ、範囲ギリギリ当たる直前に避け硬直の隙を見逃さずカウンターを決めていただろう。
あの頃とはスキルはともかく装備と戦い方は丸々変化している、それを理解していないはずはないと思いたいが……ユオだから状況を理解しているかは怪しい。
動かず動じず冷静に刀に手を添え構える俺を見てなのかフード下から一瞬伺えたユオの瞳は変化し戸惑い見せた。
その隙を俺は見逃さない、鉤爪が俺に当たる瞬間──
「《隼》」
《刀》の武器スキル、抜刀のカテゴリに入る《隼》は素早く武器を抜刀し相手を斬りつける、出が早いだけの単純なスキルだが、 俺が装備している《刀》は《破壊力》を強化しており相手の鎧や武器に対してダメージボーナスが乗る。そして呪いで上昇したSTRも合わせた一撃はユオの鉤爪の刃を簡単にへし折った。
信じられないものを見たような顔をしながら鉤爪を手放し重力に従い俺に向かって落ちてくるユオの首元に、腰から抜いた即効性のある麻痺毒がセットされた短剣を首に押し当てる。
「ふへぇ」
身体が動かないユオは何とも表現しがたい声を出しながら、重力に身を任せ俺の胸へと飛び込んできた。
相変わらず状態異常攻撃には弱いらしい。
「あるじぃぃぃい、あるじぃぃぃいいいいい」
子供のように泣き叫ぶユオの頭を撫でる。
「ずっと、ずっと会いたかったよおぉぉ」
連絡を取り合わなくなってからこっちで数ヶ月か数年か、
俺の記憶にあるユオからは少し背は成長している気がするが、あの時から殆ど変わっていないユオが泣いていた。
「ごめんな」
今日は謝ることが多い気がする。
「なんでユオにあいにきてくれなかったの?」
「……色々あったんだ色々とな……」
「あるじユオにウソついた、すぐって言ったのにすぐに会いに来てくれなかった」
「想定以上に時間がかかったのは謝る、本当ごめんな、この埋め合わせは後で必ずする」
「うめあわせ?」
「ユオに嘘をついてしまった代わりに、ユオのお願いをなんでも聞いてあげるって事だ」
「なんでも?」
「ああ、何かあるか?」
ユオは正面を向き俺の胸板に顔を埋める、
何やらモゾモゾと動いている気がしないでもないが、フードによって表情が伺えないので何を考えているのかは伺えない。
え?どうしよう勢いで言っちゃったがもし「あるじぃ、ユオにころさせて?」とか可愛い顔で恐ろしい事を言われたらどうする?
何よりも戦いが好きな《戦闘狂》のユオだぞ?無邪気な顔して口にも出したくない事を平然とやる、思い出したらしばらく飯食べれないほどの残虐性な行為をするをユオだぞ?
何要求されるか分かったもんじゃない。
これほどまで何も考えないで発言した口を焼き切りたくなった事は無いが、
まあもし要求されたら待ってもらおう、そうしよう……
誰が唐変木じゃい!!……ってまたか、また頭の中のリスタかっ!?
無言でユオの言葉を待つが胸板に埋めていた顔を上げ俺と視線を合わせた後、
「えへへ、いろいろあってきまらない~」
と無邪気に笑う。
「ならゆっくり考えろ、俺は何時でも待ってるからな」
首の皮が一枚つながった感覚を感じ汗が流れる。
「うん、あるじぃ♪」
わしゃわしゃと頭を撫でる……が次の瞬間俺はユオのほっぺを掴みむにゅむにゅと揉む。
「はるじぃっ!ひゃめて……」
「やめない、別件としてお仕置するに決まってんだろ」
ほっぺたを引っ張る。
「いひゃい」
やわらけぇ……いつまでも触ってていたい……
──じゃなくてっ!
「騎士団本部から王都内で襲わなかったのは良いとしよう、
任務以外で周囲に被害が出る場所で戦闘を起こさない。
まあこれは約束守っていたから偉いぞ、それは褒める。
だがな……」
むにゅむにゅむにゅむにゅ
「敵対している勢力ならともかく味方の任務中に邪魔するなって何度も言ったよな?前に約束して「わかった」って言っていたよな?それを破ったからおしおきだっ」
「ふぁるじごめんにゃひゃい」
何言ってるか分からないけどまあなんか謝ってるし可愛いから許す。
素直に謝れるなら俺はきちんと許す。
認めない奴、謝れない奴よりよっぽど良い子だ。
……まあ謝った所で改善できなかったら意味ないが。
ユオのほっぺたの感触を充分楽しんだので解放する。
「あるじひどい!ユオがなにもできないのわかってていじめてるっ!ほっぺたのびちゃう!!」
「ユオが悪いんだぞ?」
「ううっ……ごめんなさい」
今にも泣き出しそうなユオの頭を撫でる、そろそろ麻痺毒の効果も消える頃だ。
対応を後回しにしているせいか心が痛むが、今ユオ構ってあげられる時間は無い。
俺もそろそろ出発しないといけないわけで……
「景虎いるか?」
ユオと一緒に行動しているはずの人物の名を呼ぶ。
「はい、リク殿」
背筋が凍るような感覚と共に声が背後から聞こえる。
いつの間にか背後を取られていた、
警戒していなかった訳では無い、索敵を疎かにしていた訳でもない。
《防衛戦》に備えて装備を長期戦に適応した物に変えたために《看破》のスキルレベルが下がっている……が、
そこに存在する限りはっきりとは分からなくとも違和感として感じるはず、しかしそれすらも無かった。
相当《隠密》スキルのレベルが高いのだろう。
……当然か、俺が執行部隊を抜けてから、
俺が担当していたの任務は景虎に回ったはずだ。
ユオは脳筋っ子だからね、戦闘以外ダメな子だから仕方ないね。
大して俺は制限のおかげで装備を一新するために素材集めに奮闘していた、
いちいち《隠密》スキルを発動して敵を倒すなんて事めんどくさいったらありゃしない、確かに《隠密》スキルを発動し死角から攻撃すればクリティカルボーナスは高まり瞬間火力はあるが、対複数の相手とそもそも《隠密》が効かないボス相手には時間とスキルの無駄だ。
正面突破した方が効率が良い、必然的に《隠密》スキルのレベルは上がりにくくなった。
「……久しぶりだな」
表情に出ないように気を付けながら言葉を絞り出す。
「ええ全く、本当に久しぶりです」
今景虎に俺殺害の依頼なんか入っていたら、気が付かない間にこっちの人生エンドしてるな……
「ユオの教育係なんだからしっかりしろよ?」
「私の教育方針はのびのびですから」
「それじゃあユオの為にならないだろ?」
「もちろん叱る時はしっかりと叱るのでご安心を」
今の会話に微かな違和感を覚える、
景虎との会話っていつもこんな感じだったっけ?
しかし違和感の正体に気付けぬ内に隅へと追いやられ霧散する。
久しぶりに見た景虎は最後に会った時のエセ忍者とは違い、
雰囲気や口調は通常用に変わっていた……まあ相変わらずの謎の仮面さえ無ければ、だが。
《変装》スキルを使用する上で対象に限りなく近づかなければ行かないため口調や仕草すら変幻自在に操るのが景虎だ。
俺にはできない部類の技術なので憧れてしまうが同時に心配でもある、
本当の自分を見失ってしまうのではないかと。
「ユオの事頼んだ」
「はい、もちろんです」
次の行動に移るためそう告げるがユオは一向に離れようとしない。
「なあ……ユオ」
胸に顔を埋めるユオを引き剥がし片膝を着いて視線高さを合わせる。
「大丈夫だ、また会える。
次は何時になるか保証は出来ないが、こんな状況になっちまったんだ、プレイヤー同士の結束は……まあ以前よりは高まるか?
少なくとも今回よりか直ぐに会えるはずさ」
「でもあるじ、まえうそついた」
「それを言われちゃあ困るが、すぐ会えるさ。
俺の感がそう言ってる、俺の感はよく当たるからな……だからさ」
優しくユオの頭を撫でる。
「もう一度俺を信じてくれ」
するとユオの小さな手が俺の手を掴んだ。
「うん、ユオ、あるじのことしんじる、だからユオがんばる。だからあるじもはやくまたあいにきてっ?」
「ああ、わかった。いい子だ」
目俺の腕をつかみもっと撫でてほしいかのように俺の手を動かすので、撫でてやると目を細め嬉しそうに撫でられる。
さてと。
「影虎、お前もな。俺が黒猫の宴を抜けて迷惑をかけているとは思うが。感謝しながら応援しているよ」
「本当に迷惑をかけすぎです。でも既にリクさんが戻ってきても仕事が無いくらいしっかりやっていますよ。私もユオも」
「それは頼もしいな……」
こいつらも日々成長している、俺だけが立ち止まっている訳には行かないんだがな……
そんな事を思いながら周囲を見渡すがケルコラムが居ない。
おい、アイツどこに行った?
さらに注意深く周辺を索敵するが引っかかる事は無かった。
「なあ景虎」
「どうしました?」
「俺の、ケルコラム、どこ行った?」
俺の言葉を聞いて景虎は表情こそ見えないが仮面の裏で笑った気がした。
笑えるならまだ大丈夫か。
「ケルコラムならユオと遊んでいる間に向こうの方へ駆けて行きましたよ?」
指さす方を見ると地平線の向こうで土煙が発生していた。
「───」
あらららららららら……
「……追った方が良いのでは?」
「ああ、そうだなっ!」
こんちくしょう!
「2人ともまたなっ!」
そう告げ全力で走り出す。
アイツ、人を置いて行くとかどれだけ自由なんだよ……
────弓兵が去った後、景虎は地面に突き刺さった鉤爪の残骸を拾う。
「ユオ、リクさんと久しぶりに戦い何を感じましたか?」
「あるじ、まえとぜんぜんちがう、こうげきこわがってなかった、つよくなってた」
ユオは外套に付いた砂埃を払いながら答える。
「強くですか……」
自分の感じた印象と異なり、少し落胆する。
同じ部隊で同じ背中を追っていましたが、もともと違う人間です。思考回路が似る何て事は無いですよね。
───そもそも、物事の判断基準が強いか弱いか、おもしろいかおもしろくないかのユオに尋ねても仕方ないことですか……
「……ルース団長の見立て通り、リクさんが変化したのは確定ですね、
高耐久力でさらに重さを強化している《深鉄爪》をスキルの一撃で破壊した事からステータス面でしょうか?
元々《装備破壊》はリクさんの十八番ですが……それが何にしろ────」
景虎は仮面の下で不敵に笑みを浮かべる。
「まだ"牙"は折れてはいないようですね、あの頃には程遠いですが……」
「とら、わるいかお、してる」
「おっと、これはこれは簡単に見破られるとは私もまだまだですね」
「朽ちた英雄の牙が再び煌めくのをこの目で見る事は叶うのだろうか?」
景虎の仮面に隠された瞳が光る、燃えるような赤い瞳の中には一人の英雄の背中だけが映っていた。
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古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のルナリス伯爵家にミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
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