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第8話 《先輩風を吹かしているゲーマーですが、実は緊張しています。》
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城下町に出ると、もう殆どの住民が起きる時間なのか賑わい始めていた。
これから仕事に向かうであろう人々が道を歩き、馬車を使い移動している。
飲食店から漂う食欲がそそる美味しそうな匂いは、空きっ腹には毒である。
そんな中を特に何も考えずにフラフラと歩く、
日中や夜とはまた違った賑わいに、新たな一面を感じる、そう思うのは今日が休暇だからだろうか?
久しぶりと言っていいほどの休暇だ。
最近は《軍団》同士の争いなどが活発になっている、
今問題視するのは犯罪紛いの行為をする《闇ギルド》の連中だろうか、
このゲームではどのように楽しみ、どのように遊ぶかはプレイヤー次第だ、
そのために現実世界では到底できない様な行為を行うプレイヤーが多い。
ゲームの要素だが現実の方にてそれに対して反対する声も度々上がるが変更という名の修正は行われていない。
まあ運営側も教育上良くないと思ったのか、初期は12歳以上対象だったのだが今では自分で物事を考え始めるであろう15歳以上が対象となっているがその歳以下子供というのは、大人よりやっては行けないと言われたらやりたくなる衝動が強い、
それにあくまでも"対象年齢"であり、禁止するものでは無いので一定数の中学生、小学生プレイヤーは存在する。
TVやネット、友人の影響などによってどの年代でもギャディアは話題になって日々ユーザーは増え続けている。
この世界は現実世界の約72倍の速さで進んでおり、
この世界で1日過ごしても現実では20分程度しか経っていない、
元は医療などの研究や、勉強の為に作られた仮装世界をゲームにも利用しているらしい。
72倍の速度で時間が流れている影響、デメリットとして、
情報を受け取る脳への負担は計り知れない、
日々の技術の進歩で、デバイスから脳に送り込まれる情報を一旦整理し最小にしてから送る機能が搭載されているとはいえ。
現実世界の70倍以上の情報量が脳に送り込まれているのは事実だ、
それを脳が的確に処理し的確に判断するための適正というものが存在する。
適性が高いほど短時間で素早く処理でき、
低いほど時間がかかり発熱などの症状を起こす可能性がある。
脳が硬い大人より柔らかい子供の方がその適性が高いのもあり、
VRMMOゲームが若い世代に人気の理由の1つだろう。
そんな事を考えていたら目的地に付き扉のノブを掴んでいることに気がつく、
扉がプレイヤー認証をするとすんなりと鍵と扉が開かれる。
《ラックトラベル》
カウンター3席、テーブル5席のこじんまりとした店だギシギシと木の床が歩みに釣られて音を鳴らす。
「らーーららーら~~~~♪」
来客に気がついたのか、鼻歌交じりに掃除をしていた1人の白いワンピースに長い黒髪を後ろに流しそれを青いリボンで纏めた少女がこちらを向く。
「あれ?お客さん?まだ開店時間じゃ──って!リクさんじゃないですか!?」
少女はパタパタと駆け寄ってくる。
「久しぶりアレイラちゃん元気でやってる?」
彼女は元は西側の出身で教会に保護されていた孤児の1人だったが、
孤児院に居た頃から料理が上手く、将来は人を笑顔にできる料理を作るシェフになりたいという夢を持っている。
そんな夢を聞いていた俺やイセルさんは
何とかお金を出し、小さいが大通りに面した部屋を借りお店を営業できる状態にした、
出来たばかりと言う事もあり、物珍しさから引き寄せられたお客さんを次々と常連へと変えて行ったのは、アレイラの才能と料理の腕だろう、
今ではここのシェフ兼看板娘だ。
余談だが《変態》が作る、
城下町におけるお嫁さんにしたいランキングの上位に入っているらしい、
マジで何やってるんだあいつら、現実世界だったらタイホされる年齢だからな?
「はいっ!最近は来てくれるお客さんもだんだん増えてきていて、ちょっとスペースが足りないかなーなんて、えへへ」
嬉しそうにニコニコと楽しそうに笑うアレイラ、
確かにこの笑顔は人を惹きつけるものがあると思う。
「一応借り部屋だから増設したりはできないからね、
となるとそろそろ自分で家建ててそこに移転でもしてみる?足りない分は多少は支援するよ?」
「そんなっ、オープンする時のお金だってまだお返しできていないのに申し訳ないです。
それに実力もまだまだですし、もう少しここで頑張りたいです!」
と聞くとブンブンと大きく顔を振りながら思いを口にするアレイラ、
どうやら余計な事を言ってしまったようだ。
「そっか、なら応援してグウゥるよ」
「ぷっ」
大事なセリフを腹の虫に邪魔された挙句笑われてしまった。
「何をお召し上がりになりますか?」
「おすすめで」
即答した、しばらく寄っていなかったので
メニューは記憶にない、
新しいメニューも増えているだろうから
どんなものが出てくるのか楽しみだ。
カウンター席に座ると、それが合図だったかのように、ドスンと何かが落ちるような音がここの2階から聞こえてくる、そしてパタパタと慌てるように歩く音、スっと音が止み、暫くするとまた聞こえ、音の主が階段を駆け下りてくる、
「遅刻、遅刻、寝坊したぁ!!」
騒がしく2階から降りてきた声の主と目が合う。
「りくお兄ちゃん!!」
ばっと座る俺に抱きついた寝癖が跳ねている赤毛の少女。
「今度はどこに行ってたの?お土産は?いつまた行っちゃうの?」
畳み掛けるような質問攻め、もちろん耳元で、
高い声がキンキンと脳内に響く。
「マリーズ」
名を呼びながら背中を叩くと大人しくなり、素直に膝の上に乗ってくる、
そのままアイテムストレージの中から櫛とボトルを取り出し髪を溶かし始める、
擽ったそうだが嬉しそうに目を細める。
寝癖にはボトルに入った《深緑のサツカ》と言う花で作った香りのいい液体を霧吹き状にしてかけながら優しく治していく。
最後にタオルで濡れた部分の水分を吸い取るように軽く抑えれば本来なら完成だ。
しかし今回は違う、
後ろに髪を流しながらまとめあげ、ストレージから星を形どったアクセサリが付いているゴムを使いポニーテールにして完成だ。
その筋の女性から見たら完璧だとは言わないだろうが何度もマリーズがせがんできたので覚えさせられたと言うか、慣れた。
「ん?」
ゴムに気がついたのだろう手を後ろにまわし、
どんな形なのか確かめるように触る
「お土産だ」
「やったあ!」
俺のひざからぴょんと降り、全身で喜びを見せるマリーズ。
「あれ?少し背が伸びたか?」
記憶にある姿より少しズレが生じる。
「うん!いっぱい牛乳飲んでるから!
これからぐんぐん伸びるんだぁ」
記憶の中では前回は彼女の頭が俺の腹部ぐらいの位置で身長は小さかった気がするが、
今ではほぼ胸の位置になっている、
やっぱり子供の成長は早いなと感じる。
対して俺はと言うと高校に入学してからは、ほとんど伸びていない、それはこっちのアバターにも反映されているらしくて身長は約162cmだ、
どうせなら高身長イケメンに生まれ変わりたかった事だが、初期のキャラメイクで身長だけは変更できなかった。
ならばまだあるであろう成長期にかけるしかない、
今は成長する力を溜めている段階なのだと自分に言い聞かせる。
こっちでもプレイヤーの身長が伸びる事は確認されてるしな☆
「僕もりくお兄ちゃんみたいに大きくて強い男になるんだ」
マリーズはまだ幼く、可愛い顔立ちも相まって女の子に間違われたりもするが男だ。
制服のフリフリのワンピースを上から着て働く準備をする、だが男だ。
本人はもっと格好良い服を着たいらしいが
アレイラは裁縫が得意で彼に女装させるのが趣味らしい、
将来歪まなければいいが……と時折そう思う。
お店の目処が立ってきた当初はまだ8歳と幼く姉と別に教会で暮らす事も考えたが本人が姉と一緒がいいとの事で
ここでウエイター?ウエイトレスとして2人で生活している、
「リクさん出来ましたよ」
と料理を運んでくるアレイラ。
「お姉ちゃんおはよう!」
「おはようじゃないでしょ、あれ?あっリクさんがマリーの髪をやってくれたんですか?
ありがとうございます」
感謝の言葉を聞きながら料理の方に視線を移動させる。
なにかの肉の上に色とりどりの野菜が散りばめられたサラダのようなものに芋が入ったグラタン、そして焼きたてのパン、美味しそうな料理が並べられている。
「いただきます」
手を合わせ食事を取る。
食べ終わった頃には少しづつだがお客が入り始めていた、
前に青龍騎士団の制服を着て食事をしていたら、
騎士様がいるからと客足が一時的に遠のき申し訳ない気持ちになった事があるが、
今は私服なので問題ない。
顔見知りのパターンもあるが、
休暇中だと察してくれるので大丈夫だ。
「それじゃあそろそろ行くわ」
支払いを済ませ席を立つ。
「はい、また来てくださいね!」
「お兄ちゃんまたね!」
2人に声を聞きながら外に出る、
席に座っていた客が、
マリーズのお兄ちゃんに反応したように顔
目線を少し俺の方に動かした気がするが気にせず外に出る。
すぐに店の壁に背を預け、ウインドウを開き建物の所有者が俺になっている事を再度確かめる。
ここは借り屋に指定されているが持ち主は俺だ、
前の持ち主から買い取って、俺がアレイラに貸している形になっているが、
おそらくあの二人は知らないだろう、知っているのは前の持ち主とイセルさんくらいか……
人が所有者している建物は《ホーム》と呼ばれ、
その中では大幅にHPが減る事は無い任意で作れる安全圏のようなものだ。
しかし安全圏と言っても絶対に安全な訳では無い、
建物にも武器や防具と同じに耐久値が設定されておりそれが一定以下になった場合《安全圏》は消失する。
建物が構成されている素材が木なら、多少の耐久値、石ならそこそこ、金属などなら強固、
使った素材によって耐久値が決まり、
その耐久値が20%以下になれば安全圏は消え、
0になれば《所有権》は消失し修復不可能な状態となり瓦礫の山と化す。
その他に任意の設定によって短時間に大幅に耐久値が減るか設定した耐久値を下回るような事やドアや窓などの重要な物が壊れた場合《所有者》にログとして連絡が行くようになっている。
短時間に大幅に減れば他プレイヤーに襲撃され荒らされている可能性があるし、
耐久値が減れば消失する可能性が高くなり《修理》を頼まなければいけない
つまり彼女達の安全を守るためにも俺が所有者になったのだ。
現状耐久値が9割ほどあるのを確認して、
《所有者》のみが設定できる固有スキル項目から《武器解除》を習得し設定する、
建物にもレベルが存在し上がる事によって多少の耐久力の増加や新たなスキルを発動することが出来る。
《武器解除》は入店したお客さん及び住人が装備している武器をストレージに強制的に移動し武器を取り出せなくするスキルだ。
しかし安全圏消失が狙いの場合、
中では武器は使えないが外では制限がなく使用できるので外から耐久値を減らされたらどうしようもない、
それも考え大通りに面している場所を選んだが人の目が多いとはいえ絶対そんな状況が起こりえないとは断言できない。
スキルを設定することによって彼女たちの安全はますます高まったが、
あくまでも《武器》のみが対象でアイテムとしての武器は使用できてしまうのが難点だ。
《アイテム使用不可》のスキルは現状実装されてはいない、
なぜなら毒を盛られた場合に解毒アイテムを使用出来ずそのまま消滅することを防ぐためだろう。
「最悪のケースを常に考えろ……か」
かつて俺を完膚なきまでに叩き潰したプレイヤーの言葉を思い出すが、
考えても現状はどうすることも出来ないのでこれから起こり得る障害を考えながら南東へと向かいながら頭を悩ませる。
待ち合わせ場所、《歌姫の戯言》の前に着くと、
あの日と変わらない雪のような白い髪、
燃える赤い目と冷たい青い目をした少女が壁に背を預け風が髪を靡かせた。
初めて出会った時と変わらないその姿で……
と思ったが装備は一新されていた。
初期装備のローブのままではなく、
まるで妖精のようなふわふわした感じはあるが、騎士とも思える少し黄色に輝く布鎧が身体を包んでいた、
見た目はには魔法防御力が高そうな軽鎧だが彼女の体型より一回り大きいように感じる、
おそらく胸や肩になどに金属プレートか何かが入っている、物理防御も多少は補えそうだ。
《武器は》は腰の右側には柄頭に青く丸い宝石のようなものがはめ込まれた剣、
鞘、刀身が異様に細いので剣というより刺突剣だろうか、
手には黒いフィンガーレス・グローブと3種類の指輪、
1つ目は女性には似合わない銀色の太くゴツゴツした《ガイアの指輪》だ、
指輪にしては重量は重いが、
それに見合った物理防御力が上昇する効果が魅力でありスタン耐性も少し上昇する、
正式順序通りに進行しているのであれば宝箱からのレアドロップだ。
レアな部類ではあるがガイアの鉄指輪以上のアイテムが多く存在するので、次への繋ぎと言ったところか?
2つ目は蔦が絡まったような装飾の緑の指輪、
記憶にはないが草系の装飾が施された指輪は、
HP回復やスタミナ回復が主だ、おそらくあれもそこら辺だろう。
3つ目は黒い指輪に赤い+の様な形の線が入った《血を求める復讐者の指輪》か、
物騒な名前だが効果は敵を倒す度にHPが少量回復すると言うソロならば持っておきたい指輪の一つだ、
かつて俺も使用していた。
入手方法がNPCのイベントをこなしていくと入れるようになるダンジョン《悪霊の宴会場》内、
リポップボス《嘆きのシーザスレイ》が落とすレアドロップだ。
霊体なので魔法攻撃しか効かず、
エリアには瓦礫の山や壁、柱などが存在するのだがそれらをすり抜け攻撃を繰り出すので壁に隠れ安全に回復をするなどは出来ない。
HPバーは1本とボスにしては低いので
即効に決着をつけるのが成功法だ。
しかし攻撃には全てHP吸収が付いており、
被弾しすぎると削る以上の回復が発動してしまい長期戦になってしまう。
ただでさえ判断をミスすれば長期戦になるのに戦闘音、騒ぎを聞きつけ《悪霊の宴会場》通常モンスター《レイス》が壁を通り抜け集まり、
《嘆きのシーザスレイ》は集まった《レイス》の生命力を吸うと言う芸当もしてくるわけで……
俺は情報を知っているだけで挑戦したことは無いが、
実力上位だけで挑戦しなければ、
HPを減らしても減らしてもりもりと回復していくという地獄絵図になってしまうのは想像が着く。
非公式の《パーティ単位でも挑戦したくないリポップ型ボスランキング》に入っているのが物語っている。
《嘆きのシーザスレイ》のボス部屋は上限8パーティ、つまり48人が挑戦人数の上限、
運営が48人が束になって攻撃しないと倒せないと明言している相手なのだ。
その激戦を生き残りなおかつレアドロップである《ブラッド・キリング》を所持しているプレイヤーは少数だ、
リポップ型ボスはボスクリスタルをドロップしないので、クリスタルを加工して手に入れると言う方法も出来ない、
プレイヤー間の取引も存在するが大金が動く、初めて数週間のプレイヤーが手に入れるのはまず無理だ。
となればドロップに絡むのは必然的に運と試行錯誤の挑戦回数となる。
それをドロップ、売買にしても運が味方をしていると考えるのが妥当か……
そして最後に白い髪につけた黒い羽の髪飾りは残念ながら検討もつかない、
オシャレ用の装飾アイテムかとも思ったが考えるよりも先に頭痛が俺の体を襲う。
本人に自覚はないだろうがこれみよがしにレアアイテムを身につけ悪目立ちし、
誰もが振り返る雪のような白い髪に穢れを知らぬ純白の肌、
そして珍しい《双眼異色種》のプレイヤーが街中にいたらどうなるだろうか……
そう、周りの目を引くに決まっている、
道行く人の目線のほとんどが彼女に集中している。
カップルで出歩いている男女さえもだ。
尊敬、憧れ、嫉妬、欲望と様々な視線が彼女に注がれている。
「リヴィアさん」
「リクさんっ!!おひさしぶりでs──!?いきなり引っ張らないでください!?」
彼女の手を取り《歌姫の戯言》内へ引っ張る。
「いらっしゃいま──せ?」
受付の人物が急に宿内に入った俺たち見て首を傾げたのでそれに対して手を前に出して気にするなと伝える。
彼女の手を引っ張るついでに《鑑定》スキルを発動したがシステムに弾かれた。
さすがに見れないか……
《鑑定》により装備のステータスや効果が盗み見する事が出来ないようにシステムで《鑑定不可》にする事ができる、
実際に使用するのは《戦闘職》の人間ぐらいだろうか?
《生産職》の人物設定した場合技術を隠す、
信用が得られない場合が多い。
そりゃあ、買って自分の所有物にした後に《鑑定不可》を解除し《鑑定》したら不良品だったらクレームもんだから当たり前だ。
俺はこのシステムの事をリヴィアさんには一切教えていない、
情報を自分で集めたかシステムを弄っていた時に発見したのだろう、
このような一つ一つの出来事がが自分を成長させることが出来る。
にしても……
「リヴィアさんもしかして、その格好で今まで過ごしたりしてた?」
「寝る時は寝間着に着替えますよ?」
不思議そうに首を傾げるリヴィアさん、
想定以外の返答をするその姿を見てある程度察し受付の壁に背を預けリヴィアさんに問題点を話した。
「なるほど、あの視線はそうだったんですねっ!」
笑顔でそう言った彼女から視線を外す、
本当に分かっているのだろうか?
あの後数十分かけ一通りの起こり得る危険を説明した、
最初に会った時ゲームシステム系の説明しかしていなかった俺が悪かった。
それに連絡もなかったから、大丈夫だと思っていたのも失敗だったかと反省する。
彼女はVRMMOゲーム自体初めてなのだからもう少し考えるべきだった……
「理解してくれたからいいよこれから気をつけてくれれば、説明を忘れていた俺が悪いし、それなら今から普段着でも買いに行く?」
長々と受付前で喋ってしまっていたため先程から受付の子の視線が突き刺さって痛い、
迷惑半分リヴィアさんへの興味半分ってところか。
「そうですね、でも今出たらまた視線が──」
彼女自身ここまで来る途中で自分が周りに見られていると言う自覚はあったらしい、
『私は初心者だから何かおかしな所でもあるのかな』と解釈し強くなろうとしていたが、
装備を変更する度、レベルアップする度に視線の数が増えていき。
次第にその視線が怖くなり、街にはほとんど寄らなかったと言葉を漏らした。
「リヴィアさんはまだ初期装備のローブ持ってる?」
「これですか?」
システムウインドウを操作する手振りそして次の瞬間彼女の手元にローブが現れる。
「これを《装備》画面からじゃなくて《アイテム》として実態化して自分の手で着るんだ、
そうすれば装備の効果は得られないけど、見た目は多少は誤魔化せる」
本来武器や防具などの《装備品》は《~装備画面から《装備》をする事で効果を発揮できるが、
変装をするとなると少し違った方法が必要となる。
今回の場合通常なら装備画面で鎧からローブに変更すれば簡単だがその場合鎧の防御面は失われ、胴体に纏うのは防御面が心配なローブとなる。
しかし《装備》としてではなく《アイテム》としてアイテムリストから実態化させた《観賞用》として効果がないローブを鎧の上から着ればローブ分の防御はプラスにはならないが鎧を《装備》しているので鎧の防御力はそのままで日常生活でも男女問わず着飾る事ができる、
かなり有用なシステムだ……
と言いたいがさすがにガッチガチの鎧や棘が着いた肩パッドなどの防具の上から服を来た場合、
その形に変化し最悪の場合服の耐久値が減り破けるので注意だ。
「それじゃあ王都を案内するよ」
「はい、お願いします」
そろそろ出ないと受付の子からなにか言われると感じた俺は再び彼女の手を取り《歌姫の宿》から離れ歩き出した。
しかし…
「わぁ可愛いお洋服ですね!えっお似合いだなんて……ほんとですか?それならお邪魔しま~す」
途中で気恥ずかしくなり手を離して2人で並んで歩いているとリヴィアさんは客引きをしていた店員に引き止められ、
ローブの下に見えた彼女の容姿に少し興奮しがちな店員さんの勢いに負け店内に入店しあれよあれよと着せ替え人形のように次々と服を着させられるリヴィアさんを眺めていると1人の店員が近付いてきた。
「彼女さんお綺麗ですね?」
ボサボサの白髪の短髪で耳には金のリングのピアス、前が見えているのか心配になってしまう糸目のチャラそうな店員だ。
「いえ、友人?です」
そう返す、容姿は店員には見えないのだがこの店の制服を来ているので店員なのだろう
「なるほど、友人からそのうちに恋人にランクアップですね」
「それはないかと」
俺は笑う、まだお互いに互いの事をほぼ知らないのだ"まだ"恋人関係になるのは早い、
脳内リスタも『互いの事を知り関係を築いていくべし』とかウザイ事を言っている、
それにまだ友人かも怪しい……
いや待て?俺は今"まだ"と思った?
リヴィアさんとなら恋人関係なってもいいと思ったの……か?
「リクさーん、これっ!どうですか?」
彼女は水色のワンピースのようなものに身を包みながら一回転する、
それに合わせ彼女の髪とスカートがふわりと上がり窓から差し込む太陽の光に照らされた、
俺はその可憐な姿に見とれてしまった。
「頑張れ、リク君」
店員の男は耳元で囁きながら肩に軽く手を置き業務に戻って行ったのと変わるように彼女を着せ替え人形にしていた店員がこちらに来る。
「本当に彼女さんどれを着ても似合いますね!彼氏さんもこんな彼女さんがいて鼻が高いでしょ?」
「彼女だなんて──」
彼女は顔を赤くして俯いてしまう。
先程の人と言いこの人と言いどうして年頃が近い男女が2人が一緒にいるとすぐ恋人と勘違いするのだろうか?
「いえ彼女は友人です」
「──へえ……ああそういう事ですか」
店員さんが何やら不敵な笑みを浮かべる。
「?」
「でも本当によく似合ってるとは思いませんか?実はこれ先日有名なデザイナーがここのためだけにデザインしてくれた新作なんですよっ!
コレカラノキセツニピッタリ!ツウキセイガバツグンデスカラネツハナイブニコモリマセンシトクシュナソザイヲシヨウシテイルノデアセデベタツクコトモアリマセン!
ソシテナツトイエバオトメニトッテハシガイセンガテンテキデス!
コノフクハコノシガイセンヲ──」
おそらく店員はマシンガントークでこの服の説明をしてくれているのだろうと感じたが俺には呪文を唱えているようにしか聞こえなかった、
え、何?脳内リスタさんや?ふむふむなるほどわかった。
「うんそうだね、リヴィアさんに良く似合ってると思うよ」
毎週数時間リスタに教えられた女の子の扱い方についてのうんぬんかんぬんぬん必要ない知識が身についているせい……おかげか言葉がすらっと出て来た。
ファッションについてははほぼわからないがその服をリヴィアさんが着ると、武器が持ち主の手に戻るようにしっくりくる、
今の場合は似合っている、と思ったのは本当だ。
「ですよね、ですよね!本当に羨ましいですんよぉ」
何故か自分の事のように喜んでいる店員は置いておいてリヴィアさんはまだ俯いたままだ。
「よしそれじゃあ第2ラウンド行きますかっ!」
そしてまた彼女は着せ替え人形にされるのであった……
それから約30分後ようやく解放されたリヴィアさんは疲れたような、しかし満足そうな表情で俺の横に座っていた。
「お疲れ様リヴィアさんいい物は選べた?」
「はいっ!少し疲れちゃいましたけどやっぱりお洋服って見ると欲しくなっちゃいますよね、
暫くは我慢しないとな~」
「もし良かったらその代金俺が払うよ」
「えっ!?それは申し訳ないですよっ!!」
その言葉を聞いた彼女は手をあたふたと動かす。
そう言われるのは彼女の性格からして想定内だ。
「今日付き合ってくれたお礼?ここまで短期間でたどり着いたお祝い?なんでもいいか……
とにかく俺が払いたいんだ……ダメかな?」
「でもでも、リクさんにこんな大金をお支払いしていただく訳にはっ……」
流石に執拗いと嫌われるのはわかっている、
ここらが引き時か?と考えていると1つの案が頭に浮かぶ、
その浮かんだ案を脳内リスタは消そうと暴れているが無視する。
「それなら俺のお願い1つ聞いてもらってもいい?」
「お願い……ですか?」
彼女の目線と俺の目線が交差する。
俺も緊張してきたのか呼吸が少し荒くなった感覚がする。
「最終日……」
「?」
ドクンドクンと珍しく高鳴る心臓の鼓動がうるさい、
ここまで鼓動が大きく聞こえることは今まで無かったはずだ、ボスと戦った時も危機的状況に陥った時も俺は冷静でいられた。
もしこの言葉を発してしまえばもう後戻りはできないだろう。
しかし俺は意を決して口を開いた。
「もし良ければリヴィアさんがここを離れる最終日に俺と手合わせして欲しい」
「はぇ?」
「え?」
素っ頓狂な声を出したリヴィアさんに驚く俺。
「手合わせ?」
「うん」
「私とリクさんが?」
「うん」
「まずはお友達から始めましょう的なものではなくて?」
「うん?どういうこと?」
友達から始める手合わせ生活?
友達でもないやつと手合わせはできない、と言う事か?
よく分からない。
「クスッ」
色々な考えが頭の中が巡っていると彼女が右手の人差し指を曲げそれを口に手を当て小さく笑った。
「え?」
突然笑う出した彼女に困惑してしまった。
「えっと?」
肩を震わせ小さくクスクスと笑う彼女に目を奪われてしまい言葉が出てこなかった。
「……コホン、リクさんそんなに私と戦いたかったんですか?」
笑いを堪えるように咳払いをした彼女はそう聞いてきた。
「そう……だね」
小さく言うと彼女は再び笑いの笑みをこぼした。
「ごめんさい、リクさんがあまりにも子供みたいなキラキラした目で仰るものだからつい……」
その言葉を聞き気恥しさから彼女から視線を逸らし床を見つめる、先程とは真逆の状態だ。
「あれ、もしかしてリクさん恥ずかしがってます?」
「気のせいです」
「可愛いところもあるんですね」
俺は彼女に背を向ける。
「それじゃあ支払いお願いしますね?」
「それって……」
「はい私なんかで良ければお願いしま……!?」
その瞬間俺は立ち上がった、内心ガッツポーズえを決めた、
そして今日1番の苦戦すると思われた相手にさよならストライクを決め空の彼方に吹き飛ばし身軽に開放される。
「そろそろ出ようか!?」
「……ですねっ!」
おそらくこの時テンションがおかしくなっていたんだろうがそんな俺に合わせ彼女も元気よく返してくれた。
ドアを潜り店外に出ると自動的に残高等から金額が引かれる。
4着ほどで17万ルーニーか……
俺の普段着の数十倍だな、女性の服はかなり高いものが多いというがこれは平均的なのか?わからん。
しかし……
前を歩く彼女を見る。
水色のワンピースを身に纏い、珍しいものを見るように周囲にキョロキョロと視線を動かしている。
他のゲームだと洋服などのアバターを着飾るコスチューム的な物はゲーム内通貨ではなくRMT、リアルマネートレード、現実世界におけるお金で購入するケースが多い、
ゲーム内通貨で購入できたとしても単色の洋服などのシンプルなものだろう。
しかしギャディアにおける商品の9割近くはゲーム内通過で購入できる、
購入できないものは現実世界からこっちに入ってきた芸能人のコンサートのチケットなどであり、
いわゆる集金と呼ばれるゲームの運営の為のかかる運営費以上のお金を稼ぐ行為が少ないのだ。
他ゲーに例えるとガチャがわかりやすいだろうか?
現実に見間違うほどのグラフィックに、多彩なシステム、膨大な果てがないと思える世界に100を超える職業に様々なアイテム、
これらを纏めるゲームのサーバーの維持代、
そして様々なメディアへの広告代、人件費、芸能人への交渉、配信者や実況者への報酬など
素人なので分からないが月数千万、下手したら億を超えるだろう。
公式グッツなども存在するが少ない集金要素でそこまで稼げているとは相当思えない、
プレイヤーにとって1番怖いのはゲームのサービスが終了してしまう事だ。
しかし現状終了することなく運営されているのを見れば稼げているのだろうか?
俺はゲームの開発側の人間ではなく一個人のプレイヤーなので内部事情は分からないが、
サービス終了だけはまだ来て欲しくないと、そう思う。
「そういえばリヴィアさん、どこか行きたいところはないですか?」
前を進むリヴィアさんに追いつき隣に並びながら聞く。
「うーん、そうですね装備品やアイテムのお店は初日に来た時に巡りましたから、リクさんはおすすめスポットとかないですか?」
《装備品》や《アイテム屋》を最初に巡るのは冒険の基本だ、
それに安全な宿泊施設探しも大切だ。
ここまで来る間に冒険者として経験を積んできたらしい、
しかしそう聞かれるとなると二人ともノープランか。
昔リスタが女の子と遊びに行くときは男がコースを考えるとか言っていたような気もするが、
今の今までどう手合わせをお願いするかしか考えていなかったのでしょうがない。
となると最近開発が始まった北西の遊劇区の方に行ってみるのがいいか?
もしかしたら楽しめるものがあるかもしれない。
「少し思い当たるところがあるかな、いってみようか」
「あのっ」
歩き出そうとすると手をおずおずと出してくるリヴィアさん。
「はぐれてしまったら合流するのも難しいそうですから、よろしければ手をお繋ぎ出来ればい嬉しいかな──」
確かに向かうまではかなり人も多いだろうし、フレンド登録している&同じエリアに居るからマップ検索できるとはいえ
入り組んでいるからはぐれたら大変だ
「──なんて、迷惑ですよね?」
そのままゆっくりと引っ込める彼女の柔らかい手に触れる、
いままで何回目か分からない程手が触れ合った気がするが。
互いに互いを思い互いの意思で手を取り合ったのはこの時が初めてだったと思う。
現実だったらほぼあり得ない展開だ、
同い年くらいの女の子と手を繋ぐなんて……
リスタ?あれは除外だ。
緊張で手汗とか大丈夫か?などと思いながら北西へ向け手を繋ぎながら二人で歩いた。
色とりどりの風船が空へ向かい飛んでいたり空中を漂っていた、
目を輝かせた子供たちがそこらで駆け回り、
着ぐるみや大道芸人によるショーが行われたり、
屋台などがたくさん出ているここ遊劇区。
元は瓦礫などの残骸だらけだった場所を綺麗に撤去し大きな広場を作り、
そこで家を失った人々達に笑顔を届けるためにとある移動劇団がショーを行ったことにより何時しか似たような志の人物達が集まって行きいつの間にか屋台が出始め、一種のテーマパークのようになっていた。
「わー猫だ!かわいいなぁ」
リヴィアさんは何やら猫の着ぐるみと写真を撮っている、
その光景がとある人物と被る。
あいつもかわいい物好きだからな、
いや女性はほとんどの場合可愛いもの好きの人が多いか、
一回ギャウリディアを一緒にやらないかと誘ってみたがゲームはあまりやらないらしく断られた、
1回くらいは体験して欲しいものだけどどう誘えばやってくれるだろうk──!?
腕に衝撃が走ると同時に何かが俺にぶつかったのだと理解する、横を見ると地面に倒れている人、
衝撃から考えるとおそらく周りを見ないで走り俺にぶつかったのだろう。
「大丈夫か?」
立ち上がり手を出すと、倒れた人物はビクッと肩を震わせ手を胸のあたりに持っていき拒絶の反応を示される。
「リクさん大丈夫ですか!?」
リヴィアさんが心配そうに駆け寄ってくる。
「ああ俺は大丈夫」
「リ──ク──?」
倒れた人物は素早く起き上がり走りながら去っていく、また誰かと衝突しなければいいが……
その時耳に着けたオレンジ色の四角い装飾をぶら下げるイヤリングがキラリと光った。
俺の名前に反応していた?あの声色は驚きに近い、まあギャディア内ではそこそこ有名だし、
知っていてこんなところにいるなんてパターンだろうか?
声は若い、性別は声が小さすぎるのと一瞬だったのでわからなかった。
「お怪我はないですかっ!?」
あたふたとリヴィアさんは回復クリスタルを取り出し使おうとするが止める。
流石に貴重すぎるクリスタル系回復アイテムをこんなHPが数ミリしか削れていない状況で使わせるわけにはいかないし何より目立つ。
俺はリヴィアさんの手とクリスタルを包み込むように握る。
「俺は大丈夫だから、そろそろお腹が空いてくる頃だろうし何か買い食いしようか?」
既に日は真上から沈むために落ち駆けてきている時間は15時くらいだろうか?小腹が空いてくる時間だ。
リヴィアさんがふらふらと匂いに引かれた屋台で、
何かの肉や野菜刺さった串焼きのようなものを食べ物を二人で食べながら劇場があるエリアへ向かう。
大小様々な丸いテントのようなものの前では
騎士や聖職者、忍者など様々な恰好をした演者だろうか?
演者達が各劇場に呼び込みを行っていた、
エリア内に入ると視界にマップと各劇場で公演されている演目の項目が表示される。
「リヴィアさんは何か気になるのある?」
「『ラリシアと不思議な小人』かなぁ」
不思議な小人かどのような話なのだろうか?
そのチケットを買い二人でテントの中に入る。
中は薄暗く係の人物の案内によって席に案内された、
席は7割度ほど埋まっているようだった。
「わぁ中はこんなふうになっているんですねっ!」
隣に座るリヴィアさんは楽しそうだ。
しばらくして入口が閉められ暗闇が空間を支配し、
そして開演のブザーの音が鳴り響いた。
「ラリシアちゃんもルノール君もよかったよおおおおぉ」
終わった頃には隣ではリヴィアさんが号泣していた。
ストーリーは深窓の令嬢であるラリシアがある日自室で夜空を眺めていた時に一筋の流れ星が部屋の中に落下した、
そしてその流れ星は彼女のお気に入りだった騎士の人形に吸い込まれるように入り。
自我を持ち動き始める、それが不思議な小人ルノールだ。
2人は友達になり、城から1歩も外に出たことがないラリシアは世界をその目で見てきたと言うルノールの話に耳を傾けていた、
ルノールは不思議な星の力により夜しか出会うことは出来ずラリシアは夜にルノールに会うことだけが楽しみだった。
ルノールはラリシアが知らない自然を娯楽を人々を世界を語って見せた。
そんな2人は次第に惹かれ合い愛の力とヤラで奇跡が起き、人形から人間へとルノールは変化する。
そのおかげで夜以外も行動できるようになるが、城の人間に見つかり賊として牢屋に捕らえられてしまう。
そこからラリシアの父を説得したり、ルノールがラリシアの兄に認めてもらうために剣を交えたりと様々な物語があり最終的には両親と兄に認めさせ2人は幸せになって終了。
そんな話だ、
これならいい雰囲気になるだろうかと特に何も考えず。
入口で2人分チケットを買い封筒に入れる。
まあこれでいいだろう、自分が見てないものをオススメするより見たものをおすすめした方がいいか、
あの恋愛下手な2人にはこの位が丁度いいのだろうと勝手に理解する。
外に出ると空は夕焼けに染まり始めていた、
昼間の風船とは違い城や犬、船、ドラゴンなど様々な形をした風船が様々なライトに照らされぷかぷかと浮き辺りを照らしている。
流石にこの時間にいる子供は少ないようで、同じように演劇を見に来たカップルが多い
「あのリクさん」
「ん?」
「またお時間がある日一緒に出かけて貰ってもいいでしょうか?」
「いいよ明日とか?」
「えっ!?明日ですか?私は構わないですがリクさんお仕事の方は大丈夫ですか?」
「別に忙しい用事もないから大丈夫だよ」
こっちでは休暇貰ってるし
向こうならあったとしても速攻で終わらせる。
それから数日リヴィアと共に王都を巡った、
もちろん間に1日は仕事に戻らせてもらい団長とリスタの休みを強制的に取らせ、チケットを渡したが仲の進展はあったようななかったような……
まあ帰ってきたリスタは機嫌がよく何やらにやけていたから何かはあったのだろう。
そしてついにその時がやってきた。
シュベルハイツァから見える山の中の山頂、
そこに大きく窪み広場になった場所があり俺のお気に入りの特訓ポイントだ。
そこでリヴィアさんと向かい合う、距離は10mほど。
「試合形式はハーフハーフで15でいいかな」
「はい、よろしくお願いします!」
レベル上限の半分の50になり、それに比例し50より高い者は50相当のステータスに下がり、低い者は上がる、
そしてHPが半分を切ったらその場で勝敗が決まる。
ルールを設定し申請を送ると直ぐに承認され、
頭上にリクVSリヴィアと表示されカウントダウンが始まる。
5
このときをどれだけ待っていたか。
4
リヴィアさんがどれほどまで強くなったのか。
3
確かめたくて切りかかるのを我慢していた数日間。
2
ようやく我慢をせず全力で戦える。
1
二人の間に言葉はなく静かにカウントを待った。
0
「っ!!」
ゼロになった瞬間俺はリヴィアさんへと向けて突撃した。
これから仕事に向かうであろう人々が道を歩き、馬車を使い移動している。
飲食店から漂う食欲がそそる美味しそうな匂いは、空きっ腹には毒である。
そんな中を特に何も考えずにフラフラと歩く、
日中や夜とはまた違った賑わいに、新たな一面を感じる、そう思うのは今日が休暇だからだろうか?
久しぶりと言っていいほどの休暇だ。
最近は《軍団》同士の争いなどが活発になっている、
今問題視するのは犯罪紛いの行為をする《闇ギルド》の連中だろうか、
このゲームではどのように楽しみ、どのように遊ぶかはプレイヤー次第だ、
そのために現実世界では到底できない様な行為を行うプレイヤーが多い。
ゲームの要素だが現実の方にてそれに対して反対する声も度々上がるが変更という名の修正は行われていない。
まあ運営側も教育上良くないと思ったのか、初期は12歳以上対象だったのだが今では自分で物事を考え始めるであろう15歳以上が対象となっているがその歳以下子供というのは、大人よりやっては行けないと言われたらやりたくなる衝動が強い、
それにあくまでも"対象年齢"であり、禁止するものでは無いので一定数の中学生、小学生プレイヤーは存在する。
TVやネット、友人の影響などによってどの年代でもギャディアは話題になって日々ユーザーは増え続けている。
この世界は現実世界の約72倍の速さで進んでおり、
この世界で1日過ごしても現実では20分程度しか経っていない、
元は医療などの研究や、勉強の為に作られた仮装世界をゲームにも利用しているらしい。
72倍の速度で時間が流れている影響、デメリットとして、
情報を受け取る脳への負担は計り知れない、
日々の技術の進歩で、デバイスから脳に送り込まれる情報を一旦整理し最小にしてから送る機能が搭載されているとはいえ。
現実世界の70倍以上の情報量が脳に送り込まれているのは事実だ、
それを脳が的確に処理し的確に判断するための適正というものが存在する。
適性が高いほど短時間で素早く処理でき、
低いほど時間がかかり発熱などの症状を起こす可能性がある。
脳が硬い大人より柔らかい子供の方がその適性が高いのもあり、
VRMMOゲームが若い世代に人気の理由の1つだろう。
そんな事を考えていたら目的地に付き扉のノブを掴んでいることに気がつく、
扉がプレイヤー認証をするとすんなりと鍵と扉が開かれる。
《ラックトラベル》
カウンター3席、テーブル5席のこじんまりとした店だギシギシと木の床が歩みに釣られて音を鳴らす。
「らーーららーら~~~~♪」
来客に気がついたのか、鼻歌交じりに掃除をしていた1人の白いワンピースに長い黒髪を後ろに流しそれを青いリボンで纏めた少女がこちらを向く。
「あれ?お客さん?まだ開店時間じゃ──って!リクさんじゃないですか!?」
少女はパタパタと駆け寄ってくる。
「久しぶりアレイラちゃん元気でやってる?」
彼女は元は西側の出身で教会に保護されていた孤児の1人だったが、
孤児院に居た頃から料理が上手く、将来は人を笑顔にできる料理を作るシェフになりたいという夢を持っている。
そんな夢を聞いていた俺やイセルさんは
何とかお金を出し、小さいが大通りに面した部屋を借りお店を営業できる状態にした、
出来たばかりと言う事もあり、物珍しさから引き寄せられたお客さんを次々と常連へと変えて行ったのは、アレイラの才能と料理の腕だろう、
今ではここのシェフ兼看板娘だ。
余談だが《変態》が作る、
城下町におけるお嫁さんにしたいランキングの上位に入っているらしい、
マジで何やってるんだあいつら、現実世界だったらタイホされる年齢だからな?
「はいっ!最近は来てくれるお客さんもだんだん増えてきていて、ちょっとスペースが足りないかなーなんて、えへへ」
嬉しそうにニコニコと楽しそうに笑うアレイラ、
確かにこの笑顔は人を惹きつけるものがあると思う。
「一応借り部屋だから増設したりはできないからね、
となるとそろそろ自分で家建ててそこに移転でもしてみる?足りない分は多少は支援するよ?」
「そんなっ、オープンする時のお金だってまだお返しできていないのに申し訳ないです。
それに実力もまだまだですし、もう少しここで頑張りたいです!」
と聞くとブンブンと大きく顔を振りながら思いを口にするアレイラ、
どうやら余計な事を言ってしまったようだ。
「そっか、なら応援してグウゥるよ」
「ぷっ」
大事なセリフを腹の虫に邪魔された挙句笑われてしまった。
「何をお召し上がりになりますか?」
「おすすめで」
即答した、しばらく寄っていなかったので
メニューは記憶にない、
新しいメニューも増えているだろうから
どんなものが出てくるのか楽しみだ。
カウンター席に座ると、それが合図だったかのように、ドスンと何かが落ちるような音がここの2階から聞こえてくる、そしてパタパタと慌てるように歩く音、スっと音が止み、暫くするとまた聞こえ、音の主が階段を駆け下りてくる、
「遅刻、遅刻、寝坊したぁ!!」
騒がしく2階から降りてきた声の主と目が合う。
「りくお兄ちゃん!!」
ばっと座る俺に抱きついた寝癖が跳ねている赤毛の少女。
「今度はどこに行ってたの?お土産は?いつまた行っちゃうの?」
畳み掛けるような質問攻め、もちろん耳元で、
高い声がキンキンと脳内に響く。
「マリーズ」
名を呼びながら背中を叩くと大人しくなり、素直に膝の上に乗ってくる、
そのままアイテムストレージの中から櫛とボトルを取り出し髪を溶かし始める、
擽ったそうだが嬉しそうに目を細める。
寝癖にはボトルに入った《深緑のサツカ》と言う花で作った香りのいい液体を霧吹き状にしてかけながら優しく治していく。
最後にタオルで濡れた部分の水分を吸い取るように軽く抑えれば本来なら完成だ。
しかし今回は違う、
後ろに髪を流しながらまとめあげ、ストレージから星を形どったアクセサリが付いているゴムを使いポニーテールにして完成だ。
その筋の女性から見たら完璧だとは言わないだろうが何度もマリーズがせがんできたので覚えさせられたと言うか、慣れた。
「ん?」
ゴムに気がついたのだろう手を後ろにまわし、
どんな形なのか確かめるように触る
「お土産だ」
「やったあ!」
俺のひざからぴょんと降り、全身で喜びを見せるマリーズ。
「あれ?少し背が伸びたか?」
記憶にある姿より少しズレが生じる。
「うん!いっぱい牛乳飲んでるから!
これからぐんぐん伸びるんだぁ」
記憶の中では前回は彼女の頭が俺の腹部ぐらいの位置で身長は小さかった気がするが、
今ではほぼ胸の位置になっている、
やっぱり子供の成長は早いなと感じる。
対して俺はと言うと高校に入学してからは、ほとんど伸びていない、それはこっちのアバターにも反映されているらしくて身長は約162cmだ、
どうせなら高身長イケメンに生まれ変わりたかった事だが、初期のキャラメイクで身長だけは変更できなかった。
ならばまだあるであろう成長期にかけるしかない、
今は成長する力を溜めている段階なのだと自分に言い聞かせる。
こっちでもプレイヤーの身長が伸びる事は確認されてるしな☆
「僕もりくお兄ちゃんみたいに大きくて強い男になるんだ」
マリーズはまだ幼く、可愛い顔立ちも相まって女の子に間違われたりもするが男だ。
制服のフリフリのワンピースを上から着て働く準備をする、だが男だ。
本人はもっと格好良い服を着たいらしいが
アレイラは裁縫が得意で彼に女装させるのが趣味らしい、
将来歪まなければいいが……と時折そう思う。
お店の目処が立ってきた当初はまだ8歳と幼く姉と別に教会で暮らす事も考えたが本人が姉と一緒がいいとの事で
ここでウエイター?ウエイトレスとして2人で生活している、
「リクさん出来ましたよ」
と料理を運んでくるアレイラ。
「お姉ちゃんおはよう!」
「おはようじゃないでしょ、あれ?あっリクさんがマリーの髪をやってくれたんですか?
ありがとうございます」
感謝の言葉を聞きながら料理の方に視線を移動させる。
なにかの肉の上に色とりどりの野菜が散りばめられたサラダのようなものに芋が入ったグラタン、そして焼きたてのパン、美味しそうな料理が並べられている。
「いただきます」
手を合わせ食事を取る。
食べ終わった頃には少しづつだがお客が入り始めていた、
前に青龍騎士団の制服を着て食事をしていたら、
騎士様がいるからと客足が一時的に遠のき申し訳ない気持ちになった事があるが、
今は私服なので問題ない。
顔見知りのパターンもあるが、
休暇中だと察してくれるので大丈夫だ。
「それじゃあそろそろ行くわ」
支払いを済ませ席を立つ。
「はい、また来てくださいね!」
「お兄ちゃんまたね!」
2人に声を聞きながら外に出る、
席に座っていた客が、
マリーズのお兄ちゃんに反応したように顔
目線を少し俺の方に動かした気がするが気にせず外に出る。
すぐに店の壁に背を預け、ウインドウを開き建物の所有者が俺になっている事を再度確かめる。
ここは借り屋に指定されているが持ち主は俺だ、
前の持ち主から買い取って、俺がアレイラに貸している形になっているが、
おそらくあの二人は知らないだろう、知っているのは前の持ち主とイセルさんくらいか……
人が所有者している建物は《ホーム》と呼ばれ、
その中では大幅にHPが減る事は無い任意で作れる安全圏のようなものだ。
しかし安全圏と言っても絶対に安全な訳では無い、
建物にも武器や防具と同じに耐久値が設定されておりそれが一定以下になった場合《安全圏》は消失する。
建物が構成されている素材が木なら、多少の耐久値、石ならそこそこ、金属などなら強固、
使った素材によって耐久値が決まり、
その耐久値が20%以下になれば安全圏は消え、
0になれば《所有権》は消失し修復不可能な状態となり瓦礫の山と化す。
その他に任意の設定によって短時間に大幅に耐久値が減るか設定した耐久値を下回るような事やドアや窓などの重要な物が壊れた場合《所有者》にログとして連絡が行くようになっている。
短時間に大幅に減れば他プレイヤーに襲撃され荒らされている可能性があるし、
耐久値が減れば消失する可能性が高くなり《修理》を頼まなければいけない
つまり彼女達の安全を守るためにも俺が所有者になったのだ。
現状耐久値が9割ほどあるのを確認して、
《所有者》のみが設定できる固有スキル項目から《武器解除》を習得し設定する、
建物にもレベルが存在し上がる事によって多少の耐久力の増加や新たなスキルを発動することが出来る。
《武器解除》は入店したお客さん及び住人が装備している武器をストレージに強制的に移動し武器を取り出せなくするスキルだ。
しかし安全圏消失が狙いの場合、
中では武器は使えないが外では制限がなく使用できるので外から耐久値を減らされたらどうしようもない、
それも考え大通りに面している場所を選んだが人の目が多いとはいえ絶対そんな状況が起こりえないとは断言できない。
スキルを設定することによって彼女たちの安全はますます高まったが、
あくまでも《武器》のみが対象でアイテムとしての武器は使用できてしまうのが難点だ。
《アイテム使用不可》のスキルは現状実装されてはいない、
なぜなら毒を盛られた場合に解毒アイテムを使用出来ずそのまま消滅することを防ぐためだろう。
「最悪のケースを常に考えろ……か」
かつて俺を完膚なきまでに叩き潰したプレイヤーの言葉を思い出すが、
考えても現状はどうすることも出来ないのでこれから起こり得る障害を考えながら南東へと向かいながら頭を悩ませる。
待ち合わせ場所、《歌姫の戯言》の前に着くと、
あの日と変わらない雪のような白い髪、
燃える赤い目と冷たい青い目をした少女が壁に背を預け風が髪を靡かせた。
初めて出会った時と変わらないその姿で……
と思ったが装備は一新されていた。
初期装備のローブのままではなく、
まるで妖精のようなふわふわした感じはあるが、騎士とも思える少し黄色に輝く布鎧が身体を包んでいた、
見た目はには魔法防御力が高そうな軽鎧だが彼女の体型より一回り大きいように感じる、
おそらく胸や肩になどに金属プレートか何かが入っている、物理防御も多少は補えそうだ。
《武器は》は腰の右側には柄頭に青く丸い宝石のようなものがはめ込まれた剣、
鞘、刀身が異様に細いので剣というより刺突剣だろうか、
手には黒いフィンガーレス・グローブと3種類の指輪、
1つ目は女性には似合わない銀色の太くゴツゴツした《ガイアの指輪》だ、
指輪にしては重量は重いが、
それに見合った物理防御力が上昇する効果が魅力でありスタン耐性も少し上昇する、
正式順序通りに進行しているのであれば宝箱からのレアドロップだ。
レアな部類ではあるがガイアの鉄指輪以上のアイテムが多く存在するので、次への繋ぎと言ったところか?
2つ目は蔦が絡まったような装飾の緑の指輪、
記憶にはないが草系の装飾が施された指輪は、
HP回復やスタミナ回復が主だ、おそらくあれもそこら辺だろう。
3つ目は黒い指輪に赤い+の様な形の線が入った《血を求める復讐者の指輪》か、
物騒な名前だが効果は敵を倒す度にHPが少量回復すると言うソロならば持っておきたい指輪の一つだ、
かつて俺も使用していた。
入手方法がNPCのイベントをこなしていくと入れるようになるダンジョン《悪霊の宴会場》内、
リポップボス《嘆きのシーザスレイ》が落とすレアドロップだ。
霊体なので魔法攻撃しか効かず、
エリアには瓦礫の山や壁、柱などが存在するのだがそれらをすり抜け攻撃を繰り出すので壁に隠れ安全に回復をするなどは出来ない。
HPバーは1本とボスにしては低いので
即効に決着をつけるのが成功法だ。
しかし攻撃には全てHP吸収が付いており、
被弾しすぎると削る以上の回復が発動してしまい長期戦になってしまう。
ただでさえ判断をミスすれば長期戦になるのに戦闘音、騒ぎを聞きつけ《悪霊の宴会場》通常モンスター《レイス》が壁を通り抜け集まり、
《嘆きのシーザスレイ》は集まった《レイス》の生命力を吸うと言う芸当もしてくるわけで……
俺は情報を知っているだけで挑戦したことは無いが、
実力上位だけで挑戦しなければ、
HPを減らしても減らしてもりもりと回復していくという地獄絵図になってしまうのは想像が着く。
非公式の《パーティ単位でも挑戦したくないリポップ型ボスランキング》に入っているのが物語っている。
《嘆きのシーザスレイ》のボス部屋は上限8パーティ、つまり48人が挑戦人数の上限、
運営が48人が束になって攻撃しないと倒せないと明言している相手なのだ。
その激戦を生き残りなおかつレアドロップである《ブラッド・キリング》を所持しているプレイヤーは少数だ、
リポップ型ボスはボスクリスタルをドロップしないので、クリスタルを加工して手に入れると言う方法も出来ない、
プレイヤー間の取引も存在するが大金が動く、初めて数週間のプレイヤーが手に入れるのはまず無理だ。
となればドロップに絡むのは必然的に運と試行錯誤の挑戦回数となる。
それをドロップ、売買にしても運が味方をしていると考えるのが妥当か……
そして最後に白い髪につけた黒い羽の髪飾りは残念ながら検討もつかない、
オシャレ用の装飾アイテムかとも思ったが考えるよりも先に頭痛が俺の体を襲う。
本人に自覚はないだろうがこれみよがしにレアアイテムを身につけ悪目立ちし、
誰もが振り返る雪のような白い髪に穢れを知らぬ純白の肌、
そして珍しい《双眼異色種》のプレイヤーが街中にいたらどうなるだろうか……
そう、周りの目を引くに決まっている、
道行く人の目線のほとんどが彼女に集中している。
カップルで出歩いている男女さえもだ。
尊敬、憧れ、嫉妬、欲望と様々な視線が彼女に注がれている。
「リヴィアさん」
「リクさんっ!!おひさしぶりでs──!?いきなり引っ張らないでください!?」
彼女の手を取り《歌姫の戯言》内へ引っ張る。
「いらっしゃいま──せ?」
受付の人物が急に宿内に入った俺たち見て首を傾げたのでそれに対して手を前に出して気にするなと伝える。
彼女の手を引っ張るついでに《鑑定》スキルを発動したがシステムに弾かれた。
さすがに見れないか……
《鑑定》により装備のステータスや効果が盗み見する事が出来ないようにシステムで《鑑定不可》にする事ができる、
実際に使用するのは《戦闘職》の人間ぐらいだろうか?
《生産職》の人物設定した場合技術を隠す、
信用が得られない場合が多い。
そりゃあ、買って自分の所有物にした後に《鑑定不可》を解除し《鑑定》したら不良品だったらクレームもんだから当たり前だ。
俺はこのシステムの事をリヴィアさんには一切教えていない、
情報を自分で集めたかシステムを弄っていた時に発見したのだろう、
このような一つ一つの出来事がが自分を成長させることが出来る。
にしても……
「リヴィアさんもしかして、その格好で今まで過ごしたりしてた?」
「寝る時は寝間着に着替えますよ?」
不思議そうに首を傾げるリヴィアさん、
想定以外の返答をするその姿を見てある程度察し受付の壁に背を預けリヴィアさんに問題点を話した。
「なるほど、あの視線はそうだったんですねっ!」
笑顔でそう言った彼女から視線を外す、
本当に分かっているのだろうか?
あの後数十分かけ一通りの起こり得る危険を説明した、
最初に会った時ゲームシステム系の説明しかしていなかった俺が悪かった。
それに連絡もなかったから、大丈夫だと思っていたのも失敗だったかと反省する。
彼女はVRMMOゲーム自体初めてなのだからもう少し考えるべきだった……
「理解してくれたからいいよこれから気をつけてくれれば、説明を忘れていた俺が悪いし、それなら今から普段着でも買いに行く?」
長々と受付前で喋ってしまっていたため先程から受付の子の視線が突き刺さって痛い、
迷惑半分リヴィアさんへの興味半分ってところか。
「そうですね、でも今出たらまた視線が──」
彼女自身ここまで来る途中で自分が周りに見られていると言う自覚はあったらしい、
『私は初心者だから何かおかしな所でもあるのかな』と解釈し強くなろうとしていたが、
装備を変更する度、レベルアップする度に視線の数が増えていき。
次第にその視線が怖くなり、街にはほとんど寄らなかったと言葉を漏らした。
「リヴィアさんはまだ初期装備のローブ持ってる?」
「これですか?」
システムウインドウを操作する手振りそして次の瞬間彼女の手元にローブが現れる。
「これを《装備》画面からじゃなくて《アイテム》として実態化して自分の手で着るんだ、
そうすれば装備の効果は得られないけど、見た目は多少は誤魔化せる」
本来武器や防具などの《装備品》は《~装備画面から《装備》をする事で効果を発揮できるが、
変装をするとなると少し違った方法が必要となる。
今回の場合通常なら装備画面で鎧からローブに変更すれば簡単だがその場合鎧の防御面は失われ、胴体に纏うのは防御面が心配なローブとなる。
しかし《装備》としてではなく《アイテム》としてアイテムリストから実態化させた《観賞用》として効果がないローブを鎧の上から着ればローブ分の防御はプラスにはならないが鎧を《装備》しているので鎧の防御力はそのままで日常生活でも男女問わず着飾る事ができる、
かなり有用なシステムだ……
と言いたいがさすがにガッチガチの鎧や棘が着いた肩パッドなどの防具の上から服を来た場合、
その形に変化し最悪の場合服の耐久値が減り破けるので注意だ。
「それじゃあ王都を案内するよ」
「はい、お願いします」
そろそろ出ないと受付の子からなにか言われると感じた俺は再び彼女の手を取り《歌姫の宿》から離れ歩き出した。
しかし…
「わぁ可愛いお洋服ですね!えっお似合いだなんて……ほんとですか?それならお邪魔しま~す」
途中で気恥ずかしくなり手を離して2人で並んで歩いているとリヴィアさんは客引きをしていた店員に引き止められ、
ローブの下に見えた彼女の容姿に少し興奮しがちな店員さんの勢いに負け店内に入店しあれよあれよと着せ替え人形のように次々と服を着させられるリヴィアさんを眺めていると1人の店員が近付いてきた。
「彼女さんお綺麗ですね?」
ボサボサの白髪の短髪で耳には金のリングのピアス、前が見えているのか心配になってしまう糸目のチャラそうな店員だ。
「いえ、友人?です」
そう返す、容姿は店員には見えないのだがこの店の制服を来ているので店員なのだろう
「なるほど、友人からそのうちに恋人にランクアップですね」
「それはないかと」
俺は笑う、まだお互いに互いの事をほぼ知らないのだ"まだ"恋人関係になるのは早い、
脳内リスタも『互いの事を知り関係を築いていくべし』とかウザイ事を言っている、
それにまだ友人かも怪しい……
いや待て?俺は今"まだ"と思った?
リヴィアさんとなら恋人関係なってもいいと思ったの……か?
「リクさーん、これっ!どうですか?」
彼女は水色のワンピースのようなものに身を包みながら一回転する、
それに合わせ彼女の髪とスカートがふわりと上がり窓から差し込む太陽の光に照らされた、
俺はその可憐な姿に見とれてしまった。
「頑張れ、リク君」
店員の男は耳元で囁きながら肩に軽く手を置き業務に戻って行ったのと変わるように彼女を着せ替え人形にしていた店員がこちらに来る。
「本当に彼女さんどれを着ても似合いますね!彼氏さんもこんな彼女さんがいて鼻が高いでしょ?」
「彼女だなんて──」
彼女は顔を赤くして俯いてしまう。
先程の人と言いこの人と言いどうして年頃が近い男女が2人が一緒にいるとすぐ恋人と勘違いするのだろうか?
「いえ彼女は友人です」
「──へえ……ああそういう事ですか」
店員さんが何やら不敵な笑みを浮かべる。
「?」
「でも本当によく似合ってるとは思いませんか?実はこれ先日有名なデザイナーがここのためだけにデザインしてくれた新作なんですよっ!
コレカラノキセツニピッタリ!ツウキセイガバツグンデスカラネツハナイブニコモリマセンシトクシュナソザイヲシヨウシテイルノデアセデベタツクコトモアリマセン!
ソシテナツトイエバオトメニトッテハシガイセンガテンテキデス!
コノフクハコノシガイセンヲ──」
おそらく店員はマシンガントークでこの服の説明をしてくれているのだろうと感じたが俺には呪文を唱えているようにしか聞こえなかった、
え、何?脳内リスタさんや?ふむふむなるほどわかった。
「うんそうだね、リヴィアさんに良く似合ってると思うよ」
毎週数時間リスタに教えられた女の子の扱い方についてのうんぬんかんぬんぬん必要ない知識が身についているせい……おかげか言葉がすらっと出て来た。
ファッションについてははほぼわからないがその服をリヴィアさんが着ると、武器が持ち主の手に戻るようにしっくりくる、
今の場合は似合っている、と思ったのは本当だ。
「ですよね、ですよね!本当に羨ましいですんよぉ」
何故か自分の事のように喜んでいる店員は置いておいてリヴィアさんはまだ俯いたままだ。
「よしそれじゃあ第2ラウンド行きますかっ!」
そしてまた彼女は着せ替え人形にされるのであった……
それから約30分後ようやく解放されたリヴィアさんは疲れたような、しかし満足そうな表情で俺の横に座っていた。
「お疲れ様リヴィアさんいい物は選べた?」
「はいっ!少し疲れちゃいましたけどやっぱりお洋服って見ると欲しくなっちゃいますよね、
暫くは我慢しないとな~」
「もし良かったらその代金俺が払うよ」
「えっ!?それは申し訳ないですよっ!!」
その言葉を聞いた彼女は手をあたふたと動かす。
そう言われるのは彼女の性格からして想定内だ。
「今日付き合ってくれたお礼?ここまで短期間でたどり着いたお祝い?なんでもいいか……
とにかく俺が払いたいんだ……ダメかな?」
「でもでも、リクさんにこんな大金をお支払いしていただく訳にはっ……」
流石に執拗いと嫌われるのはわかっている、
ここらが引き時か?と考えていると1つの案が頭に浮かぶ、
その浮かんだ案を脳内リスタは消そうと暴れているが無視する。
「それなら俺のお願い1つ聞いてもらってもいい?」
「お願い……ですか?」
彼女の目線と俺の目線が交差する。
俺も緊張してきたのか呼吸が少し荒くなった感覚がする。
「最終日……」
「?」
ドクンドクンと珍しく高鳴る心臓の鼓動がうるさい、
ここまで鼓動が大きく聞こえることは今まで無かったはずだ、ボスと戦った時も危機的状況に陥った時も俺は冷静でいられた。
もしこの言葉を発してしまえばもう後戻りはできないだろう。
しかし俺は意を決して口を開いた。
「もし良ければリヴィアさんがここを離れる最終日に俺と手合わせして欲しい」
「はぇ?」
「え?」
素っ頓狂な声を出したリヴィアさんに驚く俺。
「手合わせ?」
「うん」
「私とリクさんが?」
「うん」
「まずはお友達から始めましょう的なものではなくて?」
「うん?どういうこと?」
友達から始める手合わせ生活?
友達でもないやつと手合わせはできない、と言う事か?
よく分からない。
「クスッ」
色々な考えが頭の中が巡っていると彼女が右手の人差し指を曲げそれを口に手を当て小さく笑った。
「え?」
突然笑う出した彼女に困惑してしまった。
「えっと?」
肩を震わせ小さくクスクスと笑う彼女に目を奪われてしまい言葉が出てこなかった。
「……コホン、リクさんそんなに私と戦いたかったんですか?」
笑いを堪えるように咳払いをした彼女はそう聞いてきた。
「そう……だね」
小さく言うと彼女は再び笑いの笑みをこぼした。
「ごめんさい、リクさんがあまりにも子供みたいなキラキラした目で仰るものだからつい……」
その言葉を聞き気恥しさから彼女から視線を逸らし床を見つめる、先程とは真逆の状態だ。
「あれ、もしかしてリクさん恥ずかしがってます?」
「気のせいです」
「可愛いところもあるんですね」
俺は彼女に背を向ける。
「それじゃあ支払いお願いしますね?」
「それって……」
「はい私なんかで良ければお願いしま……!?」
その瞬間俺は立ち上がった、内心ガッツポーズえを決めた、
そして今日1番の苦戦すると思われた相手にさよならストライクを決め空の彼方に吹き飛ばし身軽に開放される。
「そろそろ出ようか!?」
「……ですねっ!」
おそらくこの時テンションがおかしくなっていたんだろうがそんな俺に合わせ彼女も元気よく返してくれた。
ドアを潜り店外に出ると自動的に残高等から金額が引かれる。
4着ほどで17万ルーニーか……
俺の普段着の数十倍だな、女性の服はかなり高いものが多いというがこれは平均的なのか?わからん。
しかし……
前を歩く彼女を見る。
水色のワンピースを身に纏い、珍しいものを見るように周囲にキョロキョロと視線を動かしている。
他のゲームだと洋服などのアバターを着飾るコスチューム的な物はゲーム内通貨ではなくRMT、リアルマネートレード、現実世界におけるお金で購入するケースが多い、
ゲーム内通貨で購入できたとしても単色の洋服などのシンプルなものだろう。
しかしギャディアにおける商品の9割近くはゲーム内通過で購入できる、
購入できないものは現実世界からこっちに入ってきた芸能人のコンサートのチケットなどであり、
いわゆる集金と呼ばれるゲームの運営の為のかかる運営費以上のお金を稼ぐ行為が少ないのだ。
他ゲーに例えるとガチャがわかりやすいだろうか?
現実に見間違うほどのグラフィックに、多彩なシステム、膨大な果てがないと思える世界に100を超える職業に様々なアイテム、
これらを纏めるゲームのサーバーの維持代、
そして様々なメディアへの広告代、人件費、芸能人への交渉、配信者や実況者への報酬など
素人なので分からないが月数千万、下手したら億を超えるだろう。
公式グッツなども存在するが少ない集金要素でそこまで稼げているとは相当思えない、
プレイヤーにとって1番怖いのはゲームのサービスが終了してしまう事だ。
しかし現状終了することなく運営されているのを見れば稼げているのだろうか?
俺はゲームの開発側の人間ではなく一個人のプレイヤーなので内部事情は分からないが、
サービス終了だけはまだ来て欲しくないと、そう思う。
「そういえばリヴィアさん、どこか行きたいところはないですか?」
前を進むリヴィアさんに追いつき隣に並びながら聞く。
「うーん、そうですね装備品やアイテムのお店は初日に来た時に巡りましたから、リクさんはおすすめスポットとかないですか?」
《装備品》や《アイテム屋》を最初に巡るのは冒険の基本だ、
それに安全な宿泊施設探しも大切だ。
ここまで来る間に冒険者として経験を積んできたらしい、
しかしそう聞かれるとなると二人ともノープランか。
昔リスタが女の子と遊びに行くときは男がコースを考えるとか言っていたような気もするが、
今の今までどう手合わせをお願いするかしか考えていなかったのでしょうがない。
となると最近開発が始まった北西の遊劇区の方に行ってみるのがいいか?
もしかしたら楽しめるものがあるかもしれない。
「少し思い当たるところがあるかな、いってみようか」
「あのっ」
歩き出そうとすると手をおずおずと出してくるリヴィアさん。
「はぐれてしまったら合流するのも難しいそうですから、よろしければ手をお繋ぎ出来ればい嬉しいかな──」
確かに向かうまではかなり人も多いだろうし、フレンド登録している&同じエリアに居るからマップ検索できるとはいえ
入り組んでいるからはぐれたら大変だ
「──なんて、迷惑ですよね?」
そのままゆっくりと引っ込める彼女の柔らかい手に触れる、
いままで何回目か分からない程手が触れ合った気がするが。
互いに互いを思い互いの意思で手を取り合ったのはこの時が初めてだったと思う。
現実だったらほぼあり得ない展開だ、
同い年くらいの女の子と手を繋ぐなんて……
リスタ?あれは除外だ。
緊張で手汗とか大丈夫か?などと思いながら北西へ向け手を繋ぎながら二人で歩いた。
色とりどりの風船が空へ向かい飛んでいたり空中を漂っていた、
目を輝かせた子供たちがそこらで駆け回り、
着ぐるみや大道芸人によるショーが行われたり、
屋台などがたくさん出ているここ遊劇区。
元は瓦礫などの残骸だらけだった場所を綺麗に撤去し大きな広場を作り、
そこで家を失った人々達に笑顔を届けるためにとある移動劇団がショーを行ったことにより何時しか似たような志の人物達が集まって行きいつの間にか屋台が出始め、一種のテーマパークのようになっていた。
「わー猫だ!かわいいなぁ」
リヴィアさんは何やら猫の着ぐるみと写真を撮っている、
その光景がとある人物と被る。
あいつもかわいい物好きだからな、
いや女性はほとんどの場合可愛いもの好きの人が多いか、
一回ギャウリディアを一緒にやらないかと誘ってみたがゲームはあまりやらないらしく断られた、
1回くらいは体験して欲しいものだけどどう誘えばやってくれるだろうk──!?
腕に衝撃が走ると同時に何かが俺にぶつかったのだと理解する、横を見ると地面に倒れている人、
衝撃から考えるとおそらく周りを見ないで走り俺にぶつかったのだろう。
「大丈夫か?」
立ち上がり手を出すと、倒れた人物はビクッと肩を震わせ手を胸のあたりに持っていき拒絶の反応を示される。
「リクさん大丈夫ですか!?」
リヴィアさんが心配そうに駆け寄ってくる。
「ああ俺は大丈夫」
「リ──ク──?」
倒れた人物は素早く起き上がり走りながら去っていく、また誰かと衝突しなければいいが……
その時耳に着けたオレンジ色の四角い装飾をぶら下げるイヤリングがキラリと光った。
俺の名前に反応していた?あの声色は驚きに近い、まあギャディア内ではそこそこ有名だし、
知っていてこんなところにいるなんてパターンだろうか?
声は若い、性別は声が小さすぎるのと一瞬だったのでわからなかった。
「お怪我はないですかっ!?」
あたふたとリヴィアさんは回復クリスタルを取り出し使おうとするが止める。
流石に貴重すぎるクリスタル系回復アイテムをこんなHPが数ミリしか削れていない状況で使わせるわけにはいかないし何より目立つ。
俺はリヴィアさんの手とクリスタルを包み込むように握る。
「俺は大丈夫だから、そろそろお腹が空いてくる頃だろうし何か買い食いしようか?」
既に日は真上から沈むために落ち駆けてきている時間は15時くらいだろうか?小腹が空いてくる時間だ。
リヴィアさんがふらふらと匂いに引かれた屋台で、
何かの肉や野菜刺さった串焼きのようなものを食べ物を二人で食べながら劇場があるエリアへ向かう。
大小様々な丸いテントのようなものの前では
騎士や聖職者、忍者など様々な恰好をした演者だろうか?
演者達が各劇場に呼び込みを行っていた、
エリア内に入ると視界にマップと各劇場で公演されている演目の項目が表示される。
「リヴィアさんは何か気になるのある?」
「『ラリシアと不思議な小人』かなぁ」
不思議な小人かどのような話なのだろうか?
そのチケットを買い二人でテントの中に入る。
中は薄暗く係の人物の案内によって席に案内された、
席は7割度ほど埋まっているようだった。
「わぁ中はこんなふうになっているんですねっ!」
隣に座るリヴィアさんは楽しそうだ。
しばらくして入口が閉められ暗闇が空間を支配し、
そして開演のブザーの音が鳴り響いた。
「ラリシアちゃんもルノール君もよかったよおおおおぉ」
終わった頃には隣ではリヴィアさんが号泣していた。
ストーリーは深窓の令嬢であるラリシアがある日自室で夜空を眺めていた時に一筋の流れ星が部屋の中に落下した、
そしてその流れ星は彼女のお気に入りだった騎士の人形に吸い込まれるように入り。
自我を持ち動き始める、それが不思議な小人ルノールだ。
2人は友達になり、城から1歩も外に出たことがないラリシアは世界をその目で見てきたと言うルノールの話に耳を傾けていた、
ルノールは不思議な星の力により夜しか出会うことは出来ずラリシアは夜にルノールに会うことだけが楽しみだった。
ルノールはラリシアが知らない自然を娯楽を人々を世界を語って見せた。
そんな2人は次第に惹かれ合い愛の力とヤラで奇跡が起き、人形から人間へとルノールは変化する。
そのおかげで夜以外も行動できるようになるが、城の人間に見つかり賊として牢屋に捕らえられてしまう。
そこからラリシアの父を説得したり、ルノールがラリシアの兄に認めてもらうために剣を交えたりと様々な物語があり最終的には両親と兄に認めさせ2人は幸せになって終了。
そんな話だ、
これならいい雰囲気になるだろうかと特に何も考えず。
入口で2人分チケットを買い封筒に入れる。
まあこれでいいだろう、自分が見てないものをオススメするより見たものをおすすめした方がいいか、
あの恋愛下手な2人にはこの位が丁度いいのだろうと勝手に理解する。
外に出ると空は夕焼けに染まり始めていた、
昼間の風船とは違い城や犬、船、ドラゴンなど様々な形をした風船が様々なライトに照らされぷかぷかと浮き辺りを照らしている。
流石にこの時間にいる子供は少ないようで、同じように演劇を見に来たカップルが多い
「あのリクさん」
「ん?」
「またお時間がある日一緒に出かけて貰ってもいいでしょうか?」
「いいよ明日とか?」
「えっ!?明日ですか?私は構わないですがリクさんお仕事の方は大丈夫ですか?」
「別に忙しい用事もないから大丈夫だよ」
こっちでは休暇貰ってるし
向こうならあったとしても速攻で終わらせる。
それから数日リヴィアと共に王都を巡った、
もちろん間に1日は仕事に戻らせてもらい団長とリスタの休みを強制的に取らせ、チケットを渡したが仲の進展はあったようななかったような……
まあ帰ってきたリスタは機嫌がよく何やらにやけていたから何かはあったのだろう。
そしてついにその時がやってきた。
シュベルハイツァから見える山の中の山頂、
そこに大きく窪み広場になった場所があり俺のお気に入りの特訓ポイントだ。
そこでリヴィアさんと向かい合う、距離は10mほど。
「試合形式はハーフハーフで15でいいかな」
「はい、よろしくお願いします!」
レベル上限の半分の50になり、それに比例し50より高い者は50相当のステータスに下がり、低い者は上がる、
そしてHPが半分を切ったらその場で勝敗が決まる。
ルールを設定し申請を送ると直ぐに承認され、
頭上にリクVSリヴィアと表示されカウントダウンが始まる。
5
このときをどれだけ待っていたか。
4
リヴィアさんがどれほどまで強くなったのか。
3
確かめたくて切りかかるのを我慢していた数日間。
2
ようやく我慢をせず全力で戦える。
1
二人の間に言葉はなく静かにカウントを待った。
0
「っ!!」
ゼロになった瞬間俺はリヴィアさんへと向けて突撃した。
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