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第5話《甘いもの狂いの騎士ですが甘味って必須だなって常々思います》
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俺は城下町の大通りを進む、
戦闘後のためか鎧の下に着ているインナーが
少し汗を吸って気持ち悪い。
裏路地を通りながら布製の通気性がいい服に着替える。
あの青龍騎士団の印が入った装備を着て歩いていたら目立って仕方ない、
疲れてる時まで妙に絡まれるのは勘弁だ。
《青龍騎士団本部》が存在する【都市シュベルハイツァ】はギャディアの世界でも数少ない人間の王が治める都市である。
人口が減り捨てられたり、ほかの王に侵略されたり、蹴落とされたり、下克上されたりで、王と言う存在が治めていること自体この世界では珍しい、
自称王などという酔狂なプレイヤーはたまにいるが。
《旅人》としてこの世界に降りたった場合、メインクエストを進める上で必ずここには来る事になるので、プレイヤーの人口も一定数存在する。
俺がまだここに来た頃人の王が治めるこの都市はまだまだ未熟と呼べる者で治安も悪かったが。
《青龍騎士団》ができたことによって街の平和は守られていた。
最初は王の協力の元、団長のルークを含め僅か数人の騎士団とも呼べぬお粗末なものだったが今では下部組織含め2000人を超える大組織になっている、
NPCを含めるとさらに増えるだろう。
街の人々も最初は正気が抜けたような、生きる事に絶望したような表情の者が多かったが、
今では騎士団による見回りや大規模な炊き出し、
街の発展によって活気に溢れている。
そんな中俺は1つの店に寄る
中に入ると火照った身体と汗を乾かす涼しい空調と共に甘い匂いが香る。
するとお客が来た事に気がついた店員の女性が奥からやってくる。
「あら騎士様、いらっしゃい!今回は何にするの?」
「いつものやつで」
この店はよく来ているので向こうも俺の顔を覚えていた。
「はいはい、そういえば騎士様聞いたわよ?今回も大活躍だったんですってね!」
情報と言うのは伝達が早いらしい、
帰ってきたのは数十分前だと言うのに既にボスを撃破した情報が広まっている。
「今回も皆に助けられましたけどね、俺なんてほかの青龍騎士団の皆さんに比べたらまだまだ未熟者です」
紙袋が渡される。
「はいいつものね、それとこれは騎士様の為に作ったのよ私のオリジナルよ」
と可愛くラッピングされたクッキーを渡される、
まだ暖かい、おそらく焼きたてなのだろう。
俺はそれを口の中に放り込むとバターと小麦粉とほんのりとした甘さが口の中で広がる
「どうかしら?」
「──美味しいけど、俺的にはもうちょっと甘いほうがいいかな」
と感想を言うと、彼女の目付きが変人見る目に変化する、
何かおかしなこと言ったかな、お菓子だけに。
「前に甘さが足りないって言ってたから標準より5倍近く甘くしてるのだけど……」
なるほどこれで5倍かなら6.5から7辺りがちょうどいいかな。
自分で言うのも俺は甘党だ。
卵焼きも砂糖大さじ4は入れるし向こうではいつも氷砂糖をストックし持ち歩いていたりしている。
前に俺が作った卵焼きを食べた奴が「これほぼ黄色い砂糖じゃん」って言っていたのを思い出す。
その他にパンケーキにチョコソースと、蜂蜜、シロップ、ホイップクリームかけても食べれるし
世界一甘いお菓子と言われるグラブジャミンもなんの苦もなく食べれる、
だがあれは本体と言うよりシロップが甘い、
もうちょっと本体を甘くしてもいいと思う
ラス○ッラも食べれるが、あれもシロップばかりで本体のカッテージチーズがパサパサしすぎていてあまり好きではない。
おいそこ吐きそうな顔をするな。
「わざわざ俺の為に作ってくれてありがとうございます、もしまだ余りがあれば買い取りますが……」
「いいのよいいのよ、騎士様はお得意様なんだから、元気に帰ってきてまたここで商品を買ってくれるだけで嬉しいわ」
「そうですか……わかりましたまた来ますね!」
俺は一礼し店を後にする。
そのままの足で俺は目的地へと向かう城下町は全方向モンスター侵入を防止するために壁が絶賛制作途中で現状は南側と商業区や工場のようなものがある東が作られている北側は山と森が存在し天然の城壁に近いので制作のペースはゆっくりだ、後1年程で完了するだろう。
そして未だに手をつけられていない西側に俺は向かう、
西は一言で言うと瓦礫の山、廃墟だ、
かなり撤去され、整備されて来てるとはいえまだまだ存在している。
この世界に最初の旅人が現れた数十年前に戦争があり、犠牲になった区画らしい、NPCから聞いた話なので確かだろう。
だいぶ騎士団や住民たちのおかげで綺麗になってはいるが完全に撤去されるのは当分先だ、
それに壁作りが後回しにされてるのも、西側は
かなり広く中心に向かうまで距離があるので万が一攻めてきても対処出来、
小型の魔物なら瓦礫の中に閉じ込めることも出来る、
万が一失ったとしても対して痛手にはならないと言う判断からだ。
制作費も人員も無限に存在する訳では無いのでそのような判断が必要な場合もある事は分かってはいるが
現在西側には500人以上もの人が家が無く寒空の下過ごしている。
その人々が安心して暮らせるように、少しでも頑張らないとな……
などという考えていると目的の建物に入る、入る前から、子供たちの元気な声が辺りに響いていた。
経年劣化で嫌な音を立てる扉に手をかけ開ける、
中はシンプルなデザインの教会だ、
木の長椅子に白い壁、はめ込まれた多色に輝くステンドグラス、正面には大きな十字架、
1人のシスターが俺に気が付き祈るように一礼する。
「ようこそおいで下さいました騎士様」
「イセルさんはいるかな?」
「神父様はただいま来客の対応中です」
「それなら中庭で子供たちに挨拶していますから、来客対応が終わったら呼んでください」
俺はシスターにそう言って中庭へ向かう、
中庭と言っても天井が抜け落ち、床が剥がれ、なにかの芽が顔を覗かせている不思議な場所である。
中庭では1人のシスターが約20数人の子供たちと遊んでいた、
ここは協会なのだが孤児院も兼ねており、親の居ない子供たちを保護している。
「あっ騎士様だー」
1人の子供が俺を見つけると他の子らも俺に気が付き、
こちらに向かって駆け出し飛びつき一瞬で囲まれた。
「おーおー相変わらず元気だな、ほらこれお土産だ」
1人の少女に紙袋を手渡す。
「やったーなんだろー……わぁくっきーだ!!」
「くっきー!?」
「ちょうだい、ちょうだい!」
「わたしもー」
紙袋を持った少女に群がり出す子供たち。
「全員分あるからゆっくりな~」
「それと、食べ物を食べる前は手を洗いましょうね」
俺の言葉に付け足すようにシスターが言うと
テーブルに紙袋を置き、皆手を洗いに行く
「もちろんクリスの分もあるからな」
俺がそう言うシスターの少女はにっこりと笑う。
「お久しぶりです、リクさん」
「ここでの生活には慣れたか?」
「はい、神父様も先輩のシスターの方々も良くしてくださいますので」
「それなら良かった」
手を洗って帰ってきた子供たちはそれぞれ行儀よく座る。
「それじゃあ皆、せーの」
「「「「いただきます」」」」
元気な頂きますが周辺に響く、子供達は美味しそうにクッキーを頬張る、
クリスもクッキーを食べようと袋の方へ手を伸ばして──
「あっシスターいけないんだー」
1人の少年がクリスを指さす。
「シスターもちゃんと手を洗わないとダメ」
子供に指摘されて気がついたのかクリスは顔を少し赤らめながら手を洗いに行った。
「騎士様、神父がお待ちです」
出ていったクリスと入れ替わるように別のシスターが俺を呼びに来る。
「それじゃあ俺は行くから元気で行儀よくな」
「またねー」
「騎士様今度はいっしょにあそぼー」
笑顔で手を振る子供たちに見送られる。
来た道を戻ると十字架の前にステンドグラスグラスを光を受け祈りを捧げる神父がいた。
「イセルさん急な訪問してすみません」
「いえいえ私共は何時でも歓迎しておりますよ、リク殿も元気そうで何よりです」
腰が曲がりかけた皺が笑顔を作っているように見える温厚そうな老人、
イセル・ハーバルト、ここの神父だ。
イセルが歩き出したので俺はその後ろを着いていく。
「クリスも元気そうでよかったよ」
「ええ、ここに来た当初よりはかなり笑顔が増えました、
最初は怯えていた様子でしたが今では子供たちとも年上のシスターとも交友を深め数段に元気になっていると思っております、
私どもも彼女には感謝しております」
「これもクリスを助けてくれたイセルさんのおかげです、ありがとうございます」
「私は何もしていませんよ、彼女は強い、
だからこそ止まっていた足が前に踏み出せた、その強さの中にはリク殿、あなたが背中を押したのも影響しているはずです」
クリスは3ヶ月ほど前、闇ギルドを消した時に捉えられていたのを発見し保護した、
保護した時は彼女は闇ギルドに居たからか、
精神が不安定になっており暴行も受けたのか、体に痣があり喋れないほどに危険な状態だったのを教会に頼み治療してもらっていた。
その彼女が今では子供たちと笑いながら元気で暮らせているのはいい事だろう。
「そうだといいですね」
「ええそうですとも、ところでリク殿、ボス戦では大活躍されたそうで」
──はあ、ここもか。
「ほんの数時間前なんだけどなあ、情報が広まるの早いですよね」
「人と言うのは噂が好きな生き物 、情報は鮮度が命です、
それに自分たちを守ってくださっている騎士様達の事だと言うなら尚更でしょうな」
神父の話を聞いていると視界にメールのアイコンが表示される。
差出人は……
「イセルさんちょっと失礼」
俺は少し離れメールの内容を表示させる。
『リクさんお久しぶりです、リヴィアです、
今ようやくシュベルハイツァにたどり着きました!
それで青龍騎士団の本部?にお邪魔したのですがリクさんは居ないと言われました、
私は《海姫の戯言》という宿に泊まっています、
お時間があればお話したいです』
シュベルハイツァにたどり着くためには中盤まで進めないと行けないのだが、
普通なら初めてから1ヶ月以上はかかるがこの数日で来たのか?
俺は驚いていた、情報を揃えたストーリー最速攻略連中でも2,3週間はかかったと聞いたことがある、
俺はニヤけが止まらなかった、
高いステータス上昇値を持つ《双眼異色族》、
メインストーリーはソロでボスを倒す場面もあありそこで苦戦するプレイヤーも存在する。
しかし短時間でここまで来れたと言うことは、
戦闘スキルは平均以上だろう、アバターの慣らしは既に終わっていて、戦闘スタイルもある程度の自分の物になっている。
「戦ってみたい……」
素直な感想が漏れた。
ギャウリディアは第二の人生を送るために様々な職業やらステージが実装されているが、
元々はPvP重視のゲームシステムになる予定だったらしい。
《下克上》などのPvP専用スキルがある時点からその名残は感じられる。
それに相手を倒した場合に貰える経験値は強敵、自分よりレベルが高い相手ほど得られる経験値が多くなる、
レベルが低くても経験値は入るがレベルキャップという物が存在し、
同じ種類のモンスターから得られる経験値は100%,70%,50%,30%,20%,10%,1%と減少して行く。
リリース初期ではプレイヤーの成長速度が、ほぼ同じような物だったので、
PvPをしレベルを上げるプレイヤーが多く存在した。
リヴィアさんはどこまで強くなってるんだろうな。
『明日なら何時でも空いている、朝を少し過ぎたぐらいに迎えに行くよ、話したいこともあるからね』
と送信してイセルさんのもとへ戻る。
「何やら良い事があったようですな」
にこにこしながら俺を見るイセルさん。
「少し前にモンスターに襲われてる女性を助けましてね、その時はまだ初心者だったんですが、つい先程シュベルハイツァに着いたらしくて」
「ほおほおそれはそれは、会いに行かれるのですかな?」
「今日はこれから城で宴を開いてくれるらしくてそれに出席するので明日ですね」
「ふむ、それなら時刻も既に夕暮れ、辺りも黒く染まっている、そろそろ向かわれた方がいいと思いますぞ」
「そうですね、あまり堅苦しいのは嫌いなんですけどね……参加しなかったらしなかったで何か言われるのはわかってますし……
それではイセルさんまた」
「リク殿に神のご加護があらんことを」
俺は一礼し教会から出る。
堅苦しいパーティに出席する事より、どうやってリヴィアさんとPvPをする展開まで持ち込むかが今の難題だった。
戦闘後のためか鎧の下に着ているインナーが
少し汗を吸って気持ち悪い。
裏路地を通りながら布製の通気性がいい服に着替える。
あの青龍騎士団の印が入った装備を着て歩いていたら目立って仕方ない、
疲れてる時まで妙に絡まれるのは勘弁だ。
《青龍騎士団本部》が存在する【都市シュベルハイツァ】はギャディアの世界でも数少ない人間の王が治める都市である。
人口が減り捨てられたり、ほかの王に侵略されたり、蹴落とされたり、下克上されたりで、王と言う存在が治めていること自体この世界では珍しい、
自称王などという酔狂なプレイヤーはたまにいるが。
《旅人》としてこの世界に降りたった場合、メインクエストを進める上で必ずここには来る事になるので、プレイヤーの人口も一定数存在する。
俺がまだここに来た頃人の王が治めるこの都市はまだまだ未熟と呼べる者で治安も悪かったが。
《青龍騎士団》ができたことによって街の平和は守られていた。
最初は王の協力の元、団長のルークを含め僅か数人の騎士団とも呼べぬお粗末なものだったが今では下部組織含め2000人を超える大組織になっている、
NPCを含めるとさらに増えるだろう。
街の人々も最初は正気が抜けたような、生きる事に絶望したような表情の者が多かったが、
今では騎士団による見回りや大規模な炊き出し、
街の発展によって活気に溢れている。
そんな中俺は1つの店に寄る
中に入ると火照った身体と汗を乾かす涼しい空調と共に甘い匂いが香る。
するとお客が来た事に気がついた店員の女性が奥からやってくる。
「あら騎士様、いらっしゃい!今回は何にするの?」
「いつものやつで」
この店はよく来ているので向こうも俺の顔を覚えていた。
「はいはい、そういえば騎士様聞いたわよ?今回も大活躍だったんですってね!」
情報と言うのは伝達が早いらしい、
帰ってきたのは数十分前だと言うのに既にボスを撃破した情報が広まっている。
「今回も皆に助けられましたけどね、俺なんてほかの青龍騎士団の皆さんに比べたらまだまだ未熟者です」
紙袋が渡される。
「はいいつものね、それとこれは騎士様の為に作ったのよ私のオリジナルよ」
と可愛くラッピングされたクッキーを渡される、
まだ暖かい、おそらく焼きたてなのだろう。
俺はそれを口の中に放り込むとバターと小麦粉とほんのりとした甘さが口の中で広がる
「どうかしら?」
「──美味しいけど、俺的にはもうちょっと甘いほうがいいかな」
と感想を言うと、彼女の目付きが変人見る目に変化する、
何かおかしなこと言ったかな、お菓子だけに。
「前に甘さが足りないって言ってたから標準より5倍近く甘くしてるのだけど……」
なるほどこれで5倍かなら6.5から7辺りがちょうどいいかな。
自分で言うのも俺は甘党だ。
卵焼きも砂糖大さじ4は入れるし向こうではいつも氷砂糖をストックし持ち歩いていたりしている。
前に俺が作った卵焼きを食べた奴が「これほぼ黄色い砂糖じゃん」って言っていたのを思い出す。
その他にパンケーキにチョコソースと、蜂蜜、シロップ、ホイップクリームかけても食べれるし
世界一甘いお菓子と言われるグラブジャミンもなんの苦もなく食べれる、
だがあれは本体と言うよりシロップが甘い、
もうちょっと本体を甘くしてもいいと思う
ラス○ッラも食べれるが、あれもシロップばかりで本体のカッテージチーズがパサパサしすぎていてあまり好きではない。
おいそこ吐きそうな顔をするな。
「わざわざ俺の為に作ってくれてありがとうございます、もしまだ余りがあれば買い取りますが……」
「いいのよいいのよ、騎士様はお得意様なんだから、元気に帰ってきてまたここで商品を買ってくれるだけで嬉しいわ」
「そうですか……わかりましたまた来ますね!」
俺は一礼し店を後にする。
そのままの足で俺は目的地へと向かう城下町は全方向モンスター侵入を防止するために壁が絶賛制作途中で現状は南側と商業区や工場のようなものがある東が作られている北側は山と森が存在し天然の城壁に近いので制作のペースはゆっくりだ、後1年程で完了するだろう。
そして未だに手をつけられていない西側に俺は向かう、
西は一言で言うと瓦礫の山、廃墟だ、
かなり撤去され、整備されて来てるとはいえまだまだ存在している。
この世界に最初の旅人が現れた数十年前に戦争があり、犠牲になった区画らしい、NPCから聞いた話なので確かだろう。
だいぶ騎士団や住民たちのおかげで綺麗になってはいるが完全に撤去されるのは当分先だ、
それに壁作りが後回しにされてるのも、西側は
かなり広く中心に向かうまで距離があるので万が一攻めてきても対処出来、
小型の魔物なら瓦礫の中に閉じ込めることも出来る、
万が一失ったとしても対して痛手にはならないと言う判断からだ。
制作費も人員も無限に存在する訳では無いのでそのような判断が必要な場合もある事は分かってはいるが
現在西側には500人以上もの人が家が無く寒空の下過ごしている。
その人々が安心して暮らせるように、少しでも頑張らないとな……
などという考えていると目的の建物に入る、入る前から、子供たちの元気な声が辺りに響いていた。
経年劣化で嫌な音を立てる扉に手をかけ開ける、
中はシンプルなデザインの教会だ、
木の長椅子に白い壁、はめ込まれた多色に輝くステンドグラス、正面には大きな十字架、
1人のシスターが俺に気が付き祈るように一礼する。
「ようこそおいで下さいました騎士様」
「イセルさんはいるかな?」
「神父様はただいま来客の対応中です」
「それなら中庭で子供たちに挨拶していますから、来客対応が終わったら呼んでください」
俺はシスターにそう言って中庭へ向かう、
中庭と言っても天井が抜け落ち、床が剥がれ、なにかの芽が顔を覗かせている不思議な場所である。
中庭では1人のシスターが約20数人の子供たちと遊んでいた、
ここは協会なのだが孤児院も兼ねており、親の居ない子供たちを保護している。
「あっ騎士様だー」
1人の子供が俺を見つけると他の子らも俺に気が付き、
こちらに向かって駆け出し飛びつき一瞬で囲まれた。
「おーおー相変わらず元気だな、ほらこれお土産だ」
1人の少女に紙袋を手渡す。
「やったーなんだろー……わぁくっきーだ!!」
「くっきー!?」
「ちょうだい、ちょうだい!」
「わたしもー」
紙袋を持った少女に群がり出す子供たち。
「全員分あるからゆっくりな~」
「それと、食べ物を食べる前は手を洗いましょうね」
俺の言葉に付け足すようにシスターが言うと
テーブルに紙袋を置き、皆手を洗いに行く
「もちろんクリスの分もあるからな」
俺がそう言うシスターの少女はにっこりと笑う。
「お久しぶりです、リクさん」
「ここでの生活には慣れたか?」
「はい、神父様も先輩のシスターの方々も良くしてくださいますので」
「それなら良かった」
手を洗って帰ってきた子供たちはそれぞれ行儀よく座る。
「それじゃあ皆、せーの」
「「「「いただきます」」」」
元気な頂きますが周辺に響く、子供達は美味しそうにクッキーを頬張る、
クリスもクッキーを食べようと袋の方へ手を伸ばして──
「あっシスターいけないんだー」
1人の少年がクリスを指さす。
「シスターもちゃんと手を洗わないとダメ」
子供に指摘されて気がついたのかクリスは顔を少し赤らめながら手を洗いに行った。
「騎士様、神父がお待ちです」
出ていったクリスと入れ替わるように別のシスターが俺を呼びに来る。
「それじゃあ俺は行くから元気で行儀よくな」
「またねー」
「騎士様今度はいっしょにあそぼー」
笑顔で手を振る子供たちに見送られる。
来た道を戻ると十字架の前にステンドグラスグラスを光を受け祈りを捧げる神父がいた。
「イセルさん急な訪問してすみません」
「いえいえ私共は何時でも歓迎しておりますよ、リク殿も元気そうで何よりです」
腰が曲がりかけた皺が笑顔を作っているように見える温厚そうな老人、
イセル・ハーバルト、ここの神父だ。
イセルが歩き出したので俺はその後ろを着いていく。
「クリスも元気そうでよかったよ」
「ええ、ここに来た当初よりはかなり笑顔が増えました、
最初は怯えていた様子でしたが今では子供たちとも年上のシスターとも交友を深め数段に元気になっていると思っております、
私どもも彼女には感謝しております」
「これもクリスを助けてくれたイセルさんのおかげです、ありがとうございます」
「私は何もしていませんよ、彼女は強い、
だからこそ止まっていた足が前に踏み出せた、その強さの中にはリク殿、あなたが背中を押したのも影響しているはずです」
クリスは3ヶ月ほど前、闇ギルドを消した時に捉えられていたのを発見し保護した、
保護した時は彼女は闇ギルドに居たからか、
精神が不安定になっており暴行も受けたのか、体に痣があり喋れないほどに危険な状態だったのを教会に頼み治療してもらっていた。
その彼女が今では子供たちと笑いながら元気で暮らせているのはいい事だろう。
「そうだといいですね」
「ええそうですとも、ところでリク殿、ボス戦では大活躍されたそうで」
──はあ、ここもか。
「ほんの数時間前なんだけどなあ、情報が広まるの早いですよね」
「人と言うのは噂が好きな生き物 、情報は鮮度が命です、
それに自分たちを守ってくださっている騎士様達の事だと言うなら尚更でしょうな」
神父の話を聞いていると視界にメールのアイコンが表示される。
差出人は……
「イセルさんちょっと失礼」
俺は少し離れメールの内容を表示させる。
『リクさんお久しぶりです、リヴィアです、
今ようやくシュベルハイツァにたどり着きました!
それで青龍騎士団の本部?にお邪魔したのですがリクさんは居ないと言われました、
私は《海姫の戯言》という宿に泊まっています、
お時間があればお話したいです』
シュベルハイツァにたどり着くためには中盤まで進めないと行けないのだが、
普通なら初めてから1ヶ月以上はかかるがこの数日で来たのか?
俺は驚いていた、情報を揃えたストーリー最速攻略連中でも2,3週間はかかったと聞いたことがある、
俺はニヤけが止まらなかった、
高いステータス上昇値を持つ《双眼異色族》、
メインストーリーはソロでボスを倒す場面もあありそこで苦戦するプレイヤーも存在する。
しかし短時間でここまで来れたと言うことは、
戦闘スキルは平均以上だろう、アバターの慣らしは既に終わっていて、戦闘スタイルもある程度の自分の物になっている。
「戦ってみたい……」
素直な感想が漏れた。
ギャウリディアは第二の人生を送るために様々な職業やらステージが実装されているが、
元々はPvP重視のゲームシステムになる予定だったらしい。
《下克上》などのPvP専用スキルがある時点からその名残は感じられる。
それに相手を倒した場合に貰える経験値は強敵、自分よりレベルが高い相手ほど得られる経験値が多くなる、
レベルが低くても経験値は入るがレベルキャップという物が存在し、
同じ種類のモンスターから得られる経験値は100%,70%,50%,30%,20%,10%,1%と減少して行く。
リリース初期ではプレイヤーの成長速度が、ほぼ同じような物だったので、
PvPをしレベルを上げるプレイヤーが多く存在した。
リヴィアさんはどこまで強くなってるんだろうな。
『明日なら何時でも空いている、朝を少し過ぎたぐらいに迎えに行くよ、話したいこともあるからね』
と送信してイセルさんのもとへ戻る。
「何やら良い事があったようですな」
にこにこしながら俺を見るイセルさん。
「少し前にモンスターに襲われてる女性を助けましてね、その時はまだ初心者だったんですが、つい先程シュベルハイツァに着いたらしくて」
「ほおほおそれはそれは、会いに行かれるのですかな?」
「今日はこれから城で宴を開いてくれるらしくてそれに出席するので明日ですね」
「ふむ、それなら時刻も既に夕暮れ、辺りも黒く染まっている、そろそろ向かわれた方がいいと思いますぞ」
「そうですね、あまり堅苦しいのは嫌いなんですけどね……参加しなかったらしなかったで何か言われるのはわかってますし……
それではイセルさんまた」
「リク殿に神のご加護があらんことを」
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